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集中したいときこそ「デジタル・ミニマリスト」になるべし。その理由と実践法

集中したいときこそ「デジタル・ミニマリスト」になるべし。その理由と実践法
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スマホで快適に動作する主要なSNSや数々のアプリ。

我々の大半が、その便利さを享受し、もはやそれを手放すなんて夢にも思わないでしょう。

でも、いったん立ち止まって冷静に考えてみましょう。

1日に平均49回(統計的な事実です)もスマホをチェックして、自分の投稿に“いいね”があるか確認したり、テキストメッセージを何度もやりとりするなどして、人生の質や幸福レベルは向上したかといえば…ちょっと疑問を感じることと思います。

会ったこともない人とチャットに興じる一方、リアル世界での人間関係がおろそかになる、といった弊害を実感する人もいるでしょう。

デジタル・ミニマリズムとは何か?

「デジタル・デトックス」という言葉がありますが、これは、週末に電波の届かない山奥でキャンプするなどして、一時的にスマホを使わない(使えない)環境に身を置き、心と頭をリセットすること。

そこまでしなくても、ネット世界には、スマホとちょっと距離を置く(そして自分を取り戻す)ためのテクニック集はいくらでも公開されています。

しかし、こうした「小ワザ」では、「デジタル・ライフを根本的に改善するのは難しい」と主張するのは、ジョージタウン大学准教授でコンピューター科学を専門とするカル・ニューポート氏です。

「難しい」とする理由は、SNSやアプリは「人の意識に強く働きかけて本能的衝動を刺激する心理的な力によって強化されている」ため。

平たく言うと「いいね」やコメントがついたかどうか、気にせずにはいられない心理状態にする仕組みが、インターネットの世界に張り巡らされているせいです。

そこで、ニューポート氏が著書の『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』(池田真紀子訳/早川書房)ですすめるのが、「デジタル・ミニマリズム」です。

これは、家の中のモノをとことん減らすミニマリズムのデジタル版です。

ニューポート氏は「自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学」と定義し、実現するための方法を多数説いています。

では、具体的にどのよう方法があるのでしょうか?

本書から幾つか紹介しましょう。

30日間の「デジタル片付け」でミニマリストに近づく

「デジタル片付け」とその手順

30日間かならずしも必要ではないデジタルテクノロジーをすべてシャットアウトし、その期間に「楽しくてやりがいのある活動や行動」を見つけ、そちらに注力するというもの。

30日のリセット期間が終わったら、デジタルテクノロジーを再導入しますが、自分にメリットが本当にあるかよく吟味し、イエスと確信の持てるものだけ採り入れます。

開始から1~2週間は、禁断症状めいた不快な感覚に悩むかもしれません。

アプリをあらかた削除したスマホで、無意識にアプリを起動しようとする自分に気付くかもしれません。

しかし、それを乗り越えた人には、大きな変化が起きます。

以下は、実行者の1人による感想です。

リセット期間が終わった日、猛ダッシュでフェイスブックや自分のブログ、ディスコード(ゲーマー向けチャットアプリ)にアクセスしました。

早く戻りたくて、テンションが上がりまくっていました。なのに、30分くらいぼんやり見て回ったころ、こう、天井を見上げて思ったんです。

私、何してるんだろって。これってもしかして…退屈? 見ていても少しも楽しくなかったんです。(本書103pより)

以来、この人はフェイスブックを始めとした、再導入したサービスを使用していないそうです。

多くの人がこれと似たような経験をしており、以前より子どもと触れ合うようになった、本をよく読むようになった、クリエイティブな活動に目覚めたなど、人生により有意義な変化を感じています。

