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リーダーとして心得るべきこととは? 3人の名経営者のことば

リーダーとして心得るべきこととは? 3人の名経営者のことば
Photo: 印南敦史

リーダー・管理職のための 心を成長させる名経営者の言葉』(久恒啓一著、日本実業出版社)の著者は、2005年から「人物記念館の旅」を続けているという人物。

それは古今東西の人々に深く、広く、長く影響を与えてきた「偉い人」の人生を振り返る旅だそうで、2018年末で850館を超えたのだとか。

またブログや「note」に「名言との対話」というテーマで「偉い人」の名言と生涯を紹介するなどの活動も。

つまり、その延長線上に生まれたのが本書だということのようです。

この書籍、『名経営者の言葉』では、食、健康、美、文化、教育、メディア、電機、養豚、酒、芸術、電力、花、出版、ファッション、スポーツ、漫画、情報、テレビ、新聞、ホテル、書店…など、あらゆる分野の戦後日本の事業家・経営者たちが絞り出した珠玉の名言、極上の言葉と、その言葉が生まれた背景を紹介したいと思います。

(中略) 混迷を深めつつある現在の日本、志を失いつつある日本人は、難題に立ちすくむばかりでなく、紹介した人々と同様に、社会の不条理の解決に自らの職業や仕事で貢献しようとする志を持って次の時代に備えたいものです、その指針の一つとなれば幸いです。(「はじめに」より)

特徴的なのは、ことばが没年順に並べられている点。これは、60歳で亡くなった人と90歳まで生きた人との間には、一世代に相当する長い時間の落差があるからなのだといいます。

多くの人は晩年に向かっていい仕事をする傾向があるため、青年よりも没年が大事だという考え方に基づいているわけです。

きょうは4「リーダーとして心得るーー先人からのアドバイス」に注目し、いくつかのことばを抜き出してみたいと思います。

まずリーダーがすべきこと

リーダーというものは、下に対して俺を信頼しろというのではなく、まず自らが下を信頼すること。 すべてはそこから始まります。

塚本幸一(つかもとこういち)(1920.9.17 ~ 1998.6.10)

(96ページより)

ワコール創業者。享年77(歳)。第二次大戦でインパール作戦などに従軍し、復員後にはワコールの前身である和江(わこう)商事を設立して婦人用アクセサリー卸業を開始。

1957年にワコールへ社名変更し、婦人用下着を主力商品として、同社を日本トップクラスの女性アパレルメーカーに育てることに。

また京都商工会議所会頭、日本商工会議所副会頭、財団法人地域活性化センター理事長など財界の重鎮となりました。

著者によれば、塚本幸一の原点は大東亜戦争なのだそうです。インパール作戦の際、食料も弾薬も尽き、毎日、戦友たちが死んでいくなかで敗走を重ね、復員船で信じるようになったのは「自分は生かされている」ということ

そのため、「これからの人生は52名の戦友に代わり、世の中のために生きていく」と決心したというのです。

一度死んだも同然であり、過酷な状況を生き延びた自分には戦友の魂が宿っていると信じ、商売の決死隊になったということ。

「この世に難関などない。難関というのはあくまでも本人の主観の問題である。難関だと思っている自分があるだけだ」と仕事に邁進したのだといいます。

「どうせ打ち上げるなら、目標は大きいほうがいい。世界一の下着メーカーを目指そうと10年一筋の、50年計画を立てた。

まず最初の10年で国内市場を育て、次の10年で確固たる地位を築く。70年、80年代は海外に進出。90年代は仕上げともいえる世界制覇である」(98ページより)

また女性の下着を事業にしたことについては、「格好よく言えば、私は女性を美しくすることに生涯をささげてきた。まことに幸せな人生というべきだ」と述懐しているそうです。

そして、その延長線上に文化を守り育てる企業像をつくり、「部下を信頼することから始めよ」というリーダー論を、そのバックグラウンドとしたわけです。(96ページより)

サントリーの「やってみなはれ」

現職の社長がしなきゃならんのは、トップの心得を後継者に説くことじゃなくて、下からのイノベーションの種がどんどん出てくるようにしむけることです。 それがサントリーの「やってみなはれ」です。

佐治敬三(さじけいぞう)(1919.11.1 ~ 1999.11.3)

(96ページより)

サントリー社長・会長。享年80(歳)。

「出る杭は伸ばす」

「とにかくワクワクしながら仕事をしてみろ。そうじゃないと人生は面白くならないぞ」

「ひとりの人間を永久に欺すことはできる。また、大衆も一時的なら欺すことはできる。しかし、大衆を永遠に欺すことはできない。要するに、真実でなければダメなんですよ。本当のものでなければ、ダメなんですよ」 (109ページより)

1986年に誕生した赤坂のサントリーホールは、「世界一美しい響」がコンセプト。カラヤンなど、世界的指揮者や演奏家の意見を取り入れたホールとして知られています。

また、そこにはサントリーならではの工夫も。たとえばホールの壁はウイスキーの貯蔵樽を使用しており、ホワイエ(ロビー)でアルコールを楽しむこともできますが、これは日本では始めてのアイデア。

佐治の「文化で社会にお返ししよう」という夢が、そんなところにも反映されているわけです。

ご存知のとおり、サントリーの精神は「やってみなはれ」。現場にはイノベーションの種が転がっているものなのだから、それを潰さずに育てることこそが、トップの仕事だという考え方です。(108ページより)

リーダーとしての自覚

皆からリーダーは見つめられている

武田豊(たけだゆたか)(1914.1.6 ~ 2004.2.15)

(131ページより)

新日本製鐵社長・会長、経済団体連合会(経団連)副会長、日本鉄鋼連盟会長。享年90(歳)。

こうした“表”の経歴よりも、脳の研究を仕事や生活に生かす方法の実践者や論客として注目されることが多かった人物。

東大の碩学・時実利彦博士に、脳について長く学んでいるといいます。

そんな大脳生理学研究者である武田は、大脳のカラクリを実際の仕事に応用したのだとか。たとえば人事部長時代には、課長以上2000人を超える人々の顔と名前と経歴を覚える努力をしていたというのです。

大脳生理学から見てリーダーは、六つのことを身につける修練が必要だそうだ。

「活力」「意志力」「責任力」「包容力」「知識力」「説得力」。

戦いの時、リーダーは全員から見られている。いや、見つめられている。 リーダーの弱気や逡巡や迷いは、すぐにフォロワーに伝染し、志気が衰える。 (133ページより)

そのため、リーダーは「見つめられている」という自覚を持って行動すべきだということ。


生き方の基本、ビジネスパーソンとしての心構え、リーダーとして心得るべきことなど、数々のことばを通じて多くのことを学べる一冊。

時代や流行に流されることのない普遍的な内容でもあるので、手元に置いておけばさまざまな場面で役立ってくれそうです。

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Photo: 印南敦史

Source: 日本実業出版社

印南敦史

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