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外見でなく「信念や習慣」をほめる。営業に欠かせない人とのつきあい方4選

外見でなく「信念や習慣」をほめる。営業に欠かせない人とのつきあい方4選
Photo: 印南敦史

近年は「働き方改革」の影響もあり、残業時間を減らす企業が増加しています。

それ自体は必ずしも悪いことではないとしても、問題は、残業時間が減っても仕事量は変わらないこと。

とくに営業職の場合、働き方改革によってノルマが軽くなるなどということはないわけです。

今現在、ほとんどの会社には「定時に帰って結果を出す」というノウハウはありません。 ということは会社だけに頼っていてはダメなのです。

これから生き残っていくためには、会社に頼りっきりにするのではなく、自分自身で何らかの方法論を学ぶ必要があります。

(中略) これからの時代に必須の営業スキルはまず、自分自身を「変化させられることです」。 時間の使い方、自らの提案の仕方、社内関係など、それぞれを見直し、改善していくことが重要です。

とりわけ営業職は、仕事のスタイルがある程度自由なので、変化させやすい環境です。(「はじめに」より)

そこで、働き方を自ら変え、これからの時代に活躍できる営業になるための方法を紹介しているのが、『営業の働き方大全』(菊原智明著、大和書房)。

著者は営業コンサルタントとして、大手企業からベンチャー企業までさまざまな業種の営業マンを指導してきたという人物。

自身がかつて、ハウスメーカーの営業として新卒入社から7年間も結果が出せず苦労してきた経験を持つからこそ、読者には同じような経験をしてほしくないのだといいます。

そのため本書には、より効率的に、そして少しでも楽に成果を出し、営業活動を楽しいものにしてほしいという思いが込められているわけです。

具体的には、営業ノウハウ(接客・トーク、商談・クロージング、営業レターなど)はもちろん、営業に必要な時間術、勉強法、パフォーマンスを上げる方法までが網羅されています。

きょうは第5章「社内コミュニケーション・接待術」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

人間関係を大切にしなければ一発屋で終わる

「天才的営業」だと言われた人がわずか数年で失速してしまったり、かと思えば「この人は営業として苦戦するだろうな」と思わせた人がジワジワと実績を積み上げ、5年も10年も長く活躍することになったり…。

そんな、予測できないことが頻繁に起こるのが営業の世界

しかし著者は、「売れ続ける営業」と「一発屋で終わる営業」の差は人間関係の差なのだと主張しています。

そのことに関連した事例も挙げられていますので、少し長めですがご紹介しておきましょう。

入社してすぐに結果を出した後輩営業がいました。 彼はハンター型営業で、契約を取るまでは熱心に行動するタイプです。

ただ、いわゆる釣った魚には餌をやらない、といったスタイルでした。当然クレームが多く発生しますし、時には処理が遅れ問題がこじれて大きくなったことも少なくありません。

引渡ししたお客様や、契約客に足を引っ張られ、実力の半分も発揮できなくなりました。

さらに問題だったのは、他の部門のスタッフとの関係です。 仕事を丸投げするため、どんどん社内に敵を増やしていきました。

結局、さまざまなところから足元をすくわれ沈没します。彼はその後二度と浮上することなく、ひっそりと会社を去っていったのです。本当に残念でなりません。

一方、結果を出し続ける営業はそういったおろかな行為をしないのです。お客様を大切にしますし、そのスタンスは契約後も変わりません。

むしろ商品を引渡した後の方が手厚くフォローするくらいです。また他部門の気持ちをよく理解しているため、丸投げなど絶対にしないのです。

時間を作っては他部門へ顔を出し、問題点や悩みを共有します。クレーム時だけでなく、日ごろからいい関係を構築しているのです。

ですから、ピンチの時、まわりの人たちが積極的に助けてくれます。(140~141ページより)

この事例からは、明確にわかることがあります。長期にわたって活躍する営業は、「他部門のスタッフの協力なしでは、結果を出し続けることなどできない」とはっきり理解しているということ。

営業は単独でできるものではなく、お客様との関係、社内スタッフとの関係なくしては長く活動できないわけです。(140ページより)

