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日本と世界で高い評価を受ける、東京在住の水中カメラマン、トニー・ウーさんのトラベルハック

日本と世界で高い評価を受ける、東京在住の水中カメラマン、トニー・ウーさんのトラベルハック
Image: Lifehacker US

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ旅行術「HOW I TRAVEL」シリーズ。今回は数々の輝かしい受賞歴を持つ水中写真家のトニー・ウーTony Wu )さんのトラベルハックです。

トニー・ウーさんは、日本最大の水中写真コンテストのグランプリ、アンティーブ海洋写真フェスティバルでブック・オブ・ザ・イヤー賞、野生動物写真家コンテストの2つのカテゴリーで最優秀賞など、数々の受賞に輝く写真家です。

彼は、ザトウクジラ、マッコウクジラ、青クジラなどの鯨類に特化した写真の撮影や、産卵のために群れを成し命がけで生殖活動に励む魚群のドキュメンタリー制作に多くの時間を費やしています。

トニーさんは、自分のことを単なる写真家というより、「写真を撮る自然主義者」だと考えています。

職業は何ですか? と聞かれて、写真家ですと答えれば、話が早いのですが、実際には違います。私は、旅に出て動物たちと多くの時間を過ごしています。

じっくり腰をおろして、動物を観察しながら、動物のことを考えています。また、動物に関する既存の知識のリサーチもします。

ですから、ペンと紙の代わりにカメラを使う自然主義者みたいなものです。きれいなだけの写真でなく、芸術的に美しく、生物学的にも科学的にも価値がある写真を作ることが課題です。

東京を拠点に活動するトニーさんに、トラベルハックを聞いてみました。

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Photo: Andrew Faulk

──旅はいつもどのような感じですか。旅の頻度と長さも教えてください

この10年か15年は、年に9~11ヶ月は旅に出ています。

汚れた服を置きに家に帰り、着替えと機材を持ってまた出かけるという感じです。今年は日本国内の旅をたくさんしてから、アラスカに行き、その後南半球に移動しました。

ですから、家に帰るのは、仕事用の装備と衣類を取り換えるためだけです。普通は1カ所に2週間から1カ月滞在しますが、場所によっては2、3カ月いることもあります。

──なぜそんなに長く滞在するのですか?

動物の生態や社会について理解して、その中に溶け込むには、時間が必要です。最初は、何がどうなっているのか必ずしも理解できませんし、「ああ、そういうことが起こっているのか」とわかるまでには、相当な時間がかかります。

でも、そこまでくれば、知的好奇心の点でも、写真撮影の点でもおもしろくなってきます。

何かが起こったらそれに反応してシャッターを切るという写真の撮り方はしません。何かが起こる5秒前、10秒前、15秒前に、これから起こることがわかっていて、準備万端の状態で撮影します。

それでこそ最高の写真が撮れるのです。どの位置にいればどういうふうに光が当たるか、動物の場合はどのような行動をするか、ここぞという見せ場はいつどのような起こるのか、全部正確にわかっています。

こういうことが本当にわかるには、被写体を本気で理解するしかありません。

──宿泊場所について教えてください

宿泊場所を見つけるのが困難なときもあります。

観光客なら、ちょっとお金はかかっても1泊120ドルのホテルに3泊すればいいでしょう。3泊ぐらいなら私もそれでいいですが、1ヶ月間の滞在となると、そうはいきません。

ですから、安全面と衛生面が受け入れられるレベルなら、あとの点はかなり我慢します。場所によって状況が異なり、時には選択肢がない場合もあります。そういうときは、自分で考えて何とかするしかないんですね。

──どんなものを荷物に入れていますか?

旅支度の大部分は、どのような機材が必要となるか前もって正確に視覚化することです。

でも、必要以上に携帯してしまうことが多いです。たくさん持ち過ぎて結局使わなかったというほうが、必要なときに必要なものがないよりマシですから。

ですから、カメラの機材はたくさん持つことになりがちです。今は、ほとんどニコンのD850、D800、D500を使っています。水中で使用する機材の保管と保護に使用する装備は、NauticamZillionから、水中ライトはRGBlueから提供されています。

そのほかのものに関しては、かなり時間をかけて自分を適応させるようにしています。物をたくさん持つと、身体に負担がかかるからです。

折りたためるフォームローラーを持っていますが、これは素晴らしいです。普通、フォームローラーはかさばって場所を取るものですが、これは平らにたためるので、おすすめです。

あとは、エクササイズバンドも持って行きます。私の場合は、どこに行ってもジムがないので、行く先々で、階段、樹木、バルコニー、など、使えるものは何でも使ってワークアウトしています。

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Photo: Andrew Faulk

──ラゲージはどのような感じですか?

