
『残念な英語 間違うのは日本人だけじゃない』(デイビッド・セイン著、光文社新書)の著者は、日本において30年にわたる英語指導の実績を持つ人物。過去にも何度か著作をご紹介したことがありますが、これまでに累計400万部を超える書籍を刊行しています。
そんな著者は、日本で英語を教えるなかで感じることがあるのだといいます。
多くの人が、身につけている英語で日常会話をほぼ問題なくこなせるはず。にもかかわらず、ちょっとしたニュアンスの違いや、単語の使い方、勘違いなどが原因で、「ちょっとだけ残念だな」「惜しい!」と思うことになってしまうケースが少なくないということ。
せっかく基本的な英語力があるのに、些細な間違いで話が通じなかったり、誤解されたりすることで英語に対する苦手意識を持ってしまうのはもったいないというわけです。
日本人の場合は特に、英語に対して苦手意識を持っているものです。しかし現実的には、他の非英語圏の人たちも同じように残念英語を話しているのだと著者は指摘しています。
ただし大きな違いは彼らが「母国語じゃないから間違っても当然」というスタンスでネイティブと積極的に話をしているということ。だからコミュニケーションの機会も増え、間違いながらも正しい英語を身につけられるということです。
さらにもうひとつ注目すべきが、ネイティブでさえ残念英語を使っているという事実。意外な気もしますが、日本人だって日本語をうっかり間違って覚えてしまうことはあるもの。つまりはネイティブも同じで、誰にでも間違いはあるというのです。
本書の目的は「残念な英語」を批判することではありません。誰でもちょっと残念な英語を話しているけれどそれは恥ずかしいことではない、というメッセージを送りたいのです。間違いを恐れずにどんどん英語を話して、コミュニケーションを取ってもらいたいと思います。(「はじめに」より)
そこで本書では、「日本人に見られる残念英語」から、日本以外の非英語圏の残念英語、さらにはネイティブによる残念英語までを紹介しているというわけです。きょうはCHAPTER_1「日本人の残念な英語」内の「直訳すぎて残念!」のなかから、3つの残念な例を抜き出してみたいと思います。
直訳すぎて残念!①
△ I don’t like to speak in front of people.
(人前で話すのが苦手です)
人前で話すのが苦手で、そのことを相手に伝えようという場合には、直訳でI don’t like to speak in front of people.と言ってしまうかもしれません。もちろん間違いではありませんし、ネイティブにも伝わるでしょう。
しかし、ちょっと説明的な感じがして、「話すことが嫌だ」というネガティブな印象になってしまうのだそうです。
ネイティブがこの場合に使うのは、I get stage fright.という表現。frightは「強い恐怖」という意味なので、舞台を表すstageと合わせてstage frightで「舞台恐怖症、すなわち「あがり症」「緊張しい」という意味になるというのです。
get stage frightで「あがり症である」という意味になり、つまりは人前で話すことが得意ではない、という気持ちが伝わるというわけです。なお、getの代わりにhaveを使うことも。(8ページより)
会話例
A: I’d like to ask you to give a speech at our wedding reception.
(結婚披露宴でのスピーチをお願いしたいのですが)
B: Actually, I get stage fright.
(実は人前で話すのは苦手で)
A: You can share the stage with someone else, so please say a few words!
(誰かと一緒でいいので、少し話してください!)
その他の表現
I froze from stage fright during my big presentation.
(大きなプレゼンの間、あがって動けなくなってしまった)
Lucy didn’t have stage fright, even through it was her first concert.
(初めての発表会だったのに、ルーシーはあがりませんでした)
(以上、9ページより)
直訳すぎて残念!②
△ I forgot to bring my cell phone with me.
(携帯を忘れちゃった)
なにか忘れ物をした場合、日本人は「〜を持ってくるのを忘れました」と表現します。そこで、これを直訳したI forgot to bring my…という例をよく見かけるといいます。
これでも間違いではないものの、ただ「忘れた」という事実を述べているだけという感じの言い方になるそう。
著者がこうした場合によく使うのは、I left my…という表現。いうまでもなくleftはleaveの過去形で、「~を置きっ放しにする」「~を置いて立ち去る」という意味になるため、なにか忘れ物をした際によく使うというのです。
“I Left My Heart in San Francisco”という昔の曲がありますが、つまりこれは「心はサンフランシスコに置いてきたまま」という意味。
I left my cell phone at home.で、「携帯を家に置いてきた」つまり「携帯を持ってくるのを忘れてしまった」とスッキリ言うことができるというわけです。(10ページより)
会話例
A: I’ll call you later.
(あとで電話するね)
B: I left my cell phone at home, so send me an email.
(電話持ってきてないの。だからメールを送ってください)
その他の表現
I left my bag on the train.
(電車にバッグを置き忘れてしまった)My son left his umbrella at home, so I need to pick him up at the station.
(息子が傘を忘れていったので、駅まで迎えに行かなくちゃなりません)
I left my worries at the office, and when I get home, I can relax.
(心配事は職場に置いてきたので、帰宅したらゆっくりできます)
You left out the most important information.
(最も重要な情報が抜けてしまっています)
(以上、11ページより)
直訳すぎて残念!③
× My shoes are broken.
(靴がダメになってしまった)
「靴がダメになっちゃった(寿命がきた)んだよね」と伝えたいときには、「壊れた」を意味するbroke(breakの過去形)を使って表現したくなります。
しかしbrokeは車や機械などが故障して動かない状態を示すときに、This machine is broken.(機械が故障している)というように使うもの。また財布などの関節部がダメになったときもbrokeでOK。
洋服などの消耗品がダメになって使いものにならないというときはworn outという表現を使うそうです。wearは「身につける」と言う意味ですが、worn outで「使い古した」「擦り切れた」という意味になるというのです。
そのため、靴がダメになってしまった、というときはMy shoes are worn out.となるわけです。ちなみにwornには人間が「疲れ切った」という意味もあり、I’m worn out.と言ったら、心身ともにすり減ってヘトヘトというニュアンスになるのだといいます。(12ページより)
会話例
A: What’s wrong?
(どうかしたの?)
B: My shoes are worn out. It was my favorite pair.
(靴がダメになっちゃったんだ。お気に入りだったのに)
A: You can buy the same shoes again.
(また同じの買えばいいじゃない)
その他の表現
Your clothes are worn out.
(あなたの洋服もうボロボロよ)
My favorite T-shirt is worn out, but I don’t want to throw it away.
(お気に入りのTシャツはダメになっちゃったけど、捨てたくないな)
I was at the office all night. I’m worn out.
(私は一晩中職場にいました。くたくたです)
He always gives me the same worn-out excuse.
(彼は私にいつも決まって同じ言い訳をします)
(以上、13ページより)
英語は勉強ではなく、あくまでも意思疎通の手段のひとつだと著者は強調しています。大切なのは、自信を持って会話を楽しむこと。つまり、そのために本書を役立ててほしいという思いが根底にあるのでしょう。
Photo: 印南敦史
印南敦史
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