謝罪のプロが伝授: 謝罪から一転、信頼回復・取引拡大につなげる極意
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外部と連絡・交渉する仕事である「渉外」にあたるビジネスパーソンには、避けてとおれない「謝罪」。顧客からのクレームへの対応は、数ある業務の中で最も辛いものでしょう。
謝罪の仕方を間違えれば、火に油を注いで関係が断絶するリスクもはらんでいます。ですが、うまく運べば、より顧客から信頼され、取引を拡大するチャンスになります。
今回は、謝罪から一転、信頼回復・取引拡大へとつなげる極意を、6月に刊行された『謝罪の極意:頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド』(越川慎司 著、小学館)より紹介します。
問題発生から2時間以内の「初動」が重要
著者の越川慎司さんは、働き方改革を支援する企業を立ち上げる前は、マイクロソフト日本法人のCQO(最高品質責任者)として、数々の謝罪場面の矢面に立ってきたそうです。
謝罪の回数は実に585回。ボールペンを投げつけられたり、靴を隠されたりなどの極限状況を乗り越えて売上増を果たした、まさに謝罪の達人。
その越川さんが力説するのは「初動が肝心」。問題が発生してから2時間以内の対応が、極めて重要なのだそうです。
その2時間のうちに、顧客に対して対処法の提案や解決見込みの連絡をとらないといけません。
例えば、食品メーカーで商品に何かしらの不具合があったとします。
消費者がその商品を口にしてしまったという状況では、大量の水を飲んで体内で薄めたほうがいいのか、それとも強引に嘔吐したほうがいいのか、といった対処の仕方を提案する必要があります。
(57ページより)
同時に、社内の関係部署とも調整をとります。この時注意したいのが、社内での対立。
スタッフ同士の愚痴や批判が、建設的な展開へとつながることは「絶対に」ないとのこと。
越川さんは、「前向きに話し合い、言葉遣いにも気をつかって、なるべく後ろ向きや不安な言葉は避ける」ことを心がけるように言います。
謝罪訪問に持参するのは菓子折りではない
初動の対応後は、すみやかに顧客のもとへ謝罪訪問をします。この時に持って行くものとして、越川さんは一般的に想像される菓子折りではなく、次の3点をあげています。
その1:誠意
ここで言う「誠意」とは、服装・言葉遣い・詫び状などに表される細かな点。
服装であれば、ブラックかダークグレーのスーツに白いワイシャツに地味なネクタイとし、腕時計は外しておきます。
絶対に遅刻しないよう時間に余裕をもって到着し、入室したら座るよう促されるまで立ったままで、などといった立ち居振る舞いはおろそかにできません。
このあたりは、「自分は心得ている」と思っていても、同行する同僚・部下が「若手」「女性」「エンジニア」にあてはまる時はご用心。
越川さんは、訪問当日に真っ青なスーツにピンクのネクタイで着た若手スタッフに驚いたことがあるそうです。
不安な時は、服装について事前にレクチャーしておくことをすすめています。
その2:原因
2つ目の「原因」について注意したいのは、単に「機械の故障」とか「人為的ミス」ではダメだという点。
「まず誰がどう対応して何が起きたかといった事実の経緯を、時系列で整理して把握し」、根本的な原因まで掘り下げて報告する。
そうしないと、顧客のさらなる不安を招くだけです。
その3:再発防止策
重要なのは「問題が二度と起こらないようにする」ではなく、「また問題が起こったとしても顧客にできるだけ影響を与えない仕組み」を提示すること。
モノはいつか不具合を起こし、人はミスをするものだからです。
なお、初回の謝罪には菓子折りは持参しません。「これで勘弁してください」と受け取られて、かえって顧客の怒りを増す可能性があるからです。
持参するのは、問題が解決して3回目の訪問時がベストだそう。
謝罪後は対応策がきちんと機能する体制整備を
2回目の訪問からは、顧客の要望をヒアリングし、提供する製品・サービスに反映させる流れをつくっていきます。
その大事な一歩となる2回目の訪問では、まず初回の謝罪訪問で約束したアクションを、その結果(もしくは経過)とともに顧客に説明します。
また、障害やトラブルが発生した時における緊急の連絡体制なども顧客に伝え、共有しておきましょう。(中略)
その次の3回目の訪問が、実は最も大切だと私は考えます。
すでに問題が解決している場合は、今後どのような協力体制をつくるべきなのか、建設的な話し合いを進められるからです。
(119ページより)
この訪問で、相手の機嫌を良くしようと、期待を高めすぎる約束をするのはご法度。製品・サービスの仕様が、そもそも相手の期待に応えられないこともあります。
できること・できないことは、顧客にしっかり伝えておくことを忘れてはいけない、とも越川さんは説明しています。
さらに同時並行で、社内の協業体制を整えていくことも大事だと述べています。
セクショナリズムに陥らないよう、「強引にでも行動を変えて各グループが共同で作業せざるを得ない」体制を構築するようにします。
それには、社内コミュニケーションにメールでなくビジネスチャットを使うなど、ツール面の改善も視野に入れることを越川さんはすすめています。
いかがでしたか?
越川さんは、しっかりと謝罪すること、つまり「問題が発生した時に逃げずに対応し、根本原因を追究して生み出した解決策が機能」することで、顧客は信用してくれると述べています。
本書を参考に、いつか必ず来る「もしもの事態」に備えておくとよいでしょう。
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Image: Shutterstock.com
Source: 小学館
鈴木拓也