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人には「気持ちの動線」がある。伝わるコミュニケーションの特効薬

人には「気持ちの動線」がある。伝わるコミュニケーションの特効薬
Photo: 印南敦史

「伝える」ことは、なかなか難しいもの。自分ではうまく伝えたつもりでも、実は伝わっていなかったということも、決して珍しくはありません。

そこで参考にしたいのが、『「伝えたつもり」をなくす本』(中山マコト 著、総合法令出版)。

著者は長きにわたり、企画、リサーチ、コピーライティング、販売促進など、広告の世界で仕事をしてきた人物。つまり、それらはすべて「伝える仕事」だということになります。

そこで本書では、著者が長年にわたって携わってきた「伝える仕事」を通して得た「“伝えたつもり”のなくし方」を公開しているわけです。

ビジネスだけでなく、普段の生活も、すべて伝えることを基本に成り立っています。

(中略) 人間同士のあらゆる関係は伝えようとすることで成り立つし、その伝え方が上手なほど、そこには良質な血液が流れ、良い結果を生みだしたり、良い関係を築くことができるわけです。それができなければ、すべて“つもり”で終わってしまうのです。(「はじめに」より)

“つもり”で終わらないようにするために多くの実例や事例を盛り込んだという本書の第2章「伝え上手が必ず使っている、25の伝わる特効薬」のなかから、いくつかを抜き出してみたいと思います。

パワーキーワードを盛り込む

相手が気にしたり、気になるようなことばを盛り込むことはとても重要。

そして、このことに関連し、著者はマーケティング・コンサルタントのハリー・ベックウィスが書いた本のなかから次のフレーズを引用しています。

「話す言葉ひとつひとつに意味をもたせ、粒ぞろいの言葉を使うこと。話していることに内容がないと分かるやいなや、人はそれから先を聞こうとはしない。」 (『「買いたい心」に火をつけろ!』ハリー・ベックウィス著 ダイヤモンド社刊)(42ページより)

意識して、相手が気になることば、身につまされることば、関心のあることばを使うと強いということ。

また、普段の会話には出てこないような強いことばを使うことも効果的だとか。たとえばその例として、著者はピエール・カルダンの広告コピーを紹介しています。

「敵が多い。だから私は幸せだ。」 (ピエール・カルダン広告)

(44ページより)

「敵」という、広告ではあまり使われないことばを使うことで、見る人の関心を引き寄せているわけです。

このように、あえて普段は使わないだろうということばを見つけて使ってみれば、人の心が大きく動く瞬間に立ち会えるだろうと著者は記しています。(42ページより)

話す順番に気をつかう

「伝える」際、順番・順序はとても重要。なぜなら人には「聞きたい順番=気持ちの動線」があるものだから。

したがって、その聞きたいことが相手の口からなかなか出てこなかったりすると、じらされているように感じるものだというのです。

するとイライタラしてきて、ストレスがたまることにもなるかもしれません。しかし、そんな状態で良質なコミュニケーションがとれるはずもありません。

あなたが語る商品のポイントは価格だとしましょう。たとえば、ダイソンの掃除機を思い浮かべてください。 ダイソンの掃除機が出た当時、かなり高めの価格設定でした。しかし、ダイソンの掃除機は価格の高さを補って余りあるくらい性能が秀でていました。それまでの日本製がまったく持っていなかった凄みを持っていたのです。

つまり、凄い商品です。 この場合、価格を先に言うべきなのです。 「この掃除機は○万円です」と価格をズバリ言って、その上で「でもこんなに高性能! 国産品にはない素晴らしい性能が備わっているよ!」と言わなくてはいけないのです。(46~47ページより)

しかし性能の話を先にして、期待値を上げに上げたうえで最後に金額を言ったとすると、「ここまで期待させておいてこんな値段! 買えるわけないだろ!」となってしまう可能性があるということ。

不信感を抱かせることになってしまうかもしれないわけです。

そのため、こうした「価格が高いけれども圧倒的に高性能」な製品の場合は、価格を最初に伝え、そのうえで期待値を超える実力を示したほうがよいということです。

すなわちそれが、「順番にこだわる」ということの意味だということ。

なお、逆に性能はそれなりでも、価格が驚くほど安かったりする場合もあるでしょう。そんな場合も、価格を最初に伝えたほうがインパクトがあるそうです。

たとえば、100円ショップで扱われている商品などがそれ。「性能はちゃんとしているのに、こんな値段で買えるのか!」と驚きを与えることができるわけです。(46ページより)

物語で引き込む

伝える際、「物語」を使うことはとても有効。理由は、人は物語に包まれて育つものだから。

生まれた直後から物語を読み聞かせられて育つなど、いつも物語がそばにあるということです。

物語の強みは主人公になれることです。自分自身を主人公に置き換え、なぞらえ、“化体(けたい)”させることができる。だからのめり込むのです。

あなたにも経験があると思います。物語は、他人事ではなく、自分のこととして捉えてもらいやすいのです。(56ページより)

そして物語の持つ最大の強みは、「人は物語を最後まで聞きたくなるようにできている」こと

物語は最後まで行かないと納得できないものだからこそ、最後まで聞こうとしてしまうというのです。だからこそ、自分の物語を語るべきだという考え方。

といっても、たいしたことでなくても問題なし。ちょっとした物語を語るだけで、相手の気持ちは前のめりになるそうです。

どうにも物語がないという場合は、知り合いや家族、友人、お客さんのなかにある物語でもOK。「知り合いの○○さんがこんな不思議な体験をしたんだけど、その実態はこうだった」というような話でもよいということ。

いずれにしても物語を交えるだけで、話を聞いてもらえる確率は格段に上がるそうです。(56ページより)


すぐに仕える多くのアイデアがコンパクトにまとめられているため、実用性の高い一冊。

どこから読んでも理解できるので大きな利用価値がありそうです。

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印南敦史

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