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自律神経の乱れを防ぐ「自分マネジメント」と、会社として意識すべき「他人マネジメント」とは?

自律神経の乱れを防ぐ「自分マネジメント」と、会社として意識すべき「他人マネジメント」とは?

タイトルからも明らかなとおり、『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』(久手堅 司著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は「自律神経」を整えることの重要性を強調しています。

「朝、スッキリ目覚めることができ、1日中調子がいい」とか、「スパッと仕事に集中できて、高いパフォーマンスを維持できる」というような状態になりたいのであれば、「頭・体・心のコンディション」を整えることが重要。

なぜなら、これらが整っていなければ、スキルや知識・経験も十分に活かせなくなるから。そして、それを大きく左右するのが自律神経だというのです。

私は内科医・脳神経内科医として、1万人以上の方々を診てきました。

そして実際に骨格から自律神経を整え、疲労感・頭痛・首や肩のこり・気分の落ち込み・めまい・天気や気温からくる体調不良など、「自律神経失調症」と言われるようなさまざまな不調を解決に導いてきました。

これには、治療を通して、自分自身で「骨格と自律神経のメンテナンス方法」を身につけてもらったことが、とても重要でした。本書にはその方法を余すことなく記しています。(3ページより)

紹介されているのは、「病気じゃないから」「直せないから」と言われてきた症状を改善してきた「結果重視」の方法。もちろんそれは、医師としての知識と臨床経験に基づいたものです。

きょうはそのなかから、「もし自分や他人が自律神経失調症と診断されたら」など、ビジネスにおける自律神経の考え方について説明しているという5章「仕事パフォーマンスを最大化するために」に焦点を当ててみたいと思います。

ビジネスパーソンが意識すべき自分マネジメント

日本人は勤勉な人種と言われていますが、実際のところ限界に近い状態で仕事をこなしている方も少なくないはず。しかし、あまりに余裕のない状態を続けていると、いずれしわ寄せがきてしまうもの。

そして多くの場合それは、自律神経の乱れをはじめとした「心身の不調」というかたちで現れるのだといいます。

でも、それでは仕事もうまくいかなくなってしまいます。そこでビジネスパーソンには、心身の健康も含め、自分自身をうまくマネジメントすることが必要なのだと著者は言うのです。

とはいえ「自分自身を完璧にマネジメントしなくては」と思ってしまうと、余計に余裕がなくなってしまいます。でもそこまで自分を追い込まず、もっとゆるくていいのだそうです。

「自分マネジメントは60~70点でOK」と思うこと。そして、そのためになにか1つでも実行してみること。まずはこれさえできていれば、十分だと思います。(253ページより)

そして重要なのは、自律神経が乱れてしまったときにしっかり対処できる手段を持つこと。興奮モード(交感神経)に偏りすぎてしまっているときには、鎮静モード(副交感神経)のスイッチを押す。

鎮静モード(副交感神経)に偏りすぎてしまっているときには、興奮モード(交感神経)のスイッチを押す。車の運転と同じで、アクセルを踏むときは踏み、ブレーキを踏むときは踏むということ。

そうやってオンとオフをしっかり調整していくことができれば、心身の不調に振り回されることなく、しっかり自分の力を発揮できるそうです。(252ページより)

自分の状態を俯瞰図で捉えてみよう

オンとオフを切り替えて自分をマネジメントするための第一歩は、自分の状態を把握すること。そこで著者は、自分の体の状態を定量評価してみることを勧めています。大切なのは、自分自身を「俯瞰」で見るようなイメージを持つこと。

・ 起床時の血圧測定、脈拍測定

血圧計があれば、両方の測定が可能。脈拍が90以上なら、睡眠中の心身のリセットがうまくできていない可能性が。

・ 睡眠時間

就寝時刻・起床時刻はなるべく一定に。睡眠時間は、短くても6時間前後は確保したいところ。

・ 運動量・歩いた距離

スマホのアプリを使えば簡単に計測可能。身長体重・年齢・性別などによって必要な運動量はかわってくるものの、厚生労働省「健康づくりのためのからだ活動基準2013」では、18~64歳の人は「1回30分以上の運動を週2日以上」行うことを推奨しているといいます。

・ 職場にいた時間

残業時間はもちろん、家にどれくらい仕事を持ち込んだのかという点も忘れずに。

・ 飲酒の量

たまにはいいものの、二日酔いの状態が月に4回以上あるなら気をつけるべき。

なお、あまり評価項目を多くすると、そこにとらわれてしまうので注意。(254ページより)

