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職人と交流、体験、購入もできる。次世代のものづくりを生み出す「コトモノミチ at TOKYO」とは

職人と交流、体験、購入もできる。次世代のものづくりを生み出す「コトモノミチ at TOKYO」とは

“職人に寄り添い、共に考えて、共につくっていく”をコンセプトに、5月下旬、『コトモノミチ at TOKYO』が墨田区の押上駅近くにオープンしました。

独自にプロデュースされたデザインや技が光る商品を購入できるだけでなく、職人から直に商品の背景や魅力も聞けます。さらに、自ら作って技術を体験できるワークショップにも参加可能。

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開放感があり、通りに面しているのでのぞいてみたくなります。実際、通行人がちらちら視線を向けていました。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

実際の店舗にお伺いして出会った、オリジナリティとこだわりがあふれる商品をご紹介しつつ、今回のオープンの経緯や狙い、展望についてもお聞きしました。

『コトモノミチ at TOKYO』を運営するのは、有限会社セメントプロデュースデザイン。名前の通り、商品の企画からデザイン、パッケージ、販促、流通と、商品がお客さんの手元に届くまでの一連をプロデュースしています。

たとえば、以前取り上げた『コクヨハク』もそのひとつ。2012年に企画されてスタートしたものですが、今年も期間限定商品の開発から販売ブースの設計や施工まで行ったそう。

また、地場産業の商品開発をしたり、地方行政からの依頼でものづくりのノウハウを教えたりもしており、日本各地のメーカーや職人との繋がりがあります。普段接点のない作り手同士の仲立ちをして、新たな商品を作り出しています。

『コトモノミチ at TOKYO』の店舗にも、そんな商品が並んでいました。

Sabae mimikaki-鯖江 耳かき

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加工途中の状態も展示されており、技術を触って直に感じられる。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

福井県の鯖江といえば、眼鏡。『Sabae mimikaki』は国内シェア90%を占める、鯖江の眼鏡素材加工メーカーとの共同開発で作られた耳かきです。

眼鏡のフレームの加工技術で、「かけ心地のよさ」からシフトして「かき心地の良さ」を追求。先の金属部分もフレームに使われているチタンを加工しています。

「眼鏡の鯖江」とわかるように、デザインやパッケージも眼鏡を想起するものになっています。初回発売予定が1,000個のところ、展示会に出展したら4,000個ほどのオーダーがついたそうです。

それぞれの商品には、どのような商品誰が作ったのか注目点は何かといった説明もディスプレイされており、納得のうえで購入が可能。商品によってはワークショップの情報も横にあるので、買うよりも自分で作ってみたい人のニーズにも対応しています。

Sabae kutsubera-鯖江 靴べら

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

同じように眼鏡のフレーム加工技術を使った、キーホルダーみたいな靴べら『Sabae kutsubera』もありました。

こんなデザインなら、家に置いても携帯してもおしゃれですし、場所をとりません。でも、もとが「眼鏡」の技術からなんて、想像できないと思います。

face two face

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

こちらは、片面はまな板、片面は食品を盛り付けるプレートになる「face two face」。

静岡県熱海市の障子や欄間を製造する木工所の「木材をまっすぐにしか切れない」という、非常にピンポイントな技術を活かしています。抗菌・防カビ作用をもつ素材、ヒノキと合わせて商品化が実現しました。

SEE OH! Ribbon

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

SEE OH! Ribbon」は、ラッピング用リボンの日本一の生産地である福井県あわら市の工場が持つ、リボンをレーザー加工する技術を応用。ラッピングのリボンが、書籍を閉じている間も彩りを与えてくれる、「しおり」になりました。

商品からうかがえるのは、作り手の方々が「どんな“モノ”を作れるか」ではなく、「どんな“技術”があるのか」を見て、デザインされているということ。1人、1社の作り手で足りなければ、マッチングさせて解決しています。

食材を組み合わせて思いもしなかった料理を作り出す、まるで腕の良い料理人のようです。

技術をもとに、新たな道が拓ける

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

技術をもとにこれまでと違う分野に展開できれば、作り手にとっても新たな道が拓けます。

たとえば、こちらの『Trace Face』は、ニット柄やラタンかごの質感がカップに再現された陶磁器。通常の陶磁器に模様を描く技法ではなく、陶磁器自体に模様を彫り込むことで、これまでの陶磁器にはなかったデザインと、どこかぬくもりや柔らかさを感じます。

愛知県の瀬戸市で陶磁器の原型を50年作っていた職人から、大手メーカーから受注された型を作るだけでなく、型を彫る技術を活かして自ら商品開発をし、販路を作っていきたいという相談をきっかけに生まれました。

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制作過程は、『ガイアの夜明け』でも取り上げられたとのこと。
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

『Trace Face』の原型にも触れられましたが、この細かい凹凸を手彫りで表現するには、毎日作業を行っても1カ月以上かかります。

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「Trace Face Clock」という時計にも展開されています
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

なお、これまでは商品づくりに携わっても、このような「裏方」だと表に名前が出ることはありませんでした。

でも、セメントプロデュースデザインでプロデュースされた商品は、関わったすべての作り手の名前が明記されており、そこから新規の取引先と繋がれる可能性があるのは、作り手にとって非常に嬉しいことだと思います。

ものづくりの持続可能な関係を作りたい

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

セメントプロデュースデザインのプロデュース部 部長、クリエイティブディレクターの三嶋貴若さんによると、もともとセメントプロデュースデザインは、グラフィックを軸にビジネスを行う会社だったそうです。

しかし、デザインは製造する人がいないと成り立ちません。いっぽう、製造者は受注したものを作っているだけでは先がないことはわかっていても、持っている技術を使ってどう「商品」を作ればいいのかわからない、販路が開拓できないなど、個々では解決できない問題が数多くあります。

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各産地と関わってきたプロジェクト(一例)
Image: コトモノミチ at TOKYO

それらを解決することで、ものづくりの「持続可能な関係性」ができるのではないかと、「設計から販売までトータルにデザインする」今のビジネスになりました。

そうして20年間かけて、日本全国各地でものづくりのプロジェクトを行ってきたセメントプロデュースデザインですが、現在、500以上の工場や職人とつながりがあるとのこと。

参加する作り手の条件とは?

