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上手くいってるとき、心が折れたとき。ロフトワーク・林千晶さんが読みたい本3冊

上手くいってるとき、心が折れたとき。ロフトワーク・林千晶さんが読みたい本3冊
Photo: Ryuichiro Suzuki

新たな本との出会いを求めたとき、自分のフィルターで本を選ることも読書の醍醐味のひとつ。

しかし、各界で活躍する人の人生に影響を与えた一冊があるなら、ぜひともそのフィルターを介して働き方や暮らし方のヒントを探ってみたいものです。

そんな思いで始まったのが、「BLIND BOOK CLUB」。さまざまな方に思い入れのある一冊を選んでいただき、本のタイトルも著者も明かさず、本との出会いや本が人生に与えた変化といったエピソードだけを紹介する企画です。

今回お話をうかがったのは、株式会社ロフトワーク代表取締役・林千晶さん。

2000年に「クリエイティブのためのプラットフォーム」を目指して起業し、これまでにさまざまなクリエイターとクライアントをつないできました。

読書好きで知られる林さんが人生の指針とする一冊はどのような本なのでしょうか。

本は「今まで生きてきた人の知恵」

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Photo: Ryuichiro Suzuki

本好きで知られる林さんは、小学生のときから時間さえあれば図書館にこもっていたそう。

どれにしようかなと本を選ぶのではなく、『今日はこの棚の本を』という勢いで読書にふけっていましたね。大人になった今でも、外へ出るときは必ず本を持ち歩きます。

群ようこさんの『鞄に本だけつめこんで』という作品がありますが、タイトルを見て私と同じような人がいるもんだなと思ったぐらい(笑)。

そんな林さんに「本」とはどのようなものかと定義していただくと、間髪入れずに返ってきた言葉は「今まで生きてきた人の知恵」。

人の知恵は、書物に残すことで積み重ねていくことができます。前の時代の人が残した記述に基づいて研究を重ねていくことで生み出されたものは数知れないでしょう。

さまざまな学問や技術が生まれて文明が進化してきました。知識を積み重ねるという点では今はインターネットやPCもありますが、もしどちらかが不変にこの世にあり続けるとするならば本だと願いたいですね。

人生に欠かせない本3冊――林千晶さんの場合

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Photo: Ryuichiro Suzuki

そんな林さんが仕事をする上で、どうしても欠かせない3冊とは。その3冊を選んだ理由について伺いました。

(1) 現実から距離を置きたいときに読む本

「仕事が楽しい」と思えることはたしかに幸せですが、やりがいがあって好きな仕事であってもやっぱり大変ですよね。考えなければいけないことが山積みになり、現実から距離を置いて空想にふけりたくなるときに読みたくなるのがこの本です。

子どものときからもう何度読んだかわかりません。大切な物や好きな本を聞かれると、決まってこの本を紹介しています。大人になると感じ方も違いますよ。

時間の大切さを説きながら、仕事とは何か、人生とは何かについて、あらためて考えさせてくれる本。

仕事が重くのしかかっているときにこれを読むと、「仕事は人生を楽しむためのひとつの手段にすぎない。人生を彩るひとつの要素ではあるけれど、すべてではない」と心が軽くなり、違った見方で仕事に向き合えるんです。

(2) 人生がうまくいっているときに読む本

いろんなことがすごくうまくまわっていて、明日は何をしよう、未来をどう作っていこうと気持ちが前向きなときに読んでほしい本です。

著者の作品はすべて読んでいますが、これは時間をかけて思いを凝らして書きあげられた彼の代表作だと私は思っています。

ここに書かれている事柄は人生の指針として、20年、いや50年は通じる考え方。

インターネットの誕生と普及を経て、私たちは激変する世界を生きていますが、「そのなかでどのように発想を転換していけばいいのか」という変わらないルールを教えてくれるのがこの本です。

一部まわりくどいところもあるのですが(笑)、そんなところは飛ばせばいい。

とにかくすべてがポジティブに書かれていて、ノリにのっているときに生まれたアイデアを実現するのに、指針とすべき本です。

(3) 心が折れそうになったときに読む本

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Photo: Ryuichiro Suzuki

海外出張が続いたので「移動中の飛行機で落ち着いて読める本を教えて」とSNSで投げかけたら250件もコメントをいただいたんです。

それで気になる本を30冊ほど買ったんですが、そのなかの1冊がこれでした。

まったく知らないフォロワーの方が薦めてくださったのですが、「固定概念が壊される」というコメントに、別の方の「いいね!」が何件もついていたのが気になりました。

メインタイトルだけでは難しすぎて選ばなかったでしょうね。サブタイトルにすごく惹かれました。著者は難しいことをわかりやすく説明する天才だと思います。

人生がうまくいっているときは2冊目のような本を読んでほしいけど、うまくいかないことのほうが多いですよね。そんなときに1冊目に頼って空想にふけってばかりはいられません。