会社として意識すべき他人マネジメント

チームとしても個としてもパフォーマンスをよくするためには、周りの状況も重要。周囲の人々が早期に発見・対処できれば、大きな問題にまで発展することは防げるわけです。

徐々に不調が出る方もいれば、いきなりくる方もいます。可能な範囲で、メンバーの状態を評価してみる習慣があるとよいと思います。

遅刻・欠勤の増加、見た目の変化(身だしなみが崩れている、眠そう・だるそうに見える)、コーヒーやエナジードリンクをやたらに飲んでいる、などの気になる点がないか、週に1回程度でよいので、気にかけてみてください。(257ページより)

体調不良が起こるのには理由があり、その要因は、仕事やプライベートにおける精神的ストレス以外にも、骨格のゆがみ、職場の冷房の強度などの肉体的・物理的ストレスなどさまざま。

そのことを念頭においておくと、部下の心身のマネジメントはぐっと楽になるといいます。

また当然ながら、心身ともにしなやかに働ける社員を増やすには、仕事面での配慮も重要。それぞれの適性を引き出し、会社がやってもらいたい仕事と、本人の希望や適性をうまくマッチングさせることは、社員の不調を防ぐためにも大切だということです。(257ページより)

もし社員や部下が「自律神経失調症」の診断書を持ってきたら

社員や部下が「自律神経失調症」と診断されたら、まず注意すべき点は「なぜ、自律神経失調症という病名がついたのか?」ということだそうです。

というのも実際のところ、頭痛、めまい、不眠、立ちくらみ、全身倦怠感、動悸、不安感など2つ以上の症状があり、かつ個々の専門領域では診断がつかなかったため、最終的に「自律神経失調症」と診断されている場合が数多くあるというのです。

なぜならほとんどの医師は、自分の専門外の領域について、あまり踏み込めない、踏み込みたくないと考えるのが実情だから。そして問題なのは、「自律神経失調症」という診断がつくと、あとは投薬や「精神的ストレスや過労によるものなので、よく休んでください」という指導にとどまってしまうケースが多いこと。

しかし、ただ休職するだけで完治することは少ないのだと著者は断言しています。そのまま復職できなかったり、復職してもまた不調が出て休んでしまうというようなパターンが多いのが実情だというのです。(260ページより)

キーワードは「休むだけでは治らない」

自律神経失調症がなかなか改善せず、著者の医院の「自律神経失調症外来」を診察する患者さんのなかには、「体調が悪いから自宅で安静にしています。暇だし、やる気も出ないので、大半は寝ていて、おきている間はボーッとスマホを見ていることが多いです」と答える方が多いのだとか。

しかし、そこに改善するポイントがあるのだそうです。

キーワードは、「休むだけでは治らない」ということ。ストレス源から離れて心だけをリセットしても、体はリセットされないわけで、その逆も同様。

心身は連動しているので、心と体の両面からそれぞれアプローチしていくことが重要だというわけです。

私は、明らかなうつ・躁うつ病やほかの疾患を同時にもっている場合を除いては、次のように話をしています。

「1ヶ月休業の診断が出ているのなら、1週間は休んでくださいね。そして、2週目からは、簡単な運動を始め、整骨院や鍼灸、マッサージなどの専門家の治療を受けてみてください」。

体のリセットが効けば、体調不良や自律神経失調症も改善することを実感してもらいます。それから、パソコンやスマホの使用時間や生活習慣を見直してもらいます。(264ページより)

その段階まで進んだ場合には、仕事への復職が可能か聞いてみて、可能なら、会社の規定に沿って段階的に復職してみようと伝えるようにしているのだそうです。(262ページより)

必要以上に敏感になる必要はない

復職の段階で必要なのは、「100%の状態でないと復職できない」と思わないこと。

心も体も、両方を充電満タンまでにする必要はありません。大体70%くらいの状態まで回復できていればよいのです。(265ページより)

当然ながら、このような考え方は会社側にも求められるもの。「100%じゃないとダメだ」と主張する会社もあるものの、それでは患者さんは余計に追い込まれてしまいます。

「完全な状態で復帰しないといけない」と思ってしまい、より緊張状態に陥って、ますます自律神経が乱れてしまうわけです。

ビジネスパーソンも会社側も、「自律神経失調症」という診断名に敏感にならないようにすべき。大切なのは、「自律神経とうまくつきあっていくこと」なのだと著者は強調しています。(265ページより)




本書の内容を実践すれば、最高の1日の始まりと、パフォーマンスを120%発揮できる状態の心地よさを体感できるはずだと著者は言います。

すぐに取り入れることのできるメソッドが豊富に紹介されているので、不調をなんとかしたいという方は、参考にしてみるべきかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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