若者の悩みが見えにくい時代に。親でも友人でもない「ナナメの関係」が重要な理由とは
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思春期には多くの悩みを抱えがちですが、その代表的なものが人間関係。特に現代は、SNSや携帯電話の普及によってつながりがブラックボックス化し、外からはますます見えづらくなっています。
IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)にて、悩める若者に成長のチャンスを与えようと奮闘する人物が紹介されていました。
キーワードは「ゆるさ」と「ナナメの関係」とのことですが、はたしてどのようなプロジェクトなのでしょうか。
親でも友だちでもない、「無関係の誰か」が若者にゆとりを与える
ロングインタビューに登場していたのは、NPO法人カタリバ代表の今村久美さん。2001年の立ち上げ以来、10代、特に高校生のさまざまな意欲を引き上げることを目標に活動されています。
同団体が設立されたきっかけは、今村さんの大学時代の経験から。さまざまな境遇の生徒が集まる中、家庭の裕福さや親の影響力によって、子どもの教育機会や経験が著しく異なることを思い知ったからだそう。
今村さんは、例えどのような環境で生まれ育っても、意欲さえあれば未来を自分で切り拓ける社会をつくりたいと強く思ったといいます。

カタリバの最大の特長は、利害関係のない「ナナメの関係」を構築しようという考え方。
親や先生といった「タテ」の関係でもなく、友人同士の「ヨコ」でもない、いい意味で「関係のない誰か」とつながることで、つい閉じこもってしまいがちな若者の世界を広げることを目標としてます。
今村さんはこれを、「ゆるく語り合える、心のサードプレイス」と表現し、具体的に以下のように語っています。
ナナメの関係は、年齢だけのことではなく、養育責任者でも評価者でもない点が重要です。両親は理想を描きがちで、生まれてからのその子のことを分かっている分だけ、過干渉になります。学校の先生は教える人であるとともに評価者ですから、どうしても教師と生徒の関係になります。利害関係のないお兄さん、お姉さんや、おじさん、おばさんの関係であれば、「自分の中でもやもやとしてまだ固まっていないんだけどさぁ」とゆるく語り合える逃げ場、つまり心の「サードプレイス」になることができます。
生き方も多様性が重んじられる時代へ。これからの中高生への提言とは
カタリバの具体的な活動について、今村さんは3つに分けて説明しています。
1つ目は「自分たちから出向く」こと。大学生を中心としたスタッフが学校を訪問し、中高生と対話する「カタリ場・プログラム」を開催し、まずはカタリバの存在を知ってもらうといいます。
次に、やる気になった中高生たちが利用できるイベントの開催。学校の中で得た気づきや「もっとやりたい、もっと知りたい、もっとつながりたい」と思った子どもたちに、その場所を提供してあげるそうです。
最後は、行政や学校にカタリバの職員を送り「学校をカタリバ的に変えていく」こと。若者の心の休憩所となる「サードプレイス」を一過性で終わらすことなく定着させることが目的で、すでに高校の職員室に籍を置く事例もあるそうです。

協調性が重んじられ、時に過剰ともいえる画一性を求められる、日本の中高生。彼らを近くで見守ってきた今村さんは、すでにそのような時代は過去のものであると指摘し、以下のような提言をされています。
高校を卒業しすぐに大学に入らなくても、自分が納得するタイミングで大学生になっていいし、新卒で就職しなくても、社会はもっと待ってくれます。働き方も多様化してきています。
しかし、こうした変化はあまり高校に伝わっていません。少子化の影響で、社会での若者の価値も高まっています。もっとわがままに自分が今何に時間を使いたいかをじっくり考えながら、成長していくことが可能な社会になってきていると伝えていきたいです。
2001年の設立から、10年ごとに活動のテーマを変えてきたカタリバ。節目となる2020年には「学校と社会の境界線をとかす」を掲げる予定だそうです。
週2日は企業、残り3日は学校で教員として働く「兼業教員」のアイデアなど、カタリバが今後取り組んでいきたいことについて、続きはMugendai(無限大)よりお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)
渡邊徹則