困ったことを今日明日のうちに解決したい、心の平静を取り戻したいというときにこの本を読むと、「人間ってこんなふうに知恵を身に着けることができるんだな」と感銘を受けるんです。

「人間とは何か」を問うたときに冷静に客観的に諭してくれる本。意外なぐらいハマりました。

「人生は、想像のつかないセレンディピティであふれている」

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Photo: Ryuichiro Suzuki

林さんの人生で、ときに背中を押し、ときに灯台の光となって道を照らしてくれた本の数々。運命の本との出会い方を聞いてみると――

けっこう‟ジャケ買い“をするので失敗することも多いんですよ。軽い恋愛小説が読みたいと思って手にとった本は、装丁からは思いもよらないSFだったということも(笑)。

子どものころのように『今日はこの棚から』と決めて本を選ぶことも多いですね。どんな本との出会いも“セレンディピティ”だと思って楽しんでいます

セレンディピティとは、偶然の出会いや思いがけない物事との出会いを意味する言葉。

林さんは、「もし20代のころの自分に言葉を贈ることができるなら『人生はね、想像のつかないセレンディピティにあふれているよ』と伝えたい」とブログに書いています。

セレンディピティは“偶然”に起こるものだと思われがちですが、私は幸運を引き寄せる能力のことだと考えています。

ムダのない効率的な生き方ばかりを重視し、世の中にあふれるセレンディピティの扉にふたをしてしまうのはもったいないですよね。

すこし遠回りした、本とのロマンティックな出会い

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Photo: Ryuichiro Suzuki

今年はじめに体調を崩し、人生や仕事についてあらためて考え直したという林さん。

時間に追われ、本当にやりたいこと、本当に大切なものを見失っていた自分に気づいたとも語ります。

1年前の私はどうしてあんなに予定をつめていたのかなと思いますね。時間を埋めることで一生懸命になっていたんだと思います。

「時間がない、急がなきゃ」と目の前のことに追われるとどんどん視野が狭くなってしまうけど、時間がないとあきらめていたことに挑戦したり、道で絵を描いている人がいたら話しかけたり、それこそ本とのセレンディピティを楽しんだり。

人生100年といわれるこれからの時代、人生の余白を豊かにするには、セレンディピティをどう手に入れるかにかかっていると思うんです

少し遠回りをしても心が踊るような「本との偶然の出会い」を演出したいとの思いのもと始まった「BLIND BOOK CLUB」。

林さんも今回「タイトルも著書も明かされずに本が届くなんてロマンティックな試み」と企画に賛同してくれました。

得たいものへの最短距離が自動的に示されるこの時代、あえて寄り道をして「見知らぬ本にふれる」というセレンディピティに身をゆだねてみるのはいかがでしょうか。

■BLIND BOOK CLUBとは

「BLIND BOOK CLUB」は、様々なジャンルの第一線で活躍している方にテーマに基づいてご自身の人生において影響を受けた本を紹介いただき、それらの本をタイトルも著者の名前も明かさずにお届けすることで、アルゴリズム過多の時代に「本との偶然の出会い」を演出するサービスです。

仕事や暮らしのなかで抱いているもやもやが解消されたり、知的探究心を満たしたり、ストーリーや文章の一節に心が動いたり。選者とテーマの掛け合わせによって受け取る体験もちがうはず。その人がその本を選んだ理由の書かれたメッセージとともに読み進めていただけたらと思います。

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林千晶(はやし ちあき)さん

早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。株式会社花王を経て、2000年に株式会社ロフトワークを設立。Web、ビジネス、コミュニティ、空間など、手がけるデザインプロジェクトは多岐に渡る。グローバルに展開するデジタルものづくりカフェ「FabCafe」、素材に向き合うクリエイティブ・ラウンジ「MTRL」、クリエイターとの共創を促進するプラットフォーム「AWRD」などを運営。MITメディアラボ 所長補佐、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」代表取締役社長も務める。

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Source: BLIND BOOK CLUB , ロフトワーク


大森りえ

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