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段取りよく仕事をこなすには、「小さなディスラプション」を繰り返すことが大切

段取りよく仕事をこなすには、「小さなディスラプション」を繰り返すことが大切
Photo: 印南敦史

仕事の速い人が絶対やらない段取りの仕方』(伊庭正康著、日本実業出版社)の冒頭には、「ディスラプション」というキーワードが登場します。

ご存知の方も少なくないでしょうが、いままでのルールを壊し、新しい常識をつくることを指す言葉。効率を追求することも、「小さなディスラプション」の繰り返しだと著者は言うのです。

「この打ち合わせ、わざわざ会う必要が本当にあるのか? スカイプやフェイスタイムで済ませられなかったのかな?」

「この資料を作ることの意味はあるのか? なくても誰も困らないのでは?」

「そもそも、会社に来る必要があるのか? 直行すれば、1時間は浮くかも?」

こういった「小さなディスラプション」が、段取り良くスマートに仕事をこなし、かつ結果を出し続ける人になるためのパスポートです。いうなれば「当たり前を疑い、新しいルールを作る」くらいのつもりで仕事を楽しむ、そんな感じ。

ときには職場のルールや習慣にもメスを入れることがあるかもしれません。でも、これを難しいと思わないでください。誰でも、その気になればできます。それを伝えたくて、この本を書きました。(「はじめに」より)

そうすることによって無駄な時間を排除できるのだとすれば、たしかに効率は上がるでしょう。でも仕事である以上、その大前提として忘れるべきでないのは「絶対に結果を出すこと」。

しかし「小さなディスラプション」を繰り返せば、誰でも短時間で成果を出せるようになると著者は断言しています。

そんな考え方に基づいて書かれた本書のなかから、きょうは基本的な考え方がまとめられた第1章「徹底的にムラ・ムリ・ムダを省く」に注目し、いくつかの要点を抜き出してみたいと思います。

「結果に影響しないこと」はやらない

段取りのよい人は、成果につながらない「仕事っぽく見えるムダ」を徹底的に省くもの。なぜなら「仕事っぽく見えるムダ」は、いくらがんばっても誰のためにもなっていないことが多いから。

しかも現代のビジネス環境ではやることが多いだけに、「いったい、なにがムダなのか」を見極める力が重要な意味を持つというのです。

逆に言えば段取りのよい人は、「価値を生まない作業に時間をかけるべきではない」という鉄則を知っているということ。

そして、そのために意識すべきは、仕事というものは大きく3つに分けられるといいます。

・ 主作業:成果に直結する作業です。商談やサービス改善の打ち合わせなどが相当します。

・ 付随作業:主作業を行う上で付随する作業です。移動時間をはじめ、資料や企画書の作成などが当てはまります。時間をかけないことが鉄則です。

・ ムダ作業:これらに属さない作業。ホームページを閲覧していたり、メールチェックに時間をかけていたり…。これらは、無自覚に行っていることが多いものです。

(14ページより)

つまり、どの仕事が主作業で、どの仕事が付随作業なのか、ムダ作業はどれかと見極めをし、ムダを省けば成果アップにつながる可能性が生まれるということ。それでも「ムダかどうかがわからない」という場合には、次の「ムダを簡単に見つける観点(クエスチョン)を参考にするといいそうです。

Q1:それをやめると、お客様に迷惑をかけるのか?(顧客満足の視点)

Q2:それをやめると、社内の士気が下がるのか?(従業員満足の視点)

Q3:それをやめると、リスクが高まるのか?(リスクマネジメントの視点)

(16ページより)

ひとつも当てはまらないのだとしたら、それはムダな仕事。いずれにしても、職場には、実は誰のためにもなっていない、儀式のような仕事があったりするものです。

そこで、まずは上司と相談し、作業を見なおしてみてはどうかと著者は提案しています。(12ページより)

残業することを前提にしない

残業することについてはさまざまな考え方や意見があるでしょうが、会社(雇い主)から見ればそれはコストということになります。そしてプロと言われる人は、自分の存在を「コスト」の視点で考えられるもの。それどころか、無自覚に残業をすることは「罪」だとすら著者は言います。

私が新人だった頃の話を紹介します。当然のように残業をし、時間は19時30分。 すると当時の上司から、「新人が残業しているのはコストでしかない。残業する意味を考えなさい」と言われたのです。冷静に考えると確かにそうです。

・ 残業手当は基本給の25%増しだけど、だからといって成果は25%増しにはならない

・ そもそも、会社に残っているだけで光熱費がかかる

・ もし、残業でムリをして体調を崩したら、他の社員に迷惑がかかる

もちろん、残業するのが仕方ない日もありました。新製品をリリースするときなどはそれこそ戦場です。残業せざるを得ないのは普通です。でも、日常はまったく別。残業にはコストがかかっており、無自覚なのは恥だと感じるようになりました。(22ページより)

