インスタ映えしない日常が、幸福の結晶になる。フリーランスライター、ワジャハットさんが子育てと仕事を両立する方法
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敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。
今回はフリーランスのライター兼トークショープロデューサーのワジャハット・アリさんの子育て術です。
ワジャハット・アリさんって何をしている人?
「今のアメリカでイスラム教徒として生きるってどんな感じ?」
これは、ニューヨークタイムズの論説ライターであり、エミー賞にノミネートされたプロデューサーであり、CNNの最も影響力のあるイスラム教徒25人の1人でもあるワジャハット・アリ(Wajahat Ali)さんが、常に考えていることです。
彼は、いかにしてラマダンがイスラム教の主流になったか、パキスタン系移民の父親から初めて「愛しているよ」と言われたときのこと、40代に近づくにつれ直面しつつあるミッドタイムクライシスなどについて、楽しい記事を書いています。2児の父でもあるアリさんの子育て術を聞いてみました。
氏名:ワジャハット・アリ
居住地:バージニア州
職業:2児を育てるヘトヘトの父親、ライター、解説者、弁護士
家族構成:妻のサラ、息子のイブラヒム(4歳)、娘のヌセイバ(2歳)
──最初に、家族とキャリアについて。ここまでの人生は概ね計画通り?それとも予想外のことが多かった?
約5年前にサラと結婚して、ベイエリアからバージニア州に引っ越したとき、私は弁護士をしていましたが、本腰を入れずに、作家かストーリーテラーになることをいつも夢見ていたので、完全に破たんしていました。銀行口座の残金は600ドルぐらいしかなく、仕事もありませんでした。
妻のサラは、通りの向こうにあるKinko'sに応募してお金を稼ぎなさいと私に言いました。応募の履歴書を提出する2、3日前に、Al Jazeeraから私に電話があり、「Al Jazeera Americaという新しいネットワークを立ち上げようとしていて、アリさんがここに引っ越してきたという噂を聞いた」と言われました。
そして、「The Stream」というデイリートークショーの共同ホストのオーディションを受け、数カ月後には何とか机に座り、東部時間午後7時30分にライブショーをしていました。このことで得た教訓は、妻がハッピーならハッピーな生活になるということです。ですから、妻のアドバイスには従うべきです。
──朝のルーティンは? スムーズに外出する裏ワザは?

朝起きるために目覚まし時計をセットする人たちがいますが、私の場合、2歳の子どもがベッドに飛び乗ってきて、私の顔を叩いたり、閉じたまぶたを指で開こうとするんです。
学校に行った息子を私が12時に迎えに行き、家に帰って子どもたちと昼食を食べます。ナニーがいるにも関わらず、子どもたちは私に食べさせてもらいたがります。
最近は、午後1時に子どもたちを置いて出かけることが多いです。コツは特になく、子どもたちがテレビを見たりして注意が私に向いていないときに、さっと出かけます。
普段はロールプレイで言うことをきいてもらうようにしています。息子に、「超人ハルクの怪力でドアを閉めてくれない?」と言うと、やってくれます。
──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?
私の妻はフルタイムの医者として働きながら准教授もしているスーパーヒーローです。
私たちの実家はフロリダとカリフォルニアにあるのですが、幸い、我が家には朝来て夕方帰る通いのナニーがいます。
彼女がいなければ、私たちは仕事ができません。託児所であろうとナニーであろうと、子どもの面倒をみてもらうと月々大変な費用がかかります。
固定給をもらう勤め人でもこれは大変な負担です。片親で子育てしている親御さんたちや子どもを預ける経済的余裕がないひとたちは本当に大変だと思います。
心から敬意を払いたいと思います。あと、近所に住む親しい友人たちがたまに夕方来てくれて、子どもたちと遊んでくれるので、私は邪魔が入らない時間を過ごせます。
── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは? 生活を一変させるような子育てプロダクトに出会ったことは?
