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肩こり・首の痛みが改善する座り方|アレクサンダー・テクニークの第一人者が直伝

肩こり・首の痛みが改善する座り方|アレクサンダー・テクニークの第一人者が直伝
Photo: 鈴木拓也

多くのデスクワーカーが、日常的に悩まされている肩こりや首こり。

マッサージ店に通っても、一時的にしか良くならず、「デスクワークをしているかぎり、治らないもの」と諦めていませんか?

でも、慢性的なコリが、ちょっとのセルフケアで改善されるとしたら、どうでしょうか?

生まれ変わったような気分になり、QOL(生活の質)も全般的に改善されることでしょう。

アレクサンダー・テクニークとは?

そのセルフケアとは、アレクサンダー・テクニークという手法。

海外では、約1世紀の歴史があるボディワークの1種で、「無意識下で起こる無駄な力み」(無駄力)をやめることで、様々な不調を解消するというものです。

俳優のキアヌ・リーブス氏やジャズボーカリストの鈴木重子氏など、数多くの著名人が実践していることで知られ、アカデミズムの世界でも効果は認められています。

今回は、アレクサンダー・テクニークの日本での第一人者、木野村 朱美さん(Aru Quality Pro代表)に、デスクワーク時の肩・首の無駄力がすっきり取れ、コリが改善されるコツについてうかがいました。

まずは4つの基本・思い込みを改める

木野村さんは、著書の『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』(池田書店)で、最初に理解すべき「4つの基本」があると述べています。

これは、ふだんわれわれが自分の身体について誤ってイメージしていることの代表格のようなもので、このイメージを正しい方向に持っていくことが大事だと力説しています。

その「4つの基本」とは、以下のとおり。

1. 座骨は股の間にある

座るときの土台となる骨が座骨。

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座骨(下に出っ張った部分)は股の間にある
Image: 『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』

これはお尻の側にあるとイメージしている人が大半ですが、実はもっと前側の股の間にあるのです(お尻で感じるのは、傾いた座骨の側面なのです)。

2. お腹の真ん中に背骨がある

背骨は、背中側にあると思っていませんか?

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背骨は腹部のほぼ中心を通っている
Image: 『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』

実は背中を触ると感じられるボコボコは棘突起で、背骨の本体はもっと奥。つまり腹部のほぼ中心を走っています。

背骨は背中側にあると思い込んでいると、「背面の筋肉が緊張して立っているだけで疲れてしまうと」と、木野村さんは述べています。

3. 食道のすぐ後ろに首の骨がある

首の骨は、首のどのあたりにあるかイメージできるでしょうか?

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首の骨は食道のすぐ後ろにある
Image: 『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』

正解は「食道のすぐ後ろ」。

「ゴクンと飲み込むところの後ろに、頭蓋骨の下からつながる背骨のラインがあることを意識」するよう、木野村さんは説いています。

4. 頭をふんわりのせる

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座骨、背骨、首の骨の積木の上に頭をふんわり乗せる
Image: 『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』

木野村さんは、座骨、背骨、首の骨を3つの積木と考え、その積木を正しく積み上げた上に頭を「ふんわりのせる」イメージで座るようアドバイスしています。

頭でもって、ソフトにバランスをとって姿勢を安定させるわけです。

まずは、上記「4つの基本」を頭に留め置いて、次の実践編へと進みます。

コリを生まない楽な座り姿勢とは?