自分の技術も商品化できないかと興味を持つ作り手の方は多そうですが、条件についてお聞きしたところ、「本気で一緒にやっていきたい気持ちがあるかどうか」とのこと。

企画やデザインだけください、と一方的に「丸投げ」されても、単なる外注になってしまうし、案を出しても自分の考えがしっかりしてないと、決めることもできないからです。

ただ、これまで相手が委託してきたものを要望通りに作ればよかった作り手にとっては、難しいことでもあります。

そこで、何をすればいいのかわからない方のために、現状を把握し、どこで詰まっていて、どう展開していけばよいのかわかるフローを用意しているそう。

いわば、「商品作りの考え方」をレクチャーし、それができる人材の育成を行ってくれるということです。

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勉強会の様子
Image: セメントプロデュースデザイン

なお、勉強会や月1回の個別相談会も行っているので、問い合わせをすれば、まずはどこに参加したらいいのか提案してくださるそう。

三嶋さんは、「自分たちがいなくても」作り手が自ら商品を考え販売していけるようになれるのが理想といいます。

なぜ墨田区なのか

今回、墨田区に『コトモノミチ at TOKYO』ができた理由のひとつは、各地で作り手の関係とものづくりの経験を培ってきたバックグラウンドがあり、すでに墨田区によく訪れていたからだそうです。

そして、墨田区は「新ものづくり創出拠点事業」という、区内に新しいクリエイティブな企画を行う人材を呼び込み、メーカーや職人と一緒に住民とつながりつつ、ものを作る仕組みを作る活動を5年ほど行っています。ちょうど参加する企業を募集しており、ピタリとはまったからとのこと。

墨田区は工場が2000もあり、都内では2番目の多さですが、多くは従業員10人以下の中小企業で、1つの会社で何かやるには力不足。でも、繊維関係からプラスチック、金属加工、印刷など、だいたいの日用品が作れてしまうバリエーションの豊かさが特徴です。

「組み合わせれば多種多様なことができ、私たちがこれまで全国で築いてきた関係のある作り手の技術も合わせれば、さらに面白いことができるのではないでしょうか」と三嶋さん。

今後の展望

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

『コトモノミチ』に込められた言葉を具体的なものにすると、日本各地の技術である「コト」、商品企画開発の「モノ」、販路や情報発信が「ミチ」となります。

『コトモノミチTOKYO』という場所自体を作り手の方々と作って、モノの魅力を総合的に「伝えていく場にしていきたいそうですが、売り手側だけではなく、ユーザーとも一緒にやっていきたいとのこと。

実際に制作秘話や苦労したことなどを職人から聞ける「職人Bar」の開催や、職人から直接ものづくりを教えてもらえるワークショップをはじめ、体験し、使ってもらい、もっとこんなだったらいいのにという希望を直接伝えてもらい、「この場所」だからこそできることを実現していきたいそうです。

また三嶋さんは、自分たちのビジネスが目指すのは「新しい問屋」ともおっしゃっているのが印象的でした。

もともと、日本には作り手がいて、商人がいて、問屋がいました。しかし、今では作り手が各地の販売会に出向くなど、いつ技術を継承したり、ものを作ったりできるのかという嘆きも聞いてきました。

技術をつなげ新しい市場に対して橋渡しする役割を担っていきたいです。私たちは新しい問屋の形を作ろうとしているのかもしれません。

合わせて、人材育成に関わっていますが、自ら考えることのできる職人が育てば、これまでになかった魅力的な商品もでてくることでしょう。そんな日本のものづくりの次世代をつくる拠点として、『コトモノミチ at TOKYO』があると思っています。

そこから生まれるものは、「作って終わり」ではありません。人がつながればつながるほど、また新たなものが生み出されていくことでしょう。ものづくりの続いていく「道」がここからどのようになっていくのか、とても楽しみです。

コトモノミチ at TOKYO

住所:〒103-0002 東京都墨田区業平4-7-1 1F(押上駅から徒歩5分)

営業時間:平⽇ 12:00〜20:00 / ⼟⽇祝11:00〜19:00

定休日:火・水(※最新情報はFacebookにてご確認ください。)

https://www.facebook.com/cementonlinestore/

TEL:03-6427-6648 / FAX 03-6427-4557

これからのワークショップ予定

「自分だけのMY珠数づくり」

京都の老舗珠数屋「中野伊助」十代目を講師にお招きし、 自分だけの「MY珠数」が作れるワークショップ。

日程:2019年6月29日(土)

講師:中野 恵介氏

お申込みと詳細は、こちらをご覧ください。


Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

Image: コトモノミチ at TOKYO, セメントプロデュースデザイン

Source: コトモノミチ at TOKYO, セメントプロデュースデザイン

今井麻裕美

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