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旅からはじまる「公私同根」の仕事術|旅するデザイナーに聞く秘境旅のコツ

旅からはじまる「公私同根」の仕事術|旅するデザイナーに聞く秘境旅のコツ
Photo: rumi

平日はフルタイムの会社員として働きながら、国内外の離島や知られざるスポット、なかなか行く機会のない秘境へと精力的に足を運ぶ、旅するデザイナーrumiさん。

そんな彼女に旅の後の振り返りやアウトプット、旅の記憶を仕事に生かすアイデアやコツなどを教えてもらいました。

旅から帰ったら、まず何をする?

よく情報のストック方法や仕事に活かすための資料などは作っているの?と聞かれますが、帰ってから行うことは、画像管理と持ち帰った資料をストック棚に入れるだけ。旅先で印象深かったことは、自分の頭の中の引き出しに入っているから、何かにまとめることはしていません。

仕事でもアイデアを考えるとき、印象に残ったことは自然とアウトプットできます。さらにアイデアを広げたいときは、写真を見返して、どこかにヒントがないか探偵のように探してみることも。

旅の記憶はシェアする

旅先での出来事や特に印象に残ったことはできるだけ社内のスタッフに話すようにしています。

実体験は、企画のアイデアやデザインのヒントになります。そのときどう思ったか、その場にいた周りの人の反応など、リアルなアンケートの答えがそこにはあると思うから。

旅した数だけ、ヒントは見つかる

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トラックの幌(ほろ)で、作られたカバンで有名なFREITAG(フライターグ)のチューリッヒ店。廃品のコンテナ17個が使われたお店。頂上は、高さ26mの展望台になっているため初めて来た人は登らずにはいられません。買い物をするだけではなく、こんなアクティビディで、とても印象に残る時間になりました。
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台湾では2030年までにプラスチック製のストロー、食器、コップが全面使用禁止になる見通し。ガラス、金属製のストローが早速大流行しているよう。日本でもマイストローの発売スタートは近いかも!?
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ポートランドにある薪焼きレストラン。火事になるのでは!?と焦るほどの火の粉が常に舞い上がっています。この火の粉が見たくて毎日たくさんのお客様で満席だそう。「見せる」というヒントがここにはありました。
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ドイツにある建築の聖地と呼ばれるヴィトラキャンパス内のフラッグシップでもあるヴィトラハウス。ここは斬新なインテリアのディスプレイがたくさん。鉄の玉のようなものがきれいに壁に釣ってあり、重さで紙やメモを挟んでいるアイデアには脱帽。
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リトアニアのコンテンポラリーアートセンターの受付のカウンターは飛行機の翼! この場所のアイコンとなっていて一度来たら忘れられません。
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人の心理に訴える状況を作り出すのもデザインのひとつ

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東京都伊豆七島の一つ、神津島にある赤崎遊歩道。飛び込み台がある島の一番の人気スポット。遊歩道は木造で統一されていてとても美しいところ。注意事項などが書かれた看板やサインは、ほとんどありません。監視員もいないので皆この場所で遊ぶ際は譲り合う、無茶はしないなど、注意をしながら遊ぶという暗黙のルールが自然と生まれます。
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今までの旅で一番辛かった旅は年末年始のモンゴル。気温はマイナス30度。鼻の中は凍ってジャリジャリするし、まつげも凍って目が開かなくなりました。

思いつくこと全て防寒しても手足は感覚がなくなり、暖房が効いているはずのバスの中でも寒くて耐えられない状況に。私は寒い国は向いていないのだなぁと学びました。

とはいえ、大変だった経験も今となっては良い思い出であり、実体験として人に伝えることができるので振り返っても悪かった体験というのはあまり思い当たりません。

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車内は暖房マックスにも関わらず、どんどん窓ガラスが凍っていきます。
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旅も仕事も一つのプロジェクト「公私同根」で生きる

私にとって仕事は「公私同根」。「仕事もプライベートもその根っこは同じ」という意味です。

人生においても、結婚、出産、引っ越し、なんなら今日の晩御飯を作ることも一つのプロジェクト。予算(晩御飯の材料費)、スケジュール(何時までに作るか)、描きたいゴール(何を作って誰と食べるか)、全てプロジェクトに当てはめることができると考えています。

特に仕事に関しては、言われたままのことだけをしているのでは、もったいない。

今こうして旅ライターとして記事を書かせていただくなんて3年前には想像もしていませんでしたし、会社で女性のためのオリジナルビールを開発したことも。

デザイナーという肩書きを超え、新しい価値を作り出すことができ経験と自信につながると思っています。

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瓶のビール(酵母のピルスナー)/ 写真は自由が丘のalso Soup Stock Tokyoにて
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2016年6月に販売スタートした「瓶のビール(酵母のピルスナー)」。味の開発からデザインまで全て行いました。販売計画、店舗への落とし込み、VMD(Visual Merchandising)などやることは盛りだくさん。デザイナーの域を超えたプロジェクトは学ぶことが多く苦労もしましたが、今となっては全てプラスになっています。

