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子育ての不安を解消。92歳・現役保育士による「自分で考える子」の育て方

子育ての不安を解消。92歳・現役保育士による「自分で考える子」の育て方
Photo: 印南敦史

92歳の現役保育士が伝えたい親子で幸せになる子育て』(大川繁子 著、実務教育出版)の著者は、タイトルにもあるとおり、昭和2年(1927)生まれの92歳。

栃木県足利市小俣町にある私立保育園「小俣幼児生活団」の主任保育士として、子どもと接し続けているそうです。

ちなみに創立70年だという同園は、モンテッソーリ教育やアドラー心理学を取り入れた保育で有名。

卒園するときには、自分のやりたいことに没頭し、自分の頭で考え、自分の能力を発揮できる力(自由に生きる力)と、それに伴う責任を持てる子になってほしいと考え、それを日々の保育の方針にしているのだといいます(余談ですが、同園のフェイスブックページを見てみれば、その独自性がよくわかります)。

ざっくりとした説明ですが、モンテッソーリ教育は障害者教育がルーツの、「自立した人間」を育てるための教育法(またはその考え方)です。子どもがすべきことを、大人が一方的に決めたりしない。むやみに手や口を出したりしないよう気をつけます。子どもが持つ能力を引き出すため、あくまでサポート役(援助)に徹するのです。

そんな同園の保育方針に基づき、本書では子育て中のお母さん、お父さんに送りたいヒントを「自由に生きる力の育て方」「コミュニケーション」「幸せを育む発達の三角形」「お父さん、お母さんからの相談・質問」「女性の人生」という5つのテーマに沿ってまとめているのだといいます。

きょうはそのなかから、「お父さん、お母さんからの相談・質問」が紹介されている第4章「2800人を見てきた私の『子育てのコツ』から、2つの相談と答えをピックアップしてみたいと思います。

相談 集中力がないし、静かにしなきゃいけない場所で騒いでしまいます

→ゲームにして乗せてみて。楽しみながら集中してもらいましょう

小俣幼児生活団で週に一度行われているリトミック(音楽を用いた教育)の時間には、子どもたちがソワソワと落ち着きがないことがあるそうです。

意識がてんでばらばらに向かっていて、集中していないというのです。

そんなとき、私が使うのが太鼓です。 はじめに「太鼓が鳴ったらパッと立ちましょう」と言って、ドンと鳴らす。

すると、子どもたちはザワザワしながらおもしろがって立ち上がる。「もう一度鳴ったら座りましょう」と言って、ドンと鳴らす。子どもたちは音に集中しはじめます。(163ページより)

そしてドン、ドン、ドンと鳴らし、立ったり座ったり。何回目かで寸止めして「鳴っていないから動かないよ」というと、子どもたちはさらにおもしろがって集中することに。

こうしたやり取りを繰り返し、子どもの集中力が高まったらリトミックに入るというのです。

最初にみんな集中しているので、リトミック中もずっと心地よい緊張感(音の聴き方が敏感になるのだとか)が続くわけです。

そんなとき、「こっちを見なさい!」「静かにしなさい!」などと声を荒げて命令すると、せっかくのお楽しみの時間にいやな空気が漂ってしまいます。

しかし、こんなふうに「どうにかしてゲームにできないかな」と考えてみると、ふざけがちな子も「自分から」注目してくれるというのです。

いわれて従うのではなく、「静かにして先生を見よう」と、本人が決めるということ。

子どもは、命令すれば反発するけれども、遊びにすれば乗ってくれるもの。そこで、どうすれば自分から動くように導けるかを考えることも保育士の仕事なのだと著者は記しています。

でも、それは保育士に限った話ではなく、親御さんにも応用できることではないでしょうか?(163ページより)

相談 うちの子、成長がゆっくりなんです/おとなしすぎるんです/乱暴なんです

→成長も個性も十人十色。しかも、どんどん変化していきます

「うちの子は、まわりの子よりもずいぶん小さい」 「あの子はあんなにおしゃべりが上手なのに、うちの子はまだ単語だけ」 「またお友だちのおもちゃを取ってしまった」

などなど、子育てをしていると心配は尽きません。

しかし、子どもの個性は十人十色。みんな同じような振る舞いをしないのも、同じスピードで成長しないのも、当たり前だということです。

ひとりふたりの「わが子」だけを見ていると気づきにくいものだけど、園のような場で、しかも2800人もの子を見てきた私にはよくわかります。

そして、子育てのさなかにいると実感はむずかしいかもしれないけれど、子どもはずーっと同じところに留まるわけじゃないの。

できることが増えるだけではなくて、たとえば性格、キャラクターだって変わっていく。 だから、いまの子どもの姿だけを見てあまり心配するのも、なんだかもったいないかなと思います。(167ページより)

たとえば子どもたちの「社会」では、3歳くらいになるとたいてい「ボス」が生まれます。

身体が大きかったり、弁が立ったり、力が強かったりと「成長の早い子」が、その座におさまりやすいわけです。

そして、張り合おうとする子、おとなしくいうことを聞く子、スーッと逃げていく子など、ボスに対する対応も、子どもによってさまざま。

いわば大人と同じように、いろいろな人が集まって社会をつくっているということです。

けれど5歳くらいになると、ほかの子も育ってきます。

成長の差が縮まり、身体は小さいけれど、もっと弁の立つ子が現れたり、絵がうまくて器用な子が目立ってきたり、おとなしかった子が「やめてよ」と主張するようになったりしたり、みんなが追いついてくるのでボスの立場が相対的に弱くなる。

そして、卒園するころにはわかりやすいボスがいなくなったりもするのだそうです。

成長して、変わっていく。それが子どもです。 乱暴ものだったのが、きちんとした子になる。 控えめだったのが、リーダータイプになる。

幼少期は食べなくて、小さくて、おっとりで、お母さんがハラハラしていたけれど、結局180センチ以上の勇猛なラガーマンになった、なんて子もいます。(168ページより)

「この子はこんな性質かな」と思っても、本当に予測できず、わからないものだということ。

いってみれば、いまこの瞬間だけを見て、「この子は大丈夫かな…」と深刻になったとしても、将来はわからないわけです。

経験的にそう感じるからこそ、著者は「『その子なり』の成長がありますから、月ネミですが、長い目で見守りましょう」と主張するのです。(166ページより)


私生活においても男の子を3人育てたという著者は、すべて手探りで、失敗だらけだったと当時を振り返っています。

しかし、そうした後悔があるからこそ、多くの親御さんの気持ちに寄り添えると思ってもいるのだそうです。

正解がないだけに、子育ては不安の連続。だからこそ本書を通じ、人生の大先輩の考え方を学んでみるべきかもしれません。

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印南敦史

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