この「デジタル片付け」は、本書の序盤に書かれているメソッドです。

再び使うことにしたデジタルテクノロジーとの付き合い方について、ニューポート氏は残りの章を使って詳しく指針を展開しています。

その例を以下に挙げましょう。

“いいね”をしないようにする

ニューポート氏は、SNSで“いいね”を「してはいけない」、そして、投稿へのコメントの書き込みもやめるようアドバイスします。

「“いいね”をつけるくらい、たいしたことがないのでは」と思われるかもしれません。しかし、このワンクリック承認には「接続とは会話に代わる適切な選択肢であると学習してしまう」問題があると指摘します。

ニューポート氏は、SNSやインスタントメッセージなどネット上の対話的でない会話を「接続」と呼んでいますが、接続はとことん減らし、リアル世界での会話を増やすことをすすめています。

この助言を聞いたある女性は、友人が投稿した「赤ちゃんの写真にコメントをつけなかったら、冷たい、横着だと思われるかもしれない」と不安になりました。

そのあとでよく考え、手料理を持ってその友人を訪ねたことで、「ソーシャルメディア上で一言コメントを100個受け取るよりも幸福度を向上させた」と打ち明けています。

ニューポート氏は、周囲の悪印象を予防するため「最近、ソーシャルメディアはあまりチェックしていなくて」と、それとなく伝えておくのが効果的と付言しています。

いずれにしても、SNS上でのみ知り合いとなっている何人かは、人間関係から脱落しますが、「去る者は追わない」方針で臨むのが吉とも。

デジタル・ライフをスケジュールに組み込む

デジタル・ミニマリズムといっても、完全にSNSと断絶せよと唱えているわけではありません。

「絶対にネットには接続しない」と決めてしまうと、小さな例外がぞろぞろ出てきて意気込みは消滅してしまうとニューポート氏は述べ、むしろスケジュールに組み込んでおくことを提言します。

つまり、ある程度の時間を「ネットサーフィンやソーシャルメディアのチェック、配信動画の視聴など」に確保しておき、その時間帯はデジタル・ライフをいくらでも満喫してもよいと決めておくのです。

最初は、そのための時間の長さは気にせず、平日の夜とか週末の大部分とか、多めにとっておいてもOKとのことです。

その代わり、その時間以外はオフラインに徹し、質の高い余暇活動を見つけ、それに打ち込む時間を増やしていきます。するうち、「自然とより積極的に制限をかけることになる」そうです。

スローメディアを活用する

もっぱら速報性が勝負のメディアの記事やSNSの噂話を、ささっと消費するように読むのでなく、内容に厚みがあり読み通すのに時間のかかる「スローメディア」の活用を、ニューポート氏は推奨します。

報道や評論に関しては、自分が関心を持っているトピックについて世界クラスの書き手であるとすでに証明されている少数の人々だけに絞って注意を向けるべきだ。

かならずしも権威ある大きな媒体で書いている人物でなくていい。個人ブログで骨太の意見を発信している書き手が、イギリスの週刊新聞「エコノミスト」で長きにわたって書き続けている記者と同じように高品質の情報を発信していることもあるはずだ。

(中略)ツイッターのハッシュタグ検索のぬかるみや、延々と続いてあなたのフェイスブックのタイムラインを埋めていくコメントの山をかき分けるより、よほどためになるということだ」(本書278~279pより)

この場合も、節度を持ってという但し書きがつきます。

本書ですすめられているのは、「1週間のどこかにニュース消費のための時間枠を設ける」というもの。

その時間になったら、読むことに集中できる環境(カフェなど)に身を置き、厳選した記事を1週間分まとめて読むのです。

こうすれば、強迫的にニュースサイトやSNSをあちこちクリックして時間と心の健康を消耗しないですみます。


米国でベストセラーとなった本書ですが、デジタル・ライフと完全に縁を切るのでなく、あくまでも自分にとって有益と思えるツールを取捨選択するのが成功のカギ。

デジタルとアナログの良い点を生活に採り入れ、より好ましい人生へとステップアップするために本書のメソッドを活用してはいかがでしょうか。


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Image: Shutterstock.com

Source: 早川書房

鈴木拓也

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