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「WHY(なぜ)」が人を動かす最強のツールである理由

「WHY(なぜ)」が人を動かす最強のツールである理由

人は誰でもWHYを持っています。それは情熱や、インスピレーションの源となる奥深くに眠っている存在意義です。それが何かまだ見つかっていなかったり、どう言葉で表現してよいか分からなくとも、あなたにも必ずWHYがあります。

自分のWHYを理解するのに、この本が大きな助けとなるでしょう。誰もがやる気いっぱいの状態で朝目覚め、一日の終わりに仕事の充実感で眠りにつく、そんな人生を送るべきです。(「はじめに」より)

こう主張しているのは、『FIND YOUR WHY あなたとチームを強くするシンプルな方法』(サイモン・シネック、デイビッド・ミード、ピーター・ドッカー 著、島藤真澄 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者。

これまでの長きにわたり、アメリカ連邦議会議員、外交官、国連、国防省に代表されるリーダー、あるいはマイクロソフト、アメリカン・エクスプレスなどの企業および非営利団体に対して「人々をインスパイアする方法」、すなわち「WHY(なぜ)」の重要性を伝授してきたという実績の持ち主です。

そんな著者は、2009年に行ったTEDトークによってWHYについての考え方を広めたのだそうです。そして、それをより深く掘り下げて伝えたのが、2012年の著書『WHYから始めよ!』(日本経済新聞出版社)。

そんな流れをくむ本書は、さらに具体的に「WHYを見つけるよりよい手段」を提示することを目的として書かれたものだといいます。

『WHYから始めよ!』がWHYを伝えるための本であったとするなら、これは「実際にどうすべきか」のステップを示すものと位置づけられるのだとか。

そこで、共著者に企業トレーナーであるデイビッド・ミード氏、元イギリス空軍高官パイロットのピーター・ドッカー氏を迎え、その方法論を明らかにしているわけです。

実用的なガイドブックとしてこの本はつくられました。自分のWHYを探し出し、明確に表現するために必要なものがすべて揃った完全ガイドブックとなっています。(「まえがき」より)

きょうはChapter 1[WHYから始めよ!]に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

ゴールデンサークル

著者によればすべての組織とすべての人のキャリアは、以下のイラストのような3つのレベルで機能しているのだそうです。構成要素は、「なにをするか」(WHAT)「どのようにするか」(HOW)、そして「なぜそれをするか」(WHY)の3つ。

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Image: ライフハッカー[日本版]編集部

これをビジネスにあてはめるなら、WHATは、売っている製品、提供するサービス、行う仕事のこと。そのことと、それを「どのように」(HOW)行うかは容易に理解できるのではないでしょうか?

ところが現実問題として、「なぜそれをやっているか」(WHY)をはっきり伝えられる人は、ごくわずかしかいないと著者は指摘しています。

「ほとんどの人はお金を稼ぐために働いているのだから、それこそがWHYなのではないか」という人もいるでしょうが、それも違うというのです。

なぜなら、私たちを駆り立てるものはお金ではないから。

WHYはもっと深いところへ届き、何が私たちを動機づけ、感動させるのかを理解させてくれます。それはすべての組織と、すべての人のキャリアの動力となる存在意義です。なぜ今朝ベッドから起きたのか。そもそもなぜ、このことを気にかけるのか。(25ページより)

新しい顧客やクライアントに会った際に多くの人がまず話すことは、自分が「なにを」しているかであるはず。そして以後は、それを「どのように」行うか、あるいは「どのように」他と違っているのかを説明していくことになるわけです。

しかも私たちは、契約をとったり、相手の視点を揺るがしたり、説得して特定の行動をとらせるためにはそれで十分だと思いがちでもあります。たとえば次のセールストークは、その決まった形式に従ったもの。

「我々は紙を販売しています。可能な限りお手頃価格で最高品質の紙を提供します。他のどこよりも安いです。いかがですか?」(26ページより)

これは、非常に合理的な売り込みではあります。会社がなにをするかをはっきり述べ、特徴と利点から、他社よりも自社製品を選ぶよう潜在的バイヤーを説得しようと試みているからです。