スーパーペアレントになれる魔法のガジェットやアプリやツールがあればいいのにと思いますが、当面の最も信頼できるツールは愛情、子どもに注意を払うこと、そして時間だと思います。
私が毎日放送されるテレビ番組の仕事をしているとき、息子のイブラヒムが生まれました。息子が生まれてから1歳になるまでの私は良い父親ではありませんでした。仕事やストレスのせいで、なかなか目の前の瞬間に気持ちを集中できませんでした。
息子のことは愛していましたが、父子の絆は強くありませんでした。息子は必ずしも私と一緒に過ごす時間を楽しんでおらず、たっぷりと愛情と注意を注いでくれる母親のほうが好きでした。
フリーランスになってから、私には時間がもっとできました。すると、息子との関係がより緊密で愛情深い特別なものになったことに気付きました。
息子は私と一緒に過ごす時間を本当に楽しむようになりました。2人でおかしなゲームやごっこ遊びを考えたり、息子をおもちゃ屋に連れて行って機関車トーマスで遊ばせたりしました(家で組み立てて遊ぶ分も買うことになりました)。
娘のヌセイバが生まれたとき、私は息子が生まれたときに犯した過ちを二度と繰り返さないようにしました。
──子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?
はい。うちの子どもたちは真夜中になるまで眠ってくれません。
エネルギッシュで、好奇心が強いこの子たちを寝かしつけるためにあらゆることを試してみました。昼寝をさせてみたり、眠らせないようにしてみたり、音楽をかけてみたり、お風呂に入れて心を静めてみたりしました。
でも、どれも効果なし。どうやらそういうタチみたいです。それで、私たち夫婦は帰宅したときから子どもたちが眠る時間まで気が抜けません。
私は深夜も仕事をせざるを得ません。仕事の日は仕事時間を2つに分けて、前半は遅めの朝から早めの夕方まで、後半は、深夜から午前3時までにしています。
私はフリーランサーなので、こういう働き方でも大丈夫ですが、もし、オフィスで9時から6時まで働く従来の仕事の仕方をしていたら、たぶん2019年までに死んでいると思います。
──どのように充電している?
妻と私は2週間に1度マッサージを受けています。割引になるギフトカードを買って、30分間、ときには1時間、まぐろのように横たわり、マッサージ師に身を委ねます。
それから、ランニングをしますし、ストレッチも始めました。
日中リラックスして深呼吸する時間が必要なんです。
子どもたちといるとたいていは楽しいですし、必ずしもストレスになりません。一緒に変顔をしたり変な音を立てたり、おかしなゲームをしたり、お話を読んであげたりします。
ショッピングモールや公園に連れて行くこともあります。正直言って、子どもたちとはいつも一緒にいたいと思いながらも、時間通りに寝てくれるとほっとします。
──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?

子どもたちが、生きていて、呼吸をして、健康で、幸福で、笑顔でいることに感動しています。この子たちを育てている幸運を思い、宇宙に感謝しています。
最近、妻から「ママがいないと寂しいよ」と息子が言って抱きしめてきたと聞きました。それから、「パパもここにいればいいのに」と言ったそうです。
娘は一緒に「こちょこちょモンスター」をして遊べるのはパパしかいないと信じていました。2人とも、私にお風呂に入れてもらうのが好きなんです。
年を重ねるにつれて、ありふれた日常の中に特別なものを発見するようになります。生活の中のインスタ映えしないささやかなルーティンが喜びと幸福の美しい結晶になるのです。
私は特別なことは何も書いていませんが、私といることで子どもたちが楽しんでいることがわかるので、誇らしく思います。
子どもたちは、私がいることで恩恵を受けていますし、願わくば、私が子どもたちの善良なお手本になっていたらいいなと思います。
──子どもたちにはあなたのどんなところを見習ってほしい?
