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ビジネスで説得力を上げるエビデンスの集め方

ビジネスで説得力を上げるエビデンスの集め方

わからないことがあれば、手軽にインターネットで検索できる便利な時代。

みなさんも、日常のちょっとした疑問や、仕事のプレゼンに参考となる資料を検索したりしていることでしょう。

特に、プレゼン用のスライドに添付する資料やグラフなど、いわゆる「エビデンス」と呼ばれるものの質が、結果を左右すると言っても過言ではありません。

エビデンスを集めるために、インターネット検索を利用している方も多いことと思います。

欲しい情報がすぐに手に入るのはとてもいいことですが、問題もあります。

それは、インターネットの情報には「ウソ」も紛れているということ。

いわゆる「フェイクニュース」を信用してしまうと、後々たいへんなことになりかねません。

そこで、『一発OK! をもらえる人の エビデンス仕事術』の著者である光成章さんに、フェイクニュースが氾濫するこの時代に、どうやって信憑性の高い情報を入手すればよいのか、お話を伺いました。

「エビデンス」って何?

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『一発OK! をもらえる人の エビデンス仕事術』の著者、光成章さん

そもそも「エビデンス」とは、どういうものなのでしょうか。

そのまま日本語に訳せば「証拠」「根拠」といった意味になります。光成さんは、わかりやすく「使える情報」と言っているとのこと。

「情報には“使える情報”と“使えない情報”があります。ここでいう“使える情報”は、あなたの意思決定を助け、後押ししてくれるための材料となり得るものです。ただ、常に前に進むだけではなく、撤退という英断を下す場合もあります。いずれにしても、意思決定をスムーズにしてくれるのがエビデンスです」(光成さん)

目の前に2つの道があって、どちらに進んでいいかわからないという場合、過去にいずれかの道を通ったことがある人に話を聞いたり、地図を見たりすることで情報を集めます。その情報が「エビデンス」です。

そのエビデンスを元に、あなたはどちらの道に進むのか、または来た道を戻るのかを意思決定するわけです。

理想的には、エビデンスは100%集めたいもの。しかし、スピードが重視されるビジネスの現場などでは、完璧なエビデンスを用意するのは難しいことも。

そのようなときは、7割、8割の確率で「行けそうだ」と感じられるところまで集め、行動に移すのが現代のエビデンス活用術です。

「エビデンスは、成功確率を上げる、または失敗の確率を下げるために活用されるもの。自分が意思決定者の場合は、エビデンスにより納得して決定ができます。自分が提案者の場合には、相手を説得することができます」(光成さん)

迷って立ち止まったとき、行く先を決めるための材料。それがエビデンスなのです。

効率のよいエビデンスの集め方

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著書の中では論文検索の効果的な活用法も紹介されている
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では、エビデンスはどのように収集するのがいいのでしょうか。光成さんは著書のなかで次のような手順を示しています。

<エビデンスを集める手順>

手順1.どんなエビデンスが必要かを検討する

手順2.インターネットで信頼できる情報を下調べする(二次情報の収集)

手順3.インタビューやアンケートを行う(一次情報の収集)

「手順1」では、どんなエビデンスが必要なのかを洗い出していきます。商品やサービス開発の場合ならば、市場にある課題やターゲット層などを明確にしていきます

するとどのようなデータが必要か、どのような人に話を聞けばいいのかということがわかってきます。

「手順2」では、インターネットを使って基本的なことを調べます

しかし、インターネットの情報は玉石混淆。信用できる情報ばかりではありません。なかにはまったくのウソやデマもあります。

そのようなとき、光成さんは「論文検索」や「国会図書館データベース」、そして官公庁発表の資料などを利用するそうです。

「インターネットで情報収集をする場合は、論文検索や国会図書館のデータベース、官公庁のWebサイトなどを利用します。要は権威に頼るということ。きちんとした機関から発行されていたり、高名な教授が査読していると思われる論文ならば、信頼できるだろうということです」(光成さん)

また、内容の真偽よりも、書かれているテーマと著者に注目することが重要。

同様のテーマの論文や記事が多ければ、それが流行しているということがわかりますし、テーマごとに著者をリストアップしておけば、さらに詳しい話を聞きに行くときの参考になります。

「手順3」では、手順2で得た情報を元に専門家へインタビューを行い、さらに一歩進んだ話を聞いたり、試作品を触ってもらって感想や意見を聞きます。

また、一般消費者のなかからターゲットユーザーとなり得る人を対象にアンケートを行い、市場の生の声を収集します。

「一番大事なことは、誰に聞くかということ。その分野の専門家に聞く、ターゲットユーザーに聞く。誰に聞くかということさえ間違えなければ、聞き方が下手でも正しい答えが返ってきます」(光成さん)

