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心配事に振り回されないために「禅」の習慣を取り入れよう

心配事に振り回されないために「禅」の習慣を取り入れよう

心配ごとを抱えるすべての人に、「心配したって大丈夫」という言葉を送りたい。そう記しているのは、『心配事がスッと消える禅の習慣』(松原正樹著、アスコム)の著者。

心配を生み出す環境はなかなか変えられなかったとしても、心配という感情を手放すことは、思考のクセや生活の習慣を変えるだけで簡単にできるというのです。

「もっと、自分に心を配っていい。もっと、自分を大切にしていい」 本書では、このことをメッセージとして強く伝えたいと思っています。(中略)

心配という負の感情を手放す、そのアプローチの仕方は一つではなく、さまざまにあります。ご紹介する中から、ご自分の今の生活にフィットするものやすんなり腹に落ちたものから、ぜひ実践していただきたいと思います。

私は禅僧なので、禅的な解釈のもとにお伝えすることが多くなります。 もしかしたら「禅」と聞くと、禅問答のような難解さをイメージされる方もいるかもしれませんが、それは多くの方が抱いている誤解です。

そもそも禅の考え方は、特別なものではありません。 人間の理にかなったライフスタイルが、そのまま禅的なライフスタイルです。 人間の根源として誰にでも備わっている生き方であるからこそ、人は禅に触れたとき、すんなり受け入れることができるのです。(「はじめに」より)

禅僧でありながら、拠点はアメリカで、大学生を相手に宗教学者として日本仏教について教えているという人物。

また、グーグルが社員研修に取り入れたことでも話題となったマインドフルネスの活動にも関わり、それが縁でグーグルをはじめとする企業で禅についての講義もしているのだそうです。

そんなバックグラウンドを軸として、計49にもおよぶ「禅の習慣」を紹介した書籍。

きょうは第四章「心配事に振り回されない後悔ゼロの生き方」のなかから、いくつかをピックアップしてみたいと思います。

仕事や家事は、いまできることを続け、誰かの役に立つよう心がける

「もっと違う仕事をしていたとしたら、いまよりいい人生があったのではないか。このまま一生を終えていいのだろうか」ーー誰しも一度は、そのような不安を感じたことがあるのではないでしょうか?

仕事や家事、育児には人生の大半の時間を費やしているわけなので、そこに不幸を感じてしまうと、人生そのものが苦のように思えてしまうもの。

そこで、なんとか脱出しようと転職、独立、就職、資格の取得、あるいは離婚など、大きく環境を変えようとする方もいらっしゃるでしょう。

しかし、環境を変えたところでその先の幸福が約束されているはずもなく、また大きな不安を抱え込むというスパイラルに陥ってしまいがちだと著者は指摘しています。

問題はひとっ飛びには解決しません。大事なことは、今できることをする。今、自分がいる場所からはじめることです。

一切唯心造(いっさいゆいしんぞう)。すべては心がつくり出すのですから、心の持ちようで変えられることがたくさんあります。今いる場所でできることが、たくさんあります。(183ページより)

そもそも人は、なんのために働くのでしょうか。お金のため、生きるため、自分のためなど、理由はさまざまです。

しかし、それでは幸せを感じることができなかったのだとすれば、やはり、なにかを変えていかなければなりません。そこで著者は、次のように考えてみてはどうかと提案しています。

“ハタ(傍)”を“ラク(楽)”にするから、働く。この視点に立って、今いる場所で、自分のためよりも誰かのために役に立つ、そんな働き方を模索してみます。

このプレゼン資料はここのグラフを色分けしたら伝わりやすいだろうか。共有のものは、使い終わったらもとあった場所にすぐ戻す。次に使う誰かのために。

自分が作っているのは一本のネジだけど、このネジから時計が生まれ、多くの人に役立っている。正確な時間を刻むじゃまをしないように作らなければ。

家族みんなが笑顔ですごすために、体に負担のかからないごはんを作ろう。(184ページより)

当然のことながら、仕事や家事はすぐに結果が出るものではありません。しかし、「誰かの役に立ちたい」と考えられるようになった時点で、自分自身の変化は始まっているもの。

そしてその結果、“ハタ”で働く人からの感謝の言葉や笑顔が、自分へのギフトであることに気づくはずだと著者。(182ページより)

1カ月毎日、やりたいことをノートに記し続ける。すると最後は自分の本心だけが残る

いろいろなことが心配になるのは、心配に費やす時間があるから、とも考えられるはず。だとすれば、いまを精いっぱい生きることで、心配する時間をなくしてしまえばいい。そんな対処法もあるそうです。