正直言って、子どもたちが母親似で良かったと思っています。
私の家系には、心臓病、不安症、過敏性大腸疾患、高血圧などがありますが、妻は不健康な食生活をしているにもかかわらず、腹筋がしっかりある驚異的な遺伝子の持ち主です。
それに、妻は私が今まで会った中で一番親切な人間です。他人を助けるのが大好きという立派な人物と結婚するのは、なかなか大変です。
そういう人といると、誰でも、「この人、本当に親切心でしているのかな」と疑い、「どんな気持ちなんだろう」と考え、他人に対して「寛大」にならざるを得ないからです。
世の人々に妻の親切な心をまっすぐ受け取ってもらえることを願っています。
──お気に入りの変わった儀式はありますか?
この儀式がいつどのようにできたかわかりませんが、我が家は、エレベーターに乗るたびにエレベーターが動いている間は狂ったように踊ります。
そして、ドアが開く直前に、ぱっと「普通」にもどり、エレベーターに乗ろうとしている人たちに変に思われないようにします。
誰にも気づかれません。私の仕事は人間味溢れるDJになって、リズミカルなビートを届けることです。ありがたいことにうちの子どもたちは2人ともステラダンスがちょっとできます。
──今までもらった子育てに関するアドバイスで心に残っているものはありますか?
「目の前の瞬間に集中して生きなさい」です。
子育てのステージごとにできるだけ「今」に意識を集中するようにしましょう。子どもの成長はあっという間です。ステージごとに、得る物もあれば課題もあります。ありのままにすべてを受け入れましょう。
汚れたおむつ、子どもが初めて話した言葉、睡眠不足の夜、首や肩の凝り、子どもの初登校日。そのうち、すべてが愛おしく、懐かしく思えるはずです。
あと、親は子どもに対して責任があります。子どもをこの世に送り出したのですから、子どもに生活が乱されても、泣き言も不平も言えません。
日々の生活、情熱を注げる大好きなこと、趣味、日々のルーティン、できる限り子どもと一緒にするようにしてみましょう。我が家は社交的で活動的な家族なので、私は夕食会からフォーマルな講演会にいたるまで、子どもたちをどこにでも連れていくように最善を尽くしています。
──子育てで一番難しいことは何?
心配が絶えないことです。
あらゆる不確実性、危険、魔の手から子どもを守れるでしょうか?
子どもたちを育てていけるのでしょうか?
子どもたちをダメにしてしまわないでしょうか?
私のせいで子どもたちは、将来、どの程度セラピーが必要になるでしょうか?
大きくなって私を嫌いにならないでしょうか?
親は常に子どものことを心配するようにできていると思います。それも当然です。
親は子どもの安全と幸福に責任があるからです。24時間365日警戒中です。ありがたいことに、妻も私も過干渉な親でもなければ、神経質な親でもありません。
子どもたちにできるだけ自由と自立心を与えるようにしています。その方が、子どもは自信と自主性を持てるからです。私が「子どもたちの成長の邪魔をしてしまうことがないといいな」と思うばかりです。
あとは、健康で、安全で、ケガや病気をせず、名門大学の奨学金を獲得して、立派な仕事に就いて、私の文筆に補助金が出せるようになってくれたら言うことなしです。
──子育てとキャリアを両立させている親御さんたちに伝えたい一言
めちゃくちゃを楽しんで、受け入れましょう。
腹を立ててはいけません。でないと、人生は辛いことと失望だらけになり、そのせいで、家族に腹を立てることになるかもしれません。
仕事は次から次へと出てきて、常にあり、なくなることはありません。
キャリアは、おそらく予想していたのとは異なるタイムラインで、もっとゆっくりしたペースで進むことになるかもしれませんが、家庭を築く愛と喜びは、それをしのぐ価値があります。
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Image: Courtesy of Wajahat Ali
Source: The New York Times(1, 2, 3)
Michelle Woo – Lifehacker US[原文]
訳:春野ユリ