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「部下のやる気」を削ぐ上司・高める上司の違いって? 『韓非子』に学ぶ

「部下のやる気」を削ぐ上司・高める上司の違いって? 『韓非子』に学ぶ
Photo: 印南敦史

「どうすれば、人を動かせるか?」ということは、多くのビジネスパーソンに共通する悩み。

しかし『人を自在に動かす 武器としての「韓非子」』(鈴木博毅著、プレジデント社)の著者によれば、この「人を動かす方法」を極めた青年が、かつて中国を統一したのだそうです。

それが始皇帝(秦王の嬴政)であり、彼が参考にした書物が『韓非子(かんぴし)』。

紀元前221年に史上初めて中国を統一した始皇帝。 彼がほれ込んだのが韓非の書いた『韓非子』です。 中国を統一した最強帝国で広く採用された法と術。 効果が絶大なのは言うまでもありません。

同時に、その鋭さのため、『韓非子』の扱いには知識と経験が必要とされるのです。 本書は、現代ビジネスで使える“実践版”の『韓非子』として書き上げました。 (「はじめに」より)

さらに2000年前の天才の洞察を現代のことばで捕捉するため、要所で現代経営学の書籍からも、韓非の視点につながる引用をしているのだとか。

膨大な分量の『韓非子』を、現代のビジネスパーソンのために「リーダー論」「イノベーション論」を中心として再構成しているのだそうです。

きょうは第5章「部下のやる気を潰す上司、やる気を3倍に高める上司の違い」から、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。

『韓非子』で描かれた、蔓延している2つの間違い

韓非は、組織が機能不全になる最大の要因は2つだと繰り返しているのだといいます。

【組織が機能不全を起こす2大要因】

1. 働いていない者、不正をする者が利益を得ること

2. 正しい指摘をする者、きちんと働く者が損をすること

(185ページより)

魏(ぎ)の西門豹(せいもんひょう)という人物は、誠実・勤勉・無私に、ある都市を統治したそう。

ところが王の側近に冷淡だったため、職を剥奪されることになりました。韓非には、そのことに関する故事が紹介されています。

「昨年、わたくしは殿のおためになるように鄴(ぎょう)を治めたのですが、殿にはわたくしの官印を取りあげられました。

今年はわたくし、殿の側近のためになるように鄴を治めましたが、それで殿はわたくしにお辞儀をなされました。わたくしにはとても治めることはできません」(185ページより)

組織の歪みが原因で、正しく働く者が冷遇され、誹謗中傷さえ受ける。

そして、組織のなかで権力者に媚びへつらう者が、優秀な者だと偽って評価されていく。そんな状態では目標達成どころか、人々はまともに働く気をなくして当然です。

だからこそ韓非は、「間違った評価が組織や集団の実行力を破壊する」としたわけです。(184ページより)

リーダーが、人に「実行させる」ため、最初にすべきこと

ここで著者は書籍『経営は実行』(ラリー・ボシディ、ラム・チャラン、チャールズ・バーク 著、日本経済新聞出版社)の中から、リーダーがとるべき7つの行動を紹介しています。

【リーダーがとるべき7つの行動】

1. 自社の人材や事業を知る

2. 常に現実を直視するよう求める

3. 明確な目標を設定し、優先順位をはっきりさせる

4. 最後までフォローする

5. 成果を挙げた者に報いる

6. 社員の能力を伸ばす

7. 己を知る

(186~187ページより)

これらはある意味において、現代のリーダーにとっても当たり前の項目。

しかし、だとすれば、リーダーが自在に人と組織を動かせているのかどうかが問題となるはずです。

「自社の人材や事業を知る」ことは、なにを行なったら評価すべきかを決定するもの。そして「成果を挙げた者に報いる」は、韓非がいちばん多く繰り返した点なのだといいます。

古代中国では有効な政治も軍事も、時代とともに変化したそうです。現代ビジネスも、5年前と現在とでは成長事業は異なるでしょう。

そんな変化の厳しい時代だからこそ、注意すべきことがあるというのです。それは、「次の飛躍のためになにを評価するか」を、定期的に見なおすこと。

そしてそのためには、「自社の事業の現在に精通する」ことが大切になるという考え方です。(186ページより)

あらゆる実行の基本は、「部下を詳しく知ること」

韓非は、君主が組織を正しく動かす秘訣をどう考えていたのでしょうか?

たとえば3人の王がそれぞれ異なる課題を持っていたとき、どんな対策が必要だったのでしょうか?

そのことについて著者が引き合いに出しているのは、『韓非子』の「難三編」。3人の王に共通した指摘を求めたとき、彼はただひとつ、「下々を知れ」を挙げているというのです。

「下々のことがよくわかっていると物を見る目はくわしくはっきりし、物を見る目がくわしくはっきりすると賞罰も正しく行われ、賞罰が正しく行なわれると国も貧乏ではなくなってくる。(中略)そこで、一つの答えで三人の公がともに災いをまぬかれるというのは、「下を知れ」という言葉だ、と言うのである」(『韓非子 第三冊』「難三」)

「部下が現在、どんな仕事をしているのか」「その仕事は、成果にどのように関係しているのか、いないのか」、これらを精密に理解すれば、リーダーの問題の多くは解決してしまいます。

そこで、明日から自らのリーダーシップを改革したいのであれば、「その仕事の意義、成果や結果への関連性はあるのか否か。部下の仕事のなかの、なにをほめてなにを叱れば成果が増えるのか」と、まずは部下の仕事を精密に理解することから始めるべきだというのです。

韓非は、「リーダーシップの第一は、下々を知ることだ」と喝破したといいます。すなわち君主自身が、まず部下をより精緻に理解すること。

それこそが、成果を変えるということです。(188ページより)


『韓非子』の考え方を現代のビジネスに活かすべく、さまざまなアイデアが盛り込まれた一冊。

人を動かすスキルを身につけるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

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印南敦史

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