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フィンランドのメディアリテラシー教育に学ぶ、フェイクニュースの見分け方

フィンランドのメディアリテラシー教育に学ぶ、フェイクニュースの見分け方
Shutterstock.com

さまざまな情報が飛び交う現代社会において、日々消化しきれないほど大量の情報を浴びている私たち。

中にはSNSで拡散されたフェイクニュースに踊らされて誤まった判断をしてしまうという危険性も…。

これからますます加速していく情報化社会において、私たちは子どもたちにどのようにメディアと向き合わせるべきなのでしょうか

フェイクニュース対策の根幹となるメディアリテラシー教育において最前線をゆく世界の取り組みからそのヒントを探ってみましょう。

そもそもメディアリテラシーとは?

そもそもよく耳にするメディアリテラシーの具体的な定義は、ご存知でしょうか。

総務省のウェブサイトでは以下のように定義されています。

メディアリテラシーとは:次の3つを構成要素とする、複合的な能力のこと。

1. メディアを主体的に読み解く能力。

2. メディアにアクセスし、活用する能力。

3. メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用 的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。

総務省 放送分野におけるメディアリテラシーより引用


つまり、“情報に踊らされることなくメディアを主体的に扱いながら上手に付き合っていく力”、と言えるでしょう。

皆さんは3つの能力すべて持ち合わせていますか?

2は上手にできていても、1や3についてはドキッとさせられた方も多いかも知れません。

かく言う私も思い当たる点がいくつかありました…。

メディアリテラシー大国フィンランド

さて、そんなメディアリテラシー教育について興味深いデータをご紹介しましょう。(下図参照)

Open Society Instituteが公表している「メディアリテラシー指標」によると、上位に名を連ねるのはほとんどが欧州各国

世界の国々の中でも欧州全体がメディアリテラシーに対して先んじて対策を打っている様子が伺えます。

中でも北欧諸国の上位を占める割合は大きく、トップのフィンランド、続いてデンマークやスウェーデンなどがランクインしています。

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2018年メディアリテラシー指標
Image: Open Society Institute – Sofia

ここ数年ドイツやフランスではフェイクニュース対策として様々な法整備が進められていましたが、一方で法整備が進むことで表現や言論の自由が脅かされるのではないかと懸念の声も上がっていました。

有識者の間でも規制強化よりも教育や意識改革を持って対策を講じる方法が良いのではないかという意見もあり、他に先んじて教育改革に着手したのがフィンランドだったのです。

メディアリテラシーに必要な力とは

では現場では実際どのような教育が行われているのでしょうか。

European Research Councilの代表を務めるJean-Pierre Bourguignon氏は「次世代の子どもたちに必要なのはクリティカルシンキング(批判的思考力)だ」と述べています。

ある研究では、クリティカルシンキングなど思考力を養うための教育とフェイクニュースに対抗することのできる力には相関関係があるという結果も出ています。

※クリティカルシンキングとは?

論理+想像力で考える力を磨く。ハーバード・スタンフォード流批判的思考

自分の頭で考え、そして情報を正しく収集する

フィンランドのある高校の興味深い授業をご紹介しましょう。

この授業では、生徒たちが次のEU選挙において何が重要な争点となりうるかについて、グループに別れてディベートを行います。

まずはBrexit(イギリスの欧州連合離脱)、移民問題、経済問題など、自分で深掘りして考えたい具体的なテーマを設定した後に、そのテーマについて自分たちが持ち合わせている知識や情報について意見を出します。

次にそれらが果たして事実なのかどうなのか、パソコンやスマートフォンなどデジタル機器を駆使して情報を収集した後に、正しい情報を精査し、仕分ける作業へと移ります。

今や知りたいことはなんでもすぐにネットに頼りがちですが、このプロセスを経ることによって、情報を主体的かつ効率的に探し当てる力はもちろん、自分たちの先入観や思い込みが情報の全てではないことを学ぶように設計された授業なのです。

デジタルツールキットを用いたメディア教育

また、フィンランドの教育現場ではキットを使ったメディア教育も展開されています。

フィンランドのファクトチェックの専門機関であるFaktabaari(FactBar)は、子どもたちへのフェイクニュース対策として、デジタルツールキットを開発。

情報に関する3つの視点をしっかりと見定め、判断できるような力を養うことを目的としています。

  1. ミスインフォメーション(情報としての質が低い、または誤情報)
  2. ディスインフォメーション(元から存在しないようなデマ、でっち上げられた情報)
  3. マルインフォメーション(他を攻撃する意図のあるような情報)

エクササイズの中には、You Tubeの動画やソーシャルメディアの投稿を分析し、ついクリックしたくなるような煽情的な見出しやインパクトのあるような文言にはどのようなメディアバイアスが潜んでいるのか、誤情報が読み手の感情にどのように働きかけをしているのか検証します。

また、子どもたち自身で自らフェイクニュースを書いてみる、といったアクティビティも含まれています。

同校のディレクター 兼 前European Schoolsの事務総長を務めたKari Kivinen氏はこう述べています。

「子どもたちには、ソーシャルメディアでいいねを押したり内容をシェアする前に、これは誰が書いたものなのか?どこが発信元なのか?違った情報源から同じ情報を見つけることはできるのか?ということについて常に疑問をもつ癖を身につけて欲しいのです」

フェイクニュース対策は身近なところから

メディアリテラシー教育やフェイクニュース対策、と聞くと少し小難しく聞こえるかもしれませんが、今回例に挙げた内容を参考に私たちにもすぐに取り組めることはたくさんありそうです。

まずは何か簡単なテーマを設定してグループに分かれてディベート大会をしてみたり、子どもと一緒に新聞やニュース番組を見ながら意見交換してみたり、社説やコメンテーターとは逆の視点ではどういった見方があるのかを話し合うのも面白いかもしれませんね。

慣れてきたらフィンランドのように自らフェイクニュースを書いてみる、というのも手軽に楽しく取り組めそうです。

総務省のウェブサイトには、小学生向けの特設サイトの他、中学生、高校生向けのICTメディアリテラシー教材も公開されているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

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Image: Open Society Institute – Sofia, Shutterstock.com

Source: 総務省, WORLD ECONOMIC FORUM, CNN

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