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「常務、それは違いますよ」が言える会社。ガリガリ君・赤城乳業が伸びる訳

「常務、それは違いますよ」が言える会社。ガリガリ君・赤城乳業が伸びる訳
Photo: 印南敦史

ガリガリ君の秘密 赤城乳業・躍進を支える「言える化」』(遠藤 功 著、日経ビジネス人文庫)は、2013年に刊行された単行本『言える化』を文庫化したもの。

夏にうれしい国民的アイスキャンディ、「ガリガリ君」を生み出した赤城乳業を舞台としたビジネスノンフィクションです。

「なぜ、赤城乳業なのか?」が気になるところではありますが、そこには明確な理由があるようです。

多くの日本企業が勢いを失いつつあるなか、個性を際立たせ、活力にみなぎっている会社の代表格が赤城乳業だというのです。

単行本を出版した時点では6年連続増収(V6)を達成していたが、それ以降も勢いは衰えず、2018年にはなんと12年連続増収(V12)を実現した。

日本経済が縮んでいく中でも、会社は成長、発展できることを証明している。 厳しい経営環境をものともせず、赤城乳業はどうして成長、発展を続けることができるのか。

その秘密を解き明かすのが、本書の狙いである。 (「文庫版まえがきーー今こそお手本にすべき経営がここにある」より)

そんな赤城乳業が目指す会社像は、小さくても強い、「弱小」ではなく「強小」

そして「強小カンパニー」を実現するための重要なキーワードが「言える化」なのだそうです。つまりは、社員がなんでも自由闊達に「言える」ような会社になるということ。

しかし、当たり前のことのようにも思えるそれは、決して簡単なことではないはずです。

そこで、赤城乳業流「言える化」の秘密を解き明かすべく、第5章「『言える化』こそ競争力」に焦点を当ててみたいと思います。

常務、それは違いますよ

赤城乳業の特徴は、年齢や肩書きに関係なく、社員が自由闊達にものを「言える」こと。風通しがよく、オープンでフランク、フラットな関係を大切にしているのだといいます。

そして「言える化」とは、社長の井上秀樹社長(現会長)が生み出したことばであり、氏の信念でもあるのだそうです。

社員たちが立場や役割を越え、自由になんでも「言える」ことが組織の活性化につながり、ひとりひとりの持つ能力を最大限に引き出す道だという考え方が根底にあるわけです。

しかし、そんな社風は当然ながら、同社を訪れる人たちを驚かせることにもなります。

たとえば社外の人を交えた打ち合わせで、20代の若手社員が同席していた常務に対し、「常務、それは違いますよ」と発言したりするというのですから。

本庄工場で生産企画部の次長を務める和田勝はこう言う。

「役職が上の人でも普通に話せる。若手社員が役員に平気でダメ出しをしている。社長でも意見が違えば反論する。とにかく言いたいことは言うのがうちの社風」(143ページより)

ちなみに赤城乳業では、学歴は一切無関係なのだとか。

事実、高卒で入社し、実績が認められた結果、部長職に就いている人も。垣根のないフラットな関係が、「言える化」を可能にしているということです。(142ページより)

「言えない化」が普通

とはいっても、「言える化」の実践はたやすいことではないでしょう。組織はむしろ「見えない化」に陥りやすいからです。

組織ならではの垣根やしがらみが重なり、いつの間にか官僚化、硬直化するわけです。

そのため、たとえ意見が違っても、上司の機嫌を損ねたり、水を差すようなことは一切言わなくなってしまい、次第に組織は活力を失っていくわけです。

ところで「言える化」が実践されているというと、赤城乳業にはずけずけとなんでも口にする個性の強い社員ばかりが集まっていそうにも思えます。

しかし、実際には正反対。社員の多くはどこかフワッとしていて、ガツガツしている感じがまったくないというのです。それどころか、性格的には遠慮がちな人が多いかもしれないと著者。

だからこそ「言える化」が、社員の能力を最大限に引き出すための生命線として機能しているのかもしれません。

そして会社側もそれを理解したうえで、なんでも言える土壌を耕す努力を積み重ねてきたわけです。(144ページより)

「言える化」の土壌を育む

ひとりひとりの可能性を信じ、それぞれの考え方や意見を尊重する気持ちがない限り、「言える化」という土壌を育むことは不可能。

しかも経験多知識を持っている人は、とかく若い人たちの意見を排除し、耳を傾ける努力を怠りがちでもあります。

そして相手の意見に耳を傾ける「聞ける化」があってこそ、「言える化」は成立するもの。

「言える化」と「聞ける化」は表裏一体であるということを、赤城乳業の役員や役職者たちは理解しているわけです。

常務の本多は社長の井上のことをこう評する。

「社長は相手が誰であっても、途中で相手の言葉を遮ることがない。皆割らなくてはいけない」(146ページより)

同じく若手社員に大きな仕事を任せることも、上の人間の寛容さ、器の大きさがなければできることではありません。

干渉するのはたやすいものの、放置するには忍耐が必要だということ。

経験のある人だけで決めて動けば、目先の仕事は効率的に回るかもしれません。しかしそれでは人は育たず、新たな発想やアイデアも生まれてこないでしょう。

そうういう意味でも重要なのは、上の人間が「言える化」の重要性を認識し、日常のなかでもちょっとした努力や工夫、気遣いを積み重ねて「言える化」の土壌をつくりあげることだといいます。(145ページより)

「場」をしつらえ、「仕組み」でドライブする

「言える化」を実践するためには、中堅や若手社員の「発信する意欲」に対し、役員や管理職層の「受け止める度量」が不可欠

なぜならそれは、組織の「土壌」というべきものだから。「土壌」を耕さない限り、花は咲かず、実もならないわけです。

一方、「土壌」を活かすための経営としての工夫も欠かせないもの。種まきや栄養分の補給をしなくては、「土壌」を活かせないからです。

なお著者によれば、赤城乳業で「言える化」が機能し、社員たちが躍動しているのは、次の2つの工夫が行われているからなのだそうです。

・ 「言える化」を実践する「場」の設営

・ 「言える化」を加速する「仕組み」の構築

(148ページより)

「場」の設営とは、社員が自由闊達になんでも言える「場」を設けること。赤城乳業では委員会やプロジェクトが「場」であり、きわめて効果的に機能しているのだといいます。

「仕組み」の構築とは、「言える化」の実践を側面からサポートし、加速させるシステムをつくり上げること。

「なんでも言え!」と言っておきながら、行ったことをマイナスの評価につなげてしまうのでは、社員が何も言わなくなって当然。

そのため評価や教育など、「言える化」を動かす仕組みが不可欠だということです。(147ページより)


どんな企業にも応用できそうな「言える化」のポイントが、コンパクトにまとめられた一冊。

自身の環境に活かすため、ガリガリ君を食べながら読んでみるのもいいかもしれません。

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Source: 日経ビジネス人文庫

印南敦史

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