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精度は70%でOK。ソフトバンクで学んだ新しいリーダーの「決める力」

精度は70%でOK。ソフトバンクで学んだ新しいリーダーの「決める力」
Photo: 印南敦史

最高のリーダーは2分で決める』(前田鎌利著、SBクリエイティブ)の著者は、ソフトバンクなどで10年以上に渡り、現場のリーダー(プレイングマネジャー)としてチームを牽引してきた実績の持ち主。

成果を出し続けるためにもっとも大切にしていたのは、出来るだけはやく意思決定を行うことだったのだそうです。

会社からアサインされた目標が達成できない」「自分の仕事量が多すぎ、部下のフォローにまで手が回らない」といった悩みを抱えたリーダーの多くは、ひとつずつ順番に取り組もうとするもの。

しかし現実問題として、それでは時間がかかりすぎてしまいます。

そこで、意思決定のスピードアップに集中することで、一点突破的にチームの様々な問題をすべて解決へ導くのです。 私が1つの案件の意思決定に費やす時間は、2分以内です。 「そんな短時間で解決することなんて本当にできるの?」と疑問に思うかもしれませんが、工夫をすれば可能です。(「はじめに」より)

つまり本書では、そのために必要な考え方やメソッドを明らかにしているわけです。

きょうは第1章「新しい時代のリーダー『決める力』4つのルール」に焦点を当ててみたいと思います。

チームの動きを速め、部下のアウトプットの数を増やすために重要なのは、リーダーの意思決定のスピードアップ。そこが起点となって、すべてが好転しはじめるわけです。

そしてチームの生産性が向上していくと、チームの他のさまざまな問題が一気に解決へ向かうというのです。

ルール1:70%の精度で意思決定をする

意思決定をするときには100%を求めず、70%の精度で行うようにするべき。これは、意思決定に対する「スタンス」のルールなのだそうです。

なおスピードという観点から「精度」を定義すると、次のようになるのだといいます。

100%の精度 →自分が「完璧!」と思えるまで、期日ギリギリまで時間をかけて準備した状態(※期日直前の為、修正が難しいことが想定される)

70%の精度 →期日よりも前倒しにしたうえで、想定される上司からの質問に対応できるレベルに根拠となるデータがそろった状態

50%の精度 →期日よりも前倒しにしているが、上司が意思決定するには根拠となるデータが不十分な状態 (20ページより)

著者がマネジメント研修をしていると、「失敗をしたらどうしよう…」と、失敗を過度に恐れるリーダーに遭遇することがあるのだそうです。

しかしリーダーの失敗は、それほど恐れるものではないのだといいます。

なぜなら実際のところ、「取り返しがつかない失敗」につながる選択は、それほど多くないものだから。

最低限のリスクヘッジをしたうえで失敗を恐れずにやってみて、その結果、うまくいかなければ改善する

そのようなサイクルを回し続けることが、成果を出し続ける肝になるというのです。(18ページより)

ルール2:「外脳」を使う

これは、意思決定の「スピード」に関するルール。でも、どうやってスピードを上げればいいのでしょうか?

この問いに対して著者は、「判断材料を集めるときのスピードを上げる」ことの重要性を強調しています。

とはいえ、リーダーひとりが努力するだけでは限界があって当然です。そこで判断材料を集めるときに大きな意味を持つのが、「自分以外の人の力」をできるだけ借りること。

急速に進む情報化社会においては、ひとりで世界のあらゆる事象をキャッチアップすることなど不可能です。

しかも上のポジションになればなるほど、最前線の現場から離れがちになるため、最新の情報は入りにくくなるでしょう。

だからこそ、「リーダーが謙虚に人の話を聞ける姿勢」が大切になるという考え方です。

孫(正義)さんが使う言葉として、「外脳」があります。 「外脳」とは、「外部の脳」という意味です。

会議中、「社内でこの分野に詳しいのは誰だ? いますぐ、ここに連れてきてくれ!」と言うことがあります。

また、様々な分野のトップクラスの方と交流し、最先端の情報を積極的に仕入れるように努めていますし、過去にはツイッターでつぶやいたりして、外部からも幅広く様々なアイデアを集めたりしていました。

