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見返りを欲しがらない|しないから幸せ「南の島の幸福論」vol.1

見返りを欲しがらない|しないから幸せ「南の島の幸福論」vol.1

2020年がスタートし、年始に今年の目標を立てた方も多いと思います。

ある調査によると、その目標が達成される可能性は8%だそうです。

どうせ達成される可能性が低いなら、今年は方向性を変えてみるのはいかがでしょう。南の島の習慣にならい、「今年は○○をしない」という目標設定を試してみませんか。

「しない」≒「することをしぼる」

「しない」とは、世界的名著である『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー博士 著)に出てくる「最優先事項を優先する」ということです。

私が暮らすフィジーをはじめ南の島の人たちは、「しない」のエキスパート。連載コラム【南の島の幸福論】を通じて、「しない」を一緒に極めていけたら幸いです。

○○しないから、尊い

お金にさわった者は、その魔力の虜となり、それを欲しがる者は、生きている限り、その力もすべての喜びもお金のために捧げねばならない。

もてなしをしたからといって何かを要求したり、何かをしてやったからといってアローファ(贈り物・交換品)を欲しがるような人間を、私たちは軽蔑する。という尊いならわしを、私たちは大切にしよう。

「パパラギ」より引用

これは、今から100年前の1920年、第一次世界大戦が終結した後に出版された「パパラギ」という本から引用した言葉です。

「パパラギ」には、南国サモアにあるウポル島の酋長ツイアビさんが、ヨーロッパを周遊し、感じたことを、島にもどって仲間たちに伝えた内容がまとめられています。

ここでいうパパラギとは、ヨーロッパ人のことを意味しています。

見返りを欲しがらない

ツイアビさんが暮らしたサモアは、私が暮らすフィジーのお隣さん(フィジーがサモアの少し西に位置)。フィジーでも、冒頭のメッセージにあるような考え方が今も深く残っています。

フィジー語では「ケレケレ」、英語では「giving without expectation(見返りを期待しないで与える)」と訳します。

フィジーで公園を散歩していて、見ず知らずのフィジー人と目があうと「こっちで一緒にランチを食べよう」とすぐに声をかけてくれます(もちろんお金はかかりません)。これは何を意味するかというと…

2007年に初めてフィジーに来るまで、90カ国ほどを旅したことがありました。その経験から当時は「地球上には2種類の人間がいる」と感じていました。

ひとつは「旅人に無関心な先進国の人たち」。もうひとつは「旅人にお金目当てで話しかけてくる途上国の人たち」

しかし、フィジー人は、そのどちらでもなく、「旅人に見返りを期待せず話しかけてくる人たち」でした。

まさに「ケレケレ」が根付いているのです。

一人がたくさん持たない

ツイアビさんは、こう続けます。

ひとりの人間が、他の人たちよりずっとたくさんの物を持つとか、ひとりがうんとたくさん持っていて、他の人々は無一物、というようなことを私たちは許さない。

そのならわしを大切にしよう。

そうすれば私たちは、隣の兄弟が不幸を嘆いているのに、それでも幸せでほがらかにしていられるあのパパラギのような心にならずにすむ。

「パパラギ」より引用

これを体現しているかのような、フィジー共和国ナイラティカウ大統領のエピソードがあります。

フィジーやサモアと同じ太平洋上にある国、キリバスは「温暖化による海面上昇の影響で沈んでしまうかもしれない」と言われています。

それを受け、フィジーのナイラティカウ大統領は、2014年にキリバスを訪問し、公式にこう発言しています。

「国際社会が温暖化対策に失敗し、海面が上昇し続ければ、キリバスの人たちの一部、もしくは全員がフィジーに移住する必要があるかもしれない。我々は困っている隣人に背を向けることはない」

キリバスの人口は、約10万人。実にフィジーの人口(約90万人)の1割以上になります。それを受け入れるというのは相当な覚悟です。

人口規模が違うので単純に比較できませんが、日本で例えると全人口の1割といえば、「四国地方+中国地方+沖縄」という規模感、それでも全て受け入れると言っています。

お金に執着しない

ツイアビさんは、さらに続けます。

何よりもまず、私たちはお金から身を守ろう。

パパラギは今や、欲しがらせようとして、私たちにあの丸い金属(硬貨)と重たい紙(紙幣)を差し出している。それが私たちを豊かにし、幸せにすると言う。

けれども私はおまえたちに語ろう。お金で人は楽しくなったり、幸せになったりすることはない。

それどころか、人の心を、人間のすべてを、悪しき「いざこざ」の中へと引き込んでしまうということを。そしてお金は、ひとりの人間も本当に救うことはできない。

ひとりの人間も、楽しく、強く、幸せにすることはできないのだということを。

「パパラギ」より

日本人がフィジーにくると、「フィジー人はお金を持っていないのに幸せそうだ」と驚きます。

フィジー人にそれを伝えると、「日本人はお金を持っていないと幸せになれないのか?」と同情します。

ツイアビさんは、お金に執着している人を「病人」と表現します。この病気に対する処方箋はいったい何なのでしょうか。

お金とどう付き合うのか? これこそが「どう生きるか」の核心だと思います。


次回は、<未来の時間を占拠しない>をテーマに『南の島の幸福論』vol.2をお届けします。

なぜ南の島の人たちは「お金持ち」じゃないのに「時間持ち」なのかについて。ぜひコペルニクス的転回を楽しんでみてください。

この「南の島からのメッセージ」が、これからを生きる何かのヒントになれば幸いです。

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永崎 裕麻

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在13年目。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダー/教育ファシリテーターとして参画。ライター、教育企画の立案、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動もしており、フィジーと日本を行き来するデュアル・ライフを実践。2019年からは「幸福先進国」であるデンマークも加えたトリプル・ライフに挑戦中。大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。二児の父。

世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論

著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

Source: パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集


永崎裕麻

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