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ポイントは長期・積立・分散。今年から始める「投資」のススメ

ポイントは長期・積立・分散。今年から始める「投資」のススメ
Image: Ae Cherayut/shutterstock

「投資への関心が低い」と言われる日本人。実際、日本とアメリカの金融資産構成比をみると、株や投資信託、債券での運用はアメリカが50%以上なのに対して、日本は約15%。圧倒的な低さであることがわかります。

しかし、単純に関心が低いといった話なのでしょうか。実はライフハッカーでも資産運用や投資の記事は人気がありますが、「興味はあるけど知識がないから始められない」「投資に充てる時間がない」などの理由から、二の足を踏んでいる読者も少なくないのです。

そこで今回は、資産運用を自動化するロボアドバイザーサービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供する、ウェルスナビCEO柴山和久さんに30代ビジネスパーソンに向けた投資アドバイスを伺いました。

柴山さんが昨年上梓した著書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』(ダイヤモンド社)では、自身の投資にまつわる失敗経験を元に、わかりやすく投資について解説をしています。

「なぜ日本人が投資へ踏み切れないのか」から「今の時代に投資を行うべき理由」、そして「ボーナスの運用方法」まで、お話は多岐に渡りました。

旧来の日本の社会制度では、資産運用をする必要性がなかった

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

日本、フランス、アメリカの金融資産構成比

日本:預貯金(51.5%)/株式・債券等(18.1%)/保険・年金(24.5%)

フランス:預貯金(28.0%)/株式・債券等(27.6%)/保険・年金(37.6%)

アメリカ:預貯金(13.7%)/株式・債券等(52.2%)/保険・年金(31.9%)

※『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』より抜粋(OECDデータを基に作成・2018年5月時点)

──なぜ、日本人は預貯金の割合が高く、投資の割合が低いのでしょうか。

柴山和久CEO(以下、柴山):2つ理由があると思っています。ひとつは、これまでの日本は老後を安心して過ごせる社会保障制度が充実していたから。

例えば、私の親は60代後半で、年金受給者です。彼らの世代は同じ会社で勤め上げて定年し、退職金をもらうのがごく一般的な働き方でした。

そして65歳になると、国民年金と厚生年金も受給できる。つまり、老後の面倒は会社が「退職金」という形で、国が「年金」という形で見てくれるわけです。

また、日本は公的医療保険も充実している。そもそも老後のために資産運用をする必要がなかったのです。資産が現金と預金に集中するのは、当たり前だったと言えるでしょう。

── 社会保障制度の充実という視点でみれば、アメリカの金融資産構成比も合理的な説明ができそうです。

柴山:アメリカは日本とは真逆で、老後は自分で面倒を見なくてはいけない。2014年のオバマケア(最低限必要な民間医療保険の加入を原則義務化した法案)以前は、公的医療保険さえなく、すべてが自己責任でした。

だからこそ、自分で資産を増やす資産運用が必要なのです。ヨーロッパは、公的医療保険はある程度は充実していますが、終身雇用を前提としてきた日本と違って退職金は期待できない。そういった理由から、日本とアメリカの中間的な金融資産構成比になっています。

── 投資の割合が低いもう1つの理由はなんでしょうか。

柴山:俗にいわれる「失われた20年」の存在です。

── バブル崩壊後の1990年代前半から、約20年以上にわたり経済が停滞した期間ですね。

柴山:世界経済のGDPは、1992年から20年の間に約3倍に成長しました。金額ベースでは、25.1兆ドルが79.8兆ドルになっています。これは、年4.7%の伸びです。一方、日本は3.9兆ドルが4.8兆ドルになっただけ。

日経平均は、1992年1月末の時点で約2万2000円でしたが、その後25年経った2017年1月末でも約1万9000円であり、スタート時の水準よりむしろ低くなっています。

── ニューヨークダウ平均が1992年には3300ドル程度で、現在は2万3000ドル程度まで上昇している状況と比べると、違いが明確です。

柴山:経済が成長すれば、大きくなったパイを皆で分け合うことができます。日本は経済が成長しなかったので、パイも大きくならず、分け合うこともできなかった。

経済成長に頼らずに市場で利益を得るには、短期的に下落した株を買って高値で売るしかありません。

しかし、これは誰かが儲けたら誰かが損をするゼロサムゲームです。あえて極端に言えば、1億円儲けた人がいれば、100万円損した人が100人いると思っていい。すると、多くの人が株で損をして「投資は怖い」という話になり、「現金・預金のほうが安心だ」と感じるわけです。

