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エゴと謙虚さ、強さと弱さ。いま求められる「アサーティブ・リーダー」

エゴと謙虚さ、強さと弱さ。いま求められる「アサーティブ・リーダー」
Photo: 印南敦史

“We are the Leaders” これは、スタンフォード大学の授業で私が必ず口にする言葉だ。本書でも、この言葉をまずお伝えしたい。 「私たちはみな、リーダーである」と。 (「プロローグ リーダーシップの原則『We are the Leaders』」より)

スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(スティーヴン・マーフィ重松著、サンマーク出版)の著者は、この「We are the Leaders」という考え方こそ、リーダーシップの基盤であり、原理原則だと信じているのだそうです。

日本生まれのアメリカ育ち。ハーバード大学大学院で臨床心理学を学び、博士号を取得。

東京大学留学生センター・同大学大学院の教育学研究科助教授を務めたのちアメリカに戻り、以後17年にわたりスタンフォード大学の心理学者として教鞭をとっているという人物です。

そうしたキャリアを軸として本書で展開しているのは、心理学的な根拠のあるリーダーシップ論

それをもとに、一人ひとりが自分のなかに埋もれたままにしているリーダーシップを発揮し、リーダーとしての役割を果たすなど、実際の仕事に役立てられるようになってほしいと願っているのだとか。

1章「Assertive Leaderが人を動かす ーー求心力ある先導者」内の、「『アサーティブ』であれーー心理学上、明確な指針」に目を向けてみましょう。

スタンフォードとコロンビア大学が出した「結論」

心理学的に見ると、リーダーはアサーティブ(assertive)であるべきだと著者は主張しています。

直訳すれば、「主張型」「積極性」の意。そして、いつもアサーティブに振る舞うというより、さまざまな効果が期待できるのは「アサーティブな人になる」ことなのだといいます。

事実、スタンフォード大学とコロンビア大学のリーダーシップを研究する心理学チームは、「優れたリーダーはバランスよく自己主張をし、チームを引っぱる人物」であると発表しているのだそうです。

ところが現実的にリーダーの多くは、チームメンバーから「いばりすぎている」と思われたり、逆に「頼りない」と思われるというような課題を抱えているものでもあります。

だとすれば、よいリーダーになるためにはどうすればいいのでしょうか?

この問いに対して著者は、「強からず弱からず中くらいのレベルで主張する」というよりも、「強く働きかける場面と、そうでない場面を知っておく」ことが重要だとしています。(78ページより)