「公私同根」という考えは、旅によく出るようになってからさらに強くなりました。

秘境旅で気づいた何でもできることの素晴らしさ

離島や地方では1人で様々な仕事をこなすのは当たり前ということを知りました。

以前、断崖絶壁に囲まれる秘境島・青ヶ島に行ったとき、ヘリコプターの誘導をしている人が船の入港時には警官の制服を着て乗船客を誘導していたり、商店でレジを打っていた女性が出港前には船のチケットを販売したりしていたのです。

仕事の合間に魚を釣りに船を出し、畑を耕すこともあるそう。私は「百姓」という言葉が好きです。

「グラフィックデザインしかできません」よりも、いろいろなことにチャレンジして手に職をつけていったほうが、より自然で昔からの日本人らしい働き方なのではないかと考えています。

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村の面積が約95%森林という岡山の西粟倉村。廃校となった小学校の体育館を使ってなんと、うなぎの養殖を行っています。その名も「森のうなぎ」。この旧小学校では都会からの移住者たちがお店を運営したり、会社の事務所にしていたりと、それぞれの働き方を楽しんでいるように見えました。
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確かにうなぎ!思ったよりたくさんいます。森に囲まれた環境で、森のめぐみを活用しながら林業と水産業をつなげて循環させていくことを目指しているのだとか。
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さらに養殖に使用した水を再利用して農業や水耕栽培を始めたのだそう。これも農業未経験のスタッフのアイディアから生まれた実験。チャレンジの連続です。
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データやメディアの情報を鵜呑みにすることなく生の情報を取りに行き、納得してデザインをすることも大事だと思っています。「〜らしい」よりも「〜だった」のほうが説得力があるのです。

自分の目で見て確信をもって作ったものの方が人に伝わりやすくなる、と考えています。

旅先は状況が作りだすデザインの宝庫

「非日常」の「日常」から学ぶことが新しいアイデアにつながることもあります。

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ラトビアの森の民芸市。とても広い森の中に数え切れないほどのマーケットが大集合します。大自然が作り出す展示会場は人の手では作れない魅力が。
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光の演出ももちろん自然のもの。作家さんたちは大自然と自分の作品の相性や、一番良い見せ方をわかっている様子。
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特別な什器は必要ありません。こういった工夫はこの国の人々にとっては日常なのだなと感じました。
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バルト三国でたまに見かけたこの乗り物。車とテーブルが一体となっている移動式貸切レストラン。 自分たちでペダルを漕ぎながら進むというとってもエコな乗り物。スピーカーも搭載。道ゆく人はもちろん足を止めて写真を撮ります。日本にもあったらぜひ乗ってみたい!
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全長110キロにも及ぶ「世界一長い美術館」と称されるストックホルムの地下鉄は、石灰質の岩盤をくりぬいて造られた駅が多く、天井や壁に個性豊かな作品が描かれています。
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「地下鉄の陰気なイメージをなくし、楽しい色があふれる空間にしよう」とアーティストたちが公共事業として構内の装飾に携わったことがきっかけ。日常にアートがある生活は心にゆとりをもたらしてくれそう。
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ポートランドのスーパーのサラダコーナー。一つ減ると後ろから商品が押される仕組み。見やすさ、買いやすさを徹底的に分析した売り場に感動。
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おしゃれな袋が道にゴロゴロ。これ、なんとスイスのゴミ袋。かわいい! ちょっと欲しいなと思ったのですが、なんと1袋約200円。できるだけゴミを出さないようにという意識は、パッケージデザインの影響も大きそうです。
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旅と暮らしをバランスよく両立させる

限られた時間とお金の中で行きたい場所に行く方法があります。その場所に行くための仕事を自ら取ってくる、もしくは作り出すのです。

私は小さい頃からサメが好きで、いつかサメの水揚げ量全国1位の気仙沼漁港に行きたいと思っていました。しかし、サメが水揚げされるのは午前1時頃。競りは早朝に始まります。見学者は7:00〜12:00の間のみ2階の見学デッキから市場の様子を見下ろすことができます。しかし私の場合、水揚げと競りを近くで見たかったのでなんとか午前1時から邪魔にならないように船に近づきたかったのです。

