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HOW I WORK

全員「複業」を実践するスタートアップの働き方とは? uni'que CEO・若宮和男さんの仕事術

全員「複業」を実践するスタートアップの働き方とは? uni'que CEO・若宮和男さんの仕事術
Photo: 大崎えりや

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。今回は、株式会社uni'que(ユニック)CEO・若宮和男さんの仕事術を伺いました。

株式会社uni'queは オーダーメイドネイルアプリの「YourNail(ユアネイル)」を手がけ、メンバー全員が「複業」を行っていることでも話題になっています。

若宮さんのキャリアシート

1998年(22歳):大学の建築学科を卒業後、都内の設計事務所に就職。駅や病院、水族館など、公共系の建物の設計を行い、在職中に1級建築士の資格を取得。

2002年(26歳):再度大学へ入学し、アート(美学芸術学)の研究を行う。研究者として将来を嘱望されるが、博士課程へ進むかどうか悩んだ結果、卒業・就職という道を選ぶ。

「哲学とか人文系の研究者って収入がつらくて世界的にすごい天才みたいな先輩でも35歳ぐらいまですごく貧乏だったり、ヒモみたいな生活でもしないといけなそうで、さすがに辛いと思った」(若宮さん)

2006年(30歳)NTTドコモに新卒入社。8年間在籍し、ヘルスケア事業の立ち上げなど主に新規事業を担当する。

「新卒採用って年齢制限があるところもあって、良い子は絶対真似しないでほしいんですが、就活では経歴を4年間くらいスコンと抜いて、ウソの履歴書を出したこともあります(ドコモは年齢制限なし)。最終面接の時に『面接の前に言っておかなきゃいけないことがあります』『御社は説明会で、就職は結婚みたいなものだと言いました。結婚に年齢は関係ないし、ここまで選んでくださったのは相性いいと思うのでホントの私をみてください!』とか言って本当の履歴書を配り始めたらザワザワしだして、人事担当者に『このままお帰りください』と追い出されたこともありましたね」(若宮さん)

2014年(38歳)DeNAに転職。3年間在籍し、新規事業やインキュベーションプログラムの立ち上げにかかわる。

2017年(41歳)uni’que(ユニック)を創業。ランサーズに「タレント社員」として就職。

起業に至るまでは?

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Photo: 大崎えりや

DeNA時代に事業を一つ立ち上げ、ユーザーもつきはじめていたんですが、諸事情でクローズしなければいけなくなり、 これまで企業内で新規事業を長く経験して、いよいよ自分でやるか、ということで、uni’queを起業することにしました。

創業した時に決めたのは、「女性の感性を活かした事業を作れる会社にしよう」ということ。だから、女性向けのサービスしかやりません。

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「YourNail」のサイト
Screenshot: ライフハッカー[日本版]編集部 via YourNail

モバイルの事業を沢山やってきて思うのは、パソコンのインターネットは男性のインターネットだったけど、スマホで女性のインターネットになったということ。

基本的に女性のニーズを捕えたものがボーンと跳ねてるんです。だから、スマホの世界で勝つには女性の感性を活かせるほうがいいはずなのに、日本の企業はあまり活かせていない。

ということは、それを活かせると勝ち筋があると思ったんです。それが創業の根っこで、「全員複業」というルールも、女性を活用するためにはどうするか考えた末に行きついたものです。

社員全員が「複業」をする理由は?

時短勤務の「時短」という言葉がすごく嫌いなんです。子育てしながら「時短勤務」という形態で働いている女性は、すごく申し訳なさそうに、肩身の狭い思いをして働いてるんですよね。

でも、本来よく考えたらママ業と会社、2つの場所でバリューを出していてすごく偉いはずなのに、なんでそんな思いをしないといけないのか。

「量の呪縛をぶち抜く」とよく言ってるんですけど、いっぱい働いた人が偉いっていう世の中だと、絶対男性のほうが優位ですよね。体力的にもそうだし、出産もしないので、人生の中で働ける時間は男性のほうが多いじゃないですか。

でも、時間関係なくバリューは出せるんです。特に感性の話で言えば、例えば僕が会社で5時間かけて企画書を書いても、女性メンバーに見せて「あー、これ全然ピンと来ない」と5秒で却下されて、代わりに「こっちの方がかわいいじゃん」と別のアイデアが採用されることだってある。

「いっぱい働いたほうが偉いって何なんだろう?」という疑問から、「月に2時間しか働かなくてもバリュー出てればそれでいい」という社会になっていったほうがいいと考えるようになったんです。

「量の呪縛」から解き放たれていくためにも、元々複業で働いていれば、ライフステージの変化にも対応しやすい。

その実例がないので、自分で実例作ろうということで、全員が複業を実践する「全員複業カンパニー」をやっていて、僕自身も複業を実践しています。

現在の仕事の割合は?

