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他人事ではいられない。食品に含まれるパーム油が世界規模の問題になっている

他人事ではいられない。食品に含まれるパーム油が世界規模の問題になっている
Photo: Ulet Ifansasti (Getty Images)

「パーム油」と聞くと、ピンとこないかもしれませんが、家庭の冷蔵庫にあるアイスクリームやピーナッツバターなどの身近な食品に使用されており、石鹸や原油の製造にも用いられています。

汎用性が高いパーム油は大量に消費されるため需要が大きく、結果として環境破壊を招いています。絶滅の危機に瀕しているオランウータンの生息地に最近パーム油製造業者が侵出して、オランウータンをエアガンで撃ったという報告が多数ありました

パーム油の生産は森を破壊し児童労働に依存しがちになっています。我々消費者は、パーム油の製造過程を変えることはできませんが、消費者としての購買習慣を変えることはできます。

しかし、それは、パーム油の使用を完全にやめることではありません(理由は後述します)。

まず、台所やバスルームでパーム油を使用すると、どれほど環境破壊につながるか、また、パーム油を使用する理由について深堀してみましょう。

パーム油とは何か?

パーム油は、一言で言うとアブラヤシの実由来の食用植物油です。パーム油がとれるアブラヤシは、熱帯雨林の穏やかな環境で栽培されています。

アブラヤシからできるパーム油は2種類あり、1つはアブラヤシの果肉を絞って作るパーム原油、もう1つはアブラヤシの種を砕いて作る核パーム油です。

世界野生生物連盟(WWF)によれば、パーム油は少なくとも44カ国で生産されていますが、全世界の供給量の85%はインドネシアとマレーシアで生産されています。

パーム油はどのように使用されているか

自宅の冷蔵庫の中を見てみましょう。パーム油を使っているものが山ほど入っているはずです。でも、どれがパーム油を使った製品かはわからないかもしれません。

パーム油はアジアやアフリカ諸国で調理油として大変よく使われています(アメリカではそれほどでもありません)。

他の主な用途としては、バイオディーゼル(生物由来の物質を原料にしたディーゼル燃料)やディーゼル車用の燃料の生産過程で補助的な役割を果たしているのは前述の通りです。

パーム油が使われている食品一覧

WWFは、パーム油が使用されている製品の代表例として以下を列挙しています。

  • インスタントラーメン(お湯さえあればすぐできる「あらかじめ調理してある」麺の生産に使用)
  • ピザの生地(生地がくっつかないようにするために使用)
  • パン(パンを焼くときに使用)
  • マーガリン(室温で溶けないようにするために使用)
  • クッキー(食感と味を良くするために使用)
  • チョコレート(溶けにくくするために使用)
  • アイスクリーム(食感と味を良くするために使用)
  • シャンプー(頭髪の油分を保つコンディショニング剤として使用)
  • 口紅(溶けにくして使用感を良くするために使用)

見分けるのは難しい

パーム油は身の回りのこれほど多くのものに使用されていますが、完全に避けることは残念ながら不可能かもしれません。

パーム油とその派生製品は、一般的に製品のラベル上では信じられないほど長い名前で記載されているので、パーム油であることがわかりにくくなっています。

Treehuggerがそのごく一部を紹介しています。

アブラヤシ、エチルパルミテート、グリセリル、パームグリセリン硬化油、パームフルーツ油、パーム核油、パーム核油、パームステアリン酸、パルミテート、パルミテート、パルミチン酸、パルミトイルオキソステアラミド、パルミトイルテトラペプチド‐3、パルミトイルアルコール、パモレイン、ナトリウム ケルレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルラクリル酸ナトリウム/ラウリル硫酸ナトリウム、パームケル酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸、植物性脂肪、植物油…。