ノーブランドのごく普通のものを使うようにしています。わざわざ旅行用にデザインされたカバン等は、高価なので買いません。一般的なものを自分で改造して、内側にパッドを詰めたりすると、他の観光客の荷物と変わりません。

完全防水のものはなかなかありませんが、私はたくさん持っています。ですから、何かが水中に落ちたり、海水に浸かったりしても、中のものが損傷することはありません。

水面で写真を撮影しようとしているときや、ボートで水面にいて、クジラが飛びあがってくるのを待っているときなどに、完全防水のものはカメラを入れておくのに適しています。

とにかく水しぶきがどこにでも飛び散るので、使っていないものをドライに保つのに便利です。

最近よく使うものが2つあります。1つは自転車に乗るとき使うOrtlieb、もう1つは日本製のStream Trailです。でも、こういうものは、なくても何とかなります。

──食料やスナックは携帯しますか?

いつも緑茶パウダーを持ち歩いています。もともとお茶が大好きなのですが、緑茶は特に好きで、毎朝少し飲むと気分が良いですし、日本に溶け込めます。

家にいるときは、食事にとても気を遣います。果物や野菜をたくさん食べるようにしているので、日本にいてラッキーです。

新鮮な農産物や魚がたくさん手に入ります。いつもきちんと食事をして、ワークアウトもしています。ですから、旅先でもできるだけ良い食生活にしています。

ただ、日本国内を旅しているときは、欲しい物は何でも手に入りますが、南太平洋の離島のような場所では、これは不可能です。

でも、心配すると精神衛生に良くないので、あまり気にしないようにしています。普段から常に健康に気をつけて暮らしているので、離島から日本に戻るまで体調は維持できています。

──ツアー中はどのような娯楽を楽しんでいますか

フィルムを使って写真を撮っていた時代には、ペーパーバックやハードバックをたくさん荷物に入れていましたが、すべてがデジタル化した今は、必要な機器がとても増えたので、本はiPadに入れています。

読むべき本のリストには常に40〜50冊載っていますが、何かおもしろい本に出くわすたびに、追加しています。

たとえば、今日は、このスミソニアンのリストに出会いました。おもしろそうなものがあれば、ダウンロードしてコレクションに入れます。そして、何かの待ち時間に、1冊選んで読みます。現場にいると、待ち時間がたくさんあるのでね。

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Photo: Andrew Faulk

──目的地に到着したらいつも何をしますか?

現場に少なくとも24時間前には到着するようにしています。

48時間から72時間前に行くこともあります。機材をセットアップするのは、水中であってもそれほど大変ではありませんが、気持ちの点でもそこにいて、目の前の瞬間に集中して正確に作業する必要があります。

何か1つでもミスをしてしまうと、あっという間にすべての機材が壊れることもあるからです。そういうことが起こる理由は、機材に問題があるのではなくて、それをセットアップしたり使用したりする人間が、ぼーっとしていて、すべきことを忘れたり、単純なミスを犯してしまうせいです。

そういうことは避けたいですし、お金ももったいないです。それで、現場には早めに到着するようにしています。

現地に到着すると、少なくとも1日は仕事の機材から離れ、現地にいる知り合いたちと過ごしてキャッチアップしたり、冗談を言い合って笑ったりして、仕事を始める前に、その土地に馴染むようにしています。それが済んでから、設営して、仕事の段取りをじっくり考えます。

あと、ほとんどの場合、仕事が全部済んだ後は、現地でできた友人たちと、ときには丸一日一緒に過ごしたりして、将来も良い関係でいられるようにしています。これはとても大切なことです。

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Photo: Andrew Faulk

──フライトの疲れや時差ボケにはどのように対処していますか?

1991年以来ずっと、年中旅をしてきました。

当初は、毎週大陸間を飛び回っていたのでめちゃくちゃに忙しかったのですが、そのうちに慣れました。自分のことは自分が一番良くわかっていて、これ以上無理をすると潰れるとか、もう少し頑張れるということがわかります。

でも、コツは、どこにいくにしても午後か夕方に到着するようにすることです。それから、どこに行こうとも、掃除と食事と睡眠を大事にすることです。

睡眠に関しては、簡単に眠りに落ちて7-8時間寝られるように訓練してきました。それで、1晩か2晩で、時差ボケは90%解決します。

──旅になくてはならないアプリやテクノロジーはありますか?

