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「アウトプット志向」で結束を強く。リーダーになる前に知っておきたいこと

「アウトプット志向」で結束を強く。リーダーになる前に知っておきたいこと
Photo: 印南敦史

リーダーには志があります。成し遂げたいものがあります。たどり着きたいゴールがあります。

そのために、プロジェクトを、メンバーを、クライアントを、上司や部下を、そして会社を牽引していく。それがリーダーの役目です。(「はじめに」より)

リーダーになる前に知っておきたかったこと』(小林慎和 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、こう主張しています。

著者は大学でコンピュータを専攻したのち、経営コンサルタントなどを経て起業したという人物。

創業した会社は7社にもおよび、さまざまなタイプのプロジェクトのリーダーとして、スタートアップの経営者として、17年にわたり実績を積み上げてきたのだそうです。

本書の核になっているのは、その17年の間にリーダーとして乗り越えてきたなかで得た気づき

自身が「リーダーになりために知っておきたかった」と感じたということがらが、30編にまとめられているのです。

きょうは第4章「リーダーシップをどう磨いていくのかを分かっていなかった」のなかから、2つのポイントを抜き出してみることにしましょう。

アウトプット志向で生きていく

著者はここで読者に対し、「もっとアウトプット志向で生きてみてはどうだろうか」と問いかけています。

「アウトプット」というと、「よくできたもの」「すばらしいこと」「公開すべきこと」でなくてはならないと受け取られがち。

しかし、ここでいうアウトプットとは、その人の生きた足跡であり、痕跡だというのです。

そこで提案しているのは、ウェブを利用したアウトプット。どんなタイプのことでも、どんな些細なことでも、どんな幼稚なことでもいいから、それらをブログなどウェブ上のデジタル情報のアウトプットとして、どんどん保存すべきだということ。

デジタルデータである限り、大げさに言えば、それは未来永劫参照され続けます。あなたが書いた文章をグーグルに代表されるさまざまな検索エンジンが探し出し、興味を持ちそうな人へと届けてくれる。

「僕が思っていることなんてわざわざ発信しなくても……」 そう思う必要はありません。どんどんアウトプットしましょう。

ホームランはいらない。ヒットでなくてもいい。ピッチャーのゴロのようなアウトプットでいいのです。シュートがゴールポストの脇を外れてもいい。ボールを蹴らないと何も始まりません。(161~162ページより)

著者が重要視しているのは、ウェブが、全世界の人々から参照される可能性のある「些細な情報」を、手軽に素早くアウトプットできる環境を提供したこと。

しかもアウトプットしたものは、デジタル情報として廃れることなく永遠にウェブ上に保存されることになります。そして、全世界の人々から参照され続ける可能性を秘めているということ。

それを著者は、「小さな偉業を積み重ねることができる」と表現していますが、たしかにそう考えると、ウェブを利用したアウトプットの意義の大きさを実感できるのではないでしょうか?

たとえば、リーダーとしての考え方や日々の悩みをブログに綴ってみるだけでも価値があるといいます。

もちろんメンバーに直接伝えることも大切ですが、ブログという一般公開メディアを通じ、間接的に自分の考えを伝えてみても効果は見込めるから。

会社やプロジェクトの課題を「公開」というかたちで共有することで、チームの結束が高まることや、新たなメンバー参加や採用につながる可能性もあります。そのため、些細なことでもアウトプットし続けることが重要だというのです。(160ページより)

成長が止まったと感じたら、できることを非常にうまくやる

現在の仕事がつまらなく感じる。よく言えば、できない仕事がなくなったように感じている。悪くいえば、やりたい仕事が会社にないーー。

そんな状況のなかで「この会社にこのまま身を置いていいのだろうか?」「この仕事にはいったい価値があるのだろうか?」「自分は成長しているのだろうか?」などと考えることは誰にでもあるもの。

すべての人に少なからず、こうしたことを感じるタイミングは訪れるものだということです。

そして、このことについて語るにあたり、著者はジャズを引き合いに出しています。インプロヴィゼイション(即興)を重視するジャズに、二度と同じパフォーマンスはありません

各楽器のパフォーマーのその日のコンディションや気持ちによって、パフォーマンスは微妙に変化するわけです。

だとすれば気になるのは、ジャズを筆頭とする音楽、さらには演劇などのパフォーマンスを観客に向かって提供するプロフェッショナルにとっては、どうなれば成功と言えるのだろうかという問題です。

本物の音楽は色褪せません。数百年を経ても人の心に響く旋律は存在します。ただこうした色褪せないものは、なかなか定量評価しにくい。極めれば極めるほど、自分がどう進化したかが分かりづらくなります。

こうしたプロフェッショナルの場合、「できることを非常にうまくやる」ことこそが真髄ではないでしょうか。(180~181ページより)

進み具合がわかりにくいなかにも、進化しているものはあります。成長が止まったから、現在の心境にあるわけではないのです。

そこで、「成長したからこそ、そうした変化を確認しづらい局面にまで達することができたのだ」と考えるべきだと著者は主張しています。

できる仕事をうまくやることには、大きな付加価値があるということ。

もちろん営業成績受注額や製品販売台数といった、定量的でわかりやすい指標自らの成長度合いを測ることもひとつの方法ではあるでしょう。

ただし成長というものは、必ずしもそうしたわかりやすい指標を用いて測れるものだというわけではありません

わかりにくい場合は、定量評価が不可能であったとしても、進捗具合が見えにくいものでもいいのだと著者は言います。

自らの個別固有な完成をよりどころにすることで初めて成立するような特徴を、仕事のなかに見つけ出してみるべきだというのです。

それは、そう簡単に色褪せることのない、自分ならではの特徴。だからこそ、「できることを非常にうまくやる」ことには、紛れもなく大きな価値があるという考え方です。(177ページより)


このようなところからも、著者がリーダーとしてのあり方を広い視野で捉えていることがわかります。いってみれば、仕事にまつわるすべてのことを視界に収めていることが、リーダーとしての資質なのかもしれません。

なお著者は本書を、新たにプロジェクトチームを率いる方、すでにプロジェクトのリーダーとして事業を推進するなかで多くの問題と直面している方、これから起業しようという方など、リーダーを目指したいすべての方に読んで欲しいのだそうです。

そのいずれかに当てはまる方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Photo: 印南敦史

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

印南敦史

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