ターゲットユーザーをしっかりと見定め、それに該当する人を探し出して話を聞く。これがエビデンスを集める際にはとても重要。そのためにも、手順1と手順2をしっかり行わなければならないのです。

足で稼ぐ情報も重要視するわけ

これだけインターネットで情報が溢れている時代でも、光成さんはインタビューなどの「足で稼ぐ」情報が重要だと考えています。それはなぜでしょうか?

「もし、世の中にない新しい製品やサービスを開発したのなら、インターネットなどの二次情報には欲しい情報はないはずです。今までなかったものを理解してもらうには、試作品を実際に触ってもらわないと、正しい評価は得られません。なので最終的には一次情報が必要になるのです」(光成さん)

インターネットや論文検索などで、あなたが思いついた製品やサービスの情報があった場合、二番煎じということになります。実はこれもエビデンス。

このエビデンスを元に、開発をストップするという決断をすることも可能です。

「エビデンスが不足している」と感じるのは準備不足が原因

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新製品やサービスのエビデンスを収集している段階で、どうも思ったようなエビデンスが集まらないということもあり得ます。

具体的には、「こんな製品(サービス)はいらない・使わない」といった答えばかりになってしまうというような場合です。

市場リサーチなどでは、まず仮説を用意して情報収集にあたります。しかし、用意した仮説や試作品などの評価が悪く、その製品やサービスが売れそうもないということがわかってしまうことも。

では、それはエビデンスとしては不十分なのでしょうか。

答えは「No」です。仮説とは異なる結果が出たとしても、そのときに「なぜ評価されないのか」ということをしっかりと取材しておけば、「開発をストップする」「修正を加えて進める」といった次の手が打てるようになります。

要は、どれだけ具体的なものを用意しておくかということが重要です。

「仮説、試作品、プロトタイプなどは、できるだけ具体的に用意すべきです。それが不十分だと、調査協力者も“よくわからない”“いいような気がする”といった程度しか答えられません。これでは、次にどうしていいかわからないので“エビデンス不足”となってしまいます」(光成さん)

具体的なものが提示されれば、調査協力者も「ここをこうすればいい」「これは不要」「この機能が欲しい」といった具体的な答えがしやすくなります。

そのような答えは十分なエビデンスとなり、意思決定の参考になるのです。

ビジネスで気をつけたいフェイクニュース対策

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インターネットの普及に伴い、増えてきたのがフェイクニュースです。

主に政治や社会問題などに関するものが多く見受けられますが、ビジネスシーンに影響を及ぼすようなフェイクニュースもあるのでしょうか。

光成さんは「噂話レベルのことをそのまま信用してしまうと、ビジネスシーンでも影響があり得ます」と語ります。

「ビジネスシーンにおいては、上司から“こんな噂があるから出所を調べてくれ”“この噂の真偽を確かめてくれ”と言われて、調べるということがあると思われます。そのときに、きちんと調べる習慣を付けていれば、間違いを犯すことは少ないでしょう。ただし、最近ではスピードが重視されすぎる傾向があるので、できるだけ慎重に行いましょう。マスコミですら、失敗することがあるようなので」(光成さん)

また、リサーチの世界では「Perceived Fact」という言葉があります。

これは「認識されている事実」という意味。真実というより、その人が信じている事実のことを指します。

ビジネスシーンにおいては、そこから始める必要があります。

つまり、消費者は間違った事実を信じ込んでいる場合があるので、その誤解を解くところから始めなければならないということです。

たとえば、一昔前は「運動中は水を飲んではいけない」というのが常識でしたが、今ではこまめな水分補給が常識になっています。

しかし、昔の情報をインプットしそれをアップデートしていない人にとっては、「運動中の水分補給」はフェイクニュースということになります。

逆に、今の状況を理解している人にとっては、「運動中の水分禁止」がフェイクニュースになります。

フェイクニュースは、誤認識させるために意図的に拡散されるものですが、「認識のずれ」が原因になるケースもあるのです。

「リサーチの語源は、“re”+“search”です。“re”は繰り返し、“search”は検索や探索という意味です。つまり、繰り返し探索するということ。5年や10年といった長期プロジェクトの場合、最初に調査をしますが、その調査結果をそのまま5年後にも使っていると、情報が古くなっていて信用できなくなってきます。情報は常にアップデートしていかなければなりません。それを怠っていると、世の中の常識が変わり、結果的にフェイクニュースになってしまうという可能性もあります」(光成さん)

