特集
カテゴリー
タグ
メディア

書評

人は死んだらどうなる? グローバルエリートのスキルとしての「宗教」

人は死んだらどうなる? グローバルエリートのスキルとしての「宗教」
Photo: 印南敦史

教養とは、世界で活躍するためのパスポートのようなもの。それがないと人の輪には入れないため、とても重要。

そう主張するのは、元外交官という肩書を持つ『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(山中俊之 著、ダイヤモンド社)の著者です。

だとすれば、どうすれば教養を身につけることができるのでしょうか? この問いに対して著者は、「宗教こそが教養の大きな土台のひとつ」だと記しています。

世界の様々な社会、人の立場になって考え行動するには、その社会の歴史や文化、価値観を知ることが極めて大切になります。これは海外で成功した人、海外赴任で責任ある立場にあった人であれば誰でも同意していただけるでしょう。

この歴史、文化、価値観の基底にあるのが宗教であり、世界レベルの教養を身につける近道なのです。(「Prologue」より)

とはいえ宗教は奥深く、そのすべてを理解することは現実的に困難でもあります。

そこで本書ではビジネスの視点から、5大宗教について「ここだけは押さえておきたい」という必須知識を紹介しているわけです。

きょうは第1章「日本のビジネスパーソンだけが知らない! 世界5大宗教の基礎知識」のなかから、宗教を理解するにあたっての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。

グローバルエリートが宗教を学ぶ理由

欧米人とつきあう際などには、「政治と宗教の話をしてはいけない」といわれることがあります。

著者はこの問題について、「このマナーは、半分正しいけれど、半分間違っている」と考えているのだとか。

もちろん政治でも宗教でも、自分の支持する政党や自分の信じている宗教について、一方的に語ることはタブー。

たとえ悪気がなかったとしても、支持政党や宗教に関する主張が相手の信じるものと違っていたとしたら、結果的に相手を批判することになるからです。

とくに宗教は、人の心の根底にある価値観と深く関わっているもの。相手の根本的な価値観に対し、ネガティブに聞こえるような言葉を投げかけたとしたら、関係が壊れてしまうことも考えられます

それほど繊細なトピックだからこそ、「触れないほうが無難」という意味で、「政治と宗教の話をしてはいけない」というのは“半分正しい”のです。

とはいえ政治や宗教の話をいっさい排除してしまうと、表面的な薄い会話になってしまうのもまた事実。

たとえばカトリック教徒はボランティア活動などの善行をたいへん重視していますが、単に「偉いですね」「立派ですね」と表層的に話を終わらせてしまったとしたら、それから先の話があまり続かなくなってしまう可能性があるということ。

しかし、その背後に根ざす宗教的価値観を知っていた場合、もっと話が弾み、信頼関係が築けるわけです。(38ページより)

「ブリッジする会話」でグローバルリテラシーを高める

もちろん、どのような会話をして相手とつき合うべきかは、職業やシチュエーションによっても変わってくるでしょう。

しかし著者は、原則的には「ブリッジする会話」が重要だと考えているのだそうです。

「ブリッジする会話」とは、文字通り自分と相手に橋をかけること。具体的には相手の国や社会、人の価値観を踏まえた上でその長所について話す。あるいは、相手の国や文化と自分の何らかの関係について述べるということです。

たとえば、相手が演劇好きならイギリス人と話すときにはシェイクスピアを、フランス人と話すときにはモリエールを話題にすれば、「ブリッジする会話」になります。(40ページより)

つまり大切なのは、たとえつけ焼き刃といわれようとも、相手の国の歴史や文化、宗教、言語などについて最低限の正確な知識を持ち、相手の価値観に合わせて会話をブリッジすること。

それは、今後のビジネスエリートにとって不可欠の素養だというのです。

なお著者は、このように世界のさまざまな社会や人々の思考、価値観を理解し、ブリッジする会話をベースに関係を構築していく能力を「グローバルリテラシー」と呼んでいるのだそうです。

それは、教養をもとに共感力を高めていく能力。(40ページより)

なぜ宗教が生まれたのか?

ところで、教養の土台であり、価値観を形成する宗教は、なぜ生まれたのでしょうか?

大学や専門家から学び、多くの文献で得た知識に著者の個人的な見解を加えると、次の3つの仮説が考えられるそうです。

1 死んだらどうなるのかを知りたい

2 宇宙の存在意義など、人智を超えたものの本質を理解したい

3 大きな集団を統合する必要がある

(43ページより)

複数の文献によれば、10万年前にはすでに死者を弔う儀式があったのだといいます。

NHKスペシャルの「人類誕生」では、ネアンデルタール人にホモ・サピエンスが勝った理由の一つに、宗教があるとしていました。親兄弟という血縁だけの小さな集団ならば、共に暮らしているなかでの共通理解でグループはまとまります。

しかし、小さな集団がやがて大きな集団になっていくと、ルールや価値観を共有するためのストーリーが必要になってくる。

そして、そのストーリーこそが宗教であり、私たちの祖先であるホモ・サピエンスが持っていたものだ……。こんな内容でした。(43ページより)

たしかに宗教は、社会全体のルール・価値観のすべてではないものの、いまだに大きな要素。そして、そこにはストーリーが存在します。

たとえば私たちには、「一週間」という世界共通のルールがあります。

しかし、これはもともと宗教がつくったストーリーであり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では「6日間かけて天地を創造した神は、最後の1日を安息日とした」とされています。

つまり、もしも宗教がなかったら、「1週間の7日のうち1日が休日」といった概念は存在しなかったわけです。

同じく、人を「騙さない」「傷つけない」ことも世界共通のルール

もしも宗教によるストーリーがなければ、弱そうな人を襲って金品を奪う行為すら、「日々の糧を得るためのルール」としていまだに成立していた可能性があるというのです。

ちょうど、サバンナで生き残る動物たちのように。

極論のようにも思えますが、もし宗教がなければ、いま私たちが当然と考えているルールや価値観がなかったかもしれないということです。

だとすればたしかに、こうした考え方が宗教を理解するうえでの重要なポイントになってきそうではあります。(42ページより)


こうした基本的な考え方を踏まえたうえで、以後の章では、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教・仏教、日本の宗教、さらには科学・政治経済と宗教との関わりなどについても解説されます。

つまり、聞くに聞けない宗教の疑問を解くには最適な内容。ビジネスを円滑に進めるためにも、本書を通じてぜひ知識を蓄えておきたいところです。

あわせて読みたい

「掃除」を通じて、競争心・虚栄心を捨て現実に向き合うトレーニング

平成の終わりに知っておきたい、「天皇陛下の仕事」と「皇室のお金」について

Photo: 印南敦史

Source: ダイヤモンド社

印南敦史

swiper-button-prev
swiper-button-next