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チャンスは浜松にある? 日本で「ものづくりベンチャー」が成功するために必要なこと

Sponsored By 浜松市

チャンスは浜松にある? 日本で「ものづくりベンチャー」が成功するために必要なこと
左から)スズキ株式会社 熊瀧潤也氏/株式会社リバネス 佐野卓郎氏/ヤマハ株式会社 畑紀行氏
Photo: 木原基行

ベンチャー企業といえば、すぐに思いつくのはウェブ事業やアプリ開発などを手掛ける「ITベンチャー」でしょう。しかし、ITを活用した新しいビジネスの登場が落ち着きを見せ始めている今、注目を集めているのが「ものづくりベンチャー」

独自の技術によって事業を展開するものづくりベンチャーに対し、ベンチャーキャピタルからの投資額や投資件数は世界的に拡大しているそうです。

一方、実際に製品化・量産を行っていくことは、ハードルが高いのも事実。大手メーカーや町工場など、既存の製造業との連携は不可欠かもしれません。

そこで、ものづくりベンチャーに手を差し伸べているのが静岡県浜松市。シリコンバレーのような起業の街を目指す「浜松バレー構想」を掲げ、さまざまな起業支援の取り組みを行っています。

浜松市は大手ものづくりメーカーが本社を構えており、町工場も多い土地。ものづくりベンチャーとは相性が良い街です。

今回は、ものづくりベンチャーの支援を行う株式会社リバネスの佐野卓郎氏と、浜松市に本社を構える大企業、ヤマハ株式会社の畑紀行氏、スズキ株式会社の熊瀧潤也氏の3人が、「ものづくりベンチャー」をテーマに鼎談を実施。

成功するためのポイントや大企業とものづくりベンチャーの関係、浜松とものづくりベンチャーの相性など、多岐にわたった話を前後編でお届けします。

前編ではものづくりベンチャーの課題や現状、起業のためのサポートなどを中心に話が進みました。

ITベンチャーからものづくりベンチャーへ

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株式会社リバネス 取締役 執行役員CLO 佐野卓郎氏
Photo: 木原基行

── 「ITベンチャー」に対応する形で「ものづくりベンチャー」といった表現が使われていますが、明確な定義がありません。まず、それぞれが考える「ものづくりベンチャー」とはどういったものか、お聞かせ下さい。

リバネス・佐野氏「ディープテック」という言葉をご存じでしょうか。これは、技術的なイノベーションや科学的発見、研究を礎とするテクノロジーで、機械工学やAI、バイオテクノロジーなどさまざまな分野が含まれます。

現在では「リアルテック」と呼ばれるものがありますが、これは、これまでになかった技術や既存技術の新しい活用などによって、社会の課題を解決する研究開発型のテクノロジーのことです。

私たちは、こうした「リアルテック」などによって、新しい価値を創造して、社会の課題を解決しようとするベンチャーをものづくりベンチャーとして捉えています。

そういった意味では、ハードの製造はもちろん、バイオテクノロジーやIoTなどの分野も、ものづくりベンチャーに含まれるでしょう。

スズキ・熊瀧氏:最近、よく「モノからコトへ」という言葉を聞きますが、確かに、コトを意識しないとモノが作れないと感じています。

我々スズキは、ガチガチのものづくり企業です。社員もみんなハードウェア脳。そんな弊社の社長が常々口にしているのが、「いいコトを提供するためには、モノをしっかりと磨く必要がある」という言葉。

我々がお客様に対して出すモノ=クルマを磨くことで、お客様のコト=体験をより良くしていこうという考え方です。そうした広い意味で、ものづくりベンチャーは体験の提供なども含んでいるべきだと思います。

ヤマハ・畑氏:私はソフトウェア技術者ですが、ソフトウェアもものづくりだと考えています。一番大事なのは、いずれも価値をつくることです。

ソフトウェアに実体はないかもしれませんが、なにかを生み出すときのワクワク感は、旋盤を回しているときもプログラムを組んでいるときも同じ。そういった意味では、ハードウェアでもソフトウェアでも、結局はすべてがものづくりにつながります。

ものづくりベンチャーが増えている理由

── ものづくりベンチャーの定義はさまざまですが、いわゆるハードウェアをつくるベンチャー=ものづくりベンチャーへの投資額や件数は、世界的に拡大しているというデータ(PDF)もあります。この理由をどう思われますか?

