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相手の感情を刺激して「交渉」を有利に導く、戦略的な3つのテクニック

相手の感情を刺激して「交渉」を有利に導く、戦略的な3つのテクニック
Photo: 印南敦史

最高の結果を得る 「戦略的」交渉の全技術』(石井通明 著、日本実業出版社)の著者は、英国ウェールズ大学においてハーバード流交渉学や行動心理学、コンフリクトマネジメントなどを専攻してMBA(ネゴシエーション専攻)を取得し、さらに自らの経験も踏まえながら独自のノウハウを構築したという「交渉の専門家」。

本書においてはそのようなバックグラウンドをベースとして、「戦略的」に交渉を進める考えや方法を解説しています。

戦略的、という形で書かせてもらったのは、目の前の口喧嘩に勝つような話術が交渉ではないからです。

「肉を切らせて骨を断つ」という日本のことわざにあるように、たとえ目の前で肉を切られようとも、最終的に相手の骨を断つという目的に達する、つまりは目的にたどり着くための手段として、目の前の勝ち負けではなく、最終的に自分にとって満足の行く結果にたどり着く、という点に戦略的交渉の意義があります。

知っていると知らないでは大きく違います。(はじめに」より)

そのため本書は、手順や考え方を吸収し自分のものにして、どんな場面でもどんな相手でも、自分の考えを軸に交渉できるようになることを目指しているのだそうです。

きょうは第3章「交渉のプロも使う『感情』を刺激して有利に導く極秘スキル」のなかから、3つのテクニックを抜き出してみたいと思います。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック

交渉のテクニックとしてよく使われるのが「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」。

小さな要求から段階的にYesをもらっていき、最終的に大きな目標を達成するというものだといいます。

たとえば、突然「この商品を1000円で買ってください」とお願いしたとしても、簡単に首を縦に振ってはもらえないでしょう。

しかし、「この商品は100円ですが、値段の割に便利ですよ」と伝えたとしたら、相手は「買ってもいいかな」と考えはじめるかもしれません。

そして小さなYesをもらったあと、たたみかけるように「これは先日の商品をバージョンアップしたもので、1000円ですが、そのぶん前のものよりずっと性能がいいんです」と交渉すれば、「まあ、買ってみようか」と考えてもらえる可能性が出てきます。

このように少しずつ段階的に目的を大きくしていき、最終目的を達成するわけです。由来は、セールスマンが開いたドアに足を挟んで、営業の場を閉ざされないようにする行為から来ています。

ある意味、「わらしべ長者」的な側面もあります。(131ページより)

このテクニックのポイントは、「自己一貫性」。

一度承認したことで相手の要求を断りづらくなり、また親密度もアップしているため、相手には「一度受け入れた以上、受け入れ続けなければいけない」という心理が働くというのです。

そのため、なるべく警戒されないように小さなことからお願いし、少しずつハードルを下げれば、最終的に大きなYesに結びつくということ。

お店で商品を見ているとき店員に声をかけられ、なんとなく会話に応じてしまうと、会話の中からいろいろなことを探られ、それに見合ったものを紹介されたりします。

その結果、「買おうかな」と心が揺らぐかもしれません。

買うつもりがなかったのに、話しかけられたことで相手のペースに巻き込まれ、最終的には「買わないといけないかもしれない」と言う心理になるということ。

古典的なテクニックではあるものの、いまお有効なものだといいます。(131ページより)

ザッツ・ノット・オール・テクニック

ザッツ・ノット・オール」とは、直訳すれば「それがすべてではない」という意味。そしてこの手法は、通販番組でよく目にするテクニックなのだそうです。

「この匠の技で仕上げた包丁がなんと1万円です!」

そう言われても、包丁1本が1万円だとすれば「高い」と感じて当然。しかし、さらにこう続くわけです。

「しかも、いまならこの刺し身包丁と果物ナイフ、包丁研ぎセットをおつけして、1万円でご奉仕!」

このように訴えかけられるとお得感を意識することになり、「いま買わないと損」とまで思えてきたりするものです。

こうした、後からおまけが出てくるパターン、つまり最初の提示が「ザッツ・オール」ではないという点が、このザッツ・「ノット」・オール・テクニックのポイントです。(135ページより)

「これだけですよ」と見せてがっかりさせ、「実はおまけが…」とアプローチするわけです。(134ページより)

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック

これはフット・イン・ザ・ドア・テクニックとは逆で、開いたドアにいきなり顔を突っ込んで、相手に拒否される行為が由来となっているのだとか。

最初に小さなYesをもらって段階を上げていくのではなく、断られる前提で大きな提案をし、当然のごとく断られてから、本来の目的である地位Yesをもらう手法。

とても高価な服を買って欲しいと要求して断られてから、手ごろな値段の服を買ってもらうというようなケース。ここには、要求した側の譲歩が含まれるわけです。

つまり、高い物を断ったら相手が譲歩してもう少し安いものをおねだりしてきた。でもちょっと高いな、と感じてまた断ったら、さらに譲歩してもう少し値段の安いものをおねだりされた。

こうした展開に入ると、おねだりされた側は、相手に何度も譲歩させては断るという行動に負い目を感じ始めます。

すると、これだけ譲歩させたのだから、まあ買ってあげようか、という心理になるのです。ところが、おねだりした側は、本来の目的がその最後に提案したものだったのです。こうしてまんまと作戦が成功します。(139ページより)

ただし、いきなり断られる前提でも、あまりに突飛な条件を提示してしまうと、逆に相手にしてもらえなくなる可能性も。

つまり、ほどほどで手ごろな条件の、ちょっと上で、かつ断られそうな条件提示をする必要があるということです。(139ページより)


著者いわく、交渉で必要となるのは、手段と選択肢の準備。しかしそれは、本書に書かれているような知識がカバーしてくれるそうです。

そこで、ここに書かれていることを参考にしながらスキルを身につけ、交渉のスキルをアップさせたいところです。

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Photo: 印南敦史

Source: 日本実業出版社

印南敦史

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