「そう言われても、どうすればいまを精いっぱい生きられるのかわからない」というのであれば、「いまを精いっぱい生きる」を「いまを楽しむ」に置き換えるのでもOK。

自分にとっての楽しい時間とは、なにかに夢中になっている時間。ワクワクした心持ちで向き合えるなにかがあるかどうか、だということです。

しかし現実問題として、いまの自分が本当にやりたいこと、いま置かれている環境のなかでワクワクして取り組めることを見つけるのは、なかなか難しいものでもあります。

そこで著者は、自分の時間を精いっぱい生きるために、「やりたいことノート」を書くことを勧めているのだそうです。

【やりたいことノート】

用意するものは、ノートとペン。

期間は、1カ月。

毎日、自分がやりたいと思うことを10個書く。

実現可能・不可能は問わず、とにかく、頭にパッと思い浮かんだものを10個、毎日ただ書いていきます。

数日間にわたって同じことが頭をよぎったなら、それはそのまま書きます。「そういえば、これもやりたかった!」と思い出すことがあれば、その日はそれも書きましょう。(192ページより)

どうしても10個書けない日もあれば、10個を超えてやりたい思いがあふれる日もあるでしょう。逆に、月日が経ってやりたい気持ちがしぼむことだってあるかもしれません。

しかしどうであれ、あるがままの自分を受け止めて、とにかく1カ月は続けることが大切だというのです。

しかも、深い思索は不要で、毎日ただ書くだけ。それだけで気持ちが整理されていき、自分のやりたかったことが自然と見えてくるのだそうです。

1カ月も後半になると、やりたいことが2つ3つだけ残り、そこから一番を決めることに苦心することになるかもしれません。

それは、1カ月きちんと続けた人にだけ与えられるご褒美のような、贅沢な悩み。自分の心と向き合って行くうちに、最後にはあれやこれやと描けなくなり、本心だけが残るというわけです。(190ページより)

苦手な人に会うのも、なにかの縁。一緒に過ごすすべての時間を大切にする

職場にしても、趣味の集まりや町内会であっても、どこにだって苦手な人のひとりやふたりはいるもの。

日本では『法句経(ほっくぎょう)』とも呼ばれているインドの仏教書『ダンマパダ』にも、「嫌われていない人はひとりもいない」と書かれているのだとか。つまり、どんな人ともうまくつきあえる人などいないわけです。

しかし、きれいごとに聞こえてしまったとしても、そこで出会ったにも、やはりなにかの縁なのだと著者は主張します。

考えてみてください。この広い地球の、まったく異なる場所で生まれ、違う環境で育った人間同士が、2018年のある日のこの時間、同じ場所に集っている。

もうそれだけで、奇跡的な確率の奇遇な出会いだと思うのです。さらにいえば、そこに居合わせた人が交わした会話は、この地球の歴史の中で、もう二度と繰り返されることはないわけです。

自分にとっても、相手にとっても、貴重なこの一瞬を共有しているという意識が出てくれば、そこには互いを敬う気持ちが生まれるのが自然です。

たとえ相手に苦手意識があっても、それはその人の一面に過ぎません。その一面をもってその人全体を判断するのは、誰にもいい影響をもたらしません。(209ページより)

「私の苦手な○○さん」ではなく、「この一瞬を共有する貴重な相手」と捉えてみれば、心が軽くなるのを感じるもの。

「この時間が早く過ぎ去るように」と願うのではなく、「二度と戻らないこの時間を少しでもいいものにしよう」と思えば、自分の態度が変わるはず。

そして、「ここにいるみんなが、それぞれに貴重な時間を持ち寄っている」と考えれば、相手をリスペクトする気持ちが生まれるもの。

今いる場所に、ポジティブなマインドを持ち込みましょう。あなたのその前向きな姿勢にほかの人の共感が重なると、そこにハーモニーが生まれます。

美しい旋律が耳に心地いいように、その空間を満たすハーモニーがプラスのエネルギーを持てば持つほど、部屋全体が清々しい空気に包まれていきます。満たされた時間を共有した人たちの心は清く温かく、誰かを咎めたり排除しようとしたりといった気持ちも起こらないことでしょう。

ここには、茶の湯の精神である和敬清寂(わけいせいじゃく)に重なるところがあるでしょう。(210ページより)

その場が会議室であろうと、オフィス、電車内、タクシーの車内など、どこであったとしても、「自分はハーモニーを奏でるひとりなのだ」と思うと、それだけで所作に変化が生じてくるはずだと著者は訴えています。(208ページより)




アメリカで国際結婚して2人の娘にも恵まれ、さまざまな価値観に触れてきたという著者は、年月を経るほどに、「やはり禅の教えは人が善(よ)く生きるための助けとなる」と確信を深めているのだそうです。

そんな著者の言葉を受け入れてみれば、いつしか心配事が減っていくかもしれません。ぜひ、気軽に手にとってみてください。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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