リバネス・佐野氏:これまでIT系のベンチャーが多かった理由は、製品やサービスを開発するコストがあまりかからないから。極端な話をすれば、パソコン1台あれば、ある程度は開発できます。しかも、それほど時間をかけずに。

成功すれば、数年でそこそこの規模の会社にできるわけです。出口が見えやすいので、投資家やベンチャーキャピタルも投資しやすい。

一方、ものづくり系ベンチャーは、初期投資などのコストは高額だし、製造にも時間がかかる。そのうえで成功するかわからないとなれば、投資家やベンチャーキャピタルも出資しにくい。出資がなければ、ベンチャーがゼロから始めるのはハードルが高いですよね。

ただ、最近は第4次ベンチャーブームとも言われており、ベンチャーに出資する機関なども増えて、後押しする風潮もあります。自治体も以前に増して協力的になっています。

そういった状況のなかで、ITベンチャーだけでなく、ものづくりベンチャーにもお金が流れ始めたという面もあるでしょう。

懸念しているのは、ややファンドバブルの様相も出てきていること。このバブルが終わったときにも、ものづくりベンチャーが元気に創出されて、活躍して、大きくなって次なる産業を作れるか。それが今後の課題だと思います。

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ヤマハ株式会社 ブランド戦略本部 マーケティング統括部 UX戦略部 UX企画グループ リーダー 畑紀行氏
Photo: 木原基行

ヤマハ・畑氏:ものづくりベンチャーが注目されるようになった理由のひとつは、ITでの起業が飽和したからではないでしょうか。個人的には、振り子がソフトウェアに振り切れ過ぎていたのだと感じます。

アプリ開発は成熟して、ひとつの大ヒットでお金を儲けるのは難しくなっています。そういった状況で、ハードウェアの面白さや大切さが再確認され始めた気がしますね。

スズキ・熊瀧氏:やっぱり人間は、ものを触って実感したい。目の前にものがあると、つい触ってしまうでしょう。特におじさん世代には、目に見えない世界は、なかなかしっくりこない。

実体があるものを持ちたいと思うのは、人間の本能的な欲求ではないでしょうか。ものづくりベンチャーに注目が集まっているのは、そういった部分に回帰しているのではないかと感じます。

── 浜松市は4月から、起業初期段階のベンチャー企業などの資金調達を支援するファンドサポート事業を開始するそうです。こうした自治体の取り組みも、ものづくりベンチャーの起業を後押しすることになりそうです。

ヤマハ・畑氏:佐野さんも話したとおり、ハードウェア開発にはお金がかかる。特に大きいものを作ろうとすると、莫大な金型代がかかります。

下手したら数千万円になることだってあります。一度試して失敗したら、また数千万円。これは本当に大変です。

浜松市は「浜松バレー構想」を掲げて、起業の街を目指して、さまざまな起業支援の取り組みを行っていますよね。

そのなかのひとつに、「浜松市でものづくりベンチャーを起業したら、金型は失敗しても一回分は保証します」なんて施策があったら面白いかもしれません。

三社のものづくりベンチャーとの関わり

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スズキ株式会社 経営企画室 コネクテッドセンター 本社担当 部長 熊瀧潤也氏
Photo: 木原基行

── スズキは1909年に織機メーカー「鈴木式織機製作所」として浜松で創業し、戦後に自動車製造へと進出しました。

そういった意味ではトヨタと同じ流れです。 また、ホンダも同じく浜松が発祥です。今は3社とも大企業となってしまいましたが、自動車業界でも、ものづくりベンチャーが成功する可能性はあるのでしょうか。

スズキ・熊瀧氏:車の基本は、走る、曲がる、止まる。これに関しては、 先行企業が長らく技術を培っているので、おいそれと他業種が入れる部分ではありません。

しかし、EVの進化や自動運転の開発、シェアリングサービスの普及、交通のIT化といった流れのなかで、我々が培ってきた強みがクルマ作りに生かされないこともあり得ます。

例えばエンジン。EVはモーターで動くのでそもそもエンジンが必要ない。当然、EV分野へのものづくりベンチャーの参入はあるでしょう。

── 浜松市では、自動車産業に携わる中小企業の固有技術を活かし、次世代に向けた地域産業の活性化と支援を目指す次世代自動車センターを設立しました。ここにはスズキも協力しています。

スズキ・熊瀧氏:自動車には約3万点の部品が使われています。センサーなどの技術が進歩するのに伴い、内製部品の割合が下がってきています。それらの部品は中小企業を含む外部のサプライヤーさんに提供していただいています。

しかし、次世代自動車では、必要な部品が変わってきます。それらに対応していただくために、輸送機器業界が今後目指す方向をお伝えする役割が「次世代自動車センター」にはあります。

もうひとつの役割は、中小企業が自動車に使っている技術をほかの分野にも使えないかアドバイスをしたり、中小企業同士の連携を手助けしたりすること。オープンイノベーションの要素も持っているといっていいでしょう。

── その他、スズキとしてオープンイノベーションは行っているのでしょうか。

スズキ・熊瀧氏:まだ公式には行っていません。ただ、以前月にローバー(探査車)を送るプロジェクトにチャレンジしているベンチャー企業に協賛し、軽量化や金属と金属が接触したときの反応などの知見について技術的な意見交換をしたこともありました。

── ヤマハではどういった取り組みをされていますか?

