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すべてのビジネスパーソンに必要な「秘書力」、そのポイントは「学ぶ力」

すべてのビジネスパーソンに必要な「秘書力」、そのポイントは「学ぶ力」
Photo: 印南敦史

ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』(井出元子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、著名経営コンサルタント小宮一慶氏の秘書を務めているという人物。

すでに秘書として10年以上のキャリアを持っているものの、2008年の入社当時は秘書未経験だったのだそうです。

どの条件をとってみても、私が採用される理由はありませんでしたが、なぜか採用。 ということは、とりもなおさず、仕事の中身が厳しく問われるだろうということです。

そして実際、こんなに忙しく幅広い仕事をしている人の秘書を、秘書経験のない私が行なうことになったのですからーーそれは、予想以上にたいへんな日々でした。(「はじめに 秘書力とは、尊敬と感謝で繋がる仕事術である」より)

その結果、仕事を通じて第一線の方々から学んだことを真似し、実践しているなか、接遇研修や秘書研修、新入社員研修をする機会も増えていったのだといいます。

つまり本書は、そんなバックグラウンドをもとに生まれたものなのです。

秘書の仕事は、上司とお客さまの立場に立って考え、行動することだと著者は言います。自分視点ではなく、相手視点で考えることが欠かせないわけですが、それは秘書に限ったことではないはず。

どんな仕事であったとしても、必ず求められるのは、関わる他者の視点を持つこと

相手視点で仕事をすることで、本当に相手が求めていることに応え、役に立つことができるわけです。

そういう意味で秘書の仕事術とは、秘書に限らず、働くすべての人に共通するものだということです。

そうした考え方を軸とした本書のなかから、きょうは第3部「自己成長編」の第8章「秘書力とは『学び力』」を確認してみたいと思います。

根底にあるのは、「秘書が成長すれば、上司はより成果を生み出す仕事に集中できるもの。だからこそ、さらに高いレベルで上司を補佐するためには、秘書自らの成長が不可欠」だという考え方です。

よく「気がつく」人から学ぶ

上司の知人から、来客対応中の上司宛に電話があったときのこと。そのような場合、もちろん秘書である著者が代わりに対応するという手段もあるでしょう。

しかしそのときは、その知人との関係性や状況を考えた結果、上司は来着を中断しても電話に出るかもしれないと判断し、上司にメモを差し入れることにしたそうです。

それだけなら、ごく一般的な対応です。「○○様からお電話が入っております」と伝達内容を書き、そっと上司に渡して指示を受ければいいわけなのですから。

しかし著者はメモにこの一文を書いたあと、AとBの選択肢を書き加えたのだといいます。

○○様からお電話が入っております

A 中座して電話に出る

B 折り返すと伝える

(211ページより)

上司に、黙って選択肢のどちらかを指してもらうだけで、言葉を発しなくても指示をもらえるようにしたということ。

本で読んだ方法を真似してやってみたのだといいますが、気が利いていると上司からほめられたのだそうです。

「気が利く」「気がつく」は、秘書に必須のスキル。

とはいえ最初から「気が利く」「気がつく」秘書はいないもの。著者も同じで、最初は気がつく人を見ては気がつかない自分に落ち込んだものだと当時を振り返っています。

そこでチャレンジしたのが、「気が利く」「気がつく」と感じる行動を見つけては、それを自分もやってみること。「気がつく」行動を集めることが、気づきのスタートだったというのです。

会社を訪問した際に、対応していただいて気づいたこと。飲食店やホテルなどを利用した場合に気づいたこと。人から聞いたお話。人からしていただいて嬉しかったことや、いただいたプレゼントなど、私のスマートフォンにはたくさんの気づきのメモが入っています。

また、不快感を感じたり、対応が悪いと感じたことも、気づきの材料になるので、メモに入れて残しています。このときは、自分だったらどう対応するだろうかということも考えます。これを続けることで、気づく視点を増やしてきました。(212ページより)

気づく人は、気づきのインプットが多い人だと著者は記しています。

一流の方ほどよく気がつき、細やかな気遣いができるものですが、秘書は一流の方から気遣いを受ける機会が多いだけに、より気づきのインプットが増えるということ。

気づきの機会は、日常にあふれているものです。仕事中でもプライベートでも、買い物をしても食事をしても、誰かの行動に気づくことができるわけです。

それだけでなく、テレビや映画を見ていても、参考になることはたくさんあるはず。

そこで、まずは気づきのインプットを増やすところからスタートしてはどうかと著者は提案しています。(210ページより)

「知っている」ことを「やっている」ことへ

習得の四段階」というものがあるそうです。

物事を習得するときは、「(1) 知らない」「(2) 知っているができない」「(3) 意識すればできる」「(4) 無意識にやっている」という4つの段階を経て身につけることができるというのです。

たとえば電話対応の場合、相手が名前を名乗ったら、「○○会社の○○さまでいらっしゃいますね、いつもお世話になっております」と、相手の会社名、名前を復唱します。

復唱することによって、相手は「自分が言っていうることをこの応対者は正しく聞き取ってくれている、理解してくれている」とわかり、安心して要件を切り出すことができるわけです。

ところが著者の経験上、この復唱を実践できている会社は少ないといいます。つまりそれは「①知らない」という段階。知らないので、悪気なく無意識にやっているということです。

著者が研修で復唱の大切さや効果を伝えると、相手はそこで初めて、復唱ということを意識するようになるといいます。ただし復唱を知ったからといって、実際の電話対応ですぐに復唱できるわけではないでしょう。

つまり多くの人は、「②知っているができない」状態にあるわけです。

できるようにするために欠かせないのは、日々繰り返し実践すること。そしてそのためのスタートラインは、電話応対のときに復唱をしようと意識すること。

「きょうは電話に出たら復唱してみよう」と心に決め、行動してみるというわけです。

最初は言葉がもつれてしまったり、電話を切ってから復唱を忘れていたことに気づいたりするかもしれませんが、そんな状態を毎日繰り返せば、やがて「③意識すればできる」ようになるわけです。

ちなみにこの段階では、当然ストレスがかかることになるでしょう。それだけでなく、復唱しようとして会話が途切れてしまったなど、違和感を覚えることもあるかもしれません。

しかし、その違和感こそが、新しいことにチャレンジしている証拠だと著者は言うのです。

いままで無意識に行なっていたことを、やり方を変えて意識的にやっているのですから、不慣れでスムーズにいかなくて当然だということです。

それでも実践を続けていくことで、いつの間にかそうした違和感がなくなってきたとしたら、それが身についてきたという目安。ふと気がつけば、なにも考えなくても自然に復唱のことばが口をついて出ていたという状態になるわけです。

意識的に取り組んでいたことが「(4) 無意識にやっている」という状態になれば、それは新しいことをひとつ身につけられたことになるのです。

ビジネスマナーは、知っているだけでは意味がないといいます。身につけ、無意識に実践できてこそ活きるものだということ。

そこで、「知っている」ことを「できる」ことへ、そして気がつけば自然に「やっている」ことを、ひとつずつ増やしていくことが大切だと著者は主張しています。


冒頭でも触れたとおり、秘書力の応用範囲はとても広そうです。秘書力を身につけることで、相手との間に尊敬と感謝で結ばれた信頼関係を築くことができるわけです。

そうなれば当然ながら人に喜ばれ、ひいては自分自身の喜びにもつながっていくことでしょう。

いわばそれは、すべてのビジネスパーソンに有効なメソッドだということ。

だからこそ本書を通じ、ぜひとも秘書力を身につけたいところです。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

印南敦史

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