特集
カテゴリー
タグ
メディア

書評

トヨタ式「5W1H」はWHY×5。「なぜ」を5回繰り返して「真因」を探し出そう

トヨタ式「5W1H」はWHY×5。「なぜ」を5回繰り返して「真因」を探し出そう
Photo: 印南敦史

トヨタ式5W1H思考 カイゼン、イノベーションを生む究極の課題解決法』(桑原晃弥著、KADOKAWA)の著者は、経済・経営ジャーナリスト。

トヨタ式の実践現場や、トヨタの基礎を築いた人物である大野耐一氏直系のトヨタマンを数多く取材し、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した実績を持っているのだそうです。

トヨタに「トヨタ語」と呼ばれる独特の言葉があることは有名ですが、そのなかには、誰もがよく知る言葉でありながら、他社とは意味がまるで違う言葉も多いのだといいます。

たとえばその典型が、本書のタイトルにもなっている「5W1H」

一般的に「5W1H」といえば「いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どうやって(How)」ですが、トヨタの「5W1H」は「なぜ(Why)・なぜ(Why)・なぜ(Why)・なぜ(Why)・なぜ(Why)・どうやって(How)」となります。

トヨタでは「『なぜ』を5回繰り返せば真因がわかる」といわれています。普通の「5W1H」では「なぜ」は1回だけですが、トヨタの場合はしつこく「なぜ」を問い詰めていくことによって、表面的な原因ではなく、真の要因、つまり「真因」がわかると考えているのです。(「はじめに」より)

あえて時間をかけてでも「なぜ」を問い、改善を行うほうが、最終的には同じ問題が二度と起こらず、仕事の質も製品の質も向上するという考え方。

序章「トヨタは問題にこう向き合う」から、その本質を探ってみましょう。

問題はあって当然。「問題ありません」ほど危ういことはない

多くの人にとって「問題」は面倒なもの。「見て見ぬふり」をしたいし、できれば「先送り」したい。

どうしても避けられなかったとしても、なるべく「素早く迅速に」片づけてしまいたいと思ってしまいがちではないでしょうか。

しかし、その対極にあるのがトヨタの考え方。ここではその一例として、若いトヨタ社員が素晴らしいアイデアを思いついた時のエピソードが紹介されています。

そのアイデアを聞いた会議の参加者からは反対意見が出ないばかりか、全員一致で「それはすごい、すぐに実行しよう」とほとんど即決状態だったのだとか。ところが、その報告を受けた大野耐一氏は、こんな懸念を口にしたというのです。

「異論がないということは、異論を見逃していると思え。異論がなければ異論をつくれ。異論をわかったうえでやる」(13ページより)

どんなに素晴らしいアイデアだったとしても、いざ実行してみればさまざまな問題が起きるもの。

問題をあらかじめ予期していれば素早く対処できますが、それを怠っていた場合、慌てふためき、対処を間違えたり、多くの時間がかかってしまったりもします。

いわばトヨタにとっての問題とは「あって当然」のものであり、「問題がない」ということはほとんどの場合、「問題が見えていない」か、「問題を隠している」ことを意味するわけです。

特に現場においては、1日なにも起こらないはずもありません。人間が作業する以上、調子が悪ければ思うように作業はできませんし、うっかりなにかを忘れることもありうるからです。機械だって手入れを怠れば、思うようには動きません。

つまり本気で問題点を書き出したとすれば、書ききれないほど出てくるわけです。それを忘れて「問題はありません」などといっていては、せっかくの「問題解決のチャンス=改善のチャンス」を逃してしまう。

それがトヨタの考え方で、「問題がなければ、問題を探し出してでも改善しろ」と言う人もいるといいます。

多くの人にとって問題は「できれば避けたい」ものですが、企業人としては問題は「あって当然」。だからこそ、問題を「改善のチャンス」だと前向きに捉えることも大切だという考え方なのです。(12ページより)

問題の背後には「真因」が隠れている。「なぜ」を5回繰り返せ

たとえば生産現場で不良品ができた場合、一般的な企業であればラインは止めずにそのまま動かすかもしれません。その不良品はよけておいて、あとで手なおしをしようと考えるわけです。

一方、「問題が起きたらただちにラインを止める」ように徹底されているのがトヨタ式。「問題が起きた」ことをみんなに見えるようにして、「問題の真因」を徹底的に調べ、二度と同じ問題が起きないように工程などの改善を行うのです。

