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ノートはゴールへの道筋を可視化するツール。西寺郷太インタビュー前編

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ノートはゴールへの道筋を可視化するツール。西寺郷太インタビュー前編
Photo: Ryuichiro Suzuki

ミュージシャンでありプロデューサー、さらには作家・小説家として活躍、読書家としても知られるノーナ・リーヴスのヴォーカル西寺郷太さん。

以前、ライフハッカー[日本版]では、80's洋楽にまつわる著書のインタビューを行いました。

「80's洋楽についての書き下ろし本はこれが最後」。ノーナ・リーヴス西寺郷太さんインタビュー

作詞・作曲・プロデュースはもちろん、80年代音楽研究家として大学で講演するなど、さまざまな分野で活躍する西寺さんですが、最近注目されているのが、西寺さんの「ノートを取る技術」。

今年7月に刊行された新著『伝わるノートマジック』にまつわるインタビューを前後編で送りします。

音楽づくりと絵を描くのはそう遠くない

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Photo: Ryuichiro Suzuki

———『伝わるノートマジック』、読ませていただきました。 水道橋博士も大絶賛したという西寺さんのノート術なのですが、絵のうまさといい、構成といい、見やすさといい、本当にクオリティが高いですよね。こういう風にノートを取る練習はかなりされたんでしょうか?

ノートを取ったことない人はいないでしょう(笑)。小学校中学校の頃からノートに黒板に先生が書いたことを写していく。基本的にはその流れですよね。

———表現のプロの方にこの言い方でいいのかわかりませんが、本当に絵がお上手ですね…。

落書きが元々好きだったので。絵だけを描こうと思うことはほぼないですが、こういう挿絵みたいのは好きですね。

ミュージシャンでも、マイケルもそうですし、ジョン・レノンやポール・マッカートニー、曲作りをする人は絵が上手い人が多いですよね。

——音楽をつくることと絵を描くことは表現として通じるものがあるのでしょうか?

音楽も彫刻みたいなもので、目には見えないけれど、基本的に立体なんです

アルバムづくりもそうだし曲づくりも全てそうなんですけど、基本的には「かたち」を作る仕事なので。

だから紙に絵を描くのと歌詞を書いたり曲をつくったりするのは、ぼく自身はそんなに遠いことだとは思っていません。

良い曲をつくるけれど、絵を描くのが苦手…なんて人ももちろんいるでしょうけど、特に作詞なんかをする場合は、紙に書いたり、PCで打ったりしていく訳ですから「絵画的なもの」というか、ビジュアルとは分けて考えられない気がします。

ものを立体で捉えられる人はいい曲もつくれるしプロデュースもできる。「全体を見る」というところに繋がるんじゃないでしょうか。

ノートは目的に向かって自分の頭を整理するためのツール

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Photo: Ryuichiro Suzuki

——西寺さんにとってノートをとる意味とは何でしょうか?

まず、ぼくはタイトルをすごく大事にするんです。ノートをとること自体が目的なんじゃなくて、「考え方」というか、ひとつの会話なり講義なりをどんなゴールに導くか道筋をつくるための手段という風に捉えています。

たとえば取材の時間が1時間あるとすれば、その時間の使い方を考えて、どんなタイトルをつけて、どういう枠組みにして、どこにどういう目次をつけてその1時間を10分ごとに切っていく…。そういうのを逆算してノートをつくるんです。

みんなにとって良い結果になったほうが良いに決まっているので「今日はどんな集まりなのか」とか「どういうことをやるために、この人たちがここに集まっているのか」というゴールから考えるんです。

自分自身、ノートをとることでまずゴールを決めて考えを整理するという癖がついたと思います。

仕事やプロジェクトに関して、まずタイトルを決めて細かく分離してものを考える習慣がついたのは、ある種自分の武器になっていますね。

——では西寺さんにとってノートは「目的に向かって自分の頭を整理して、かつそれを人にわかりやすく伝えるためのツール」という感じでしょうか。

普段の会話でもゴールを意識してお話されているんですか?

そうとも限らないですね。1時間で終わらない話は世の中にいっぱいあるので。

たとえば、TBSラジオで宇多丸さんがパーソナリティを務めて平日毎日放送している「アフター6ジャンクション」という番組がありますが、あの番組はあえて完結させていないですね、その時間内で。

その時間内に終わらせるんじゃなくて、その番組が「続く限り続けられる」ような作戦を練るだけというか。

確実にその時間内に終わらなければいけないものもあれば、ダラダラしてたほうが良いこともある。だから「全然終わらなかったじゃん」って言われても「いや、それはそう思ってるから」っていう(笑)。もう本当に、時と場合によりますね。

地図の中心に本がある。そういう感じ

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Photo: Ryuichiro Suzuki

——アナログ回帰を志向する訳ではないのですが、 西寺さんご自身も「本」に愛着がある世代ではないでしょうか?