── もし、1992年に日本株だけでなく世界全体の株式に分散して投資しておけば、大きなリターンを得ることができたわけですね。

柴山:ただ、当時はEUもWTO(世界貿易機関)も発足しておらず、グローバルに投資するといった意識を持っている人はほとんどいませんでした。

── 今は、グローバルを意識するのは当たり前の時代です。また、終身雇用も絶対のものではなくなり、老後の社会保障制度に不安を抱える現役世代も増えています。

そういった意味では「現金・預金のほうが安心だ」は過去の話のような気がします。

柴山:だからこそ、働きながら資産運用をすることが大切な時代になったのだと思います。厚生労働省の統計では、大卒の人が企業で定年まで働いた場合の退職金は、毎年2.5パーセントのペースで減少しています。

2003年の退職金の平均額は約2500万円。これが、2013年には約1940万円になっています。仮にこのペースで減少を続けたら、現在35歳の従業員が退職する25年後には、1000万円を割り込みます。退職金を当てにした老後の生活設計は今後難しくなるでしょう。

年金制度も、30年後に今の水準が維持されているかどうかはわかりません。 こうした理由から日本は今後、働きながら資産運用するといったアメリカ型に変わっていくのは間違いないと思いますが、大きな問題があります。それは現役世代に対して、どういった投資をすればいいのか、なにに気をつければいいかを教える人がいないこと

アメリカでは自分の親や会社の先輩をみて、投資を学びます。しかし、日本では上の世代が投資のスキルやノウハウを持ち合わせていません。それどころか、親世代からは「投資や資産運用は危ないから辞めろ」と言われることも珍しくない。学ぶ機会が極端に少ないのです。

資産運用の基本的な考え方

── 資産運用のノウハウ、スキルについて基本的な考え方を教えていただけますか。

柴山:資産運用で重要なのは「コア」「サテライト」を分けることです。「コア」とは資産運用の核になる部分。

ここでは、富裕層が行う資産運用で投資の王道でもある「長期・積立・分散投資」を行います。運用資金の7〜8割以上を配分するのが目安です。

長期投資というのは、10年以上は投資を続けるということ。これはあくまで最低年数で、例えば30歳だったら年金支給が65歳という前提で35年は投資を続けられます。

分散投資は、いろいろな資産や国=世界経済全体に投資するということ。資産で言えば、株だけでなく、国債などの債券や不動産などさまざまな商品に分けて投資します。

さまざまな資産を組み合わせることで、リスクを減らして安定的に資産を運用することができます。リーマンショックのとき、株は暴落しましたが、米国債や金の価格は上昇しました。

国では、日本や先進国だけでなく、新興国を含めて世界全体の国に投資することが重要です。特定の国の経済が伸びるかどうかを予測することはかなり難しいのですが、世界全体でみれば成長し続ける可能性が高い。

世界経済が中長期的に成長するかどうかは、GDP(人口×一人あたりの生産性)から予測することができます。この先30年間は世界の人口は増え続けます。テクノロジーによって生産性も向上する。GDPも伸びて、経済は成長し続けると言えるでしょう。

積立投資は、それ自体にリスクヘッジの効果があるわけではありません。極論ですが、資産運用の経験が豊富なら、一括で投資をして、金融危機にも動じず保有し続けてもいいと思います。

ただし、人間は大幅な下落局面では、パニックになって売ってしまうこともある。そういった「心理的な罠」を回避するには、市場の動向に関係なく、一定額を常に積み立てる積立投資がオススメです。 特に、投資が初めての方にはオススメの手法でしょう。

── 「サテライト」とは、どういったものでしょうか。

柴山:値上がりしそうな材料のある個別の株式やAI、再生医療といった人気のテーマに即した投資信託などで、安く買って高く売り、短期でリターンを狙います。

こういった投資方法はこまめに値動きを確認する必要があるので、忙しい人は無理にサテライトで運用しなくてもよいでしょう。運用する場合も、運用額は2〜3割以下に抑えておくのが無難です。

ボーナス80万円で資産運用をするとしたら、まずは自己投資を行うべし

── 2018年の冬ボーナスの平均は、都内の企業で79万4029円という報道がありました(労働組合を対象とした、2018年の年末一時金要求・妥結状況の中間集計)。

年齢による金額の違いや手取りか総支給額かどうかなどの話は一旦置いておき、30代のビジネスパーソンが約80万円で資産運用を始めるときのアドバイスをお願いします。

柴山:30代では、月々の給料では賄えない分をボーナスで支払うケースが多いでしょう。家電など大きな買い物もあるはずです。まずはその金額を1/4、20万円と仮定しましょう。

また資格の勉強や見識を広める旅行など、自分への投資も重要です。個人的には、ここが将来的に最も生きるお金の使い方だと思っています。これも、仮に1/4。20万円程度と考えます。これで残りは40万円。

この40万円を「コア」と「サテライト」に分けます。「コア」は7〜8割なので30万円程度、「サテライト」は2〜3割程度なので10万円程度を投資するといいでしょう。初心者なら、すべて「コア」でもいいと思います。

