
敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。
今回は、ライフハッカーをはじめ様々なメディアで活躍中のイラストレーター・ナカオテッペイさんと、奥様で同じくイラストレーターのおくむらさーこさんご夫妻に子育てと仕事の話を聞いてきました。
ユニークなセンスと独特の世界観で雑誌や広告のイラストはもちろん、キャラクターグッズも人気のナカオさん。最近は、台湾など海外からも注目を集めています。
一方、奥様のさーこさんは、「Cui Cui.(キュイキュイ)」というアート制作ユニットで子ども向けのお絵描き教室を主宰、「毎日小学生新聞」で工作の連載を持ちウェディングの装飾なども手がけ、多方面で活躍中。
お互いがフリーランスで同業者という二人の子育てと仕事のバランス、働き方は?
氏名:ナカオテッペイ(43歳)・おくむらさーこ
居住地:神奈川県川崎市
現在の職業:イラストレーター
子どもの年齢:長男(6歳)・長女(4歳)
キャリア計画と家族計画

——人生は概ね計画通り? それとも予想外のことが多かった?
ナカオテッペイさん(以下、ナカオ):ある程度は計画通りかなぁ。
もともと広告制作会社でデザイナーとして働いていました。
ただ個性を主張しにくいと感じていて、イラストレーターだったら自分の味が出しやすくて面白そうだなと思い、働きながら夜間にセツ・モードセミナーに通いました。そこで同じクラスだったのが、奥さんとの出会いです。
イラストレーターって職業的に会社に属するのが難しいので、必然的にフリーランスになりましたけど、ずっとバタバタしながら流れで今に至る感じです。気づいたら、いまはだいぶマシになっている(仕事も生活も安定している)のかなって。
おくむらさーこさん(以下、さーこ): 私の場合イラストレーターといっても、家の近くのアトリエで子ども向けの教室をやったり、(制作ユニットの)相方と花と植物を掛け合わせたモノづくりの提案をしたり、ウェディングの仕事をしたりと家にあまりいないことが多いんです。
最近は、ワークショップやイベントなどで週末に地方に行く機会も出てきて。旦那さんが(家で働く)フリーランスだからこそ結構自由にできているのかも。
子どもに関しては、結婚してからすぐ妊活しましたが、そのときはできなくて。
バリバリ働いて、すごく仕事が忙しくなってきたときにぽっと授かったので、そういう意味では計画通りではないのかなぁ…。
家事と育児の分担・バランス

——家事と育児をどのように分担している?
さーこ:ふんわり分かれているよね?
食事の支度と洗濯と保育園の送りは私。夕方のお迎えと子どもたちのお風呂、食事の後片付けは旦那さん。私は、洗い物が好きじゃないので、それだけしてくれればと思っています。
ナカオ:後片付けは基本的に僕なんですけど、仕事でめちゃくちゃ追われていると何にもできないときも…。
そういうときは洗い物もできないので、奥さんが何となくキレているなっていうのは察するんですが(笑)。それでも、もうホント出来ないときは出来ないので。なるべくやれるときには、やるようにしています。
さーこ:私も出張で週末に家をあけることもあり、そこはすごく負担をかけているなって、負い目があるというか…。
「今日、洗い物やってないな!」って(怒りの)オーラが出ていることはあるみたいですが(笑)、忙しそうなのも見ていてわかるので、それでケンカになることはないですね。
共働きフリーランス夫婦の家計管理事情

——家計管理はどうしている?
ナカオ:家計管理…全然していない。お互いの収入も貯金も知らないよね。
さーこ:大丈夫かな?(笑)
家賃や光熱費は旦那さん。食費や子どもの洋服など細々したものは私というふうにざっくりは決まっているんですけど…。
(全体像は把握していなくて)「これ、一番よくないよ」と先日、会計事務所に勤めている知り合いに言われました。だから、ちょいちょい「お金、貯めている?」って確認したりはしています。
ナカオ:もういいんじゃないですか、ざっくりで(笑)。
仕事の話はするんですけど、そこ(お金の話)まであまり干渉しないんですよ。ただ、確定申告でなんとなくこれくらいなんだなっていうのはお互い知っているのでいいかなって。
もし奥さんがめっちゃお金に細かい人だったら絶対ムリですね。成り立たない。
逆にしっかり管理されていたら、その法の目を抜けようとバレないエリアを作ることにがんばっちゃうかもしれません。
育児サポート事情
——パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?
さーこ:(私の)実家が近いので、お兄ちゃんが小さいときはよく預けていたんですが、母が体調を崩したこともあり、それもあまりできなくなりました。
どうしても二人の手が回らないときは、川崎市の子育て支援サービスを使って、子育てヘルパーの方に、保育園にお迎えに行ってもらい、お宅で預かってもらったりしています。
近くにヘルパーさんがいるので、とても助けられています。
欠かせないガジェット・家電・ツール