今はuni’queが7割、ランサーズがの仕事が2割、「コアバリュー・ワークショップ」や新規事業のアドバイザリーなどが1割という割合で行っています。

ランサーズでは新規事業などを手伝っていて、基本的には裁量べースで、時間はざっくりとしか決まってないです。

コアバリュー・ワークショップは、企業やチームの自分たちにしかない価値=コアバリューを見つけるためのワークショップ。

日本の企業って、同じ業界のA社とB社のバリューを取り替えても変わらない、みたいなことが多いんです。でも、たとえばスターバックスやディズニー、任天堂などは、とてもしっかりしたコアバリューを持っていますよね。

そうした固有の価値を見つけてもらうために、これまでの新規事業の経験等を活かして、コアバリューの設定をするワークショップや研修を第3の複業としてやっています。

「複業」をうまくやるためのコツは?

複業の「境界を溶かす」ことがポイントだと思っています。3つの仕事を別々に7対2対1という割合でやるんじゃなくて、それぞれシナジーが働くようにするということを、最近はすごく意識しています。

例えば、いろいろな会社でコアバリューの講師をやらせていただくんですけど、そうするとuni’queの事業の提携も進むことが多い。

スタートアップから「組んでください」と大企業にメールしてもスルーされますけど、講師という立場で行くと、話がスムーズに進むんです(笑)。

また、地方で講師の仕事があるときは、そこで「YourNail」のユーザー会もやってしまうとか。

以前名古屋の百貨店でイベントをやったときは、小学生の長女もつれていって、イベントスタッフとしてお手伝いしてもらいました。仕事しながら、家族旅行しながら、社会科見学じゃないですけど子供の教育にもなる。

1つ仕事が決まったら、他のことでもなにか活用できないかというのは毎回考えてます。

仕事での失敗経験は?

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Photo: 大崎えりや

33歳ぐらいまで本当に”俺俺”の仕事スタイルで、自分が会社で一番仕事できると思っていたんです(笑)。チームのメンバーに対しても、「俺が正解を知ってるんだから俺が言うとおりやれ」みたいな感覚で仕事していました。

会社に入った年齢も遅かったし、変なプレッシャーもあったんでしょうね。でも、そういう仕事のスタイルでいると、周りが自分の劣化コピーにしか見えなくなるんですよ。

そんな感じでやっていたら、ある時でかいプロジェクトでクソほどチームが空中分解して…。もう3日ぐらい「仕事行きたくないよー」って、膝抱えて無断欠勤したという時期があって。

その時にいろいろ気付きを得て、それまでは自分がやり方を知ってるからみんなその通りやればいいって思ってたけど、それだと一番うまくいっても自分の想定したとこまでしか行けないんですよね。自分が上限になっちゃう。

そこからは、メンバーそれぞれの良いところを引き出すことを意識するようになって、今の「バンドスタイル」と呼んでいるマネジメント方法に行きつきました。

uni’queでは、各ポジションの責任者がCEOを超える決定権を持っていて、僕が反対しようが何しようが、それぞれのメンバーがその領域においては一番偉い人ということになっています。

だから、みんなが複業していて話し合う時間や会う時間が少なくても、スピードが全然落ちずにやれているし、自分の想像を超えたアイディアも出る。

愛用している、仕事をうまく進行させるためのツール(ToDoリスト、アプリ、道具など)はありますか?

