
「仕事や勉強への集中を邪魔する最大の原因は、私たち自身の頭のなかにある」と主張しているのは、『どんな仕事も「25分+5分」で結果が出る ポモドーロ・テクニック入門』(フランチェスコ・シリロ 著、斉藤裕一 訳、CCCメディアハウス)の著者。
宅配ピザの注文やソーシャルメディアの更新、デスクの上の片づけなど、ふと心にわいてくる欲求や思いによる中断(著者はそれを「内的中断」と呼んでいます)は、メールやフェイスブックの告知の着信音のような外的中断よりも頻繁に起こり、害も大きいというのです。
そんな中断を引き起こす要因に対処する最善の方法は、それらを受け入れたうえで穏やかに対処すること。
ポモドーロ・テクニックでは、そうした要因を紙やスマホ、パソコンに書き留め、ポモドーロが終わった後で対処する。
こうすることで、それぞれの要件が本当に重要なのかどうかを見極める時間が得られる。
短時間にあまりにも多くの内的中断が起こるようなら長めの休憩を取る、というのがポモドーロ・テクニックのやり方だ。(「2018年版への序文」より)
本書は、「ポモドーロ・テクニック」の開発者による初の公式本。
すぐに役立てられるノウハウが収められているわけです。
きょうはそのなかから、基本的な考え方と活用法をご紹介したいと思います。
要素と方法
著者によれば、ポモドーロ・テクニックの実践に必要なものは2つだけなのだそうです。
まずはキッチンタイマーですが、これをポモドーロと呼ぶことには理由があります。ポモドーロとは、イタリア語でトマトのこと。
著者が学生時代にトマト型のキッチンタイマーを使用していたことから、この名がついたのです。
そしてもうひとつは、「今日やることシート」。毎日の初めに、次の事柄を記入するわけです。

すなわち、「すべきこと」「時間」「理由」を視覚化することが大切だというわけです。(28ページより)
必要な労力の見極め
標準的なポモドーロ・テクニックは30分が1単位。25分間の作業と5分間の休憩から構成されるそうです。
まず用意しておくべきは、「仕事の在庫」シート。見出し(作成者の名前)と仕事の内容を書き込むためのスペース(数行ほど)を書き込んだものです。
そして「仕事の在庫」シートから、その日に片づけたいと思うものを選び出し、重要な順にそれぞれを「今日やることシート」に記入。たとえば、

といった具合です。
そしてポモドーロ(タイマー)を25分にセットし、「今日やることシート」内の最初の作業をスタートしますが、中断は不可能。25分間、作業に集中する必要があるわけです。
また、ポモドーロを半分や4分の1に切り分けることもNG。時間の「1原子」がポモドーロだということ。
タイマーが鳴ったら、それまでしていた作業項目の横の欄に「×」」印をつけ、3~5分間の休憩を。

タイマーが鳴ることは、その作業の完全な終了を意味する(ただし一時的な終了ということだが)。
「もうあと何分か」作業を続けることはできないーーたとえ、それで終わらせられるとわかっていても。(34ページより)
つまり3~5分間の休憩によって、自分を仕事から切り離すことができるわけです。
それまでの25分間に学んだことなどを頭に染み込ませ、次のポモドーロの成果を最大限に高めるためのリフレッシュの時間が得られるということ。
この短い時間に、仕事にかする話を同僚としたり、急ぎの電話をするなど、頭を使うことをするのは避けるべき。
なぜならそういうことをしてしまうと、意識を集中させて次のポモドーロを始めるための頭と心の準備ができなくなってしまうから。
休憩時間が終わったら、タイマーを25分にセットしてまた作業。
それが終わったら「今日やることシート」の横の欄にまた「×」印をつけ、ふたたび3~5分間の休憩を取ってから、新しいポモドーロを始めるわけです。

(32ページより)
なお、4回のポモドーロごとに作業を中断し、15~30分間の休憩を取ることを著者は勧めています。

頭のなかを整理し、学習したことを取り込めなくなることを避けるためだそうです。(36ページより)
作業を完了させる
作業が完了するまでポモドーロを繰り返し、それが終わったら「今日やること」シートのその項目を横線で消していきます。

ひとつの作業が完了したら、シートのなかの次の作業へ。やはり1回のポモドーロごとに休憩をはさみ、4回目のあとに長めの休憩を。

(39ページより)
記録
1日の最後には、完了したポモドーロをシートに記録。
なにをたどって記録するかは、自分がなにを見定めたいのか、どんなリポートをまとめたいのかによって変わるそうです。
最初は、ひとつの仕事を終わらせるのに要したポモドーロの数をリポートにまとめるのもいいとか。それぞれの仕事を終えるのに費やした労力を集計し、まとめ上げるという場合もあるからだといいます。
そのための項目欄として役立つのは、「日付」「(開始)時刻」「ポモドードの総数」「結果に関する付記」。
この最初のフォーマットは、まとめたいリポートの内容を表し、紙の上に簡単に書くことも可能。

なお、この段階で、「もし開始時刻をメモしていなかったら?」ということが気になるかもしれませんが、ポモドーロ・テクニックでは、作業を始めた時刻は必要不可欠ではないそうです。
重要なのは、実際に要したポモドーロ の総数を記録することだから。(40ページより)
改善
「記録」は、ポモドーロ・テクニックをプロセス改善のための自己観察と意思決定に役立てようとする人にとって、効果的なツール。
この1週間で仕事と自己開発のそれぞれに宛てたポモドーロの総数や、1日あたりの平均的ポモドーロ数を算出することが可能。
プロセスの各段階がすべて役立っているか、逆に省ける段階はないかという見極めもできるわけです。
たとえば、図9でマークは「音楽の学び方」という記事の執筆と推敲、凝縮に合計10ポモドーロを費やしている。これは多すぎるように思える。マークは、9ポモドーロ以下で同じ成果を達成したいと思うだろう。
そうすれば、差分のポモドーロを他の作業に宛てられる。 「次の記事はクオリティを維持しつつ労力はこれほどかけずに書きたい。
どうすればいいか。どこを省けるか。本当に役立ったのはどの作業か。もっと効率を高めるために、どう組み直せるか」(43ページより)
このような自問が、仕事や勉強のプロセスの改善、あるいは少なくとも改善の取り組みを可能にするというのです。
そして、1日の最後に記録をつけること(そして、そこから改善の方法を見つけ出そうとすること)は、1回のポモドーロで済ませるべきだと著者は記しています。(42ページより)
少ない時間と労力でよりよい結果を達成するポモドーロ・テクニックは、効率性と生産性を上げる方法として世界中のエグゼクティブに広まっているのだそうです。
働き方改革の影響もあって作業の効率化が必要とされる時代だからこそ、本書で解説されている考え方を活用してみるのもいいかもしれません。
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Photo: 印南敦史
Source: CCCメディアハウス
印南敦史