このように、孫さんは、限られた短い時間の中で、多くの「外脳」を活用しながら、アイデアや意見をスピーディーに収集しているのです。(28ページより)

自分の“ハードディスク”だけを頼りになにかを決めようとしても、参照できるデータに限りがあるのですから、なかなか決められなくても無理はありません。

そこで、自分の外側に“外付け”ハードディスクを数多く持つことが、意思決定のスピードを上げるためには不可欠だということです。(25ページより)

ルール3:「部下発信」の案件を増やす

次は、リーダーの意思決定の「種類」について。著者によれば、現場のリーダーが行う意思決定は、大きく2種類に分けられるのだそうです。

1. リーダードリブン

2. メンバードリブン

(45ページより)

リーダードリブンとは、チームの年間計画の作成や戦略策定、部下育成の方針などに関する案件の意思決定を指すもの。

部下に頼むことができないため、立案から材料集め、決断までのすべてをリーダーが行う必要があります。そのため時間がかかるうえ、非常に困難な作業。

一方のメンバードリブンは、メンバー(部下)が判断材料を集めたうえで提案してくれる案件の意思決定のこと。

部下が適切な判断材料を揃えてさえいれば、あとはリーダーがイエスかノーの判断をするだけなので、メンバードリブンの意思決定は楽だというわけです。

チームにおいて、リーダーが行う意思決定は多いものですが、そのほとんどがリーダードリブンになってしまうと、必然的に時間が足りなくなります。

そこで著者は、メンバードリブンの案件を90%にすることを目指していたのだといいます。

そうすれば、残り10%のリーダードリブンにより多くの時間を割いて集中して取り組むことができ、チーム全体の意思決定のスピードを格段に上げることができるからだということ。(45ページより)

ルール4:上司を「攻略」する

組織全体から見ると、現場のリーダーの大半は、あくまでレポートラインの中間にいる存在にすぎないもの。

組織のトップであれば、自分の意思決定のスピードが速くなればなるほど、物事を回すスピードもアップしていくことでしょう。

ところがレポートラインの中間にいるプレイングマネジャーの場合、自分ががんばって速く動くだけではスタンドプレーになるだけの話。

そこで、この4つ目のルールが意味を持つわけです。

自分の上司の意思決定を速くしてもらえるように上司を「攻略」するのです。

小規模な会社を除いて多くの会社の社内には、組織力学が働いています。

そのため、スピーディーな意思決定のために「上の人」がどういう人かを把握することは、避けて通れないのです。(50ページより)

なお、自分の上司を攻略する方法のひとつとして、著者は上司の「視点」で物事を見ることを紹介しています。

上司が案件を決済するときに、資料をどのように見ているのか、どんなデータを重視しているのかがわからないと、自分の説明に自信が持てなくなります。

その結果、データをたくさん並べるような理論武装に走りがちになってしまうもの。

そこで、上司の視点を知ることが、大きな意味を持つことになるのです。それをもとにアクションをとるようにすれば、仕事を任せてもらえることが増えていくからです。

上司の視点を知るために有効なのは、上司が出席している会議に同席すること。

たとえば、上司が出席する会議の資料をつくらせてくださいとお願いすれば、資料を作成したオブザーバーとして、自分で発表する機会がもらえるかもしれません。

上司の視点を自分のものにできれば、上司との交渉が円滑になりますし、自分がいざ上の役職に就いたときにも、そこでの仕事がスムーズに進められるということです。(49ページより)


これら「4つのルール」を踏まえたうえで、以後の章では、迅速に意思決定をするためのメソッドが具体的に解説されています。

著者自身の経験値がベースになっているだけに、説得力も申し分なし。

「より速く意思決定をしたい」「チームの成果を高めたい」とお考えのリーダーにとって、本書は大きな力となってくれることでしょう。

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印南敦史

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