そればかりか、残業はキャリアにも悪影響をもたらすというのです。なぜなら、スキルアップの機会を残業で失うことになるから。そのことについて著者は、「ムダな残業をすると、自分の賞味期限を短くする」と表現しています。

残業をすることが評価される時代は、もう終わっているということ。むしろ、本を読む、学校に通う、人と会う、映画を観る、ジムに通うなど、仕事後にできることに積極的に取り組み、心・技・体の価値を高める「投資の時間」として仕事の後の時間を使うべきだという考え方です。(22ページより)

「小さな仕事」こそ明日に持ち越さない

仕事を持ち越してしまうと、翌日の段取りにまで影響が及ぶことになります。そのため、仕事を持ち越さないように、できることは「いま、ここ」で済ませるようにすることが大切。

明日には明日の仕事があるのですから、目の前の仕事をできるだけ早く手離れさせておかないと、明日以降の仕事がどんどんたまっていってしまうわけです。

そうならないようにするためのポイントは、行動を「ワンセット化」させることで、そのいい例として挙げられているのが「お風呂掃除」

自分がお風呂に入ったついでに掃除もすれば、たいした負担にはならないでしょう。ところが翌日以降に持ち越してしまうと一気に面倒になり、そこでまた後回しにすると、カビだらけのお風呂になってしまうわけです。

そして、それはビジネスでも同じ。「ワンセット」で済ませることをルールにすれば、その後をいつも快適に進めることができるということです。

次回の打ち合わせのスケジュールを調整する際、相手が目の前にいるのに「改めて、メールで連絡しますね」と言ってしまうことはありませんか?

メールを送り、返信を待ち、また送信。しかし、日程が合わず、さらにメールを送信…。(中略)打ち合わせの場で確認すれば一瞬だったはずです。(16ページより)

同じ理由から、「あとで議事録を清書して送りますね」「今度、飲みに行きましょう」もダメなのだとか。なんにせよ、「ワンセット」で済ませることが大事だというわけです。

後回しにしてよいのは、「いま、ここでやれない理由」があるか、「このあと、やらない」と決めていることのみ。(44ページより)

「これってなんのことだっけ?」をなくす

仕事の内容をメモに詳しく書いておいたのに、あとから見返したら「これ、どういう意味だっけ…」とわからなくなってしまうというようなことは、決して珍しくありません。

そして、そんなトラブルを回避するためには、少しだけでも具体的な作業に取り掛かることが大切。そうすることによって、仕事内容についての記憶力が高まるわけです。

とはいえメモの内容を、なかなか思い出せないのは仕方のないことです。時間とともに、人の脳は忘れるようにプログラムされているからです。

「物忘れのロス」を実証したのがドイツの心理学者のエビングハウス。「10分で覚えた“ささいなこと”を思い出すのに、1日たつと4分間かかり、6日後になると、なんと7分半もかかってしまうといいます(エビングハウスの忘却曲線)。

つまり、我々は思った以上に物覚えが悪い、ということです。(48ページより)

だからこそ、「記憶がホットなうちに、ほんの少しだけ作業をしておく」べきなのです。たとえば商談が終わったとき、客先から出たらすぐに手帳を開け、提案書の骨組みを考え、少しだけ文字を書いておく。

すると、いざ本格的に作業に取りかかる際、打ち合わせの内容を思い出さずとも「やるべきこと」が、すでにある程度目の前にあることになります。そのため、打ち合わせの内容をわざわざ思い出す必要がなくなるわけです。

ちなみに、記憶がホットなうちに「ちょこっとやっておく」効果は、カナダのウォータールー大学の調べによって実証されているのだそうです。

学習したあと24時間以内に10分間の復習をすると、記憶率は100%に戻り、さらに1週間以内に復習すれば、忘れかけた記憶が再度100%に戻るというのです。

メモに頼ることは思った以上に危うく、結果的に「思い出す」ロスが大きいもの。ムダを生まないためにも、記憶がホットなうちに、ほんの少しでいいので、実際に作業をしてみてほしいと著者は訴えています。それだけで、仕事の段取りが劇的によくなるものだから。(46ページより)




本書で紹介されているノウハウのすべてを、いきなりやって見る必要はないと著者は記しています。自分から見て「効果がありそうだな」と思えるノウハウを選び、できることから取り組んでみればいいというのです。

そして、それがクリアできたら、次のステップに進む。たしかにそうするだけでも、いろいろなことをステップアップできそうです。


Photo: 印南敦史

印南敦史

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