両親はふたりとも小学校、中学校と学校の先生で、父親は英語の先生だったんです。それもあってか、実家に蔵書庫があるくらい、昔から本というものに関して金に糸目をつけない家庭でした。

そういう意味では相当恵まれていましたね。他のものは「駄目だ」と言われても、本に関しては「全然いいよ」とドンドン買ってくれたんです。それが途中からレコードになるんですけど。

——それはすごく羨ましいです。文化資本に恵まれていたんですね。

音楽や絵画を「芸術だから」と、見たり聴いたりして感じることが全てという人もいますが、ぼくが本や音楽を好きになった理由はそれとはちょっと違って。

というのも、歌詞カードやクレジットを見て、誰が作詞をしたのかだとか、本やライナーノーツで得た知識が「セット」になって、そういう物語を通してさらに音楽が好きになれた人間なんです。

当時なら、渋谷陽一さん、湯川れい子さん、吉岡正晴さんだとか、いろんな人によって書かれた解説を読みましたね。

レコードやCDの良いところは、ライナーノーツがついているところじゃないでしょうか。特に、レコードはもう本みたいなものが付いているようなものも多かったので。

そういう意味では、手で持って読めるようなフィジカルな側面がある種今の音楽にないっていうのは「もったいない」と思います。

——レコードもそうですが、自分や自分と同世代の多くの人にとって「本」はいくつになっても戻れる駅、というか地図の中心みたいなもの

そこから広がっていく感じがやっぱりそのインターネットだとなかなか難しいような気がするんですよね。

「最終的に本当に人に伝わるのか」というと実はわからない

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Photo: Ryuichiro Suzuki

——この本を読んだ読者に「どういう風になってほしい」というイメージは明確にあるのでしょうか? もしくは、受け取り方は読み手に委ねる感じでしょうか?

「どういう風になってほしい」かと言われると、ふたつ思い浮かびますね。

ひとつは、やっぱり毎日ノートをとる子どもに向けて。小中高校生は毎日ノートを書く訳ですが、「こうすれば面白い」と思えるには、お手本がなければわからないと思うんですよ。

だから基本的にこの本は、若い人に向けて書いています。

数学や英語を教える前に「こうやってノートをとるんだよ」ってぼくが教えてあげることで、それまで興味の持てなかった科目に対しても関心をもつきっかけになる可能性もあるんじゃないかと思って。

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Photo: Ryuichiro Suzuki

——全体像を捉えて、ビジュアルに落とすことで授業の理解度が深まりそうな気がします。小さい頃はノートに落書きとかして時間つぶししていた人間なのでその頃にこの本と出会いたかったですね。

僕もよくわからない理科の授業のときとかに絵を描いてました(笑)。

それで、ふたつめは形式にとらわれすぎな社会人に向けて。

たとえば仕事でつくる企画書なんかがそうですが、何かものを伝えるときにパワーポイントでデータをグラフにしたりしても、最終的に「本当に人に伝わるのか」は実はわからないんじゃないかと思います。

ぼくも大学で講座を持つことがあるんですが、宿題を提出してもらうと、形や形式はとてもきちんとしているけど中身がないものがやっぱりあって、そういうのは見慣れているのでわかるんですよね。

当たり前だけど、見た目はめちゃくちゃきれいに仕上げていたとしても、結局は必要なのは「書いてあること」じゃないですか。

これは音楽でも言えることで、誰かがPCで作り込んだデモテープを聞いても、プロが聞いたらやっぱりわかるんですよね。「雰囲気はちゃんとしているけど元々の軸がないよね」って。

企画書も同じだとぼくは思います。だけど、やっぱりどうしても、「みんなと一緒がいい」「できないと思われたらいやだ」ってみんな怖がっちゃって画一的なものになってしまうんじゃないでしょうか。

でも、何か自分の本当にやりたいと思える強烈な企画を通すときなんかは手書きでもイラスト付きでも全然いいと思うし、大量の資料を渡す必要もない。

だから、社会人になる前に、学校の勉強のノートのとり方をある程度ちゃんと教えたらムチャクチャ無駄な時間が減るし、それ自体が面白くて、物事の考え方に関わってくるならやらない手はないですよね。

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Source: スモール出版, TBSラジオ

岸田 祐佳

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