・Zoom,Appear.in:ビデオ会議はこの2つを使います。社内会議は「Zoom」で、「Slack」の画面を映してしゃべりながらメモをとって、終わったらそれをSlackにポストする。後から議事録をまとめたりはしません。社内検討資料が殆ど無いのもuni’queの特徴ですね。

「Appear.in」はブラウザベースで使えるので、外部のクライアントなどとの打ち合わせで使います。

・GoogleドライブのOCR機能:本を読んでいるときに参考になった箇所があったら、写真を撮ってGoogleドライブにアップします。そうすると、画像認識で文字起こししてくれるんです。それをまとめておくことで、あとで確認しやすいようにしています。

・短パン:うちの会社は基本的に気温25度を越えたら短パンが推奨されます。今年みたいな酷暑の時に、長いズボンで体力を奪われるのは極めて非効率なので。

仕事相手によって格好を変えることもないです。キャップに短パンで日本橋にある、受付フロアにバルセロナチェアがずらっと並んでるような会社さんに打ち合わせに行ったら、帰り際に「若宮さん、多分うちの会社で短パン第1号です」って言われて(笑)。

やんわり怒られてたのかもしれないですけど、特徴として覚えてもらえるし、「働き方」へのメッセージとしてやっています。

僕は、理由がわからないルールは一度疑ってみたい、というたちで。短パンもその一環です(笑)。スタートアップだとTシャツは当たり前になってきましたが、一方で「とにかくたくさん働く」という会社もまだまだ多くて、それ古い働き方じゃんと。

スタートアップは新しい文化をつくろうとしているんだから、働き方もルールも自分達で作れるし、働き方もイノベートしていくべきだと思っています。

お気に入りの時間節約術は何ですか?

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Photo: 大崎えりや

・A/Bテストで必ず失敗する

イケてないA/Bテストって、AとBの距離が短くて「結局どっちなの?」という結果なりがち。試すときは大胆に試した方が、どっちかが必ず失敗するので、どっちが良かったかも必ず分かる。なるべく距離の遠いA/Bテストを考えることで、意思決定も速くなると思っています。

・思考が追い越す瞬間を作る

たとえばプレゼンの資料を作る時に、「画面を前にして何を書こうかを考える」ということを僕しないんですよね。お風呂入ってるときや移動中にアイデアをボーっと考えて、キーワードだけ思いついたらメモをして、書くことが固まったら一気にバーッて、手が追いつかないくらいの感じで書ける。

書きたくてたまらないという状態になるまで、ギリギリまで我慢してから書き始めます。変な例えですけど、トイレに行くのをすごく我慢してから行くと、一瞬で済ませて帰ってこれるみたいな感じです(笑)。

・マルチタスクハイ

複業でいろんな仕事をやってると、ハイになる瞬間があるんですよね。追い込まれるうちに集中や頭の回転が高まっていくというか。

能楽師の安田登さんという、最近すごく注目している方が言ってたんですけど、「集中」って1つのことしか見えなくなる感じがするけどそうじゃない、と。能楽師が本当に集中すると、体中がセンサーのようになって、あっちこっちの物音にすごく敏感になるらしくて。開かれた集中っていうか。

それに近くて、あれもこれもと考えているんですけど、それが全部クリアに見える瞬間が来ることがあるんです。それを、マルチタスクハイと呼んでいます。

仕事において役に立った本、効果的だった本は何ですか?

・『ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)

MITの教授が本気でライフログをとり、人の行動を分析して、どういうときにクリエイティビティが高まるのか? ということを書いている本です。

その中で科学的に立証していることが2つあって、1つは「エンゲージメント(従事)とエクスプロレーション(探索)のバランス」について。

チームの中だけで議論してると、内部の文化(エンゲージメント)は高まってくんですけど、それだけだとクリエイティビティは高まらない。必ず外を探索(エクスプロレーション)する必要があって、外の空気が入ってるときが一番創造性が高まるそうです。

大企業だと社内で固まって、外の異業種や異空間のことを知らないという状態が起こりがちじゃないですか。でも複業チームをやっていると、みんなが別の会社に所属しているので、黙ってても外気が入ってきて循環するんですね。

なので、最近はエンゲージメントとエクスプロレーションのバランスの大切さというのを実感してます。

もう1つは、適切にクリエイティビティが発揮されるには、「アイデアが流れるスピードが大事」ということ。チームの中で生まれるコミュニケーションが増えるのはいいのですが、情報が流れるスピードが速りすぎると、結果としてクリエイティビティが落ちるんですよ。

