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「仕方がない」は前向き発言。生き抜くために活用したい華僑の考え方

「仕方がない」は前向き発言。生き抜くために活用したい華僑の考え方
Photo: 印南敦史

華僑の奥義 一生お金に困らない儲けと成功の法則』(大城 太著、日本実業出版社)の著者は、会社員を経て独立する際、華僑社会における大物華僑に師事し、日本人で唯一の弟子として「門外不出」の成功術を直伝されたという人物。

そんな実績をもとに「華僑」についてのさまざまなトピックスを、多くのメディアで紹介してきました。

以前、『失敗のしようがない 華僑の起業ノート』(日本実業出版社)をご紹介したこともありますが、その延長線上にある本書は、そうした活動の集大成。

「これだけは絶対に外してはいけない」と感じることをまとめて「奥義」として伝えたいという思いがあったのだそうです。

華僑はお金儲けの代名詞のように思われる部分がありますが、著者の定義する華僑とは、「本国中国を離れ、他国に土着して生活を営み、土着した地域でビジネスを行い、成功する人たち」のことだといいます。

しかも彼らはエリート集団ではなく、なんらかの事情があって祖国をあとにしたというバックグラウンドの持ち主。

決して恵まれない境遇の彼らが、お金儲けの代名詞になったり、椰子の木が1本あれば華僑が3人いる、と喩えられる暗い世界中で影響力を持つに至ったのには、実は秘密があったのです。

それが「華僑の奥義」です。(「はじめに」より)

そんな考え方に基づいた本書は、日本のすべての社会人に向けて書かれたもの。

企業を志す人、うまく事業を回していきたい経営者、会社でうまく立ち振る舞って希望するポジションにつきたい人、子育てに苦労したくない人、本当の友だちと呼べる仲間が欲しい人などが、あらゆる場面で応用できる“秘伝の書”だというのです。

きょうはそのなかから、第2章「すべてを『プラス』に変える仕事術」に焦点を当ててみたいと思います。

ダブルブッキングは歓迎

時間調整のミス、あるいはスケジュールミスなどによってダブルブッキングをしてしまい、困ってしまった経験がある方は決して少なくないはず。

ところが華僑の世界では、それはミスでもトラブルでもなく、歓迎されるものなのだとか。

実際、華僑はダブルブッキングを当然のように行うというのです。

ひとつずつ仕事をクリアしていくのは、それはそれで気持ちのいいものです。しかし、より有意義なミーティングにするために、あえて同時に商談を行うということ。

知らない人にとっては驚いてしまうような話でしょうし、人によっては怒り出すかもしれません。でも、そこで相手に喜ばれるような演出をするのが腕の見せどころ。

「予定していなかったあの人と会えてよかった」「想定外の素晴らしい出会いができた」と言ってもらえるような会話づくりをすればいいという考え方です。

ただし注意点がひとつ。それは、なんらかの共通点がある人同士をブッキングすること。その結果、うまく話ができれば、喜ばれることは確実だというわけです。

いずれにしても、このように短期間で人脈を拡大していくのが華僑のやり方。その結果、紹介が紹介を呼ぶ連鎖が生まれる状態になるというのです。(46ページより)

前例で安心を与える

情熱だけでは、相手を動かすことはできません。本当の意味で相手を動かすのは、安心感と納得感。たとえば男女間のプロポーズがそうであるように、情熱を語る際には未来の話をするもの。

一方、安心感と納得感を得るためには、過去の話が重要になってきます。そして、そんなとき華僑がしばしば利用するのが「前例」。

たとえば商談の際、相手が「その話の根拠は?」と尋ねてきたとしたら、「このような前例があります」と過去の事例を出して相手を納得させ、安心させるということ。

相手が新しいものを求めているときは、「これに関しては昔からニーズがあったのですが、実践したという前例がありません」と過去にないことを証明し、相手を納得させるわけです。

身近な話であれば、会社の歴史、出身学校の歴史など、「前例」はあらゆるところに落ちているもの。にもかかわらず、それを利用している人はあまり多くないと著者は指摘しています。

しかし華僑流のメソッドを活用したいのであれば、前例を使って自説を通すべきだというのです。(51ページより)

マルチタスクの意味

現代のビジネスシーンにおいては、さまざまな案件がいろいろな方向から飛んでくるものです。複数の仕事を同時にこなすことは、ある意味では普通のことだとすらいえます。

しかしマルチタスクとは、多くの仕事を同時に進めることではないと著者は主張しています。理由は、それでは成果を出せないから。

一つのことに集中し、また別のことに集中する。 一つひとつを集中的にこなすことが、求められた結果を出す唯一の方法です。(54ページより)

ここで著者は、「工人数々業を変せば則ち其の功を失う」ということばを紹介しています。

中国の思想書である『韓非子』に記されているもので、「職人が頻繁に仕事を変えると成果が上がらない」という意味なのだそうです。

ただし、たとえば3つのマーケティングプランがある場合、ひとつひとつ試していたのでは時間がかかってしまいます。

そこで3つのプランを同時に実行し、なるべく早いタイミングで、いけそうなプランに絞るのが賢い方法。

テストによる選択と集中が、これからのマルチタスクの目指すところだという考え方です。(54ページより)

「仕方がない」は前向き発言

「言い訳をするな」「諦めるな」と鼓舞する人がいるものですが、そのような感情論に振り回されないことが大切だと著者は言います。

華僑は二言目には、「仕方がない」と言います。 「中国人はすぐに投げ出す。だから嫌いなんだよ」という声が聞こえてきそうですが、「仕方がない」の後に無言のもう一言があります。

「今は」です。

今は仕方がない。 これは投げ出しているのではなく、長い目で見て、現在はできないけれども、将来的にはできるようにしておきます、の意味なのです。(57ページより)

だからこそ、「仕方がない」を口癖にすることによって、後ろ向きな言い訳がなくなるというのです。

「仕方がない」と言ってしまえば、そのための対策を関係者全員で考えることができ、よりよくなるかもしれないということ。

うまくいかないときは、ひとりで抱え込んでしまうとストレスばかりがたまっていくもの。

そこで、そんなときこそ、組織のために「仕方がない」と言ってみようと著者は提案しています。(57ページより)


1項目=1ページで簡潔にまとめられているため、要点を無理なく吸収できるはず。気楽に読んでみれば、予想以上に多くの気づきを得ることができそうです。

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Photo: 印南敦史

Source: 日本実業出版社

印南敦史

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