「4つの基本」をふまえて、では具体的にデスクワーク時はどんな姿勢にすべきか。

モデルとなっていただいたのは、『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』の担当編集者の高橋さん。仕事柄、よく肩こりを感じるそうで、まず普段の姿勢で座っていただきました(下写真)。

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デスクワーク時のふだんの座り姿勢
Photo: 鈴木拓也

パッと見たかんじでは、何も問題がなさそうですが、木野村さんは「頭が前寄り、肩が丸まり、背中も丸まっていますね」と指摘。

多くの日本人がこうした姿勢なので、これが「普通」だと、思い込んでしまっているのだそうです。

木野村さんは、「まず真っ直ぐを作り、それから必要なことを行い、バランスをとっていきます」と言い、高橋さんにいったん立ってもらいました。

・坐骨を意識して座る

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木野村さんの指示に従い、座骨を意識して座る
Photo: 鈴木拓也

木野村さんは、「立ったときに2本の脚の間にあるのが座骨です。座骨を意識して座ってください」とアドバイスし、高橋さんに再度座ってもらいます。

「これだけで座り方が変わっていますね。このように納得し、理解してもらうことで変わりますから、私があまり身体をさわってどうこうする必要がないですね」と、木野村さん。

これで、最初の「積木」である座骨の部分が正しい位置に収まります。

・背骨の位置を整える

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両手を使い、高橋さんの背骨の位置を整える
Photo: 鈴木拓也

木野村さんは、「肩が前に寄っている状態になっていますね。ちょっと上に伸びるようにしましょう。背中の真ん中あたりが、ちょっと張っていますね。では、背中全体が少し前に行くようにしましょう」と、右手を胸元に左手を背中に当てながら、2つ目の「積木」の背骨を整えていきます。

・無理のない座り方

「これでだいぶ真っ直ぐになったはずです。どんな感じですか?」と聞かれた高橋さんは、「頭が普段の位置から後ろに来たという感じですが、こちらのほうが楽です」と答えます。

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アレクサンダー・テクニークの手法で改善された姿勢
Photo: 鈴木拓也

これで、ひとまず座り姿勢が改善されましたが、木野村さんは「背中が少し張っている感じです。それは両肩の前側がまだ縮んでいるので、それのバランスをとろうとして、そちらに力が入っているかもしれません」と指摘。

まだ改善の余地があるということですが、高橋さんの自覚としては、今のままでも結構な変化です。

デスクでスマホを見るときの正しい姿勢

では、この姿勢から、デスクの上でスマホを見るには、どうすべきでしょうか?

・坐骨から前傾する

「ここから前傾姿勢をとるだけです。頭を突っ込むのではなく座骨から前に行くのに注意してください」と、木野村さんからシンプルな答えが返ってきました。

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デスクワーク姿勢になるには、座骨から前傾する
Photo: 鈴木拓也

・無駄力を使う、いつもの姿勢

先に進む前に、高橋さんに、デスクでスマホに向かっているときのいつもの姿勢をとってもらいました(下写真)。

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スマホを見ているときの、ふだんの姿勢
Photo: 鈴木拓也

高橋さんは、「長時間スマホをいじっていると肩が痛くなり、腕や手がしびれてきますね」と話します。

皆さんも、心当たりがあるのではないでしょうか。

この姿勢を見た木野村さんは、次のように解説します。

「手に持っていたスマホを、疲れて机の上に置いたときに両手と一緒に上半身も前のめりになりますが、そうする必要がない動作ですね。それをやってしまうと、肩の前に猛烈な縮み込みが起きてしまいます。これは案外気づかない問題なのです。呼吸が浅くなるなど、いろいろな弊害が出てきます」

では、どのように改善すべきでしょうか?

「まず座骨で座ってもらって、そのまま上半身を起こしていきます。少しだけ前傾になりつつ、胸元は起こします。

この姿勢で、机にあるスマホを見るのに、どれぐらいうつむく必要がありますか。スマホをもう少し手元から遠ざけると、あるいはスマホを手に持つと、あまりうつむかずに済みますよね。

上半身は何十kgもあるのに立っていられるのだから、本来は、力は要らないはずなのですね。それを、一見楽な丸めた姿勢にすることで、体はしんどくなります」と、木野村さんは続けます。

・少し改善したスマホを見る姿勢

高橋さんの姿勢は、以下のように変わりました。

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改善したスマホを見るときの姿勢
Photo: 鈴木拓也

高橋さんは、「いつもやっている姿勢に比べて、こちらの方が違和感はなく、無理をしている感じはしないですね」と言います。

・さらに、頭を上に伸ばす

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頭を少し上に伸ばして、さらに改善
Photo: 鈴木拓也