Facebookでも同じで、タイムラインに出る情報があまりに多く玉石混交になって増えすぎると、読み飛ばすようになる。

だから、例えばチームのSlackでのやりとりなども、 コミュニケーションの活性化のために業務と無関係な雑談も流すんですけど、これが多すぎると逆に皆読まなくなるので、そのバランスは気をつけています。 そんな感じで、情報が流れるスピードを適切化するということも、この本で学びました。

・『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』(著:Nir Eyal)

人間がサービスにハマるには4つ要素が必要で、「トリガー(きっかけ)」「アクション(行動)」「リワード(報酬)」、そして、一番深いステージに「インヴェストメント(投資)」というものがあります。

ユーザーがサービスに自分の時間やお金を「投資」するようになると、ロイヤルティが上がるという論理です。

従来の「お金を払った分が戻ってくる」という売買の関係では、一時的な関係に留まってしまいます。ユーザーに提供するだけじゃなくて、ユーザーに参画してもらうことで熱量が高まり、ヘビーユーザー化につながるという考え方は、今コミュニティづくりをしたりする上ですごく役立ってますね。

・『コンセプトのつくりかた』(著:玉樹 真一郎)

著者の玉樹真一郎さんは、たまたま僕の高校の1つ後輩なんですけど、任天堂のWiiを作った男です。

任天堂って、根っこに「ファミリー」の遺伝子があると思っているんですが、任天堂のWiiをつくるときに、「家族の真ん中にある鍋みたいなゲーム」というコアのコンセプトができるプロセスを書いてるんですけど、これはすごく面白いのでオススメです。

・『ストレングスファインダー』(著:トム・ラス)

さっき話した、プロジェクトが空中分解して会社に行きたくなかったという時期に、たまたま異業種交流セミナーのようなところに行ったんです。そのセミナーが面白くて、事前に『ストレングスファインダー』の本が送られてきて、テストを受けてから集まってくださいと。

ストレングスファインダーは、テストに回答して「34の資質」の中から、自分の中の「トップ5の資質」を知るというものです。

その会の一番最初に皆で結果を共有して、それからグループワークをやるんですよ。

この時のグループワークが経験したことないぐらい上手くいったんですが、それはなんでかと言うと、バラバラなそれぞれの強みが見える化しているから。ここは誰々さんが強いから任せてみよう、というように自然とパスが回る。

そうした実体験も含めてこの本は、今のバンドスタイルの大元になっています。

いまお答えいただいている質問を、あなたがしてみたい相手はいますか?

アイランド株式会社代表の粟飯原理咲(あいはら・りさ)さん。起業家の先輩です。

「おとりよせネット」や「レシピブログ」などをやられていて、「おとりよせ」という言葉を広めた方です。

新しい概念や言葉を作って、それをサービスや事業のコンセプトにするのが上手な方。会うとすごく女性らしくてふんわりとした方なんですけど、本質的なところをズバっと言ってもらえます。

好奇心が旺盛な方で、話してると「へー、面白ーい」と言う回数がめっちゃ多いんですよね。良いとか悪いとかよりも、面白いかどうかが判断基準にある。

経営者として忙しく事業をやりながら、常にいろんなことに好奇心を持たれているので、ぜひお話を聞いてみたいです。

これまでにもらったアドバイスの中で、ベストなものを教えてください。

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Photo: 大崎えりや

起業するときにちょっとすったもんだがあり、「これだけトラブルが多いということは、神様が会社を作るのをやめとけと言ってるんだ」と思って、やっぱり起業はやめとこうかな、という話を奥さんにしたんです。

そしたら、「2年後に起業するって言われたら、私全力で止めるよ。だから今Go!」と言われて。嫁ブロックの逆、嫁キックみたいな(笑)。それで「おお!」と背中を押されて、起業することを決めました。

なんで2年後はダメかというと、子どもの中学受験とかも考えたいしお金もかかるかもしれないし、起業とか言ってる場合じゃなくなるから。そう考えると、「時を捉えよ」というのは真実だなと思うし、実際蹴り出されてみたらめちゃくちゃ人生変わって、本当に良かったなと思います。

専業主婦で2人子どもがいるのにそんなリスクが取れるのはすごいと思うし、そういう意味では、自分以上に起業家向きなんじゃないかなと思ってます。


Source: uni'que, YourNail

Photo: 大崎えりや

開發祐介

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