——「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・ツールは?
ナカオ:「iPad」をよく使います。
保育園のパパ会の踊りの練習(卒園式の出し物)にも必要で(笑)。
あと、防水の「ポータブルスピーカー」も必需品。お風呂に持って入って「いまQueenが流行ってる」からって、子どもと一緒に聞いて、みんなで歌うみたいな使い方をしています。
さーこ:料理は、もう絶対「圧力鍋」がないと困る!
いま2つ持っているんですが、炊飯器をやめて、1つはご飯を炊いています。早く炊けて、保温機能がないのでムダな電力も使わないのも気に入っています。
あと、家電は、ロボット掃除機の「ルンバ」と「電動自転車」と…とにかく時短重視で取り入れています。
——スケジュール管理や連絡手段はどうしてる?
さーこ:お互いのスケジュールは、Googleカレンダーで共有して、連絡はLINEですね。
ナカオ:でも不思議なことに、スケジュール入れて共有しているのに、お互い「えっ!?」ってなることがよくある。結局見ていないっていうか、入れて満足してしちゃうっていうか。まあでも、共有するっていうキモチが大事なんですよね。
仕事と子育てのバランス・働き方の変化
——子どもが生まれてから、仕事のやり方は変わった?
ナカオ:量より質を重視するようになりました。
昔だったら(オファーを)なんでも受けて、寝ないでやればよかったんですが、年齢的に睡眠時間を削ったら後々ガタが出てきますし。
子どもに合わせた時間帯で考えると一日で出来る仕事の量はある程度時間で決まっているので、そこを最大限使うようになりましたね。
だから本当にやりたい仕事なのか、これを受けて他にできなくなることはないか? とその先を考えるようになったかな。
でも、結果も残さないといけないし、稼げるのも、オファーをもらえるのも、いろんなことが“いま”やるしかないんだな!と実感しています。
——“いま”やるべきこと他には?
保育園のパパ会で長男の卒園式に向けて出し物の練習があったり、マンションの理事会で(しかも理事長2回目)大規模修繕工事の臨時総会があったり、実家の雨漏りがひどくて工事費がかかるっていう電話があったり…。
もういろんなことが、“いま”(笑)一気に来てる!
がんばれるときにがんばらないとと思っていても、とにかく時間がないので、質を高めて子どもとの時間を確保するというのが最近の課題です。
——さーこさんも働き方は変わりましたか?

さーこ:私も前はがむしゃらに仕事をしていたけれど、「無理するのはやめよう」と全部は受けないようになりました。
長男一人のときは、(子どもも生まれたし)もっとがんばらなくっちゃって、土日もガンガン仕事していたんです。でも、二人目が生まれてからは「日曜は仕事しない」って決めて実行しています。
ナカオ:単純にストレスを抱えたくないっていうのもあるよね。
フリーランスだから自分で仕事が選べるはずなのに、断り過ぎて仕事がこなくなるっていう不安があって、無理に働きすぎていたことも。
でも、本来自分の好きな仕事をしようってフリーランスになったんだから、仕事を断ってでも「次につながるための自分の時間を作るほうがいい!」って、ようやくここ1〜2年で気づきました。
ストレス解消・リラックス法
——1日のうちで一番好きな時間や日々の息抜き方法、リラックス方法は?
さーこ:音楽が好きで、最近は、月に2回くらい(子どもを夫に任せて)ライブに行っています。そこでワーッてなるのが最高の息抜きですね。
ナカオ:僕は、飲みに行くときかなぁ…。
あとは、家でお風呂に入りながら、聞いているかいないかわからない子どもに「あ〜上がってからビール飲もっ!」って言っている瞬間も好き(笑)。ビールが飲めるって想像しているときが一番好きかな。
親になって感じた喜び・悩み

——親として一番誇らしく思ったことは?
ナカオ:長男が保育園の制作で作った「ぶどうの絵」があるんですが、他の子とはちょっと違う配色で表現していて、贔屓目に見ても上手かった。それを見たときは、もうすでに独自のこだわりがあるんだなって。
さーこ:4歳の長女も絵は「やっぱり上手いな、さすがだな」と思うことがあるよね。
——逆に、一番情けないと思う瞬間は?

さーこ:つい、子どもより仕事にかける比重が大きくなってしまうこと。
保護者会とか、学校行事を忘れてしまったり…。(園児の少ない)土曜保育に預けているのも申し訳ないなとか。それって常に自分第一に考えているからなのかなと思うことはあります。
でも、だからといって仕事は休めないし、やる!
自分の人生だし、子どもは子ども、自分は自分。その意識は初めからずっと変わらないですね。
ただこういう考え方や割り切れている人の方が少ないと思うし、そのギャップにちょっと悩むこともあります。
根本的には、親がいなくても、自分で考えて動いて欲しい、自立して欲しいという気持ちがあるので、あまり子どもに構いすぎないようにしています。
ナカオ:僕もそこまで構ってあげられてない…。
いまは時間が足りないかもしれないけれど、もっと(仕事の)質をあげて子どもとの時間を作れるように努力している最中です。
もう少し子どもたちが大きくなったら連れて行きたいところがたくさんあるから、がんばりたい。
——子育てで一番難しいことは何?