「弱くてもいい」という極論がリーダーをダメにする

そして、「強いリーダー」「偉大な指導者」は年功序列の影響もある古い時代の産物だと断定してもいます。

だからこそ我々は、エゴと謙虚さのバランスをとっていく必要があるというのです。

とはいえ「弱さをありのままに見せる」という点が曲解され、誤った方向に向かってしまう事象も少なくありません。特にこの傾向は、日本において顕著なのだそうです。

具体的には、「リーダーは弱くてもいい」という極論に向かってしまうということ。

「できない、無理だ」と開きなおる程度ならまだまし。しかし弱さについて勘違いしたリーダーは、次のような言動をする場合もあるのだといいます。

ーー決断を下すべき場面で、「チームみんなで決めよう」と自分の意見を言わない。

ーートラブルが起きた際、「私にもどうしていいのかわからない」と大書から逃げる。

ーー致命的な失敗をしたあと、「みんなでやったことです」と責任を取らない。

“We are the Leaders”の原則を考えた場合、各チームメンバーもリーダーとして責任を持って行動すべきですが、それはあくまで「個人として」の話。

実際問題、ビジネスの現場においては、組織をまとめていくリーダーにこそ、チームのメンバーを育てたり指導したりする「役割」があるわけです。

それは、マネジャーやリーダーが果たすべき役割。

にもかかわらず「弱さについて勘違いしたリーダー」は、部下に対して困った言動をとってしまうもの。

ーー嫌われたくないので、厳しく指導すべきときでも、きついことが言えない。

ーー「メンバーの主体性を尊重する」と言って、業務を丸投げする。

ーーみんなを説得して仕事をしてもらうのではなく、自分が犠牲になって働く。

ーー部下が失敗をすると、「これは▲▲さんに任せたので私はわかりません」と逃げる。

こうした弱いリーダーがつくる組織は、必然的にリーダー不在となり、組織として機能不全に陥ることになります。

そんなとき弱いリーダーは「若い社員が育たない」と愚痴をこぼしているかもしれません。しかし育たないのではなく、そのリーダーが「育てていない」にすぎないということ。

そこで、積極的に主張し、人を動かす「アサーティブ・リーダー」が理想のリーダー像として求められるわけです。(79ページより)

それは「どんな人」だろう?

積極的な強い主張や姿勢は、自分自身が成長するために欠かせないものであり、組織内でリーダーとしての役割を果たす際にも重要。

そのため、もしリーダーで部下を持つ立場にあるのなら、積極的に主張し、人を動かすべきだと著者は言います。

エゴと謙虚さのバランスをうまくとり、弱さを内包した本当の意味での強さを身につける必要があるということ。それが、アサーティブ・リーダーだというのです。

■アサーティブ・リーダー:自分自身を尊重し、人を否定することなく、自分とチームの利益のために行動できるリーダー

(82ページより)

積極性は、自分の能力を最大限に引き出すもの。はっきりした主張は、成果を出すために不可欠。

そして、自信に満ちて一歩前を歩く姿は、部下や後輩のロールモデルともなりうるわけです。

それどころか顧客や取引先との関係においても、上司と部下との関係でも、アサーティブなリーダーが求められているのだといいます。

ただし、「アサーティブ・リーダー=カリスマ的な強いリーダー」と単純にとらえるのは危険。

その積極性は自分の成長のためであると同時に、まわりの人のために役立てなければいけないからです。

「自分、会社、部下のために価値を生み出す」という意識を忘れてしまうと、ひと昔前強権的なリーダーや、独りよがりのトリクルダウン上司になってしまうことになるでしょう。

つまりエゴと謙虚さ、強さと弱さ、バランスがうまくとれているのがアサーティブ・リーダーだということ。(81ページより)

「長い支持」が期待できる

自分自身を尊重し、人を否定することなく、自分の利益のために行動できるのがアサーティブ・リーダー。その強みや特徴は、次のようなものだといいます。

・ 自信・自尊感情があり、「息の長いリーダーシップ」が発揮できる

・ 聞く耳を持ち、「信頼」される

・ 自分の意見やアイデアを、しっかりと「主張」できる

・ 「誠実」である

・ 人を「責めない」

・ 「責任感」がある

・ 「チームに必要とされている」と感じられる

・ 「難しいメンバー」ともうまくやっていける

・ 「何を期待されているか」を理解し、実行できる

(83ページより)

これらの要素は、「リーダーとしてのポイント」というよりも「人間としての厚み」。

いわばアサーティブ・リーダーとは、チームをテクニックで引っぱっていく人ではないということ。存在自体でチームを引きつける、求心力のある人物だということです。(83ページより)


決められた「ひとつのルール」に従えばよかった時代は過去のものとなり、これからは自分の能力を最大限に活用し、最高のパフォーマンスを引き出す方法を各人が模索する時代。

そう考えれば、リーダーシップとは生き方であり、働き方だと著者は主張しています。

リーダーシップを身につけることで、自分を成長させることが可能になり、実際のリーダーとしてチームや組織で成果を出せるようになる。

それが、本書のいう「スタンフォード式 最高のリーダーシップ」。そして、その探求の大きな支えとなるものが「心理学」なのだというのです。

著者が研究してきた心理学的エビデンスに基づくという本書を活用すれば、「最高のリーダーシップ」を獲得できるかもしれません。

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Source: サンマーク出版

印南敦史

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