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スケジュールが遅れた時はどうする? トヨタの超効率仕事術

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スケジュールが遅れた時はどうする? トヨタの超効率仕事術
Photo: 印南敦史

早く帰ろうと思っても、仕事が思うように進まない。そんな悩みを抱えている方は、決して少なくないはずです。

しかし、「仕事の仕方」を変えるだけで驚くほど毎日が変化すると断言するのは、『トヨタ社員だけが知っている超効率仕事術』(渡邉英理奈著、フォレスト出版)の著者。

大学卒業後、トヨタ自動車に入社し、5年間にわたってトヨタの海外事業体の人材育成に携わったという実績の持ち主。

しかし入社してから2年間は仕事の仕方がわからず、毎日遅くまで残業しても一向に仕事が終わらなかったのだとか。原因もわからず、悶々としていたのだといいます。

しかし、当時の自分や、早く帰れずにいる人たちのことを思い返し、いまならその理由がわかるのだそうです。それは、残業を生み出す2大原因である「やり直し」「ムダ」が多いこと。

プロセスのムダ、ムダな作業、ミスや勘違い、確認不足によるやりなおしなどが邪魔をして、想定以上に時間がかかってしまったという事態になるということです。

だとすれば、なぜ、やりなおしやムダが発生してしまうのでしょうか? 著者によればその原因は、仕事を完了させるまでのプロセススケジュールを曖昧にしたまま作業を進めているから。

そのため、プロセスとスケジュールを明確にしてから仕事に取りかかれば、すべてが解決するのだというのです。面倒くさそうにも思えますが、慣れてしまえばそうした準備に1時間、慣れていない場合でも2時間ほどで終わるのだといいます。

では、どのようにプロセスとスケジュールをつくるのか。 その答えは、トヨタの「自工程完結」というメソッドの中にあります。

「自工程完結」とは、元々はトヨタの製造現場で、常に良い品質のものを生産するために大切にされていた概念のようなものでした。

トヨタの強みである品質の高さは綿密につくり込まれたプロセスがあって生み出されるものです。 そして、そのプロセスは、必ず良いアウトプットが出せる「作業標準書」、いわばマニュアルのようなものとして各生産現場で継承され、改善され、現場で新しい人が来ても、管理者が代わっても、同じ品質のクルマがつくれるようにしています。

つまり、「綿密にプロセスをつくり込めば、誰でも、迅速かつ常に良い結果が出せる」ということです。(「はじめに」より)

ただし、この概念と「作業標準書」は、生産現場でしか使われていなかったものでした。そこで、その概念を体系立てて整理し、ステップとしてまとめ、研修として世界中のトヨタに展開するという仕事を任されたのが本書の著者だったというのです。

つまり本書で明らかにされている「超効率仕事術」は、そんな「自工程完結」というメソッドをベースに、トヨタ以外のホワイトカラーの仕事でも実践しやすいようにアレンジしたメソッドだということ。

きょうは第3章「人を巻き込んで、さらに効率を上げる」中の、スケジュールに焦点を当てたStep 8「スケジュールの進捗管理」に注目してみたいと思います。

スケジュールに遅れが出たときにまずやるべきこと

スケジュールを作成しても、なかなかそのとおりにはいかないもの。一生懸命仕事を進めていても、遅れが出てしまうのは仕方がないことでもあるのです。

しかし、だからこそ重要なのが、「いかに挽回するか」ということ。遅れが出ないことよりも、「遅れたときにどうするか」を考えることが大切だという考え方です。

遅れが出た時点で真っ先にすべきは、「なぜ遅れたか」原因を考えること。

原因が明確になっていないと、「遅れを取り戻すためにがんばろう」という心がけだけで終わってしまうこともありえます。

しかし実際問題、遅れが出たとしたら、そこには必ず原因があるはず。そのため、まずはその原因を探すべきだということ。そうすれば正しい挽回策がわかり、再発防止を図ることができるわけです。

逆に原因を追求せずに挽回策を考えてしまうと、効果が上がらず、挽回もできずに終わってしまうことになります。あるいは挽回しようとする矢先に同じような問題が起こり、さらなる遅れが発生してしまったりもすることになるかもしれません。

そのため焦らず、まずは「なぜ遅れが発生したのか」をすぐに突き止めることが大切だということ。(198ページより)

トヨタの原因探し

トヨタではプロセスとスケジュールを明確にしているため、「遅れがどこで発生したのか」「なにが想定外の事態だったのか」「なにが原因だったのか」がすぐにわかるようになっているのだそうです。

そのため、原因探しもすぐにできるようになるわけです。

この原因探しは、トヨタの現場でよく見かけます。 トヨタの現場では、異常や問題が発生したらライン上にある紐を作業者が引いて、ラインの流れを止めます。

「一作業者が勝手にラインを止めるなんて!」と驚かれるかもしれませんが、「問題が発生したら、すぐにその問題を解決する」というトヨタの姿勢そのものです。(200ページより)

