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大ヒット商品、バーミキュラ誕生秘話。倒産寸前の町工場が「食」から生活の変革も起こす

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大ヒット商品、バーミキュラ誕生秘話。倒産寸前の町工場が「食」から生活の変革も起こす
Image: Mugendai(無限大)

大手メーカーによって、すでに多くの商品が発売されている調理器具の世界。鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」はそこに突如として登場し、瞬く間に旋風を巻き起こしました。

倒産寸前だった町工場が、大ヒット商品を生み出した秘密とは。IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、その仕掛け人がインタビューに答えていました。

家業を継ぐのは嫌という気持ちを変えた、父と職人の誇り

記事に登場していたのは、バーミキュラを生み出した愛知ドビー株式会社代表取締役副社長の土方智晴さん

土方さんは、神戸大学卒業後にトヨタ自動車に入社。管理系の業務に従事し、大企業で安定した仕事をしていました。そんな土方さんを誘ったのは、その5年前に商社を辞めて家業を継いでいたお兄さんでした。

同社はもともと、土方さんたちの祖父が興した会社で、最盛期は80人規模の会社だったものの、時代の変化により、お父さんの時代には15人債務超過2億円という状況にありました。

しかも、小さい頃からよく喧嘩をしたお兄さんとビジネスをやるということで、土方さんは、当初「絶対に嫌だ」と思っていたそうです。

大ヒット商品、バーミキュラ誕生秘話。倒産寸前の町工場が「食」から生活の変革も起こす
Image: Mugendai(無限大)

そんな土方さんの気持ちを変えたのは、幼い頃の記憶。工場の敷地内に住んでいた土方さんたちは、同社の職人さんとキャッチボールなどをして遊んでもらっていたそう。

「うちの製品は世界一だ!」と誇らしげに語っていた職人さんたちの顔が業績の悪化とともに曇っていく姿を思いだし、あの誇りを取り戻したいという思いがわいてきたとのこと。

また、お父さんの売れなくなった製品でもアフターサービスを決してやめない姿に、自社製品と顧客への愛情を感じたことも印象に残っているといいます。

苦しい下請け時代を経て、バーミキュラを作るきっかけとは

家業とはいえ、職人の技術とは無縁であった土方さんたち。お兄さんは鋳物の学校に通って腕を磨き、土方さんは精密加工の修行を始めたそうです。

しかも、当時は不安定な下請け工場にすぎなかった同社。土方さんはその頃を振り返り、以下のように語っています。

きちんと大企業と結びついてそのプロセスの中に入っている下請けではなく、新興の下請けですから、ビジネスとして安定するはずがありません。

そのような会社が活路を見い出すには、直接お客様に製品をお届けできるBtoCの企業にならねばならない、部品ではなく最終完成品を作り出すメーカーとなる必要があったのです。

そんな土方さんがに変化が訪れたのは、ある日の書店での出来事。フランス製の鋳物ホーロー鍋で作るレシピ本が並んでいるのを見かけ、自社で扱う鋳物が若い世代に支持されていることに驚いたといいます。

3年の歳月と1万の試作品のうえ、ついに完成

大ヒット商品、バーミキュラ誕生秘話。倒産寸前の町工場が「食」から生活の変革も起こす
Image: Mugendai(無限大)

実際に鋳物ホーロー鍋をいくつか購入して料理をし、確かにおいしいと感じた土方さんでしたが、プロの視点から大きな弱点が見つかりました。それが、ふたと鍋との密閉性

土方さんはその仕組みについて、以下のように語っています。

鋳物は、1500度で溶かした鉄を砂でできた型に流し込み、常温まで冷やして固めます。その過程でどうしてもふたも、本体もわずかな歪みができてしまいます。

そうすると、ふたと本体の重なり合わさる部分に隙間が生じて密閉性が損なわれてしまい、素材の旨味栄養素水分が出て行ってしまうのです。

さらなる調査の結果、鋳物ホーロー鍋を作れるのは海外に数社しかなく、挑戦した日本企業も失敗に終わっていたことが分かりました。

土方さんは、鋳造技術精密加工技術を得意とする自社なら、フランス製を超える世界一の鍋ができるのではないかと感じ、挑戦を決めたといいます。

同社はその後、新しい鋳物ホーロー鍋の開発に没頭。実に3年間試行錯誤を繰り返し、1万もの試作品を作り、ついに完成に至ったのです。

わずかな費用で最大の広告効果を得る作戦。そして世界進出へ

いくら良いものを作っても、知ってもらわなければ意味がありません。しかし当時は小さな町工場。潤沢な宣伝費など望めない状況です。

そこで土方さんたちは、料理ブロガーにバーミキュラを使ってもらい、お金をかけない広報に注力。結果、おいしそうな写真が雑誌やテレビの取材を呼び込み、なんと発売前から3カ月待ちの商品になったそうです。

バーミキュラの大成功の後、炊飯器などの家電へと拡大していった同社のビジネス。その製品は、今では料理初心者からトップ・シェフにまで愛されています。

大ヒット商品、バーミキュラ誕生秘話。倒産寸前の町工場が「食」から生活の変革も起こす
Image: Mugendai(無限大)

生活の中心である「食」から世界を変える。土方さんは、自身の夢を以下のように語っています。

世界一食材を美味しくし、素材本来の味を楽しむライフスタイルを提供するものです。味付けではなく、人間の知恵と工夫の火の入れ方で素材を美味しくする、そこにロマンを感じます。

(中略)バーミキュラは、簡単にそれができることで、料理が楽しくなり、家庭が楽しくなり、それによって人を家に呼びたくなりますので、人間関係やその人のライフスタイルまで変える製品だと思っています。

先日、ついに世界進出も果たした同社が描くさらなる高みは、Mugendai(無限大)より続きをお楽しみください。


Image: Mugendai(無限大)

Source: Mugendai(無限大)

渡邊徹則

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