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脳の専門家が教える、通勤電車で脳を鍛えるトレーニング法

脳の専門家が教える、通勤電車で脳を鍛えるトレーニング法
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毎日、混みあった電車に長時間乗って通勤するストレスは相当なものがあります。他にすることもないので、仮眠時間にあてたり、スマホでSNSやニュースをチェックしたりするもの。そんな通勤時間を有意義だと考えている人は少ないと思います。

もし電車通勤の時間が、脳力を増強し、ビジネススキルを伸ばす絶好の機会になるとしたら?

「通勤電車の中は他に類を見ない“脳を活性化する最高の空間”」と説くのは、加藤プラチナクリニックの脳内科医、加藤俊徳院長です。

加藤院長は、自宅から徒歩圏内にクリニックを構えながら、あえて朝に電車で出かけ、カフェで勉強して電車で帰ってくるほど、電車通勤の効用を実感する1人。

10月には、発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家としての知見にもとづき、新書『脳にいい! 通勤電車の乗り方 - 脳内科医がズバリ解説』 (交通新聞社) を上梓しています。

ふつうなら疲れるだけの電車通勤をどう活用すれば、脳力の向上に生かせるのでしょうか。本書からその秘訣の一端を紹介しましょう。

脳には「番地」がある

本題に入る前に、ちょっと専門的な話から。脳は1千億を超える神経細胞からなりますが、同じような働きをする神経細胞が集まって集団を形作っています。

この集団は、右脳と左脳におよそ60ずつ、計120あって、加藤院長はこれらを「脳番地」と呼んでいます。

脳番地は、役割に応じて8つの系統に大別できます。その1つの運動系脳番地は、身体全般を動かすときに働きます。記憶系脳番地だと、何かを思い出したり、新たに記憶する働きに関わっています。

そのほかに、感情系脳番地、伝達系脳番地、理解系脳番地、視覚系脳番地、聴覚系脳番地、思考系脳番地があります。

こうした番地で分けられる脳の各機能は、年齢を重ねても成長させることができるそうです。人によってどの脳番地が発達し、どの脳番地が比較的未発達のままであるかは、各人が積み重ねてきた経験・学習の種類によって異なります。

ところで、弱い脳番地があるからといって、そこだけ狙い撃ちして鍛えようと思っても、脳が疲弊しやすく時間もかかって、効率的とはいえないと加藤院長は述べています。

むしろ有効なのが、「脳番地同士はつながって成長する」という脳の習性を生かすこと。他の成長した脳番地を働かせると、弱い脳番地も連動して強くなっていくのです。

また、同じ脳番地ばかり使っていると、脳が疲弊しやすくなり、しまいにはやる気の喪失やいらだちへとつながります。

例えば、乗車中はずっとスマホの画面を見続けると、視覚系脳番地ばかり酷使し、気分転換のつもりが余計疲れる、ということになりがち。こんなときは、音楽を聴くなど、違う脳番地を使う「脳番地シフト」が有効だそうです。

さて、こうした脳番地の特性は、電車通勤とどうかかわってくるのでしょうか。以降、具体的に説明しましょう。

電車で通勤すること自体が脳を強化する機会

加藤院長は、「通勤電車が脳にいい」理由の1つに、8つの脳番地のほとんどが使われ、脳がまんべんなく刺激を受ける点を挙げています。

これは電車の中が、不特定多数の人が共有する空間であるため。周囲に気を配り、マナーを守るため、「観察→行動」が自然と行われますが、これが各脳番地を働かせます。

それだけでなく、家を出てから電車に乗り込む時点までの間も、脳番地を鍛える機会になっているそうです。

家を出る瞬間など、移動により環境が変化するタイミングには、複数の脳番地がフル活動します。身体を動かすと同時に、周囲の刺激や情報を脳が敏感に察知するからです。

このように、複数の脳番地が瞬時に働くことを「高次脳機能」といいます。

実は、電車に乗り込む瞬間も、「高次脳機能」が働く場面の一つ。

見て(視覚系脳番地)、判断して(思考系脳番地)、入る(運動系脳番地)というスムーズな流れをこなすために、脳は猛烈に活動しているのです。(本書54pより)