「最後に検査するからいいのではないか」という意見もあるでしょうが、トヨタには「検査の理念は、検査しないことにあり」という言葉があるのだそうです。検査に頼らず、ひとつひとつの工程で、ひとりひとりの作業者が品質を担保するということ。

「問題があったら、すぐに原因を調べ、対応する。そのためには、恐れずにラインを止める。それが、トヨタの問題解決法だということです。(200ページより)

トヨタのスケジュール挽回&再発防止策の土台

この理念と対処法は、生産の現場のみならず、ホワイトカラーの職場でも守られているのだそうです。問題や遅れが発生したら、すぐに原因を調べ、対応しているということ。

そして遅れとその対策について解説するにあたり、著者はひとつ重要なことに焦点を当てています。スケジュールが常に遅れ続ける人と挽回できる人には、明確な違いがあるというのです。

挽回できる人は、そのときの遅れを取り戻そうとするだけでなく、再び同じような問題や遅れの原因が発生しないようにします。再び遅れが出ることを予防するのです。

では、どうすれば再び遅れが出ないように予防ができるのか? それは、原因から再発防止策を考え、すぐに実施することです。 原因がわかったら、すぐに再発防止策を考えてください。

もたもたしているうちに、再度同じ原因で問題が起こり、遅れが発生しては、挽回が難しくなります。(206ページより)

きちんと原因を突き止めて再発防止策を取ることで、同じ問題が起こったときにリスクを軽減できるという考え方です。(202ページより)

遅れの挽回策を考える

そして再発防止策を実施したら、すぐに挽回策を考えることが大切。もしくは状況によっては、先に挽回策を考えるという方法もあるそうです。

再発防止策の実施に時間がかかる場合や、すぐに挽回策を実施しないと遅れが拡大してしまう場合には、再発防止策の検討・実施よりも先に挽回策を実施することもあるということ。

ただしどちらの場合でも、まず最初に原因を調べるべき。そのあとに再発防止策か、挽回策かということになるわけです。

もちろん基本的には再発防止策の検討と実施が先ですが、そのときの状況に応じ、柔軟に変更してかまわないという考え方です。(208ページより)

ひとりで挽回が難しいとき、「悪い知らせほど、すぐに報告」

最大限の挽回策を考えたとしても、どうしてもひとりで解決できないときはあるものです。たとえば作業量的にひとりでは対応できなかったり、多部署を動かさなければならなかったり、本来ならかからないはずの費用が発生してしまうときがそれにあたるでしょう。

しかしそんなときは、「誰かの手を借りる」ことを考えてみたほうがいいと著者は言います。ポイントは、事前にプロセスとスケジュールを共有しておくこと。

そうすれば状況を説明しやすく、プロセスとスケジュールを一緒に見せて説明すれば、「どこで遅れが出たのか」もより理解してもらいやすくなるわけです。

また、事前に共有しているからこそ、協力意識が芽生えやすくなるというメリットもあります。なにも聞かされていない仕事を突然「手伝ってくれ」と言われるより、事前に説明を受けている仕事のほうが快く協力する気持ちになれるということです。

加えて、こういった遅れや問題が発生したら、協力者だけではなく、上司にも報連相をすることが大切。遅れや問題は自分にとって都合の悪い事実かもしれないので、報告をためらいがち。

しかし、悪い知らせほど、すぐに報告をするべき。

トヨタには、「バッドニュース・ファースト」という言葉があります。 悪い報告こそすぐに、優先的にするという姿勢を表しています。

これは悪いニュースほど人は隠したいという心理状態をわかった上で、トヨタの中でのある種のルールになっています。(211ページより)

問題や遅れを隠して、ひとりでなんとかしようとすると、多くの場合は逆に傷口が広がってしまうもの。それよりも、いち早く上司や関係者にその悪い状況を共有してもらい、みんなで対策を練る。

そのことの重要性を、トヨタでは全従業員に伝えているのだといいます。

そのため報告を受けた上司も、叱ったり、部下を責めたりしてはいけないと著者は強調しています。そうではなく、「報告してくれてありがとう。それで、対策案はどうする?」という対応をするように言われているというのです。

遅れへの挽回策を考えて、一人でどうにもならなかったら、他人の力を借りましょう。他人の力を借りることは、自分ができなかったことを認めるようで、抵抗があるかもしれません。

しかし、その抵抗感のせいで、結局間に合わなかったり、手を抜いてしまって満足のいくアウトプットが出せなかったら、それはアウトプットの受け取り手に迷惑がかかります。

相手からの評価も下がります。あなた自身が無理をして身体を壊すかもしれません。 そうなるよりも、他人の力を借りてください。(214~215ページより)

事前にプロセスとスケジュールを共有できていれば、理解も協力も得られやすいというわけです。(210ページより)




トヨタが生み出した「自工程完結」の概念を日々のビジネスに応用できれば、たしかに仕事の効率は格段に上がりそうです。本書を参考にして、さまざまな角度から効率化を測ってみてはいかがでしょうか。


Photo: 印南敦史

印南敦史

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