しかし、これが必ずしも正解ではないようです。

もちろん、こうしたアプローチがうまくいくこともあるでしょうが、しかし、よくて2つ3つ程度の取引確保という結果になるだろうと著者は予測しているのです。

なぜならこのトークは、買い手を他の会社と区別できていないから。そのため買い手は、より都合のよい取引を見つけた途端に去っていくことになるということです。

ロイヤルティ(愛着や信頼)は、特徴や利点に起きるわけではないもの。しかも特徴や利点は、感動を与えません。ロイヤルティや長続きする関係性は、もっと深いところからくるわけです。

アップル製品を購入する人がいる理由

では次に、WHYを語ったトークを見てみましょう。

「アイデアは共有されてこそ価値があるといえます。弊社は、アイデアを広めるための会社です。アイデアは広まれば広まるほど、世界に影響を及ぼす可能性は大きくなります。 アイデアを共有する方法は多くありますが、そのひとつは、書くことです。弊社は、その言葉を書き出すための紙を作っています。大きなアイデアのための紙です。いかがですか?」(27ページより)

たしかに、こちらのトークには先ほどとはまったく違う印象があります。WHYから語っているため、紙が特別なものであるように聞こえるわけです。つまりWHYで導かれることによって、より深く、感情的で、大きな価値が生まれるということ。

こちらのトークはもはや紙についての話ではなく、強調されているのは「自分の会社がなんのために存在するのか」ということです。そのため、ただ一束の紙がほしいという人には適していないかもしれません。

しかし、顧客の個人的な信条や価値が、こちらの売り文句が表現することと一致していれば、今後何度も取引したいと思われる可能性はぐんと高まるはず。

それどころか、他者がよりやすい価格を提示してきても、こちらとの取引を続ける可能性が高いと著者は予測しています。

理由は明白で、自分たちの信条を反映してくれる会社とビジネスを行うことは、彼らにとっても意味があるから。

1ドル節約することよりも、感動を与えてくれて、長期にわたり信用とロイヤルティを維持できる会社こそが、大きな価値を実感させてくれるという考え方です。

これが、必ずしも手頃な価格ではないのに、他のブランドではなくアップル製品を購入する人びとがいる理由でもあります。(28ページより)

同意したいか、あるいはしたくないかは別としても、人間は完全に理性的な生き物ではありません。完全に理性的であったとしたら、恋に落ちたり、ビジネスを始める人はいなくなるわけです。

そして圧倒されるような失敗の可能性に直面したとき、理性的な人はリスクを負わないものです。

しかし私たちは、毎日のように危険を冒します。いわば私たちがものや人物に対して抱く感情は、冷静な思考よりもはるかにパワフルだということです。

感情についての問題

感情についてのひとつの問題点は、それを言葉で表現するのがとても難しいということ。

そのため、「私たちの関係は、まるでいまにも崩れそうな橋に高速で向かっている列車のようだ」とか、「会社に着くと、遊び場にいる子どもに返ったような気持ちになる」というような比喩表現などに頼る必要が出てくるわけです(もっとも日本人の場合、あまりこういった比喩を用いる人は多くないかもしれませんが)。

気持ちを伝えることは困難ですが、その報酬は大きいものです。顧客やクライアントと感情的に重なるとき、彼らとの繋がりは、どんな特徴や利点に基づいた提携関係よりもはるかに強く、意味があります。WHYを語るのは、そのためなのです。(28~29ページより)

ひとたび自分のWHYを理解すれば、「なにに充実感を感じることができるか」をよりはっきりと表現することが可能になるのだとか。そして自分の行動を促すものを、より理解することができるといいます。

そして、それができれば、そののち行うすべてのことを判断する基準ができます。そのため、ビジネス、キャリア、人生のためにより意識的な選択ができるようになるわけです。

具体的には、他の人から「商品を買いたい」「一緒に仕事がしたい」「やっていることに加わりたい」と思ってもらえるようになるということ。だからこそ著者は、WHYの重要性を強調しているのです。(24ページより)




本書には、著者を中心としたチームが25年以上行ってきた「WHYの見つけ方」におけるすべてのメソッドが凝縮されているのだそうです。

これまでに起業家、個人、雇用される人、会社やチームなど、さまざまな人々のWHYを見つける手助けをしてきた実績がベースになっているだけに、自分にとってのWHYを見つけやすい内容。

自分自身やチームをより強くしたいのであれば、手にとってみる価値はありそうです。


Image: ライフハッカー[日本版]編集部

Photo: 印南敦史

印南敦史

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