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面接でなく面談? 「内定辞退者」を出さないために、企業が意識しておくべきこと

面接でなく面談? 「内定辞退者」を出さないために、企業が意識しておくべきこと
Photo: 印南敦史

あなたがサッカーの日本代表チームの監督になったとしたら、誰をチームに入れるかを最初に考えるはずです。なぜならば、人材の質が成果に影響を与えるからです。

私が経営をする上で一番大切にしているのは、人材の採用です。料理でも素材が良ければ、調理が楽です。良い人材を採用できると、組織づくりがしやすいのです。(「プロローグ<はじめに>」より)

社長のための、会社を潰さない人材採用術 内定辞退ゼロ』(近藤悦康著、実業之日本社)の著者は、こう主張しています。人材採用・育成のコンサルティングや就職支援事業を行なっているという、株式会社Legaseed(レガシード)代表取締役。

同社について注目すべきは、創業5年、社員20人の企業でありながら、毎年1万人を超える学生からの応募があるという事実です。2019年卒の採用では、現状9人に内定を出して9人が入社承諾をしているのだとか。だから、「内定辞退0」だというわけなのです。

創業したばかりの時期は新卒採用が難しいため、即戦力になる中途採用で組織をつくる企業が多いのではないでしょうか。しかしレガシードでは8割が新卒入社メンバーで、平均年齢26歳という若い人材の会社でありながら、業績は毎年右肩上がり。

経常利益額も、日本の全企業のトップ5%に入る結果をつくっているのだといいます。

私には、オフィスもなかった創業当時から変わらない確信があります。それは私たちの採用基準を満たす人材であれば、世の中のどこの会社に入るよりも、レガシードに入社したほうがいいということです。

そして、素晴らしい人材と、素晴らしい未来を創造したいと望んでいます。(「プロローグ<はじめに>」より)

そう断言する著者が本書で明かしているのは、実践を通してつかんだ人事採用の成功法則。きょうは第4章「あなたの会社が、第一志望になるアプローチ法」内の「内定辞退を起こさない、究極の10の質問」から、いくつかを抜き出してみたいと思います。

内定辞退の理由とは?

内定辞退の理由の根源は、「選考中に学生の本音を聞き出せていないこと」だと著者は主張しています。一般的には面接の場面で質問を投げかけ、学生の情報を得ようとするものです。しかし面接における面接官の役割は、「次選考に進ませるかどうか」を判断すること。

そのため見極める意識が強くなり、加えて緊張感も生まれてしまうため、結果的に学生の本音が聞き出せない確率が高まってしまうというのです。

そこでレガシードでは、面接ではなく「面談」という機会をつくっているのだそうです。「学生の未来をお互いに考える場」という意味を込めて、それを「キャリア面談」と名づけているのだとか。

なおキャリア面談を始める前には、学生に次のように伝えてスタートするのだといいます。

「今日は堅苦しい面接ではなく、○○さんが私たちの会社に入社したとしたらどんな未来が描けるかを一緒に考える場にしたいなぁと思っています。あと、入社にあたって不安や疑問があれば何でも聞いてもらってOKなので。

今日は合否などつけないので、ざっくばらんに何でも相談してもらって大丈夫だからね。就職活動でいろんな企業と迷う時期でもあると思うので、就活のアドバイスをしてほしいことも遠慮なく言ってね」(106ページより)

そして世間話などをしながらリラックスできるムードをつくり、そのうえで次のような質問を投げかけるということ。(106ページより)

理想の人生

【質問内容】

・ 人生において大切にしたい生き方ってどんなもの?

・ 人生で叶えたい「夢」って何?

・ 人生で叶えたい「志」って何?

(107ページより)

まず最初の質問で確認すべきは、目の前の相手がどのような人生を歩んでいきたいと考えているのかということ。大切にしたい生き方は「その人らしさ」でもあるため、社内でその「らしさ」がどのように発揮できるかを想像しながら話を聞くのだそうです。

「夢」について確認するのは、人生において自分を満たすために果たしたいことや、やりたいこと(マイホームを建てたい、世界一周旅行に行きたい、年収を1000万円にしたい、親孝行をしたいなど)。

そして「志」は、自分以外の他人や社会、自分の所属する組織のために果たしたいこと、やりたいことと定義して確認(貧困で困っている人のために自立支援をしたい、世の中の人が便利で快適になる新しい商品を企画したい、ミスマッチのない就職活動をしたいなど)。

その人材が求める志や夢が、自社でどのように叶えられる可能性があるのか。その点を示唆してあげることが最初のステップだというわけです。(107ページより)

選社基準

【質問内容】

・ 最終的に入社する会社を選ぶ基準で、優先順位の高いものを3つ挙げるとしたら何?