また、先ほどお話しした「投資の罠」に陥らないためにも積立投資がオススメです。例えば、30万円のうち10万円を最初に投資して、のこり20万円を月々約1万5000円ずつ、1年に分けて積み立てていけばいいのではないでしょうか。

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図を書きながら解説いただいた
Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

── 金融商品には、日経平均やニューヨークダウに連動した投資信託、新興国の国債を集めた投資信託、AIなどのテーマ株を集めた投資信託など、さまざまな種類があります。選ぶときに気をつけることはありますか。

柴山:自分は何に投資をしているのか。なぜリターンが期待できるのか。そして、どういったリスクがあるのか。これらを理解して、自分の言葉で説明できる必要があります。

金融商品は規制がかかっているので、すべてのリスクが書いてあります。問題は、多くの人が読み飛ばすこと。不明な点はしっかりと確認してください。

ロボアドバイザーのメリット

── これから資産運用を始める人にとって、「WealthNavi」を始めとするロボアドバイザーは、興味ある選択肢のひとつだと思います。

一般的には、AIなどのテクノロジーを活用して、年齢や年収、リスク許容度、運用資産などを総合的に分析、もっとも効率的な資産運用と金融資産の組み合わせをアドバイスしてくれるサービスと言われていますが、メリットを教えていただけますか。

柴山:「WealthNavi」を含めて多くのロボアドバイザーは、長期・積立・分散にフォーカスをしています。つまり「コア」と「サテライト」でいえば、「コア」にフォーカスしているということ。

しかし、資産運用としては、これから伸びようとしているベンチャー企業などに投資する「サテライト」のほうにワクワク感があるんですね。「コア」は地道でコツコツ。

人間はワクワクする方が楽しいので、つい「サテライト」に力が入って、「コア」が後回しになってしまう。ロボアドバイザーは、そういった誘惑に惑わされずにコツコツ投資してくれるメリットがあります。これがメリットの一点目。

二点目は、自動的に運用するから、資産運用に時間を使わなくて済む。働く世代は、自分自身への投資や会社でのキャリアアップ、家族や恋人との時間などにお金や精神的なエネルギーを使うべきで、資産運用が生活のメインになってはいけない

海外の富裕層と同じようなクオリティの高い資産運用を空き時間でできることは大きなメリットです。逆に、自分で資産運用をするのが好きだという方には向かないかもしれません。

三点目は、「心理的な罠」を乗り越えやすい。例えば、投資信託が値上がりしたら、もっと上がるんじゃないかと考えて買い増したくなる。

逆に下がったら不安になって売りますよね。これが「心理的な罠」。しかし、冷静になって考えると、安いときに買って、高いときに売るべきです。

「上がっているからもっと上がるぞ」という直感に従うと、上手くいかないことが多い。その点ロボアドバイザーは、最適なポートフォリオを維持するために、高い投資信託を一部売って、安い投資信託を一部買うといった組み替えを定期的に行っています。

これは人間の直感を完全に排除しているからできること。この「心理的な罠」を乗り越えられることもメリットです。

経済的な自由は精神的な自由を生み、クリエイティブな仕事ができる

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

── 「働く世代は、自分自身への投資や会社でのキャリアアップ、家族や恋人との時間にお金や精神的なエネルギーを使うべき」というお話しがありました。

自分への投資やキャリアアップは、収入アップにつながり、長い目でみれば資産形成の方法のひとつとも考えられます。最後に、柴山さんが考える「キャリアアップ」について聞かせて下さい。

柴山:投資は直感だと失敗しますが、キャリアは直感だと思いますよ。世間一般の価値観に従うのではなく、自分の内なる心の声に耳を傾けるべきです。

自分が好きなことをやるのが、最も良いパフォーマンスにつながるのではないでしょうか。情熱・パッションを持ってやることで、周囲の人や社会に対して貢献できる。

その結果として、キャリアとしての成功や経済的な見返りが発生する。まずは、自分が好きなことにフォーカスするべきだと強く思います。

そのためにも、生活費の2年分の金融資産があることは重要です。自分が好きなことをやるために、今の仕事を失っても2年間は生きていける。その余裕から自由が生まれ、やりたいことに本気で集中できます。

それは、いい仕事にもつながる。経済的な自由から精神的な自由が生まれて、クリエイティブな仕事ができるようになるのではないでしょうか。

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東大卒の元財務省→マッキンゼー出身の男が、ゼロからプログラミングを学んだ理由。ウェルスナビCEO・柴山和久さんの仕事術


Image: Ae Cherayut/shutterstock

Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

Source:元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法(ダイヤモンド社),WealthNavi, マイナビニュース

林田孝司

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