エビデンスも含め、情報というのは時間とともにその意味が変わってしまうもの。そう認識して、こまめなリサーチが重要なようです。

情報の確認は発信するときに行う

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今は、主要な情報源がインターネットという人も増えています。

特にネットニュースは、瞬時に拡散しやすいため、フェイクニュースも瞬く間に広がり、あたかも本当のことのように認識されてしまうことも。

しかし一般の人にとって、どれが本当のことでどれがフェイクニュースなのかを見極めるのは難しいですし、目にとまった情報をすべて調べるのも不可能なこと。

いったいどうしたらいいのでしょうか。

光成さんによれば「自分から情報発信をするときに確認をするのがいい」とのこと。

「私は昨年、54歳で独立しました。54歳というのは、サザエさんに出てくる磯野波平さんと同じ歳なんです。そのことを講演会で話すときのために、サザエさんの公式サイトで確認をしました。確かに波平さんは54歳でした。これは公式サイトで確認をしたので、公式な情報としていいと思います」(光成さん)

一方で、サザエさん一家の学歴については、自分から話さないそうです。

「マスオさんが早稲田大学出身で、フネさんが日本女子大学出身という情報を聞いたことがあるのですが、公式サイトには載っていないんです。一般的にはそのような話があるのは知っているのですが、公式な情報が得られないため、私の口からマスオさんやフネさんの出身大学について話すことはありません」(光成さん)

日常会話において、毎回自分が話す内容を確認するのはかなり面倒なこと。

実際はそこまでする必要はないのかもしれませんが、インターネットや新聞雑誌テレビラジオなどで見聞きした情報をそのまま鵜呑みにせず、気になったら確認しておく癖を付けておき、不確かな情報は自分からは口にしないというのがいいようです。

エビデンスが日常生活で役立つシーン

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これまで、ビジネスシーンをメインに「エビデンス」についてお話を伺ってきましたが、ビジネス以外の日常生活でも「エビデンス」は役立つのでしょうか。

答えは「Yes」。

実は、無意識のうちに我々もエビデンスを集めて意思決定をしているのです。

「たとえば掃除機を買い換えようというときに、インターネットの口コミサイトや家電量販店の店員、近所の方や家族に話を聞くことがありますよね。特に、誰かに聞く場合には信頼の置ける人に聞くことが多いと思います。これも一種のエビデンスですよね」(光成さん)

よく考えてみれば、スマートフォンを買い換えるときには、買い換え候補の機種を使っている人に使い心地を聞いたり、店頭で触ってみたりしますし、イヤホンでもノートPCでもデジカメでも、同じようなことをしています。

また家族がいる方ならば、新しいデジカメを買うときに、いかに自分にとって必要か、このデジカメを買うことでどんないいことがあるのか、ということをプレゼンしたという経験がある方もいるのではないでしょうか。

そのときに、いろいろな情報を収集して、欲しいデジカメのいいところをピックアップして伝えたりしていることでしょう。

実は日常生活でも、エビデンスを活用しているのですね。

ビジネスでも日常でもエビデンスは重要

光成さんにお話を伺って、エビデンスがいかに重要なものなのかが理解できたことでしょう。

いくらやりたいことがあっても、自分の理想と熱意だけでは、上司を説得できないことも。

市場性、事業性、独自性が揃って、初めて許可が出るというのがビジネスの世界です。

この3つが確実であるという裏付けのために、エビデンスが必要になるのです。

これまで、どうも自分の企画が通らない、途中で頓挫してしまうというビジネスパーソンは、一度エビデンスを見直してみてはいかがでしょう。

効果的な情報収集を行い、信頼性の高いエビデンスを確保すれば、今までよりもスムーズにビジネスができるようになるはずです。

光成章(みつなり・あきら)

profile

リサーチャー、講師、文筆家。

ジャートム株式会社 代表取締役。福井県出身。早稲田大学卒業。 市場調査会社にて数々の依頼調査に携わり、その後、ブランド側でリサーチとカスタマーリレーションの担当責任者を歴任。顧客の深層心理に迫る質問の組み立てを得意とする。ふくいブランド大使。福井市応援隊所属。


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Image: 香川博人, Shutterstock.com(1, 2, 3, 4, 5

Source: SB Creative

三浦一紀

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