そこで、もともと仲良くさせていただいていたフカヒレやサメ肉の加工会社の社長さんへ手弁当でサメ料理専門店の企画書を持っていき、猛アプローチ。

サメ料理専門店は実現できませんでしたが、サメ肉のブランディング、ロゴデザインなどのご依頼をいただき、取材という形で水揚げと競りを間近で見ることができました。

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船からヨシキリザメを運び出している様子。噛まれないよう、すでに頭は落とされた状態。よくみると船員は多くがインドネシア人。昔から気仙沼は、漁船乗組員や水産加工業従業員として多くのインドネシア人を雇用し、インドネシアとのつながりがとても深い地域なのだそう。
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早朝にはモウカと呼ばれるネズミザメがずらりと床に並びます。血みどろなのは水揚げ後にモウカの星と呼ばれる心臓を取り出したため。
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一番会いたかったヨシキリザメ!特別に2匹、頭とヒレを切り落とさずに水揚げしてくれました!美しい!
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メカジキには、やっぱりダルマザメ(通称クッキーカッターシャーク)のかじったあとが。噛み付いて小さな身体を回転させて食いちぎるというサメがいるのです。
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先に予約して、無理やりにでも旅に出てみよう!

なかなか時間とお金がなくて…とよく聞きますが、それはまだ旅が自分の中で優先順位が高くない時。無理して出かけることはありません。それでも、旅に出たいなら、良いタイミングで先に飛行機や宿を予約してしまって行かなくてはいけない状況を自ら作り出すのも手です。

年末年始は海外で過ごすことが続き、いつも鏡餅を持参してはその土地ならではの撮影をしていました。

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2014年にはウユニ塩湖のリャマと。
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2016年にはカンボジアのベンメリアで。
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2017年には極寒のモンゴルのゲルの前で。
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忙しくたって、きっと旅はできる!

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ポートランドは山も有名。頑張って登ると絶景が待っています。こんな場所でも赤ちゃんと一緒に登れるのだなあと考えさせられました。
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以前ポートランドの山を登っていたら生後半年くらいの赤ちゃんをリュックの上に背負ってトレイルランニングをしているお母さんに「ハイ!」と笑顔で挨拶をされました。

赤ちゃんは笑顔で揺れを楽しんでいる様子。かなり衝撃のシーンだったのですが、それでいいんだな、と思ったことを覚えています。

忙しいから、子どもがいるから、といろいろ考えてしまうかもしれませんが、自分がストレスなく自分らしくあることが家族にとってもきっと一番良いのだろうなと思うようになりました。

普通の会社員でも旅はできる、でも働き方を変えたっていいはず

私の場合はフルタイムの会社員ですが、特別に有給休暇をたくさん取っているわけではありません。できるだけ土日や連休、夏休みや冬休みを使っていろいろな場所に出かけています。

それでもなかなか時間とゆとりが確保できない場合、思い切って働く環境を変えてみるのもありかもしれません。

最近では様々な働き方があります。地方に移り住み通常は自宅勤務で週2回会社に出社する、という働き方をしている人もいますし、最近増えてきている家族で地方に移住する、というのも手です。

知り合いや仲間と場所を借りて一緒の空間、ビルで仕事をすることもコミュニケーションの場が増えて良いなと思います。

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ポートランドにあるcoava coffe roastersの店内は木工工房とコラボした巨大な空間。広すぎます!
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テーブルもリメイクされていて面白いものばかり。
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この空間には木製品の加工所と事務所?のような場所が併設されていました。しかし、壁やパーテーションのようなものは一切ないのです。広すぎるシェアオフィス。羨ましい環境です。
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旅は、学びの連続。可能性も選択肢も広がる

旅のかけらをたくさん紹介してきましたが、旅に出ると今まで見たことのないものや新しい出会いやヒントが必ず待っています。お子さんがいらっしゃる方にも旅はおすすめです。

「知らない、見たことない」よりも、「知っている、選択肢を持っている」という厚みのある人にやっぱり魅力を感じますし、私自身そうなりたいといつも思っています。調べてみるとまだまだ知らないことばかり。

世の中には、新しい制度や仕組みもどんどん生まれています。そして、人生はプロジェクトの積み重ね。会社員にもフリーランスにも選択肢は同じように無限に広がっているはずです。

これからは個人のセンスや経験をそのままビジネスに変えていくことができる時代、そして新しい価値を自由に提案できる時代になっていくのでは。私も旅をきっかけに、まだまだ学び続けたいと思っています。

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rumi

芸大卒業後、インテリアやオーガニックコスメなどのグラフィックデザインを行い、現在は株式会社スマイルズで「Soup Stock Tokyo」やファミリーレストラン「100本のスプーン」などのデザイン、店舗VMDなどを担当。デザイナーでありながら「Soup Stock Tokyo」のオリジナルビール「瓶のビール」の開発からデザインも行う。

秘境や島など旅先の日常を知るために日本の文化や新しい価値を探しに休日はよく旅に出ている。VMDインストラクター、インテリアコーディネーター、ビアソムリエ、旅ライターとしても活躍。


文・写真: rumi

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