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「働きアリ」からの脱却。自分からはじめる働き方改革のヒント

「働きアリ」からの脱却。自分からはじめる働き方改革のヒント
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社会の変化や寿命の伸び、そして働き方改革の法制化といった要因は、それまでは当たり前であった「働きアリのような働き方」を時代遅れのものとしました。

そう指摘するのは、企業の働き方改革を支援する(株)クロスリバーの代表取締役社長 CEO、越川慎司さんです。

時代遅れの働き方から脱却

越川さんが言う「働きアリのような働き方」とは、「上から言われたことをただひたすら行う」働き方。

以前は通用したこのやり方は、「会社にとっても働く個人にとっても望ましいものではなくなってきました」と、著書の『働きアリからの脱出 個人で始める働き方改革』(集英社)で述べています。

働き方改革がうまくいっているのは、たった1割

それは雇う側も気づいていて、数年前から「働き方改革」という旗印で推進されてきましたが、「うまくいかずに悩んでいる企業が大多数」。改革に成功しているというのは、たった1割程度だそうです。

残り9割に属するビジネスパーソンは、諦めるしかないのでしょうか?

そうではないと、越川さんは力説します。どんな組織に所属しているのであれ、自分がコントロールできる領域があり、まずはこの部分にエネルギーを傾注することで、成果を生み出せるからです。

そして、勤務先の働き方改革の良し悪しはどうあれ、個人が具体的にできることを「今日からできる働き方改革」として、本書の後半にまとめています。

今回は、その幾つかを紹介してみましょう

リアル人脈を作る

「リアル人脈」といっても、名刺交換会のような場で、ただ名刺をばらまいて終わりというものではありません。

越川さんの言う「リアル人脈」とは、新しい人に会った後のプロセスが重視されます。中でも大事なのは、「何かを提供する」。

相手の課題や悩みを聞き出せたら、見返りを求めずに少しでもサポートできることを申し出るのです。

この段階では十分な関係性ができていませんから、あまり深入りしてはいけません。ちょっとした情報提供や知見の共有をして、少しでも関係性を深めましょう。(本書104pより)

こうした無償の支援が生むのは、相手からの信頼です。

信頼が高まると、そのうち仕事で関わりを持つようになり、その相手がまた別の人を紹介するという形で人脈が効率的に広がっていきます。

SNSは、一度会った人との接点を保ち続けるのに効果的ですが、最初から最後までSNSのみでは、本当の人脈には育ちません。

対面を重視した「リアル人脈」こそが、働きアリ脱出の1つのポイントとなるそうです。

人を動かすコミュニケーション術を身に付ける

人とのコミュニケーションでは、自分の望む行動を相手に誘発するのを意識します。

そのために第一に必要なのが、「どう言えば相手にメリットになるか、もしくはどう言えば断ることができないかを考える」のが大事だと、越川さんは唱えます。

例えば、プロジェクトに加わってもらいたい場合は、こうなります。

「プロジェクトを成功させる必要がある」と伝えるのは一人称となり自分事と捉えにくいですが、「一緒にプロジェクトを成功させよう!」と伝えれば、自分事に思わせながら巻き込むことができます。

相手にとって成功が目的でないなら、「一緒にプロジェクトを成功させて、あなたの能力を最大限発揮しましょう!」と言ったり、「せっかくのあなたの特別な能力を活かして、その能力を会社に認めさせませんか」と相手の承認欲求を刺激しながら語りかけるのです。(本書128pより)

また、聞き手は、耳よりも目で多くの情報を取り込むという脳科学的な事実にも留意します。

つまり、情報の伝達には、相手の目を意識して「ジェスチャーや資料のデザイン」を駆使しながら、アイコンタクトにも努めつつ、内容を提供するのが有効とのことです。

会議を支配する

日本企業に「無駄な会議が多い」というのは、以前から言われてきたことですが、越川さんも同意見です。

クロスリバー社のクライアント500社を見てわかったのは、

うまくいかない会議には、下記の「5ない」が共通点としてあるそうです。

  • 事前情報がない
  • 目的が明確でない
  • 意見が出ない
  • 参加者の当事者意識がない
  • 結論が出ない

ただ、こうした会議を「改善」することで、「社内で評価され、そこで培った能力は、社外でも通用します」とも。

ここで言う「改善」とは、会議のファシリテーターを務めることです。

ファシリテーターになれば、会議でアイデアを数多く出させる「アイデアの管理」、時間内に会議を終わらせる「時間の管理」、会議に集中させ結論を出すよう導く「参加者の管理」など、高度なスキルが身に付きます。

一朝一夕にはマスターできない役回りですが、場数を踏んで、自らを成長させることがすすめられています。

社内メールに振り回されない

社員数が500人以上の企業では、社員1人がメールを処理するために使う時間は1日約3時間。うち、2時間近くが社内メールだそうです。

越川さんは、「成果を生まない非効率な社内メールはやめるべき」だと力説します。

とはいえ、社内のコンセンサスもなしに唐突にやめるわけにはいきません。

そこで、メールソフトの仕分け機能で、CCで来たものや重要性の低いメールは後で見るなど、自分でできる対策を徹底して行います。

もう1つ大事なのが、文章面の改善。

大原則は、「短文」でまとめることだと言います。

「書き始めから105文字以降は未読率が一気に上がる」とのことで、目安としてメール本文は105文字以内とし、「お疲れ様です」などの定型表現はカットし、署名機能もフル活用します。

ただし、背景や目的を記さず、やってほしい作業だけを依頼すると、期限後まで放置される可能性が増大します。

シンプルなものでよいので、そうした内容を盛り込んでおくのは鉄則とのことです。

本書には、以下のメールのサンプルが載っています。これでちょうど105文字ですが、依頼する作業の背景もちゃんと書かれています。

〇〇さん、早速ありがとうございます! 来週の役員会で起案しますので9/8 17時までに稟議書を完成させます。予算決議だけでなく、役員のコミットも取るので数字の論拠を入れた資料を以下の分担表に基づき作成してください。(本書146pより)


越川さんは、本書のあとがきで「家に早く帰ることが働き方改革ではありません。そして、働き方改革は会社が与えてくれるものでもありません」と記しています。

個々人の目線では、真に目指すべきは、「働く個人がずっと幸せで働きがいを感じ続ける」ことであり、そのための処方箋が、本書において様々に解説されています。

「定年まで働きアリ」でなく、幸福感と働きがいを優先する生き方へとスイッチするための指南書として、本書は役立つことでしょう。


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Image: Shutterstock.com

Source: 『働きアリからの脱出 個人で始める働き方改革』(集英社)

鈴木拓也

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