私はニュース・ジャンキーなので、いつでもインターネットにアクセスして、ニュースを読んでいます。世界の混乱ぶりを嘆きながらも、情報は得ていく必要があります。

ニュースはFlipboardFeedlyで読んでいます。文章を書くときは、Bywordを使います。最近は、クラウドと同期するのでApple Notesを使用することが増えました。

ブラウザとしてはDuck Duck Goが大好きです。インターネットの接続は、CloudFlareから出た1.1.1.1.ようなVPNを使っています。それから、Private Internet Access (PIA)もあります。過剰なこだわりはありませんが、いずれにしろどちらも使います。

──旅先からお土産を買って帰りますか?

はい。でもほとんどの人がお土産とは思わないものになりがちです。

たとえば、深海に生息するイカの内殻とか、鯨の皮など生物学オタクっぽいものですね(注記:どれも私が見つけたものです。多くの場所で、生きた動物が殺されて観光客に売る土産物になっています。私はそういうことを奨励したくありません)。

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深海に生息するイカの内殻
Photo: Andrew Faulk

時には、素晴らしく芸術的な彫刻や、クジラの目などの自然の素材を使って美しいものを作る人に出会うことがあります。そういうものは欲しいと思います。私は妻のものだけは店で買いますが、一般的に店で買い物はしません。

──旅先でした悲惨な体験があれば教えてください

今年の初めに、日本の和歌山県であるイベントを撮影するために1ヶ月滞在しました。これまでに一度も撮ったことがないすごい写真を撮りたくて、多くの時間をかけて考えに考えて、特別な装備を設計して作りました。

すべてが構想され、すべてがうまくいっていました。技術者の皆さんも交えてその装備のテストも行ないました。でも、結局1ヶ月何もせずに過ごすことになりました。想定していたことが海で起こらなかったからです。

日本の東側は黒潮と呼ばれる暖流が流れているため、寒い季節でも比較的暖かいのが特徴です。生態系全体がこの黒潮に依存していて、サンゴ礁があり、熱帯の魚が黒潮に乗ってやってきます。黒潮が弱まると、いろいろなことがうまくいかなくなることもわかっています。

でも、それもすべて生態系の一部です。

そして、今年はその暖流が来ませんでした。別のところに行ってしまったのかもしれません。そのため、海が凍ってシャーベット状になってしまったのです。

暖かいところから来る魚はことごとく死に、サンゴ礁も白くなって死にました。私が狙っていたことはまったく起こらなかったのです。こうなることがわかったときは、時すでに遅しで、もう引き返すことも場所を変えることもできませんでした。

この話をするのは、私がこの1年半の間に訪れた場所は、どももハズレだったからです。私は20年以上にわたり自然を扱ってきました。

自然には確かに多くの変化がありましたが、ある程度のサイクルがあります。でも、この1年半の間に見たことは、私の経験の範囲を超えています。

もう1つの事例として、今年の夏、アラスカで体験したことをお話しましょう。その海にはプランクトンと植物プランクトンがいっぱいいて、それを餌にしている他の生物がいると想定されています。

そして、ニシンを乗せた海流があるはずでした。ところが、海には何もいませんでした。これ以上ないほどはっきりした事実でした。私は友人たちと3週間そこで過ごし、被写体を何とか見つけましたが、とにかく大変でした。

後日、科学者をしている友人と話したところ、2015年ごろからアラスカのクジラの数が急激に減少していることがわかりました。何が起こっているのか誰にもわかりません。

これは、海で行きる生物にとっては深刻な問題です。そして、この現象は、大西洋、太平洋、南半球、北半球、アジア、アメリカ、アフリカ、東南アジアで発生しているので、地球上のどこでも同じ現象が起こっていると言えます。

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お母さんにミルクをねだるザトウクジラの赤ちゃん
Photo: Tony Wu

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Image: Lifehacker US

Source: Tony Wu, Nauticam, Zillion Tokyo, RG Blue, Ortlieb, Stream Trail, Smith Sonian, Flipboard, Byword, duckduckgo, CloudFlare, Private Internet Access, Wikipedia

Alice Bradley – Lifehacker US[原文

訳:春野ユリ

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