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年金暮らし、老後破綻、老老介護。親の財産について、いま子どもができること

年金暮らし、老後破綻、老老介護。親の財産について、いま子どもができること
Photo: 印南敦史

親の財産について、しっかりその全体像を把握しているという方は、実際のところ限られているのではないでしょうか?

とはいえ親が高齢になるにつれ、知らないことの多さが気になってくるものでもあります。また親の側も、高齢になると財産整理を思いつき、気にすることになります。

だからといって、すぐに財産を具体的に分けたりするわけでもないでしょうが。

いわば親も子もその多くは、「そのときにどうしたらいいのかわからない」状態のままでいるということ。

だからこそ読んでおきたいのが、きょうご紹介する『親のお金守ります』(小早川 浩 著、自由国民社)です。

「親のお金」というと、「相続」や「亡くなった後の手続き」「生前にできること/やるべきこと」があります。

たとえば、これまで相続といわれてきたもの、高齢者の認知機能の衰えからはじまること、高齢者詐欺被害を知ることからの高齢者のお金の守り方、それらを「親の立場と言い分」、「子の立場と言い分」から、「親のお金 守ります」という目的を果たすための基礎知識的なものをこれから紹介していきたいと思います。(「親のお金 イントロダクション」より)

「親のお金」に関する事情については、それぞれ事情も違えば、「どうすべきか」という方法も違って当然。

だからこそ、さらっと「実用的な読みもの」として読めるようになっているのだそうです。

第1章「『親のお金』マナーと急所」のなかから、「親のお金や財産を守るには何をどれだけすればいいのでしょうか?」という項目を確認してみましょう。

「法定」の制度と「任意」の制度が

高齢の親が悪い人間や集団につけ込まれたり、高額商品を買わされたり、詐欺的な投資にお金をつぎ込んでしまったりというような話はよく聞きます。

とはいえ、子であってもそれを強制的にやめさせることはできないという事情もあるでしょう。また、親の認知機能に衰えが出てきていたとしたら、さらに厄介なことになりそうです。

そこで、「親の財産を守りたい」というニーズに応えるために、いくつかの仕組みが用意されているのだそうです。それは、次の3つ。

(1)法定後見制度(成年後見制度)

(2)任意後見契約

(3)財産管理委任契約 (33ページより)

(1)は、認知機能の低下がかなりの程度で進んでいるとされる場合に用いられるもの。(2)(3)は、まだ親の判断力がしっかりしているうちにとれる対策。

そのことを踏まえたうえで、制度の内容を見てみましょう。

成年後見は法定=法律が定める制度

(1)の「法定後見制度(成年後見制度)」は、家庭裁判所に申し立てて病状や財産状況などをふまえた審判を受け、裁判所が選んだ後見人に対象者(成年被後見人)を保護してもらうもの。

なお、このとき、息子や娘が自分で後見人になるつもりでいたとしても、必ずなれるとは限らないそうです。

裁判所は親族後見人が財産を使い込むことを警戒しているため、弁護士など親族以外の人を指名するケースが多いということ。

すると、その弁護士などに報酬を支払う必要が出てきます(管理にあたる財産額などによるものの、月2~6万円程度はかかるそう)。

また、親の介護や入院で大きな額のお金が必要になったとしても、子の一存では親の貯金などからその費用を引き出すことができなくなるといいます。

なぜなら、親のお金の使い道を決められるのは、他人である担当の後見人だけだから。それが法定後見制度の使い勝手の悪さですが、もちろんメリットもあるそうです。

それは、親が「成年被後見人」になったあと、不利な取引や余計な買い物、損の出る投資や財産を失ってしまうような行為については、後見人が取り消せること。

後見人にはそれほど強い権限があるので、高齢者を狙う悪徳商法に対しては非常に有効な備えになるということです。

ただしそれでも、一度渡してしまったお金はなかなか戻ってこないのが実情。

不動産のように「持って逃げられないもの」の場合は手続きを踏めば取り戻せる可能性が高いものの、金銭のやりとりだけの場合は回収困難なケースが多いというのです。

任意の制度によって親のお金を守りたいという場合は、親が元気なうちから準備をして手続きすることが必要。法定の制度である成年後見人以外の(2)(3)は、すべて保護を受ける当人の了解が必要だといいます。

そのため、親の判断能力がなくなってからでは、これらの対策をとることは不可能。そうしたいと思ったときには手遅れだったということもあり得るわけです。(32ページより)

「任意後見契約」は、親と子のプライベートな後見契約

「任意後見契約」は、後見人をつける点は(1)の法定後見と同じでも、契約段階では家庭裁判所に申し立てて審判を受ける必要はなし。

将来的に後見人となって親の財産の管理をする子(親が信頼する人=受任者)と親(委任者)とが、プライベートな後見契約を結ぶわけです。

任意後見では、後見人になる者を、息子なり娘なり、自分たちで自由に決めることが可能

法定後見のように裁判所が他人を選んで押しつけてくることはないので、後見人に支払う報酬も生じません。しかし、少し面倒な手続きを要求されるそう。

任意後見契約は、必ず公証役場に行って公正証書にしなければなりません(公正証書にしなければ契約の効力が生じません)。

契約を結んだあと、月日がたって親が認知症などにより判断能力を低下させたとき、家庭裁判所に行って後見監督人になる人(任意後見監督人)を選んでもらいます。任意後見制度では後見人になる人を好きに決められるかわりに、「その後見人が不正なことをしないように見張る監督人を必ずつけさせられる」のです。

この後、後見監督人が選任されたときから任意後見契約は効力を生じ、任意後見人が親の財産の管理を始められるようになります。また、後見監督人では支払うべき報酬も生じます(後見監督人は財産管理の仕事をせず見張るだけなので、成年後見の場合の専門職後見人[弁護士など]への支払よりいくらか安いですが、月1万円~3万円程度はかかります)。(37ページより)

気をつけなければならないのは、この任意後見契約によって後見人になった人(任意後見人)は、名は後見人であるものの、法定後見(成年後見)の後見人のように被後見人が結んだ「不利な契約」をあとから取り消せるという強い権限は持たないということだそうです。(36ページより)

取消権がないので防御力も弱い「財産管理委任契約」

(3)「財産管理委任契約」は、親の判断能力が衰えたり身体の自由がきかなくなったりしたときのために、まだ親が元気でいるうちに息子や娘など(受任者)が親(委任者)の財産の管理や処分を任せてもらう契約を親と結ぶことです。

裁判所によって受任者に監督人をつけられることがありません。いつから契約どおりに親の財産管理を始めるかについても、とくに決まりはないのです。

任意後見契約による任意後見人と同じく、この財産管理委託契約の受任者にも、親(委任者)のした契約を取り消す権限はありません。だからこそ悪いやつが親のお金を狙って近づいてきたとき、受任者である子が「自分が財産管理を任されているのだ!」といって相手の前に立ちふさがるのです。

それでも、相手が引き下がらず、なおも親の方に食いこんで契約をしてしまえば、取消権のない受任者にはもうどうしようもありません。ですから、受任者である子としては、成年後見や任意後見をする段階よりも、親の様子によほど注意を払っていく必要があります。(39ページより)

「親を守ってあげたい」という子の覚悟は、こういうときに欠かせないということです。(39ページより)


親子といえども、いや、親子だからなおさら、お金や財産のことは話しにくいもの。なかなか越えることができない、しかし越えなければならない「一線」があるわけです。

そこで本書を参考にして、その一線の越え方、越えた先に見えてくる景色を確認しておきたいものです。

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Photo: 印南敦史

Source: 自由国民社


印南敦史

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