ヤマハ・畑氏:一昨年はヤマハアクセラレーターというビジネスコンテストを開催しました。これは、ベンチャー企業とヤマハのアセットを掛け合わせて、新しい事業を創造するというもの。

優秀賞を受賞したコードミーは、時間・シーンに対応するパーソナライズアロマを毎月届けるベンチャー企業です。こことは今でもお付き合いがあります。

「香り」と私たちの主事業である「音」は、両方とも感性の領域で親和性が非常に高い。2つを組み合わせたイベントも開催しています。

例えば、ヤマハミュージックエンターテイメントに所属するアーティストのライブ会場でアロマを散布して、香りとライブを合体。

まさに、モノによって印象深いコトを演出しているケースだと思います。

── リバネスでは、ものづくりベンチャーに対してどういった支援をしていますか。

リバネス・佐野氏:代表的なものでは、テックプランターというものづくりベンチャーのためのシードアクセラレーションをやっています。

実は、 県内で発足した「静岡テックプランター」の第1回は浜松市で開催しました。僕は静岡県出身で、どうにか静岡県内でやれないかと動いていたのですが、浜松市が興味を持ってくださってバックアップしていただきました。

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Photo: 木原基行

── 「テックプランター」 とは、具体的にどういった取り組みなのでしょうか。

リバネス・佐野氏:起業前の個人や大学の研究者を対象とした、リアルテック領域の事業シーズを発掘・育成する取り組みを行っています。

簡単にいえば、まだ事業として成立していない段階のステージにあるアイデアから、ベンチャー起業の第一歩を踏み出す手助けをするんです。0を0.1にする最初の最初を後押しする仕組みは多くないので、そこを担っています。

また、 グループ会社においては「センターオブガレージ」という取り組みも行っています。これは、ものづくりベンチャーと町工場、大企業の三者連携を実現するインキュベーションオフィスです。

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センターオブガレージの図解
Screenshot: ライフハッカー[日本版] via COG

最初は墨田区からの依頼で、町工場の未来を考えることから始まりました。まずは私たち自身が町工場のことを知ることから始めようと、自転車を30台ほど購入して、みんなでひたすら訪問。墨田区からもらった町工場のリストすべてを回りました。

町工場は高い技術を持っているのですが、従業員の高齢化後継者不足などで廃れつつある現状があります。一方で、高い技術で製造された試作品を求めるものづくりのベンチャーは多い。

ここをつなぐ仕組みがあれば、お互いにメリットがあると感じました。

── リバネスが関わった、ものづくりベンチャーと町工場の協業事例を教えてください。

リバネス・佐野氏:代表的な事例が、東京で行われた第1回テックプラングランプリ最優秀賞を受賞した株式会社チャレナジーというものづくりベンチャーです。台風でも発電できる垂直軸型マグナス風力発電機を製造しているのですが、最初はコンセプトだけ。試作品も作れず、当初のプレゼンは発泡スチロールで作られた工作のようなものでした。

その新型風力発電機のモックをつくってくれたのが、設立40年以上の歴史を持つ墨田区の町工場「浜野製作所」です。

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Screenshot: ライフハッカー[日本版] via チャレナジーウェブサイト

今では実際に沖縄に発電機が設置され、実証実験が行われています。

浜野製作所は、職人自らが、アイデア・構想段階から設計・プロトタイプ開発、そして量産化までを支援するインキュベーション/コワーキングスペース「ガレージスミダ」を運営しており、ベンチャー企業と一緒にものづくりを行っています。先ほど話に出た「センターオブガレージ」にも協力をしてもらっています。

── 墨田区の事例は、町工場が多い浜松市にとって示唆に富む気がします。

後編では、ものづくりの街である浜松市の魅力や課題、ものづくりベンチャーとの親和性などについて語っていただきます。

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Photo: 木原基行

Source: 浜松市, 株式会社リバネス, ヤマハ株式会社, スズキ株式会社

林田孝二

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