KGBの諜報員もマスターした記憶力をアップさせる方法
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旧ソ連の、泣く子も黙る諜報機関KGB。
プーチン大統領がKGB出身であることは、よく知られていますが、この組織の諜報員の卵に徹底的に仕込まれたのが、「記憶術」です。
重要な情報でもメモが許されない局面が多々あるため、彼らは瞬時にそれを記憶する必要がありました。
また、外国語を速やかに習得し、合言葉や暗証番号も暗記することが求められたため、高度な記憶力は必須のスキルであったのです。
そんな彼ら(若い頃のプーチンも含め)が習得した記憶術を1冊に収めたのが、『KGBスパイ式記憶術』(水王舎)です。
本書には、割とよく知られているものから、大半の人には未知のものまで、記憶力を強化する様々なメソッドが掲載されています。
今回は、その中から比較的やりやすい記憶術を幾つか紹介しましょう。
まずは注意力を鍛える
本書では、注意力とは「情報を選択的に認知し、必要なことだけを見聞きして、余計なことは無視できる能力」と定義されています。
注意力を高めることで、「記憶すべきことのニュアンスや細かな点に焦点をあてられるし、あらゆることに等しく注意を払って脳がオーバーヒートするようなこともない」というメリットが得られます。
なので、まず注意力を高めることが先決となります。
その方法の1つがシュルテ・テーブル。以下の5×5マスを見てください。

これには1~25の数字がランダムに配置されていますが、1から順番に数字を見つけていくのが課題となります。
ただし、視線をあちこちに動かしたり、数字を声に出してはいけません。
表の中心のマス(数字の10)に視線を固定し、周辺視野だけで数字を探します。
慣れてくれば、注意力にくわえ周辺視野やセルフコントロールの力もついてくるそうです。
記憶力は視覚的に鍛える
本書では、驚異的な記憶力の持ち主であるS・シェレシェフスキーの話が出てきます。彼は、情報を視覚的イメージに変換する(例えば数字の1は体格のよい堂々とした男)ことで、なんでも記憶できました。
もともと人類は、言語的な記憶力よりも「視覚的イメージを知覚して記憶する能力のほうがはるかに古くから発達」しているそうで、視覚化の訓練が記憶力増強において効率的なのです。
例を挙げよう。友人のアパートへの行き方を説明してもらう場合、住所を聞くとしよう。さて、町名、建物名、部屋番号まで覚えられただろうか? では、その友人が住んでいるアパートの1階にペットショップが入っていると聞けばどうだろう? そのほうがずっと覚えやすいはずだ。(本書92pより)
そして、本書にある訓練法の1つが「目を閉じてイメージする」。
まず、机の上にある物をよく見てから、目を閉じて机を想像し、その上にある物を1つずつ、細かいところまで思い描きます。
イメージできない物があれば、少しの間だけ目を開け、それを見て、また目を閉じてイメージします。
シンプルな方法ですが、次第に視覚化がうまくできるようになります。
未来記憶の能力を高める
「未来記憶」とは聞きなれない言葉ですが、端的に言えば今後の予定を覚え、しかるべきタイミングでそのことを思い出せるということです。
ちょっとしたタスクを忘れて、そのまませずじまいとか、部屋に入ってきたときに、ここに来た理由をど忘れする場合、未来記憶に問題がありそうです。
頻繁にやるべきことについては、チェックリストを作成することが、本書ではすすめられています。
外出時によく忘れ物をする場合、持参する物のリスクを作り、記憶してしまいます。
もちろん、スケジュール帳も強い味方になります。
ただし、スケジュール帳を開くこと自体を忘れては仕方ないので、「仕事に取りかかる前と一段落ついたタイミングでスケジュール帳を確認」するなど、外的なリマインダーとのセットで習慣化させます。
ただし、チェックリストやスケジュール帳頼みでは、本当の意味での未来記憶力の強化とは言えず、書いていないことは相変わらず忘れるリスクが伴います。
その対処法についても、本書では述べられています。
その1つが、現代人に失われた時間感覚を取り戻す方法です。
これには何通りかのやり方があり、ストップウォッチか時計の秒針を使うものは、以下の要領で行います。
時計を見ずに、経過した時間を言い当てよう。1分から始め、5分、10分、1時間と延ばしていく。頭の中で秒数を数えたりせず、この演習以外にするはずだったことをしていよう。自分の時間感覚が遅すぎるのか速すぎるのかを確認し、もう一度やってみたまえ。(本書300pより)
健康への配慮は欠かせない
意外にも、食事、運動、睡眠、ストレス対処といった、健康面での指南も本書ではなされています。
KGBの諜報員といえどもスーパーマンではなく、健康をないがしろにして任務でミスを冒すような真似は、一流の諜報機関として容認できないというわけです。
もちろん、健康の良し悪しは、記憶力にも直結します。
例えば、睡眠については以下のとおり、記憶力との関連性が記されています。
記憶力もまた、睡眠の質に左右される。一説によると、日中の間に頭に入ってきた情報は、眠っている間に処理され、長期記憶に保存されるという。新しい情報だけでなく複雑な運動スキルも睡眠中に保存されることが、実験で確認されている。どんな職業であれ、効果的な学習や訓練には質のよい睡眠が絶対条件であることを知っておくべきだ。(本書240pより)
ビジネスパーソンにも付きもののストレスについては、「五感が研ぎ澄まされ、頭がはっきりして、すぐに行動に移すことができる」という、一時的な効用は認めるものの、長期的なストレスは、百害あって一利なしとバッサリ。
もちろん、これは記憶力の低下にもつながります。
こうしたストレスの対処法として、自律訓練法やヨガなどが良いとは言及されています。
ですが、最も効果的なのは、予防して長期のストレスを抱え込まないことだとも。
「規則正しく休息をとり、自分で解決しなくてもよい問題のことは忘れ、完璧主義をやめてしまう」のが、効果的な予防法になるそうです。
本書は、ロシアの心理学者と写真家の共著によるものですが、意外にもマインドマップやフロー状態に入る方法など、日本人にも馴染みのあるメソッドが記憶術として取り上げられています。
分厚くて濃い内容に圧倒されそうなら、まずこうしたメソッドに着手し、そこから範囲を広げてゆくのも手です。
すべてのやり方をマスターしたら、相当な記憶力がついているはず。
その恩恵は、仕事の現場でも日常生活でもきっと発揮されることでしょう。
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Image: Shutterstock.com
Source: 『KGBスパイ式記憶術』水王舎
鈴木拓也
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