「幸せ=A×B」です。AとBには何がはいる?『僕らの時代の幸福論』Vol.4
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幸せ = A × B
こんな式が成り立つとすれば、あなたはAとBに何を入れますか?
あなたにとっての「幸せの構成要素トップ2」は何か。少し考えてみてください。
私は、多くの方にこの質問をしてきましたが、返ってきた答えには、以下のようにいろいろなものがありました。
時間 × お金
家族 × 健康
自由 × 成長
仕事 × 子供
食 × 住
人間関係 × ファッション
お金 × お金
正解があるわけではありません。でも、私自身が考えさせられた回答がありました。それは、
幸せ =いいこと × 悪いこと
という回答でした。
幸せが「悪いこと」から構成されるってどういうこと?
ほとんどの人が「幸せの構成要素」を考えるとき、ネガティブな要素は思い浮かべません。ただ、言われてみれば「悪いこと」が幸福感を増幅させることはよくあると気がつきます。
ちなみに、ここでいう「悪いこと」とは、「辛い(つらい)」「苦しい」「怖い」「悲しい」「だるい」「面倒くさい」「怒っている」などのネガティブな感情をともなうものを意味します。
たとえば、「登山」。
まだ暗い早朝、布団から出たくない自分を奮い立たせ、眠い目をこすりながら車を運転し、山のふもとへ。そこから何時間も山道を歩きます。ときに足を痛めるようなこともあるでしょう。「下山するときは、また同じ距離を歩かなければいけないのか…」と、近未来への不安が頭をよぎります。
それでも、頑張って、頑張って、ようやく山頂に到達! …そこから見る景色は格別なものです。登頂のために努力してきた辛い経験を回顧しつつ、大きな幸せに包まれるはず。生涯の思い出として、脳裏にもその景色が焼きつくことでしょう。

ところが、特に何の苦労もなく、『どこでもドア』でいきなり山頂に行ってみたらどうでしょう? 確かに同じ景色が広がっています。でも、自力で登ったときと比べて、湧き上がってくる幸福感は同じでしょうか?
同じではないですよね。感動や幸福感というものは、苦労したぶん、何倍にも感じられるものではないでしょうか。
今回の例でいうと、以下のようになります。
いいこと = 絶景を見られる
悪いこと = 起きるのがだるい、何時間も歩くのがしんどい、足が痛い、下山が不安、事前のトレーニングが辛い、など
幸福の増幅器として、「悪いこと」が機能したのではないでしょうか。
幸せは「いいこと」と「悪いこと」の落差に生まれる
つまり、幸せのヒントは「いいこと」だけにあるのではなく、「いいこと」と「悪いこと」の落差にもあるのかもしれません。
そう考えると、テレビでよくみる「ドッキリ」企画は、「幸せ」を生み出す装置である気がしてきます。

芸能人が海外ロケで現地の警察に麻薬所持を疑われる「ドッキリ」で例えてみましょう。
無実を訴えたくても、英語だとうまく伝えられず。そんなときに限って、マネージャーもなぜかいない。警察官は大声で責めてくる。どんどん不安や恐怖が累積していきます。
それがピークに達した頃、目に入るのは「ドッキリ」の看板を持ったスタッフ。すべてがフィクションだと気づいた瞬間、大きな「安堵」という幸せに包まれることになります。

この例の場合、
いいこと = ウソ(ドッキリ)だと知る
悪いこと = 海外で冤罪事件に巻き込まれる
ということです。
登山の例のように、「絶景を見れる」みたいな「いいこと」は起きていません。
にも関わらず、心が動き、大きな安堵(幸福感)を得ることができたのは、「悪いこと」のスケールが大きく(犯罪事案であり、人生を左右しうる)、「いいこと・悪いことの落差」も大きくなったからでしょう。
不幸を感じている人は幸せになるチャンスを持っている
「幸」と「辛」
この2つの文字って似てませんか?
幸せという花があるとすれば その花の蕾(つぼみ)のようなものだろうか
辛いという字がある もう少しで幸せになれそうな字である
星野富弘さん(詩人)の言葉です。
幸せを形づくるのは、辛い(つらい)ことなのかもしれません。
「幸せ」の反対語は「不幸」ではありません。
「幸せ」と「不幸」は共存しています。「不幸」を経験して、初めて「幸せ」を実感できます。けがをして入院するようなことがあると、健康の価値が際立ちます。

幸せになるチャンスは、不幸を感じている人にある。そんな風にも言えるのではないでしょうか。
不便でも、幸せ。不便だからこそ、幸せ
私が住むフィジー共和国は、経済的には豊かな国ではありません。
その分、助け合い、支えあって生きることが必要不可欠です。いろいろと不便な部分がありますが、だからこそ、幸せを感じる機会が多いのではないかと感じています。
『世界幸福度調査』(ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査2017年12月)によると、「主観的な幸福度」の国別ランキングは以下のとおりです。
1位 フィジー
2位 コロンビア
3位 フィリピン
4位 メキシコ
5位 ベトナム
6位 カザフスタン、パプアニューギニア
8位 インドネシア
9位 インド、アルゼンチン、オランダ
先進国といわれる国々よりも、そうでない国々のほうが上位にランクインしています。「貧富の差」を縮めていくのはなかなか難しいですが、「幸福格差」なら逆転可能です。
一見ネガティブなことでも、気づきを与えてくれたり、時間をおけばプライスレスな思い出に変わったりと、幸せになるための必要な要素です。そう考えることで、「いいこと」だけではなく、「悪いこと」にも感謝できるようになれば、もはや怖いものなどないのかもしれません。
『幸福論』続き
永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)|Facebook

Image: Shutterstock.com(1, 2, 3, 4, 5)
Source: 『世界幸福度調査』(ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査2017年12 月)
永崎裕麻
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