これを繰り返すことで工程はよりよいものに改善され、製品もよりよいものになっていくというのが、トヨタ式の「品質は工程でつくり込む」という発想。

つまりトヨタ式では(生産現場に限らず、あらゆる部門において)問題が起きたとき、

1. 問題をみんなに見えるようにする

2. 問題の真因を徹底的に調べる

3. 二度と同じ問題が起きないようにしっかりと改善を行う

(16ページより)

これらがひとつの仕組みとして徹底されているということ。そして、なかでも特に大切なのが②。問題が起きたのであれば表面的な「原因」に手を打つのではなく、「真因」にたどり着くまで「なぜ」を5回繰り返し、真因を潰すための改善を行う。

それはトヨタの問題解決法であり、「5W1H」という思考法。「5回のWHYを経てHOWを見つける」という意味だということです。(15ページより)

安易に「あ、そうか」と言ってはいけない。トヨタの「5W1H」を実現する3カ条

とはいえ「なぜ」を繰り返すのも、「真因」にたどり着くのも、それほど容易なことではありません。そのためここでは、どのような姿勢で臨むことが必要なのかがまとめられています。

1. 安易に「あ、そうか」と言うな

著者によれば、「ああ、そうか」は「5回のなぜ」における禁句。たとえば機械が止まったときにヒューズが切れていることを発見し、そこで「ああ、そうか」と言ってしまうと、そこで思考は止まり、それ以上「なぜ」を問うことをやめてしまうことになります。

すると、一時的に機械が動くようになったとしても、真因を潰していないために、いつかまた同じ問題が起きることになるかもしれません。

そうならないためにも、わかりやすい原因を発見したからといって安易に「ああ、そうか」と納得せず、「ちょっと待てよ、本当の原因は他にあるのでは?」と「なぜ」をとことん繰り返す姿勢が必要だということです。

2. 問題は「現行犯逮捕」する

トヨタ式の「なぜ」を繰り返すうえで大切な姿勢は、現地に行って現物を見て考えるという「現地現物」の徹底。そして、可能なら問題の起きる瞬間を目撃するまで1日中現場に貼りつき、現場を抑えるという「現行犯逮捕」を心がけることだそうです。

「なぜを5回繰り返す」は机上で行うものではなく、問題の起きた現場に行き、現物を見ながら、問題が起きる瞬間を目撃するまで現場に立ち続けるべきだということ。

3. 「見つかるまで探す」という姿勢を貫く

「5W1H」のためには「真因」を見つけることが不可欠だとはいえ、いくら「なぜ」を繰り返しても、いくら現地現物で調べても「真因」にたどり着けないこともあるでしょう。

しかし、「真因」が見つからないのは、見つかるまで探していないからだというのがトヨタの考え方。

「真因」を見つけるのはたやすいことではありませんが、だからといって適当なところで妥協していては決して見つからず、本当の改善もできなくなります。

そして重要なのは、「5回」というのは、「5回まで」という意味ではないということ。見つかるまで、できるまで「なぜ」を繰り返すのがトヨタの「5W1H」の基本姿勢だというわけです。(19ページより)

「5W」の先に「1H」があることを忘れるな

目的のための「手段」が、いつの間にか「目的」になってしまうことはよくあるもの。

「5W1H」の場合、「真因」にはたどり着いたものの、その「改善策」の実行が難しく、「原因はわかったものの、根本的な解決ができない」というケースも少なくないといいます。

たとえば、自分たちの部署や工場内で真因を追求して行ったところ、他の部署や他の工場、協力会社や親会社も関係してくるとなると厄介なことになります。

それらの部署や企業との調整や交渉が面倒で、自分たちだけでやれるところに無理に「原因」を求め、そこまでの「改善」にとどめるというのもよくある話。

もちろんその段階の改善でも、問題は一時的に解決するかもしれません。しかし、そうした中途半端な改善はただの「修繕」であり、真因を潰す「修理」にはなっていないというのがトヨタ式の考え方。

それだけにトヨタ式の「5W1H」で大切なのは、「『なぜ』を5回繰り返す」にあたって部門の壁などにとらわれることなく、可能な限り源流に遡って「真因」を探し出すことと、「真因」を探り当てたなら、その解決策がどんなに難しいものであっても、きちんと改善策を考え出し、そして実行するという姿勢なのです。(27ページより)

「5W」は、「1H」とセットになってこそ意味があるということです。(23ページより)




以後の章では具体的なケースを紹介しつつ、「トヨタ式5W1H」をさらに掘り下げています。

アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスも取り入れているというメソッドを応用してみれば、仕事の効率を高めることができるかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

swiper-button-prev
swiper-button-next