
『心の疲れをとるコツ』(植西 聰 著、WAVE出版)の著者といえば、生きていくうえでのさまざまなメソッドをわかりやすく伝える「コツ」シリーズでおなじみ。
新刊である本書では、タイトルにあるとおり「心の疲れ」をとり去って心に元気をとり戻すコツをまとめています。
「心が疲れている人」は、いろいろな意味で無理をしているのではないかと思います。 がんばりすぎたり、能力以上に背伸びをしすぎたり、人から好かれようと無理をしたりしているのでしょう。 そのような「無理」が、心が疲れるもっとも大きな要因ではないでしょうか。
言い換えれば、ありのままの自分、ありのままの現状を受け入れて、自分らしく、のびのびと生きていくことが、心に疲れをためない大切なコツになると思います。(「はじめに」より)
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第1章「人間関係でぐったりした心の疲れをとる」に焦点を当ててみたいと思います。
やるべきことに集中しよう
職場では、人間関係のちょっとしたすれ違いなどで心を乱されることがよくあるものです。
たとえば、上司から叱られたり、嫌味を言われたりして、落ち込んでしまうというようなことも少なくないでしょう。
自分の提案事項に対して同僚からストレートに反対意見を言われ、悔しい気持ちになってしまうというようなことも考えられます。
あるいは部下や後輩が、自分が頼んでいたことをちゃんとやってくれていないことを知った結果、腹立たしい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
しかし、そのような落ち込み、悔しさ、怒りなどの感情には、できるだけ振り回されないほうがいいと著者は記しています。
なぜなら、ネガティブな感情ほど心をクタクタに疲弊させてしまうものはないから。
そして、このようなケースにおいて心を疲れさせないコツは、とにかく「他人のことに気をとられるのではなく、いまやるべき自分の仕事に集中する」ことだといいます。
禅に、「而今(にこん)」と言う言葉があります。 この言葉は、わかりやすくいえば「ただ今があるのみだ」という意味です。
言い換えれば、「他人のことに意識を奪われて心を惑わされるのではなく、今、自分がやるべきことに集中することが大切だ」ということです。
それが平常心を保っていくコツであり、また、心によけいな疲労感をため込まないコツでもあるのです。(21ページより)
つまり心を疲れさせないためには、人間関係に煩わされることなく、「いま、自分がやるべきこと」だけを考え、それに専念すべきだということです。(20ページより)
相手の落ち度を許そう
家族との人間関係のトラブルで心を消耗させてしまう人は、多くの場合、相手の落ち度を指摘して腹を立てているものです。
しかし相手の落ち度に腹を立ててばかりいても、ただ自分の心が疲れていくだけのこと。それどころか、やがて家族との関係がギクシャクしていく可能性も出てくるでしょう。
そうならないために大切なのは、「相手の落ち度に怒る」のではなく、「相手の落ち度を許す」という意識を持つことが大切です。
相手を許すことで、自分自身の心が癒され、安らぐからです。(23ページより)
腹立たしく思っている相手を許す心を持つために必要なのは、発想の転換。
たとえばパートナーに対して不満を抱いているというような場合は、次のように考えてみるといいそうです。
「あの人は、私たち家族の幸せを思って、がんばって仕事をしている。その仕事のために、約束を守れないこともあるのだろう。いずれにしても、あの人が家族を一番愛していることには間違いはないのだから、許してあげよう」
こうして見方を少し変えてみることによって、それまでとは違った発想で考えられるようになるということ。
そうすれば、腹立たしく思っていた相手を許すことも可能になるというわけです。
また、許したあとの安らいだ気持ちを味わうこともできるため、心の疲れも癒されていくはず。
なお、ここでは家族の人間関係について語られていますが、仕事上の人間関係についても、同じことがいえるのではないでしょうか。(22ページより)
SNSと自分を「隔離」する時間をつくる
SNSなど、スマートフォンを利用したコミュニティ型の交流機能はとても便利。また楽しくもありますが、精神的に強い疲労感を覚えてしまう人もいるはずです。
それは、たくさんの人たちから、スマートフォンにひんぱんに連絡が入るから。著者はそう指摘しています。
性格的にやさしく、人間関係を大切にしている人ほど、「すぐに返信しなければならない」という義務感にかられてしまう傾向があるということ。
さほど重要な要件ではなかったとしても、「すぐに返信しないと、相手に悪い」と考えてしまったり、あるいは「すぐに返信しないと、相手から嫌われてしまう」と焦ってしまう人もいるわけです。
しかしそうなると、電車に乗っているときも、食事をしている間にも、自宅で静かに休息しているときにさえ、ずっとスマートフォンで返信をしていなければならなくなります。
その結果、精神的に疲れ切ってしまうことに。
このようなSNSでの精神的な疲労をとるためには、たとえば、「夜の十時以降は、SNSをしない」といったルールを自分なりにつくっておくのがよいと思います。
あるいは、「SNSで友人と連絡し合うのは、休日の日中だけにして、平日にはSNSはしない」といったルールをつくってもいいと思います。(27ページより)
そうした「SNSをしない時間」を、それまで心にたまった疲れをとり、心を癒すための時間として活用すべきだという考え方です。(26ページより)
従来のシリーズ同様、今回もわかりやすく平易な内容。
肩の力を抜いて読み進めることができるので、心が疲れているなと感じている人は手にとってみてはいかがでしょうか?
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Photo: 印南敦史
Source: WAVE出版
印南敦史
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