「もう少し改善してみましょう。本来の高さより、背を低くしているので、ちょっとだけ座骨から頭までの長さを上に伸ばしますね」と話しながら、木野村さんは高橋さんの頭に手を当てつつ、姿勢をもうちょっと変えていきます。

「スマホの画面に顔を突っ込むようにしている人は多いですが、そうする必要はないですよね。もし、視力の問題でもっとスマホを近寄せたかったら、スマホを持つ手を顔に近づけましょう。

・正しいスマホを見る姿勢

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頭の部分も改善されたうえで、少し前傾してスマホに向かう
Photo: 鈴木拓也

スマホを持つ手が疲れて、デスクに置きたくなったら、背中を丸めることなく、ほんの少し前傾するだけ。これだと内臓も圧迫されませんし、呼吸も妨げられず、代謝にも良い姿勢です」と、木野村さんは付け加えます。

ノートパソコンを使うときの姿勢はこうする!

次は、ノートパソコンに向かう時の姿勢についてご教示いただきました。

「ノートパソコンも基本は同じです。ディスプレイを直角に近い角度にすると、顔を突っ込みがちになるので、ディスプレイをもっと向こうに倒すことを心がけるとよいでしょう」

さて、以下の写真は高橋さんのビフォア。「結構、猫背モードですよね」と、高橋さん。

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高橋さんがノートパソコンに向かうときの今までの姿勢
Photo: 鈴木拓也

木野村さんからのアドバイスは、「座骨から背骨をぐんと伸ばしていって、顔は少し顎を引きます。これで少しうつむくといかがでしょうか。ちゃんと画面を見て、キーボードもタッチできますね」

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ノートパソコンに向かう姿勢が改善
Photo: 鈴木拓也
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改善後の姿勢を後ろから見たところ
Photo: 鈴木拓也

「やはり変わりますね。こちらのほうが楽です」と、高橋さん。

木野村さんは次のように続けます。

「この姿勢が唯一の正解だととらわれる必要もないのです。私はよく"体が無理を感じない姿勢なら何をしてもよいのです"とアドバイスをしています。

例えば、乳児を抱えたお母さんなら、どうしても背中は丸くなるでしょう。

ただ、そういう姿勢を取りたい理由が特にないのであれば、一番省エネのバランスのとれた姿勢でいましょう」

また、次の注意もいただきました。

「いったん姿勢を改善しても、間もなくすると元に戻ってしまうことは、よくあります。何十年も続けてきた姿勢のほうが慣れているので、これが楽だと思い込んでいるのですね。4つの基本を随時思い出し、良くない姿勢をしていると気がついたら、都度直していくのが大事です


著書の『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』には、より深堀りした理論に加え、「路上で靴紐を結ぶ」とか「映画館で座る」といった、様々なシチュエーションに応じて、無駄力を除いた楽な姿勢のとり方がイラスト入りで解説されています。

日常のごく普通の動作が、しんどいと感じることが多い方は、本書を読んで改善していくとよいでしょう。

また、木野村さんのレッスンを直接受けてみたいという方は、Aru Quality Proの公式サイトより申し込みができます。

「不調を抱えてやってきて、レッスンから帰る頃には治っている人は多い」そうで、あなたの抱えるしんどさが劇的に改善されるかもしれません。


木野村 朱美さん

木野村朱美さん
Photo: 鈴木拓也

株式会社Aru Quality Pro 代表。人間が持つ本来の能力が出せる身体の使い方を伝えるアレクサンダー・テクニークの専門教師。

京都・大阪をメインに、美術、茶道、太極拳、弓道、その他のワークから得た理論を取り入れながら、個人レッスンやグループレッスンを行う。約20 年間で、1万人以上のカラダの悩みに触れ、「無意識下で起こる無駄な力み」をやめる方法を精力的に指導。

鈴木拓也

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