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HOW I WORK

獣医師になる夢を捨てゲームの世界へ。 人気ビデオゲーム『Heroes of the Storm』のPD、カエオ・ミルカーさんの仕事術

獣医師になる夢を捨てゲームの世界へ。 人気ビデオゲーム『Heroes of the Storm』のPD、カエオ・ミルカーさんの仕事術
Image: Lifehacker US

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回はビデオゲーム『Heroes of the Storm』のプロダクション・ディレクターを務めるカエオ・ミルカー(Kaeo Milker)さんの仕事術です。

カエオ・ミルカーさんは、長年Blizzard Entertainmentで積極的にキャリアを築いてきました。品質管理、施設管理、人材採用を担当し、現在は、同社の大きなMOBAフランチャイズである『Heroes of the Storm』のトップをしています。

『Heroes』という船の船長という立場ですが、船長室にどっかり座っているわけではなく、多岐にわたる仕事をこなしてあちこち飛び回っているので、なかなかつかまえにくい存在です。そんなカエオさんに、今年のBlizzConのことや、好きなことをキャリアにしていくためのアドバイスを聞いてみました。

氏名:カエオ・ミルカー

居住地:カリフォルニア州アーバイン

現在の職業:『Heroes of the Storm』のプロダクション・ディレクター

現在のPC:Blizzard仕様のマシン

仕事の仕方を一言で言うと:トリアージ方式

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Blizzardはかなりリベラルで、ペットの犬や猫を連れて出社できます。
Photo:Kaeo Milker

── まず、略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?

ここに至るまでは長く険しい道のりでした。獣医師になりたいと思ったので、大学では動物科学を専攻しました。今の私とはかけ離れた道です。でも、私はビデオゲームもBlizzardも大好きです。

Blizzardは私には高嶺の花でした。南カリフォルニアに住んでいた私は、Blizzard EntertainmentがビデオゲームシリーズWarcraft 3のゲームテスターを募集していることを知り、獣医師になる道を捨てて、Blizzardの扉を開いてみました。

ビデオゲーム開発がどんなものなのか見当もつきませんでした。当時は、ゲーム業界はまだ黎明期だったので、その道の人材は少なく、ゲーム開発の道を歩むために学校で学べることもありませんでした。

私はゲーム業界が気に入り、どんなところか知りたい、この業界の一員になりたい、と思いました。それで基本的に何でもすることにしました。みんなゲームのテストしかしていなかったので、私は人材採用兼施設管理という不思議な役目になりました。

与えられたすべてのチャンスには、最善の仕事で応えるようにして、出会ったすべての人に親切に接し、協力を惜しみませんでした。私のことを、働き者で感じが良く、一緒に働くには望ましい人物だと思ってもらえるように努力しました。

会社が成長するにつれて、幅広いチャンスに恵まれるようになり、責任者としての管轄がどんどん増えていきました。すべてがうまく回るように最善を尽くしました。おかげで、年々、責任が重くなり、この組織の中での私の価値が証明されています。努力が報われていると感じています。

──最近の1日の流れを教えてください

典型的な月曜日をご紹介します。

私の月曜日は、会議に次ぐ会議です。会議は短くて効果的なものにしたいと思っています。中には情報共有が目的のものもあるので、私は壁にとまっているハエみたいになって、みんなの話しに注意深く聞いています。

多くの会議は、クリエイティブなことに関する課題やゲームに関する優先順位付けです。外部チームとのやりとりも多いので、私は『Heroes』に特化したデザイン会議からウェブや携帯電話のチームとの会議や今後予定されている新しいフォーラムに関する会議へと飛び回ることになります。

それから直属の部下がたくさんいるので、彼らと1対1の面談もたくさんします。内心は直属の部下に限らずチーム全員と話せたらいいのにと思っています。

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

Blizzardでは、Confluenceを多用しています。議事録、人々と直接対話するステージの設定、チーム全員と何かを共有するとき(アート、デザイン、スケジューリングなど)、すべてがConfluenceに組み込まれているので、社内で情報共有したり、その情報をトラッキングしてコメントできるようになっています。

社内で開発されたツールもたくさん使っています。代表的なものの1つはPlay Testerです。これは、デザインチームが既存の制作物の中にあるもの全部のリストを作成してチェックしてもらい、プレイしてもらうとき使います。そのゲームの特定の領域に人々の注意が集まるようになっています。

このツールがあると、情報を得られるだけでなく、正確な正しい環境で適切な制作物をすばやくダウンロードしてプレーできるので、安心してゲームをプレーて、チェックできます。

── 仕事場はどんな感じですか?

仕事場にしているオフィスには椅子がたくさんあります。オフィスにいるときは、次から次へと会議をしたい人たちが入ってきます。ドアはたいてい開けておくので、みんなぶらりと入ってきて、いろいろな話をしていきます。

私のホワイトボードには何が何だかわからないぐらいたくさんのことが書いてあるので、消していません。よく覚えていませんが、何か美しいと同時に怖いことをした気がします。

ゲームの制作に関しては、Excelを使ってトラッキングや視覚化をしています。ゲームのビジネスとも交わる点があるので、Tableauから出てくるゲームそのものに関するデータ、ゲームビジネスに関するデータなどを分析しています。いつでも質問に答えられるように、数字の処理もしています。Excelは、最適なツールです。

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Photo: Kaeo Milker

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?

私のいる世界は非常に混沌としており、やるべきことが山ほどあるので、基本的なToDoリストを紙に手書きして使っています。

私の場合、「トリアージ」とは、座って優先順位をつけることを意味します。1日にやるべきことがたくさんあるので、絶対にやらなければならないものを識別する必要があります。

ですから、意識的にやらないことを決めて、どうしても今日中に仕上げなければならない重要度の高いことに集中するようにしています。ToDoリスト以外はすべてデジタルなんですけれどね。

── メール処理に関するベストハックは何ですか?