さーこ:予測ができないこと。仕事より恋愛より難しいのが子育てかもしれない。
ナカオ:たしかに、いきなり保育園で病気が流行って予想外にかかったりすることもあるしね。
たとえば、子どもに「コレ何?」と聞かれて、ググって説明したその言葉がわからない、みたいな。
ニュアンスとして難しいことはちょこちょこあるんですけど、頭を抱えて悩んだことはないかもしれませんね。
——現時点での子育てのベストなコツは何?
さーこ:自分軸で考えて、いい意味でがんばらないってことだよね。
ナカオ:うん、いかにムダな時間を過ごさず、充実した1日にできるかということに気を向けることじゃないかな。
結局いま一番大切なのって時間じゃないですか。時間ってお金で買えないし、ちょっとダラダラしてしまったのを、後ですごくもったいなかったと感じることがあるので。
子どもについて考えるというより、自分が満足する時間の使い方に注力することかなと思います。
家族の未来計画・理想

——家族を持って、将来の夢やプランはどう変わった?
ナカオ:もともと明確な理想がなかったので…。
いまでもふと「あ、オレ親なんだな」って思う感じなので。たぶんずっと自分軸できたんだろうね。
さーこ:そうだね。だからママ友がずっといないんです(笑)。まあ面倒くさそうだからいらないってどこかで思っているのもあるけど…。うちは、わりと家族単位で行動しているよね。
あとは、3年前くらいから夏にキャンプをしながら日本各地を旅しているのですが、それはこれからも続けていきたい。
ナカオ:うん。僕は、う〜ん…あまり将来のこと考えてなかったな。でも将来の夢があったら何かいつもと違う力が湧いてくるかもしれない! う〜ん…なんだろう…。(しばらく悩む)
さーこ:毎日楽しいからね。いつか全く知らない人しか周りにいない土地で暮らしてみたいっていうのはあるんですけど。
ナカオ:この前行った淡路島も良かったもんね。
でもいまのこの時点で「子ども連れて移住しましょう」というプランはない。もう若くないから体力的にも大変だし…。
この質問、もうやめておきましょう(笑)。ノープランです!
仕事と育児を両立するためのアドバイス

——子育てと仕事を両立している親御さんたちへアドバイスは?
さーこ:子どもが生まれたら大変そうと漠然と思っている人が多いと思いますが、本当に大変なのって数年間だけだし、なるようになる。
いくらでも両立はできます。それに辛い時期や辛かったことってすぐ忘れてしまって、あとからそんな時間も大切だったなって思うんじゃないかな。
ナカオ:そうそう、人間の脳ってイヤなことだけ忘れるようにできているんだよ。
だからいかに時間を大切にして、充実させていくかってことが両立のポイントだと思います。
あと、あまり細かく考えすぎない方がいいかも。いくら神経質になっても子どもは思い通りにいかないから。
さーこ:そう! 頭でっかちにならないほうがいいよね。子育てって正解がないから。
生まれた瞬間から、その子ごとに個性があるから育児書に当てはまらないことも多いし、その子に合わせて対応していけばいいんです。
(さーこさんは、育児書も、子育て関連のSNSも見ないのだとか)
子どもたちへ送りたいもの・残したいもの
——子どもたちにはどんなところを見習って欲しい?
さーこ:人と違っていてもいい、自分で自分の道を選んでいくこと。
だから「自分が好きなことをして欲しいし、人と同じことをしなくてもいいんだよ」って常に言ってるんです。
たとえば、小さい頃からたくさん習い事をしているお友達も多いのですが、小学校になってから(本当にやりたいものを)自分で選んで!自分で行けるようになってからでいいんじゃないかなと。
ナカオ:僕はなんだろう、見習って欲しいところ…。
(フリーランスとしての)僕の生き方を見て、逆に会社勤めをしたら固定給がもらえるんだとか、商社の海外勤務だったら外国に行けるんだとか、色んな世界について知って欲しいです。広い視野を持って欲しいな。
——最後に親として、手渡したい子どもへのギフトは?
ナカオ:英語かな。
最近、海外の仕事も増えてきて、台湾でもどこでもファンの人たちとのコミュニケーションって結局英語なんですよ。やっぱりニュアンスまで噛み砕いて知れたら、もっと深く理解し合えるから面白いなって思うようになりました。
職業関係なく、これからは当たり前のように英語が必要だと感じています。
さーこ:私は、どんな人もみんな平等なんだっていうのを知って欲しいな。
「個性的であれ」っていう話とつながるんですけど、子どもには「目の見えない人や肌の色が違う人や色んな人がいるんだよ」と常に話していて、「人と違うことがおかしいって思うのは間違っている」ってことを伝えたいですね。
ナカオ:とはいえ、健康だったらそれでいい。結局そこにつきるんだけどね。
さーこ:ホントにそう! うちの兄妹は2人ともすごく健康なので、それだけで親孝行してもらってます。健康が一番のギフトだね。
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取材・文: 佐々木彩子/撮影: 中山実華
佐々木彩子