・ それが高い理由は何?

(109ページより)

学生が入社する会社を決めるうえでの、優先順位が高いものを確認していく必要があるということ。人はそれぞれ、入社する会社を決めるうえでの選社基準を持っているものです。

しかし、もちろん定まっていない学生もいるので、そんな学生とは一緒に考え、優先順位を明確にして挙げることが大切なのだといいます。

学生が数社選考を受けた末、最後にどこに入社しようかと迷ってしまうのは、自分のなかで選社基準が定まっていないから。しかし相手の選社軸がわかれば、それが自社にどれだけあるかを伝えやすくなるというわけです。

相手が求めていない魅力を熱心に伝えたところで、相手には響くはずがありません。また、相手の選社軸が自社の強みと合わない場合は、働く価値観が違うということ。ですからそんな場合は、採用しないほうがいいかもしれないといいます。(109ページより)

選考状況

【質問内容】

・ 当社以外にどこの会社を受けている?(具体的な社名や事業内容も確認する)

・ その中で、今の時点で入社したいなぁと思う順番は? その理由は何?

(110ページより)

学生に対し、「どこの会社を受けているか」と聞くべきではないという考え方もあるでしょう。しかし著者は、そうは思わないのだそうです。

目の前の学生が後悔のない、納得した就活ができるように、少しでも力になりたいという気持ちを持ってアドバイスをしようとするなら、その点を具体的に聞かなければフォローできないから。

社名を聞いて業界のイメージがつかない場合は、具体的にどんな会社かを尋ねることにしましょう。その上で、もし今選考を受けている会社を決めるとしたら、入社したい順番がどうなるのかを確認します。その際、なぜその順番なのか理由も必ず聞きましょう。(111ページより)

ここで大切なのは、上記の「選社基準」で挙げたふたつの内容と、この質問における「入社したいと思う会社の選社理由」が一致しているかを確認すること。ここにズレがある場合は、選社基準が違うか、入社したい企業の順番のつけ方が違う可能性が高いということ。

そこで、そんな場合はズレがあることを伝え、本当のところ、どういった基準で会社を決めたいと思っているかを再度、学生に確認していく必要があるわけです。(110ページより)

入社後の未来

【質問内容】

・ もしも私たちの会社に入社したならば、どんなことを実現させたい?

・ 具体的にどんな風にキャリアアップを果たしたい?(年齢イメージも含めて)

(113ページより)

これはとても大切な問いだと著者は言います。いちばんのポイントは、「学生が私たちの会社に入社したとするなら」という前提に立ってもらい、未来を描いてもらうこと。

学生は就活の際には第三者的に、「外の人間」として企業を客観視するものです。しかしそうではなく、当事者として自分が入社した前提に立って未来を創造することが肝心だというのです。

この際、学生はまだ働いていないため、具体的に働くイメージや何歳でどれくらいになれるかという情報が基本的に不足しています。

ですから、私はA3サイズの白い紙をテーブルに置いて、赤いペンでヒアリングをしながら、その学生が入社した後どんな風にキャリアアップしていけるか、またどうすれば実現できるかを描きます。(114ページより)

こうして書いた用紙は、面談終了後、写真を撮ったうえで原本を学生に渡すのだそうです。理由は、入社後の未来に期待してもらうことが大切だから。そして、一緒に理想の未来を実現するためのプランを考えて挙げることが大切だから。(114ページより)




本書の軸になっているのは、著者が人事コンサルタントとして17年、経営者として5年のキャリアのなかで培ってきた経験。そのため説得力があり、すぐに応用できるアイデアも多数。

いまは就活も一段落した時期かもしれませんが、企業経営者や採用担当者は来年に備え、いまから本書に目を通しておくべきかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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