長い間、私は受信メールの仕訳ルールをセットしていました。私はメールのCCに入っていることが多いので、受信メール数は相当なものです。

それで、受信メールを仕分けるルールを、文字通り何千も設定していました。私は全然メールを削除しないので、17年間どんどんたまる一方でした。でも、ある時点でメールが消えてしまうようになったので、仕訳ルールは全部解除しました。

今は、時代を逆行するようですが、手動でフィルタリングするようにしていて、結局事態は改善しました。また、これを実践しているせいで、どのメールに返信するか、どれを読むか、何を脇に置いておくか、これまでより気をつけるようになりました。

──仕事場で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものがあれば教えてください

『Heroes』は常にパッチを作ってリリースしています。いつも同時並行で開発して3つから5つリリースしている感じです。実際に広く公開する前に、どこで止めなければならないので、ゲートを閉め始めます。

これは、多くの開発者がしていることですが、私たちはこれを「ゴールデンチケット」に至る前の「シルバーチケット」と呼んでいます。いったんゴールデンチケットを手に入れてしまうと、許可を取らないと何も変えられなくなります。それで、前段階のシルバーチケットを設定しました。

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Photo: Kaeo Milker

現在、このプロセスはとても厳しく監督されています。基本的にゲームのパッチは定期的にリリースされ、期日厳守です。問題は、パッチには必要なことはすべて盛り込まれているのか。それとも、時間が足りなくて見切り発車したのかですね。今後もパッチを出し続けるのですが、どういう中身のパッチなのかが重要なのです。

このプロセスを経て、一般公開される最終版ができるのですが、このプロセスは並大抵ではありません。多くの人から散々聞き取りをして、あらゆる栓を締め、リリースに至ります。

これで終わりということには絶対になりません。今日そのプロセスをスタートさせると、明日はゴールデンチケットを手に入れるというぐらいの速さです。

これは、『Heroes』の各リリースのタイミングがとても近いせいです。当社のライブ・オペレーション・チームは、永久に最終版のリリースをしている感じです。

最終版リリースを決定する役目は誰がやっても辛いと思いますが、みんな慣れていてすごくうまくやってくれています。

── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?

ゲームを作るには大勢の人の力が必要です。私は、自分のリーダーシップチーム、自分のチームのディレクター、プロデューサー全員も頼りにしています。私はプロダクション・ディレクターでもあるので、ゲームのパイプラインと実際に開発するときの構造と戦略を監督しています。

アソシエイトプロデューサーからリードプロデューサーまで、あらゆるレベルのプロデューサーのチームがいて、タイムラインを推進しながら、ブリザードにとって特別なものを維持してくれていると思います。完璧な状態になるまで、出荷しないことにしています。

『Heroes』はとても速い速度で変化するので、Blizzardのクオリティを維持しながら、信じられないほど素早く動いて、常に新しいものをリリースしていかなければなりません。

こうなるともう、一種の錬金術ですね。私たちは意識もワークフローもツールも変えなければならず、それに応じて、何もかも変えなければなりません。

そして、プロダクションチームがすべてをつなげる接着剤になってくれています。おかげで、みんな誠実でいられます。

Blizzardでは、「これをしなさい」とか「今すぐしなさい」というような権威的な物言いはされません。私は、「チャンスを可能にする人間」と自分を含めた全員を呼んでいます。

物事をスピードアップし、行く手を阻む障害を取り除き、人々を解除し、コミュニケーションを促進し、仕事を進めていくためにできること探すのです。

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2018年のBlizzcon
Photo: David Murphy

──仕事の合間に何をするのが好きですか?

私にとっては、Blizzcon(Blizzardゲーム用のビッグイベント)がギアシフトのようなものです。

我が社のゲーム開発のためになることをたくさん話せる場ですし、私にとってはご褒美みたいなものです。年に2、3回、最大のプラットフォームで、いろいろな人たちと交流できるのですから。

Blizzconに実際に参加すると、魔法の時間の始まりです。プレーヤーたちと出会い、ジャーナリストと話し、eスポーツを観戦する。それが全部現実のことになるのです。

もう仕事でしているというより、仕事の結果が出て、それをお祝いする特別な時間です。

──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

私の両親は、自分の仕事が大好きで、仕事をするのはお金のためではありませんでした。毎日その仕事をしに行くのが楽しくてたまらないので熱心に働いていました。

獣医になる勉強中の私は、「私は動物が大好きだから、獣医のプロになるのは正しい選択だ」と思っていました。でも、ビデオゲームの道に進むか、獣医の勉強を続けるか迷う瞬間に遭遇しました。

それで、両親に話すと、「情熱を注げることを追いかけなさい。私たちも常にそうしてきたのだから、お前にもそうしてもらいたいよ」と何度も言われました。

そのときの私は、自分の道を変えるために、人生に関わる難しい選択をしなければなりませんでした。ゼロから始めて、将来の保証もまったくありませんでした。でも、両親の後押しがあって、私は変わりました。

──挑戦中の課題はありますか?

同じことは二度としません。常に「新しいことを試してみよう」という姿勢です。

仕事の中で、そういう部分はワクワクするので、大好きです。ゲーム開発を極めてしまったら、本当に退屈すると思いますが、挑戦は決して終わることがありません。

一方で、「やった!極めたぞ!」という満足感は永久に持てないでしょう。でも、より良いものを求め続け、着実に向上し続けていると思うと、とても満足感があります。

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Image: Lifehacker US

Source: Heroes of the Storm

David Murphy – Lifehacker US[原文

訳:春野ユリ

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