「力になりたい」と思われる人が欠かさない基本

長きにわたって活躍する営業は、他部門のスタッフといい関係を構築しているもの。

では、そういった人たちは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

著者によれば、まわりから協力される人は、例外なく感謝を形にしているもの。

たとえば誰かに助けてもらったとき、心のなかで「感謝しています」と思っただけでは相手に気持ちは伝わりません。

伝わりやすいなんらかの形で、感謝を示す必要があるということです。

つまり営業として長く活躍したいのだとしたら、日ごろから意識して感謝を伝える工夫をする必要があるということ。

たとえば会社のスタッフから助けてもらった際、「お礼はいいですから」と先に言われることもあるかもしれません。

しかし、そういったときこそ、外出や出張の際に、なにかちょっとしたものを買って行ってお礼をするべき。

仮に相手がものをもらうことを嫌うタイプだったとしたら、最大限のことばを送るだけでも意味があるでしょう。

あるいは、どうしても直接伝えるのが照れくさいのであれば、メールやSNSで伝えることも可能。

とにかく、なんらかの好意を受けたなら、必ず感謝の気持ちを伝えるべきだということ。

著者がこのことを強調するのは、会社に慣れてくるにつれ、こうした基本を忘れて社内関係を悪くしてしまう人が多いからなのだそうです。

逆にいえば、お礼を形にして伝えることのできる人だけが、まわりの人からの協力を得られ、結果を出し続けることができるということです。(142ページより)

「人の好きなもの」を知る

社内の関係を大切にすることは、とても重要。味方が少なくなれば、営業活動は苦しいものになってしまうからです。

わかりきったことではありますが、売れ出した途端、「俺が仕事をとってくるから会社が成り立っているんだ」などと言い出してしまうような人が少なくないのも事実。

しかし当然のことながら、そんなことを言い出せば、スタッフから総スカンされて誰も協力してくれなくなるでしょう。

その結果、成績がガタ落ちし、公開することになってしまったりするわけです。

だからこそ、感謝を形にすることが欠かせないわけです。

ただしその一方、「感謝を形にするといっても、相手が望んでいないものをあげても迷惑になるだけなのでは?」ということが気になる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ヒアリング能力が必要になってくるわけです。

先日、お会いした営業は「日ごろの雑談から、他部門の人に質問していろいろ聞き込んでいます」と言っていました。

通常の会話の中で「最近、何にハマっているのですか?」もしくは「休みの日は何をしていますか?」と質問します。

すると、その人の好みが見えてきます。こうして普段からリサーチしているのです。(144ページより)

プレゼントをしたかったとしても、「相手がなにを望んでいるか」を知らない限り喜ばれるものは提供できません。

そこで、相手のことを知るためにも聞き込みが必要になってくるわけです。とはいっても難しくはなく、雑談ついでに他部門の人に趣味趣向を聞いてみるだけのこと。

それだけで相手のニーズを聞くことができ、営業としてのヒアリング力も鍛えられることになります。

ほとんど会えない部署の人や新規クライアントなどの場合は、ブームになっている食べ物、地元の名物を選んでみるのもひとつの手。

「地元の名物なので」と言って渡せばそれを拒否する人はいませんし、それどころかきっと喜んでくれるはず。

それをきっかけに、交流のなかったメンバーとの仲が深まることも考えられます。(144ページより)

外見ではなく「信念や習慣」をほめる

とかく日本人は、ほめることが苦手だと言われます。また、わざとらしくほめられることが好きではないという方もいらっしゃることでしょう。

実際のところ、普段はあまり話をしない人が「きょうも素敵ですね」などと言いながら近寄ってきたら、多少なりとも警戒することになるかもしれません。

そこで著者は、自身に関するエピソードを絡めながらほめ方のコツを紹介しています。

ある経営者とお会いした時のことです。 話をしていると「菊原さんの営業に対する考え方は本当に素晴らしいですね。またブログを毎日更新しているのも凄いことですよ」と褒めてくれました。

自分の信念や習慣を褒められるのは本当に嬉しいものです。私は、一瞬にしてこの方のファンになりました。(146ページより)

「ほめる」というと、どうしても外見的なことになってしまいがち

ところが外見的なほめ言葉は、どうしてもうわべだけのように感じられてしまい、逆効果になることも少なくありません。

背が高い人に「背が高くていいですね」と言ったとたん、相手の顔色が変わることもありえます。

背が高いことをうらやましく感じる人は少なくありませんが、当人がそこにコンプレックスに抱いている場合もあるわけです。

だからこそ著者は、外見ではなく「信念や習慣」をほめることを勧めているのです。なぜなら中身をほめることで、相手との距離がグッと縮まるものだから。(146ページより)


従来の労働環境においては、「がむしゃらに働けば成功する」というような考え方が浸透していました。

しかしこれからは、それだけで長く結果を出すことは困難。

だからこそ、時代に見合った働き方を身につけてほしいのだと著者は訴えています。

営業職に就いている方や、あるいはこれから営業マンとしてスタートを切ろうとしている方にとっても、スキルを効率的に高めるために役立ちそうな一冊です。

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Photo: 印南敦史

Source: 大和書房

印南敦史

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