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「やる気」を科学的に分析。大人も子どもも勉強に上手くハマるには?

「やる気」を科学的に分析。大人も子どもも勉強に上手くハマるには?
Photo: 印南敦史

子どもの勉強ギライの原因の大半は、「勉強はつまらなくてもガマンして取り組まなければならないもの」だという保護者の誤解。

しかし実際のところ、楽しんで勉強に取り組むための、科学的に実証された“技術”はある

そう主張するのは、『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』(菊池洋匡、秦 一生 著、実務教育出版)のふたりの著者。

中学受験専門塾である「伸学会」の代表、そして主任として、子どもたちと接している人物です。

そこで本書では、教育現場での経験を生かしながら、子どもを勉強好きにするための科学的なコツを紹介しているわけです。

注目すべきは「ARCSモデル」という学修意欲のモデルにのっとっていること。

ARCSモデルは学修意欲(やる気)を、注意(Attention)・理由(Reason)・自信(Confidence)・満足感(Satisfaction)の4つに分類したものです。

これは、アメリカの教育工学者J・M・ケラーが、心理学における動機づけ(やる気)研究をまとめ上げた、一種の集大成とも言えるモデルです。要するに、「やる気の源には大きく分けると4つのパターンがありますよ」ーーということです。(「はじめに」より)。

グーグル社でも取り入れられているというこのモデルは、大人だけではなく、子どものやる気を引き出すのにも有効

事実、著者はこのモデルを活用して指導した結果、多くの子たちが勉強を楽しむようになったのだといいます。

そんな「ARCSモデル」について解説した本書のなかから、きょうは1章「Attention~勉強に『ワクワク』させる~」に焦点を当て、いくつかの要点をご紹介したいと思います。

キリの悪いところで勉強を終わらせる

「勉強をキリのいいところまで終わらせてから遊ぼうね」

子どもに対して、こんなセリフを投げかけた経験をお持ちの方は少なくないはず。しかし、「それはもったいない!」と著者は言います。

「今後はお子さんがまだ続けたいと思っているうちに、『時間になったから』と言って終わらせましょう」とも。

意外な気もしますが、キリの悪いところで終わったほうが、子どもの「もっとやりたい」を引き出せるのだというのです。

それは、人間には「未完了のタスクのほうが、完了済みのタスクよりも気になる」という性質があるから。これを「ツァイガルニック効果」というのだそうです。

たとえばテレビを見ているとき、盛り上がってきたところで「続きはCMのあとで!」となると、イライラしたりモヤモヤしたりするはず。

続きが気になる中途半端なところで終わらせて、次回が見たくなるように仕向けているわけです。

だとすれば、同じことを勉強でもやればいいというわけです。(24ページより)

時間を細かく区切って集中させる

そこで著者は、時間を細かく分けてタスクを順に切り替えさせることを勧めています。

どれくらいの時間にするかは、子どもの年齢によって決めればOK。幼児期の子どもは、年齢+1分程度鹿同じ作業に集中力が持続しないもの。

小学校高学年の子でも15~30分が限界だといいます。そこで、10~20分程度を目安に調整すればいいということ。

例えば、私たちが行っている小学生向けのパズルの授業では、「タイムアタック系のパズル(10分)」→「先生のお話(10分)」→「じっくり考えるメインのパズル(20分)」→「対戦パズル(10分)」といった構成で授業をしています。

それぞれのパートで「もっとやりたい」というタイミングで終わらせ、次週の授業を楽しみにさせています。(26ページより)

もしも子どもに「もっとやりたい」と言われたら、うれしくなってやらせたくなるかもしれません。

ところが、そのまま継続させると満足してしまい、その後「またやりたい」と思いにくくなってしまうというのです。

そこで心を鬼にして、「きょうの時間はここまでだから、また今度ね」と、次のタスクに進むべきだといいます。(25ページより)

親も子どもの前で勉強しよう

「家にいるときは、できるだけ子どもの遊び相手になろう。自分の勉強や仕事は、子どもが寝静まってからしよう」

そう考えている親御さんもいらっしゃるでしょうが、これもまた、もったいないことだと著者は言います。

子どもと一緒にいる時間がとれるときは、あえて一緒に遊ぶのではなく、子どもの前で勉強するほうがよいというのです。子どもは大人のマネをしたがるものなので、親が勉強している姿を見せることは、子どもを勉強好きにする有効な方法だということ。

人は無意識のうちに、他人のマネをしたくなるようにできているもの。たとえば誰かがおいしそうなものを食べていたら、自分も食べたくなるかもしれません。

家族がテレビを見ていたら、なんとなく自分も一緒に見はじめてしまったということもあるはず。

こういったことは、人間の脳の無意識の働きとして起こることで、心理学では「目標感染」と呼ぶのだとか。

しかも目標感染は、家族や友人など親しい間柄だととくに起こりやすいとされているのだそうです。

ハーバード大学のニコラス・クリスタキス教授による調査と研究によれば、目標感染によって肥満が感染症のように広がるという事実も確認されています。

ある人の友人が肥満になった場合、その人が将来肥満になる危険性は171%も増加したそうです。「食べる」という行動をマネすれば、結果として一緒に肥満になるというわけです。(29ページより)

もしも肥満が感染するのであれば、「成績優秀」も感染するはず

つまり「勉強する」という行動をマネしていれば、結果として成績は優秀になるものだという考え方です。

いいかえれば、親が子どもの前で勉強すること、それも積極的に楽しんですることは、子どもにとって最高のお手本になるということ。子どもが反抗期を迎える前の1ケタの年齢のうちであれば、特に効果は絶大だといいます。

逆に、親が勉強や仕事に対して後ろ向きで、常日ごろからグチを言ったりネガティブな姿勢を見せたりしていると、子どもはどんどん勉強嫌いになっていくものだそう。

また、将来の就職や仕事に対しても、暗い想像ばかりするようになるそうです。

もし自分自身を振り返って思い当たるふしがあるのなら、まずは自分のマインドを変えることに取り組むべきだということです。(28ページより)


著者によると、本書の「材料」は2つあるのだそうです。

まずひとつは、過去のさまざまな教育心理学研究。そしてもうひとつは、教室での実際の指導経験。つまり理論と実践の裏づけがあるからこそ、その内容に納得できるわけです。

そんなこともあり、小学生の子をお持ちの方にとっては、とても価値のある一冊となりそうです。

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印南敦史

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