また、予想以上の混雑や事故による電車の遅れといったハプニングは、最初は戸惑いながらも冷静になり(感情系脳番地)、最終的に最適解を導き出して行動に移す(思考系脳番地+運動系脳番地)というふうに、脳番地を刺激します。

このように電車で通勤すること自体が、その前後も含めて、各脳番地を鍛えているわけです

トレーニングでより効率的に脳番地を鍛錬

本書の後半は、各脳番地を効率よく鍛え、ビジネスに必要な能力を高めるための、より具体的なトレーニングに割かれています。脳番地トレーニングの数は33種類。

もちろん、全部を毎日する必要はなく、できるものからやってみるとよいでしょう。ここでは、その中から3つを取り上げます。

目を閉じて、片足で立つ

電車の中で立った状態で、以下の手順で行います。

  1. 目を開けた状態で両手でつり革をつかむ(安全確保のため)。
  2. 両足を肩幅より少し狭めに開く。
  3. どちらか片足を床から浮かせる程度に上げる(1~3cm)。
  4. この姿勢を保って10秒間立つ。
  5. これができるようになれば、今度は目を閉じたまま10秒間立ってみる。
  6. 立つ時間を15秒、20秒、30秒と延ばしていく。また、反対の足でも行う。

これには集中力と起床後間もない脳の覚醒効果を高める効果があるそうです。加えて、バランス感覚を養い、下半身の筋力強化にもなります。

もともと、左右前後に揺れる電車の振動は、運動系脳番地や小脳を刺激して、右脳と左脳を同時に働かせる調節力を高める効果があります。

さらに、片足立ちというふだんしない動きをとることで、運動系脳番地は新たな刺激を与えられ、バランスをとることに集中することで思考系脳番地も強化されます。

また、目を開けているときは視覚系脳番地と思考系脳番地が、つぶっているときは小脳などが働きます。こうした原理で、幾つかの脳番地を鍛錬できるのです。

テーマを決めて車窓の景色を眺める

車窓の景色を眺めながら、「3」の数字、黄色のもの、塾の看板など、自分でテーマ決めてそれを探します。時間は10~30分。

これだけで、視覚系脳番地を鍛えるとともに、理解系脳番地や思考系脳番地とつながりやすくなります。視野も確実に広がり、見慣れた景色が新鮮に感じられるそうです。

スマホの画面を見ているときでも視覚系脳番地は働きますが、遠い風景のほうが視覚系脳番地の使われる範囲が広くなり、一種の脳番地シフトも起きます。

車内アナウンスをリピートする

電車の中で放送されるアナウンスを、頭の中でリピートします。時間は5~10分。

このトレーニングで、聴覚系脳番地、記憶系脳番地、伝達系脳番地が強化されます。

意外と難しいですが、一度聞いただけでリピートできるまで上達すれば、交渉などビジネスの重要な場面においても、メモなしでも聞き漏らすこともなくなり、日常会話での「聞き返し」もなくなる効果があるそうです。

さらに、声の主の車掌さんがどのような人物かを想像する(年齢、性格、容姿など)と、視覚系脳番地と理解系脳番地が刺激されます。

これを繰り返すことで、声を聞いただけでその人の感情を察することができるようになるそうです。


加藤院長の脳番地トレーニングは、難しいものも乗客の迷惑になるものもありません。今まで憂鬱の種であった電車通勤を脳力強化の機会に変えることで、通勤が少し楽しいものにできるというメリットもあります。

余計な時間をかけずに、今よりもっと脳の力を伸ばしていきたい方は、試してみてはいかがでしょうか。


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Image: Shutterstock.com

Source: 交通新聞社

鈴木拓也

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