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「えらいね!」or「おいしかった?」野菜嫌いな子どもにかけたい言葉はどっち?

「えらいね!」or「おいしかった?」野菜嫌いな子どもにかけたい言葉はどっち?
Photo: 印南敦史

子どもが幸せになることば』(田中茂樹著、ダイヤモンド社)の著者は、医学部を出てから大学院で認知心理学や脳科学を研究してきたという医師・臨床心理士。

印象的なのは、脳の働きを突き詰めるなかで学んだことのひとつとして、「生き物の強さ」を挙げていることです。

いま、生きているすべての生き物は、気の遠くなるような長い時間のなかで、過酷な環境を生き抜いてきました。

そして私たちも、私たちの子どもも、その子孫であるわけです。

そう考えると、弱い存在である赤ん坊が「自分が生き残るためにはどうすればいいか」「自分が幸せになるためにはどうしたらいいか」という本能を備えて生まれてくることにも納得できるというわけです。

そして、このことを軸として、著者が本書で書きたかったことは2つあるのだといいます。まずは、子どもに「元気」でいてもらうには、親としてどう接するべきかということ。

そしてもうひとつは、育児はそれ自体が目的であり、手段ではないということ。いわば子どもと過ごすこと自体が、とても贅沢で幸せなことだという考え方です。

本書は、この2つのこと、つまり子どもが元気になる親の関わり方、そして、親が育児の幸せを感じられるようになるために、私がよいと思うことを、日常生活の親子の関わりの中で実践できる「言葉がけ」にまとめたものです。

子どもが赤ん坊の時期から高校生ぐらいまで、日常でよく見かける29の場面を取り上げて、「言いがちなことば」と「信じる言葉」を対比させて紹介していきます。(「はじめに」より)

著者によると「言いがちなことば」は、子どものためを思って口にしてしまいがちではあるものの、実は親が目先の安心を得ようとしていて、子どもの元気を奪うことば。

一方の「信じることば」は、子どもの元気を引き出し、親自身の気持ちもぐっと楽になることば。こちらは、子どもの幸せな自立につながることばでもあるといいます。

きょうはそんな本書の第2章「3~5歳 『その子らしさ』が出てくる時期」のなかから、“食べる”ことに関する2つのトピックスをピックアップしてみたいと思います。

野菜を食べられないとき…

言いがちなことば 「野菜も食べようね。健康にいいんだよ」

信じることば 「ふーん、野菜が苦手なんだね」

子どもの食べ物の好き嫌いは、親を悩ませることがらのひとつ。

小学校の給食でも、いまだに「全部食べ終わらないと遊びに行ったらダメ!」という方針を貫いている先生もいるかもしれません。

しかし、苦手な食べ物を子どもに無理に食べさせるのは、メリットよりもデメリットのほうが多いと著者は考えているのだそうです。

食べ物の好みは自然に変化するので、子どもが自分で「食べてみよう」と思うまで待ったほうがいいというのがその理由。

もっと大きく言えば、食事というのは大きな楽しみのもとでもあります。単に栄養をとるだけでなく、家族や仲間と心触れ合う機会であり、そういうことも含めた「生きていく力の源」だということ。

そういう意味では、人生にとって、非常に重要な要素でもあるのです。

(学校の給食に関しては)「うちの子は野菜が苦手なので、残すことを許してやってください」などと、あえて親が立ち入らないことも大事かもしれません。もちろん、アレルギーなどの場合はまた別ですが。

子どもの好き嫌いに関しても、「解決しないといけない厄介な問題だ」と考えるのではなく、「おや? この子は野菜を食べない子なのか。ふむ。おもしろいな」と、そういう向き合い方をしてもいいのです。

ラクに考えている親もいる。それでも、子供は元気に育っていくんだということを知っていれば、育児が楽しくなると思います。(66ページより)

なお著者は、子どもの野菜嫌いに関して、医師としての立場からひとつアドバイスをしています。

野菜が苦手な子であれば、果物を食べるという方法もあるということ。

野菜は草にできる(1年で枯れる)、果物は木にできる(毎年できる)、という1つの分け方があります。トマトやナスは、その年に蒔いた種から育って、実がなって、枯れます。みかんやリンゴは、毎年同じ木になります。(66~67ページより)