パーム油の別名で最も使用頻度の高いものだけでも、これだけたくさんあるとは、驚きですね。

パーム油が普及している理由

パーム油が市場で最も効率的で汎用性の高い植物油と考えられている理由は、いくつかあります。

たとえば、パーム油が採れるアブラヤシは一年中実を収穫できる上に、栽培面積当たりの収穫率が高いという利点があります。

パーム油は消費者にも多くの利益をもたらします。

パーム油を使用している製品は保存できる期間が長く、高温にも耐えられます。さらに、パーム油は無色無臭なので、製品の見た目や匂いが変わることもありません。

パーム油生産にまつわる環境問題

パーム油はそんなに諸悪の原因になっているのでしょうか。悲しいことに、その答えは「Yes」です。パーム油は、インドネシアとマレーシアで急速に森林が減少する一因になっています(大量に需要が生じたため、新参のパーム油製造業者と既存の地主たちの間の競争に火をつけています)。

これは二酸化炭素排出量や気候変動にも悪影響を及ぼし、森林伐採により肥えた土壌が損なわれ、山肌も崩れやすくなっています

ほんの1エーカーの土地でも生態系が破壊されると、そこで生きるすべての生物にどのような影響が及ぶか考えてみてください。

1990年に35万頭いたオランウータンが現在では5万頭にまで激減して絶滅の危機に瀕しています。その主たる原因として、パーム油がしばしばやり玉にあがっています。

最近では、パーム油生産者たちが、8歳の児童たちに労働させるという児童労働の問題も発生しています。

さらに、労働者たちは、長時間労働、過大な目標、深刻なケガ、低賃金(わずか2.50ドルの日当)に苦しんでいます。

解決策はあるのか?

正直なところ、完璧な解決策はないのが実情です。

パーム油の使用を抑えると、今度は別の問題が発生してしまいます(たとえば、ひまわり油に代えると、現在の4〜10倍以上の土地が必要になり、さらに農薬と肥料の使用量が増えます)。

多くの環境保護論者は、パーム油を作るアブラヤシが生産性の点で優れていることから、パーム油の廃絶には賛同していません。また、インドネシアなどの国々では、農家や国の経済にとって重要な産業でもあります。

環境破壊、過酷な労働条件、児童労働の問題は、いまだに解決されていませんが、最善の解決策は、持続可能なパーム油を見つけることであり、それが生産者のより良い慣行への転換を促すことになるでしょう。

しかし、これも容易ではありません。

「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が、環境に対する責任と適切な労働条件を実践している生産者を監査・認定しています。

そのため、持続可能なパーム油を使用している製品には、緑色の「RSPO」のステッカーか「Green Palm」と書いたラベルがついていて、生産者がより持続可能な生産プロセスへの移行を進めていることを示しています。現在、世界のパーム油生産者の約40%がRSPOに属しています。

しかし、認定された生産者が実践するはずの「持続可能性の慣行」を疑問視する声も多く、最近はRSPOが非難を浴びています(また、RSPO認定製品をインターネットで検索すると、ラベルもステッカーもついていない紛らわしいものも散見されます)。

やはり、明確な解決策は無いという振り出しに戻ります。

消費者は、ブランドのスコアをチェックすることでRSPOに承認されたブランドを簡単に見つけることができます(たとえば、ダンキンドーナッツとマクドナルドは非常に持続可能なブランドと見なされています。

両者とも 自社で使用するパーム油を「持続可能」と見なされる生産者から購入しているからです)。

消費者ができること

我々消費者ができることは、持続可能で倫理的なやり方で栽培された製品を選んで購入することかもしれません。

消費者が購買習慣を通して持続可能性の価値を企業に認識させることができれば、変革のきっかけになるでしょう。

また、Tweetやメールで主要ブランドに、「責任を持って調達されたパーム油を使用している製品」が欲しいことを知らせることもできます。

とは言え、パーム油を完全に生活から締め出すことは不可能に近いことです。すべての製品のラベルを1つ1つ確認するのはとてつもなく骨が折れる作業ですし、パーム油が製品ラベルにさまざまな別名で記載されているからです。

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Image:

Source: Treehugger, NBC News, Scientific American, Amnesty International, WWF, Green Palm(1, 2, 3, 4), The New York Times, Palmoil Investigation, Eurek Alert, Smith Sonian, Vice, RSPO

Josh Ocampo – Lifehacker US[原文

訳:春野ユリ

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