この分け方で考えると、イチゴやスイカは野菜となるわけです。

とはいってもビタミンやミネラルなど、栄養的に多少の差はあるでしょう。

しかし果物が食べられるのであれば、野菜がとれなくても、そんなに心配することはないというのです。

野菜を食べなくてもいいという意味ではなく、「もし野菜がすごく苦手で食べられないのであれば、果物で、ある程度はカバーできますよ」ということ。た

だし、ここでいう果物は「生の果物」のみ。たとえ果汁100%であったとしても、ジュースは不可だそうです。

ちなみに著者には4人の子どもがいるそうですが、みんな野菜が苦手で、中学生になるくらいまではほとんど食べなかった子もいたのだといいます。

しかし無理に食べさせず、それでもとくに病気もなく元気に育ったのだと振り返っています。そして成人した上の3人の子たちは、いまでは野菜も好んで食べるようになっているそうです。(61ページより)

こぼさずになんとか食べられたとき…

言いがちなことば 「えらいね!」

信じることば 「おいしかった?」

「ほめる」ということには、問題がある場合があるのだと著者は言います。

それは、「ほめる」ことと「アドバイスする」ことは似ているから。

「ほめる」とは、たとえば「それはいいね」というふうに「評価する」ことです。ここで注目すべきは、「それはいいね」はある意味において、「それじゃないのはよくないよ」と言うのと同じだということ。

そのままを受け入れるのではなく、「こういうものなら受け入れるよ」と基準を示している感じだというのです。

そう考えると、「この字はきれいだね! いいね!」という言葉は、「こういうのではない字はよくない」と言っているようにも受け止めることができるわけです。

繊細だったり、大人の顔色を伺うような傾向のある子ほど、ほめられることばかりをやろうとしてしまう傾向があるのだそうです。

そうした場合の問題点は、「本当に自分がしたいこと」と、「親にほめられるからすること」との境界線が曖昧になってしまうこと。

そして同じように、「お約束」にも問題が。

「じゃ、これはお約束だからね!」

「お片づけちゃんとするって、お約束したでしょ!」

たとえばこういう場合、決めているのは親です。つまり、「お約束」は命令になっているのです。

しかし、ほめられなくても、子どもは自らの行為のなかに報酬を受け取っているのだと著者は主張しています。

わざわざほめられなくても、自分が達成したことに満足かどうか、その気持ちは自分で味わっているものだということ。

たしかに言われてみれば、親だって昔は子どもだったのですから、「そう言われればそうだったなぁ」と思い当たるふしがあるのではないでしょうか。

「ママ、見て、見て!」というように、うるさく言う時期が子どもにはあります。そんな時には、「うん、見たよ」というように言ってあげればOK。

しかし、もう「見て!」と言わなくなったのに、いつまでも導こうとする必要はないということです。

うちの三男が3歳のころ。家族で夕食のカレーを食べていました。周りでは兄二人が先に食べ終わっていました。

三人はスプーンで食べていたのですが、最後に皿の隅っこに、小さくごはんが残っていたのです。それをそのままスプーンですくえば、確実に皿からこぼれるだろうという状況でした。

「まあ、こぼれるだろうなぁ」と思いながら私は見ていたのですが、子どもはなんと、犬みたいにがぶりと口を近づけて食べて、こぼさなかったのです。

それを見て、上の兄が思わず「えらいな。こぼさないで食べたね!」と言ったのです。そしたら三男は「褒めなくていいの!」と、怒って言い返しました。

彼は、不本意だったのでしょう。「こんな食べ方、お父さんやお兄ちゃんたちはしていないじゃないか! 自分は仕方なくやったのだ! いいと思っていないのだ!」と、言わんばかりでした。(81~82ページより)

このような状況で、親はどう声をかけたらいいのだろうかと考えると、本当に難しい問題ではあります。

ただし、どのようなことばをかけるにしても大切なのは、「上から目線のことばになっていないか」と意識しておくことだと著者は言います。

「親なのだから、上からでいいではないか」と思う方もいらっしゃるでしょうが、上から目線の話し方にしないことで、より対等に話すことが可能になるというのです。

だとすれば当然ながら、子どもも思ったことを口に出しやすいはず。

子どもに「発言したい」という気持ちを起こさせるように関わってあげるべきだということ。

なぜなら、親といい意味で対等に話すことができれば、将来的には仲間や先生にも話しやすい子になるはずだから。

そのため、このような姿勢も、子どもが「自分の言いたいことを言えるようになる力」を育てるための関わり方なのだと著者は考えているというのです。


「言いがちなことば」と「信じることば」を比較しながら話が進められるので、著者の考え方を無理なく理解できるはず。

しかも読み進めていくなかで、無意識のうちに「言いがちなことば」を使っていたことに気づくかもしれません。

そういう意味でも、本書は適切な気づきを与えてくれる良書であり、さまざまな意味において子育てをバックアップしてくれるのではないかと思います。

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Photo: 印南敦史

Source: Amazon

印南敦史

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